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東京・千代田区工事現場で壁崩れ、作業員が下敷き

      2015/06/12

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建物や構造物は作る仕事もあれば、壊す仕事もあります。
壊す仕事は、解体工事といいますが、がれきなどの落下や、壊した部分に足を引っ掛けたりなど、建築工事よりも危険要素が多い中での作業となります。

先日、東京の千代田区のビル解体工事現場で、作業中にコンクリートの壁が倒れ、作業員が下敷きになるという事故がありました。
救出後、病院に搬送されましたが、亡くなられたようです。

再開発事業などのためには、古いビルや家屋は取り壊した上で、整地し、新たなビルを建てます。
新しいものを作るには、いったん壊す必要があるわけです。

ビルや家屋の解体は、今後大都市を中心に、需要があるでしょう。
同時に、建築工事などとは異なった原因の事故も増えてくると予想されます。

それに従い、解体工事を安全に進めるための法改正もあるかと思います。

今回は、東京千代田区での事故を事例として取り上げ、原因と対策を推察してみます。

東京・千代田区工事現場で壁崩れ。作業員が下敷き
(平成26年12月6日)

東京・千代田区のビルの解体工事現場で、壁が突然、倒れ、下敷きになった男性作業員が心肺停止状態です。

6日午後1時15分ごろ、千代田区神田和泉町のビルの解体作業現場で、突然、壁が崩れ落ち、23歳の男性作業員が下敷きになりました。男性は約30分後に救出されましたが、心肺停止状態です。

倒れたコンクリートの壁は、縦3m、横2.5mで、厚さが23cmありました。男性作業員はビルの4階部分で壁の解体工事を進めていて、警視庁などが事故原因を調べています。

朝日新聞

警視庁によると6日午後1時頃、東京・千代田区のビルの解体工事現場で、コンクリートの壁が倒れ、作業員が下敷きになった。搬送先の病院で死亡し、死因は窒息死とみられている。

壁全体を倒しやすくするために、壁の下の部分に溝を入れる作業をしていたところ、突然、倒れたということで、警視庁が原因を調べている。

日テレNEWS24  (元記事が削除されてしまったようです。)

この事故の型は「倒壊」で、起因物は「構造物(コンクリート壁)」です。

ニュース映像を見ると、数階建てのビルを上から1階ごとに壊し、途中階での解体作業中に起きた事故のようです。
屋根は取り除かれ、作業している階には天井がなく、露天となっていました。

ビルの解体現場なので、壊した天井や壁はがれきとなり、現場に散乱しています。
足元には、そのようながれきが散らばり、歩くのにも注意が必要な状態です。

この事故は、壁を取り壊す作業の時に発生しました。
壁を撤去するために、下の部分をえぐり、溝を作るようにし、その溝を起点に壁を壊します。

木を切る時には、倒す方向には、「く」の形の受口を作るのですが、壁を壊すときにも同じことをします。
内側に倒れる方向を作ってやらないと、道路側に倒れてしまったら、大事故になりかねないからです。

しかし自立している壁の下側を壊すのは、危険を伴います。
ちょうどジェンガなどで、かなり下のブロックだけを取るような状態です。
風や手が触れて、少しバランスを崩してしまうと、簡単に倒れます。

この壁は厚さが約20センチ程度でした。
ほんの数センチえぐるだけでも、危うくなってしまいます。

何よりの事故原因は、作業方法ではなく、コンクリートの倒壊防止対策をとっていなかったことにあるようです。

大きさは、3メートル×2.5メートル、厚さ23センチのコンクリート壁です。
この足元で作業しているのですから、壁が倒れかけてきたら、作業者は逃げるすべがありません。
重さにして約400キロのコンクリートの固まりが体の上にのしかかって来るままになってしまいます。
想像できると思いますが、体はひとたまりもありません。

壁の解体工事では、根本に溝を入れるのは、必要な工程ですが、それに対する安全対策も必要な工程に含まれていないといけません。

さて、これらを踏まえて、原因を推察してみたいと思います。

1.コンクリート壁の倒壊防止対策をとっていなかったこと。
2.作業主任者などの職長が作業指揮を取っていなかったこと。
3.コンクリート壁の解体作業手順が定められていなかった。もしくは周知されていなかったこと。
4.解体作業に対する、安全教育が不十分だったこと。


壁などの構造物を解体する場合は、倒壊防止のため、ワイヤーやチェーンブロックなどで固定し、作業中に倒れて来ないような取ります。

特に今回の事故のように、下部に溝を作る作業の時に、倒れてしまうと逃げ場がないので、壁の上部を吊り上げるような形で養生しておく必要があります。

今回の事故では、対策をとっていたのかどうかは、今後調査されるでしょうが、少なくとも機能していなかったことは間違いありません。

また5メートル以上の高さのある構造物の解体には作業主任者を選任しなければなりません。
今回の工事では、壁の高さが5メートルに満たないので、厳密には作業主任者は不要ですが、それに変わる職長が指揮を取り、安全に作業させる必要があります。

十分な対策を取らずに、解体作業を行っていたとなると、作業計画や手順が周知されていなかったことも考えられます。
同時に、作業での危険性について、作業員への教育も不十分だったとも考えられます。

これらのことから、対策を検討してみたいと思います。

1.コンクリート壁をワイヤーなどで吊り、倒壊防止対策をとる。
2.作業主任者などが、作業を直接指揮する。
3.作業員に作業手順や安全対策などを周知する。
4.作業員に安全教育や、作業前のKYなどの注意喚起を行う。


解体作業は倒壊事故と隣り合わせです。
それを踏まえた上で、倒壊防止対策を行い、作業を進めていく必要があります。

壁を壊す時、床(天井)を壊す時、柱を倒す時など、それぞれ倒れないための手続きをしてから、作業を行う必要があります。

そして、この倒壊防止対策については、全作業員が理解していなければなりません。
工事の中で起こる可能性が高い事故については、全員が理解しておく必要があります。
それだけでも、事故が起こる確立を、ぐっと減らすことができるのです。

この事例のような事故は、少なくありません。
多くの場合において、倒壊防止対策が不十分のまま、作業を行って、事故に至っています。
今後、高度成長期に作られたビルなどを解体し、建て直す事業も増えてくるでしょう。
そうなると、このような倒壊事故も増えてくるかもしれません。

防止対策をきちんと行えば、100%ではありませんが、防げる可能性が高くなります。

解体用機械については、法改正により、資格要件や安全装置等の規格要件が厳密になりました。
作業方法についても、今後何かしらのガイドラインができたりするかもしれません。

しかしガイドラインができてから対策するのではなく、事故が起こりやすい解体現場なのですから、十分な対策をとり、事故や怪我のない仕事をしてもらえたらと思います。

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