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解体中の倉庫の壁が崩れ、下敷きになる事故

      2015/06/12

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作業に集中している時、もし上から降ってきたとしても、それを避けることは困難かもしれません。

避ける行動を行うためには、察知してから、行動に至るまで、ややタイムラグが生じます。

上から物が降ってくるという状況は、よくあることではないので、これを車を運転している時に、道路脇から子どもが飛び出したということに置き換えてみましょう。

飛び出しがあった場合、運転手はどのような対応をするでしょう。

まず、飛び出しを認知します。
次に、回避しなければと判断します。
そして、回避行動を取ります。

認知から行動までの間は、わずか1秒未満かもしれません。

例えほんのコンマ何秒であっても、車は動き続けます。

何か危険を察知、認知しても、とっさの行動までは、やや時間差があるのです。
時としてこの時間差によって、事故は起こります。

長々と運転時の状況を書きましたが、何が言いたいかというと、危ないと思った時、避けられないこともあるのだということです。

これは、建設業など他の作業時でも同じです。

先日、東京の江戸川区で、倉庫の解体工事中に、壁が崩れて1人亡くなるという事故がありました。

おそらく、壁がグラっと傾いてから、避ける間もなく下敷きになったと推測されます。

今回は、この事故について原因の推測と対策を検討してみたいと思います。

解体中倉庫の壁崩落、1人死亡 江戸川区
(平成27年1月24日)

解体中の倉庫の壁が崩れ、65歳の作業員が下敷きになって死亡した。
警視庁によると、事故があったのは東京・江戸川区にある4階建ての倉庫で、24日午前10時半過ぎ、建物を解体中に高さ約7メートル、横約15メートルのコンクリートの壁が倒れた。

倒れた壁の重さは約5トンあったとみられ、作業にあたっていた作業員が下敷きになって死亡した。

警視庁は、業務上過失致死の疑いもあるとして、事故原因を調べている。

日テレ24(元の記事が削除されたようです。)

この事故の型は「崩壊・倒壊」で、起因物は「構造物(倉庫の壁)」です。

倒れてきた壁は、高さ7メートル、横幅15メートル、重さが5トンということですから、相当大きな物であったと思われます。

これほど重く、大きなものの下敷きになると、人の体ではどうしようもなかったと思われます。

高さも横幅も相当なものですから、グラっと来た瞬間に走ったとしても、激突範囲から逃れるのは困難だったのではと想像されます。

また被災者は、65歳とやや高齢でありました。
年齢を重ねると、どうしても認知・判断・行動まで時間がかかってしまいます。
そのため回避行動も遅れたと言えなくもないですが、もっと若い人でも難しかったかもしれませんね。

この事故現場は、4階建ての倉庫の3階または4階で起こりました。

作業は、小型のブレーカー、つまりショベルカーのアームの先がくい打ち機のアタッチメントが付いている機械を使用し、壁などを取り壊していました。

取り壊す倉庫の外周には、コンクリート片などが飛び散らないように多いが掛けられています。
内部は作業のため、そのような多いはありません。

壁などを倒すのは、作業場がある内側です。
決して外側に倒すことはありません。外側は道路などですし、歩行者や車の上に落とすわけには行かないからです。

壁を倒す方向は全員は把握していたはずです。
ただ、いつ倒すか、もしくは倒れるのかは周知されていませんでした。

この事故の直接的な原因は、倉庫の壁が意図しないタイミングで倒れたことです。

もし今から倒すということが周知されていれば、近くに作業者はいなかったはずです。

解体工事なのですから、壁も床も天井もあちこちにヒビやき裂が入り、崩れ落ちる可能性は想定されていたでしょう。

問題は、不用意な倒壊を防ぐ対策がとられていたかにありそうです。

このような5メートルの高さを超えるコンクリート構造物の解体では、作業主任者を選任して、指揮に当たらせる必要がありますが、そういったところも捜査で判明してくと思われます。

それでは、これらを踏まえて原因を推測してみます。

1.解体中の壁の倒壊対策をとっていなかったこと。
2.倒壊するおそれのある場所で、作業させていたこと。
3.作業指揮者が、直接作業指揮を取っていなかったこと。
4.KYなどで、作業者に危険箇所などの周知を行っていなかったこと。


このような作業場では、作業指揮者が作業の状況を把握し、直接指揮をとることが大切です。

壁が倒れる可能性があるならば、つっぱり棒で控えをとるなど、倒壊対策をおこなっている必要があったでしょう。

そして、危険箇所に作業者を立ち入らせては危険です。

これらのことが重なって、事故に至ったのではないでしょうか。

原因を踏まえて、対策を検討してみます。

1.解体作業中、倒壊するおそれのある壁などは控えなどを備える。
2.倒壊する危険箇所は、立入禁止とする。
3.倒壊するおそれのあるものは、先に倒して、危険を排除する。
4.作業指揮者が、作業者の指揮をとる。
5.作業者に事前にKYなどで危険作業や危険場所を周知する。


危険箇所には立ち入らないが一番いいのですが、いつもそうも言ってられませんね。
その場合には、十分に対策することが大事です。
この場合であれば、つっぱり棒で支える、先に倒しておくなどがあります。

ビルや倉庫などの解体作業は、上から物が落ちてくる、壁や天井が崩れるなど、建築するよりも危険要素が多いといえます。

新しく建物を建てるためには、古いものを壊さなければなりません。
高度経済成長期に建てられた建物も、今後より耐震性が高い建物に建て替えが進んでいくでしょう。

解体作業は今後も需要が増えてくるはずです。

需要が増え、工事が増えるのに比例するのが、事故の数です。

このような事故も増えてくるかもしれませんが、倒壊防止対策はしっかりやる必要がありますね。

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