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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

パーツクリーナーでの火災事故

      2015/06/12

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普段何気なくやっていることでも、実は危険なことというものがあります。

本当は危険だと分かっているけど、便利だからついついやってしまう。
今まで何度も繰り返してきたが、今まで大きな事故になったことがないので、油断し、続けていると、ある日事故になるというものです。

今回は、そんな事故事例を見てみたいと思います。

オイルやグリスを取り扱う仕事では、オイルなどを分解する薬品を使用します。

パーツクリーナーは、金属部品等に付着した、オイルを分解し、取り除くためのものです。
多くの場合は、スプレータイプですが、よくホームセンター等にも売っていますね。

事故が起こったのは、自動車整備工場です。
自動車の部品、特に車体の下のギヤやシャフトなどの駆動部は、オイルやグリスがついています。
当然のことながら、整備するときには、手や作業服にオイルなどが付着しますね。

手についたオイルは、油汚れをよく落とすハンドソープなどがありますが、服についたものは洗濯するしかありませんね。

この事故は、そんな時に起きた事故でした。

作業服に油汚れ落とすクリーナー、引火しやけど
(平成26年12月21日)

19日午後5時半頃、山梨市歌田の自動車整備工場で、自動車整備士の男性従業員が作業服の油汚れを落とそうとして、作業服を着たままスプレー式のパーツクリーナーを油汚れに吹き付けていたところ引火し、男性従業員は胸から腹にかけ全治1か月のやけどを負った。

日下部署の発表によると、スプレーには可燃性の高い液体が使われていた。同署は、パーツクリーナーなどを使用する際には十分注意するよう県民に呼びかけている。

読売新聞 (元の記事が削除されたようです。)

この事故の型は「火災」で、起因物は「有機溶剤」です。

パーツクリーナーは、金属部品等に吹きかける用ですが、自分自身に吹きかけてしまったところ引火してしまったものでした。

服についたオイルを落としたいという気持ちは分からなくもないですけども、そんな発想があったのかと驚きます。

パーツクリーナーは、有機溶剤ですが、可燃性が高い液体です。
これが霧状になって辺りに漂うのですから、しばらくは引火しやすい状態になります。

引火は、ちょっとしたことで起こってしまいます。

タバコ等はもちろんですが、静電気でも十分火種になります。

被災者が自分にスプレーを振りかけていた時、近くに火気があったのでしょう。

このような服のオイル落としは、おそらく今回が初めてというわけでないでしょう。
被災者も20代前半で若いことから、誰か先輩がやっていたのを真似たのではないでしょうか。

そうなると、日常的に行われていたことなのでしょう。
使い慣れているものの応用という感じかもしれません。
もっと言うと、ちょっとした裏技だったのかもしれません。

今まで幸いなことに、引火しなかったものの、今回は火災になってしまったのでした。

背景には、不安全行動の常態化、会社としても黙認してていたというのも関係してそうですね。

これらを踏まえて、原因を推測してみます。

1.パーツクリーナーを衣服に吹きかけたこと。
2.火気の近くで、可燃性の高い溶剤を使用したこと。
3.安全意識が低く、不安全行動が常態化していたこと。


本来、推奨されていない方法で、パーツクリーナーを使用したことが直接的な原因です。
しかし、その背景には、危険意識の低さ、そのような行動を許す会社の雰囲気もあったのではないでしょうか。

みんなやってる、今まで事故がなかったというのは、安全の担保になりません。

ひどい場合は、セルフのガソリンスタンドで、たばこを吸いながら給油するという人もいると耳にしたことがあります。
普通に考えたら、正気の沙汰ではありませんよね。

火気厳禁の場所や溶剤を、ぞんざいに扱うことは、この例とかけ離れたものではないのです。

先輩の後輩への影響は、仕事内容だけでなく、時として、危険作業も含まれるのだと、頭に置いてなければなりません。
裏技的なことや、知恵は仕事を続けていくとあるでしょうが、それが危険なものであれば、意味が無いのです。


この事故の対策を検討してみます。

1.有機溶剤は、推奨されない用途に使用しない。
2.可燃性の高い溶剤を扱う場合は、火気のないところで使用する。
3.安全意識が低く、不安全行動が常態化していたこと。


1人の作業者による、不安全行動が招いた災害ですが、背景は組織としての安全意識もあります。

不安全な行動を行っている時に、しっかり指導する体制が大切です。

ハインリッヒの法則というものがあり、1つの重大事故の背景には、29件の軽微な事故、300件のヒヤリハットがあるといいます。

この事故に至る前にも、危うい事故がいくつもあったのではと推察されます。
そのような小さな事故があった時は、事業者が気づかなければなりません。
ぼんやり見過ごしていると、大事故になりかねないのです。

普段やっている作業や行動は、危険ではないか?

この事故は、自分たちの普段の行動を見直すけいきになるのではないでしょうか?

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