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神戸三宮で起こった足場の倒壊事故

      2016/02/11

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都会では、日々新しいビルが建てられ、改修し、解体されていきます。

街中を歩いていたら、背の高い囲いに覆われた敷地内で、クレーン車などが作業し、ビルが建っていく姿を、どこかしらで目にするのではないでしょうか?

またビルの外壁をシートで覆い、上から順に壊していくというのも珍しい光景ではありません。
私達の日常の中で、ビル建築や解体の工事が行われているのです。

背の高い建築物の工事を行うときには、壁に沿って足場が組まれます。
この足場は、作業者が高い所で仕事をするために欠かせないものです。

足場の外側、つまり道路側はシートなどで覆われているので、中の様子を伺うことは難しいですが、中では色々な作業が行われているのです。

この足場は建物に接して建てられています。
敷地がない場合は、道路上に建っているケースがあります。

そのため歩行者や車の頭の上、すぐ側で仕事をしているのです。

道路上、歩行者などがすぐ近くにいる場合、最も注意すべきことは、頭上から物が落下してくることです。

落下物を防ぐために、シートで覆ったりしています。

先日、鉄パイプが落下して、歩行者に怪我を負わせるという事故事例を紹介しました。
怪我をされた方は、足の指を骨折した疑いがあり、病院に搬送されました。

鉄パイプでも、上から落ちてくるとなると、怖いものです。
しかし、時としてもっと恐るべきものが落ちてきたりすることがあります。

それは足場自体が倒れてくること。

鉄パイプや工具が落ちてくるどころの騒ぎではありません。
真横にいたら、間違いなく避ける事ができないほど、広い範囲に影響しますし、何よりもダメージが大きくなります。

今回は、神戸の中心地、三宮で起こった足場倒壊事故を取り上げ、事故原因の推測と、対策を検討してみたいと思います。

解体中のビルの足場倒壊、通行中の男女2人けが 神戸・三宮 道路ふさぎ騒然
(平成26年4月3日)

3日午前11時10分ごろ、神戸市中央区布引町にある解体工事中のビルで覆っている足場が十数メートルの高さから崩れて落ちた。自転車で通行していた女性と歩いていた男性が下敷きになり、けがをした。いずれも打撲で意識はあるという。兵庫県警は業務上過失傷害容疑で、工事をしていた神戸市北区の業者から事情を聴く方針。

県警によると、重機で3階部分を解体している際、このビルと隣接するビルを覆っていた足場が倒壊。鉄骨やビルの外壁が片側3車線の道路を完全にふさぐように散乱した。救急隊員や医師らが駆け付け騒然となった。

工事をしていた業者は1月に解体の届け出をしていた。工事期間1月27日~3月31日の予定だったが、遅れていたという。

近くの店舗の40代の女性従業員は「発生直前には普段の工事と全然違う、ごう音がした」と話す。現場はJR三ノ宮駅の北側百数十メートルの「フラワーロード」沿いでオフィスビルなどが立ち並ぶ一角。事故当時の神戸市内の風速は約2メートルで、特に強い風ではなかった。

産経新聞

続いて、後追い記事です。

「重機操作ミス」と作業員供述 神戸・三宮の足場倒壊事故(平成26年4月5日)

神戸・三宮のビル解体工事現場で高さ約16メートルの足場が倒れ、通行人の男女2人が重軽傷を負った事故で、重機を操作していた男性作業員が兵庫県警の調べに「自分が操作ミスをしてしまった」と供述していることが5日、捜査関係者への取材で分かった。

県警は、重機を使って鉄骨を切り離した際に操作を誤り、足場ごと道路側に倒したことが倒壊の原因とみて、業務上過失傷害容疑で調べている。

県警は同日、作業をしていた神戸市北区と垂水区の2業者の安全管理に不備がなかったかを捜査するため現場検証した。

県警によると、検証は約20人態勢。解体作業をしていた作業員を立ち会わせて当時の作業状況を確認し、捜査員が写真を撮るなどしていた。

産経新聞

この事故の型は「崩壊・倒壊」で、起因物は「解体用機械」です。
加害物は「仮設設備(足場)」になります。

この事故は、ビルの解体作業中に、足場が倒れてしまった事故でした。
起こった場所は神戸の中心地で、非常に人通りが多い場所です。

高さ16メートルの足場は、歩道はおろか三車線も塞ぐほどの範囲に及びみました。
すぐ側を歩いていた歩行者2人が怪我を負ってしまいました。
本当に死者が出なかったのが不思議なくらいに大きな事故だったといえます。

事故の原因として、捜査によると、鉄骨切断を行っていた機械の捜査を誤ったということのようです。
どのように捜査を誤ったのでしょうか?

