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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

災害復旧の人手不足と労災増加

      2015/06/12

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東日本大震災と福島第一原発事故が発生てから、3年半の月日が流れました。
大きな被害を出した震災は、まだまだ傷跡を深く残しています。
同時に、復興に向けて、少しずつ前に進みつつあります。

震災で建物、道路、港湾、河川、農地などありとあらゆる場所が、大きな被害を受けました。
被害を受けた場所は、元通りに戻すとともに、次の災害に備えた造りをしていきます。

建物は、耐震構造を備えたものにしていきます。
道路は、災害時でも通れたり、延焼を防ぐために道路を拡幅し、区画整理していきます。
河川や港湾も津波に備えた構造にしていきます。

災害復旧はいち早く元の環境を戻すためにも、急を要します。
そのため自治体は、災害復旧事業として、次から次へと工事を発注するのです。

建設業者には次から次へと仕事が舞い込んできます。
ここ十数年、公共工事が減ってきていたので、仕事があるのは、有り難いことですが、同時に弊害もあります。

福島民有新聞に、福島県内の建設工事の状況についての記事があったため、紹介したいと思います。

県内建設工事の労災が急増 震災前の1.5倍、人手と経験不足
(2014年11月26日 福島民友ニュース)

東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復旧・復興工事の本格化に従い、建設業の労災事故が震災前に比べて急増していることが25日、福島労働局への取材で分かった。昨年1年間の発生件数は464件で、震災前の2010(平成22)年の295件に比べておよそ1・5倍。今年も10月末現在で383件発生し、昨年同期比を13.6%上回る。同局は、工事件数の増加に作業員の数が追い付かないことが、作業員1人当たりの負担増や、経験が浅い作業員による事故につながっていると分析する。

「復興需要で業界全体としては景気が良くなった。その一方で工事の多さに作業員や機材が追い付かず、労災事故につながってしまう」。福島市の建設業界の関係者は、労災事故の急増に頭を悩ませながら現状を語る。

震災前、建設業界は衰退傾向にあり、各社が経営縮小で作業員を削減していた。さらに熟練技術者の高齢化や若手の離職が作業員不足に拍車を掛け、震災後に突然舞い込んだ大量の工事に対応しきれていないという。

「どの社も復興需要はいずれ終わると予想している。ここで人を雇い、機材を購入しても、その後に維持できる見通しが立たない」。関係者は苦しい胸の内を明かし「作業員の安全意識を向上させる教育や啓発を積み重ねることが一番の改善策では」と続けた。

福島労働局の佐藤和信労働基準部健康安全課長補佐は、チラシ配布などを通じて労災事故防止に全力を挙げているとし、「冬場は凍結による事故も多くなりがち。年末に向けさらに危機意識を高める必要がある」と注意を呼び掛ける。

福島民友新聞

震災前に比べ、福島県内での労災事故が1.5倍になっているとのことです。
震災前の2010年に年間295件だったものが、昨年は464件ということなので、非常に増えているのがわかります。

復興事業で、仕事が急増し、中には不調になる案件もあるようです。
この理由は人手不足です。配置する技術者がいなく、仕事はあるけど、みんなキャパオーバーしている上体です。
そのような状態なので、作業員一人あたりの負担分が多くなり、人手不足解消に雇い入れても、経験不足、知識不足で事故を起こしているのが原因のようです。


建設業は、公共事業への予算が削減され続けたこともあり、業界が縮小してきました。
廃業する会社も多く、建設業に携わる人も、年々少なくなってきていたのが実情です。
そんな中での特需ですから、需要過多で、対処する力がないのです。

では、これを機に新たに雇用すればよいかというと、そんな単純な話ではありません。
復興事業は、時限です。
特需に沸くのは、数年でしょう。

仕事が減ってきた時に、ピーク時の仕事量に合わせた雇用は、維持できません。
中小企業は特に、新たな雇用に対して、二の足を踏むのです。

福島の例にかぎらず、災害の後は、労災が増えます。
これは阪神大震災でも同様の傾向がありました。
兵庫県では、震災の翌年の労災件数がグッとあがっているのです。

災害があると、災害復旧事業により仕事が増えます。
仕事が増えると労災も増えるのです。
この相関関係は、残念ながら変わらないようです。

東日本大震災の後も、毎年どこかで災害があります。
先日は、長野県で震度6の地震があり、白馬村では家屋が崩れる被害が出ていました。
今年の夏には、広島など各地で大雨による被害が出ました。

昨年の平成25年も、伊豆大島や京都府福知山市で豪雨による被害がありました。

災害で被害を受けたら、長くとも数年以内に復旧し、再び災害が起こらないように整備します。
水害のあったところでは、河川改修が行われますし、土砂崩れした道路では、トンネルが掘ったりすることもあります。
国、都道府県や市町村より、様々な復旧工事が発注され、近隣の業者は急激に忙しくなります。

1つでも仕事をこなすことを考えなければなりません。
手は1つでも多いほうがいいのです。

仕事に集中すると、疎かになるのは、安全対策です。
十分な安全教育がないままに現場に放り込まれることもあるでしょう。
しっかり作業計画を立てる間もなく、現場作業にとりかかることもあるでしょう。

何より優先されるのは、工期内に仕事を完了させることではないでしょうか。

しかし焦って、急いで仕事をすると、必要な確認を省略したり、暗くなっても仕事したり、休みなく働いて疲労したり、事故につながる要因は増えていくのです。

傷ついた場所の復興事業をしているのに、自分が大怪我をしてしまったら、本末転倒です。

福島県の労働局などでは、労災事故防止のための啓発活動を行っているのようですが、きちんと届くのでしょうか。
どうしても対応は、各事業者任せになってしまいがちです。

しかし安全意識を持っている事業者とそうでない事業者があるので、難しいところです。

ある程度は、労働基準監督署や自治体、監理者などによるパトロールを行い、現場で啓発するのも効果があるのでと思います。
知識や経験はあるが、第一線から身を引き、リタイアされた高齢者をパトロール要員とすると、しっかりとチェックしてくれるのではとも思うのですが、どうでしょうか。

仕事が急激に増えてくると、どうしても手持ちの資源で対応できなくなります。
そうなると中心となる人の負担が増え、疲労します。
その人をサポートするにも、ある程度の知識と経験が必要なのですから、すぐ対応は難しいです。
背景には、業界が消沈かしていたことによる、人材育成の不備があるのは間違いありません。
1年やそこらで人を育てるのは、無理でしょう。

しかし背景を嘆いても仕方ありません。原因分析より、まずはどうしていくかです。

労災が増えるから気をつけるのは、事業者はもちろんですが、発注者や労働基準監督署などの行政もサポートする必要があります。

急に効果的な方法ありませんが、なるべくパトロールなど直接的な関与方法が、即効性があるのではと思います。

事業者自身も、安全は二の次にしてはいけません。
知識や経験が不足している人には、しっかり教育を行いましょう。
時間がないと思われるかもしれませんが、事故を起こして現場がストップするなら、ほんの1日くらいは、安全に作業するための教育時間は、有用な投資ではないでしょうか。

広島の災害復旧でも、たくさんの復旧事業がこれから出てくるでしょう。
福島と同様に労災も増えてくると予想されます。
行政、事業者、作業者が、労災に対して意識しないと、事故はいつでも起こり得ます。

発注時の工夫、作業計画時の工夫、作業着手時の工夫。
安全に対して、ほんの少し意識を向けることで、避けられる事故があるのではと思います。

復旧作業が各地で出てくるでしょうが、どうか労災事故が少なく進んで欲しいです。

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