鉄骨を切っていたということは、コンクリート壁は取り壊され、鉄骨だけのむき出し状態だったでしょう。
鉄骨は柱と梁に使わています。
作業は鉄骨を1本ずつ切っていた時に起こったのでしょう。

足場は建物に接して建てられています。
おそらく、解体用機械を足場側に旋回してしまい、切断した鉄骨もしくは機械のアーム部が接触し、押し出してしまったのではないでしょうか。

足場は原則として、接する建物に固定しています。
この固定は高さ2メートルおきにされているのですが、機械の押し出す力は、相当なものであったようです。
急旋回でもして、勢いよくぶつかったのでしょうか。

おそらく、このような操作ミスがあったものと推測されます。

ちょっとした操作ミスが、大きな事故を招いてしまいました。

工期も遅れていたようなので、焦りもあり、安全対策や作業方法の検討も十分ではなかったことも背景にあるのではと推測されます。

さて、これらを踏まえて原因を推測してみます。

1.解体用機械の捜査を誤ったこと。機械が足場に接触し、押し倒した。
2.機械の配置が、足場付近であり、旋回すると接触する位置にあったこと。
3.工期の遅れで、作業計画の検討が十分でなかったこと。
4.作業間の連絡調整がしっかり行われていなかったこと。
5.機械の接触を監視したり、誘導するものが不在だったこと。


この作業現場では、複数の業者が作業を行っていました。
それぞれ、別の作業を行っていたと思われますが、業者間ではどの場所で、どんな作業を行うのかを、常に調整し、把握していなければなりません。
仕事をしている側で、大きな機械が走っていれば、危ないですもんね。

仕事の調整には、機械の配置位置なども含まれます。
旋回してアームがぶつかるのでしたら、非常に足場に近い場所で仕事していたのではと思われます。
機械が人や設備に接触するおそれがある場合は、監視者や誘導者を配置します。
この人に作業を監視させ、指示させるのが大切です。

それでは、対策を検討してみます。

1.機械の旋回方向など、危険のない安全方法を徹底する。
2.工期は余裕を持って行う。延期する場合は、発注者と協議し、無理を強いる工程は避ける。
3.安全な作業計画、機械の配置を徹底する。
4.複数の事業者が作業する場合は、作業間の連絡調整を行う。
5.人や物に接触するおそれがある場合は、監視人、誘導者を配置する。


安全な作業法や機械配置を徹底するのはもちろんですが、適宜監視人や誘導者を配置することも重要です。
特に人通りが多く、ちょっとしたミスでも大事故になりうる場所では、このような対策は重要です。

しかし現実的に、監視のためだけ、誘導のためだけ人を配置するのは、困難でしょう。
もし配置するとなると、作業しつつ、誰かが一時的に誘導者の役割をするというのではないでしょうか。

工期も人も余裕が無い中での、工事になっているのですから、安全対策は後回しだったのかもしれません。
どうしても、工事に直接影響がない部分は、割愛されがちです。

安全は保険と同じです。
何も起こらなかったという結果が、何よりの成果になります。しかしそれでは達成感は得られないのも事実なのです。
しかし、事が起こった時、その重要さを痛感します。

都会の人通りが多い場所では、第三者を巻き込む事故リスクが高くなります。
安全対策は、自分たちの身を守るだけでなく、周りの多くの人たちの身を守ることも含まれるのです。

安全に仕事をすることは、多くの人の生命と身体を守ることなのですから、非常に重要なのだと肝に銘じなければなりませんね。

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