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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

事業場の安全体制4 「産業医」

      2015/05/30

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衛生管理者は、事業場の衛生管理についての技術的事項の管理を行う人です。
健康的で、衛生的な職場環境を作るのが仕事です。

「産業医」
しかし、労働者の健康管理について、専門的に把握できるわけではありません。
有機溶剤を使う、粉塵が満ちている、騒音や振動を浴びる環境での仕事。
健康にどんな影響があるのか不安ですよね。

健康管理に最も適した人は、どういう人か?

それは言うまでもなく、お医者さんですね。
お医者さんに協力してもらうのが、あれこれ検討するより確実です。

それに労働者が健康に不安がある仕事をしているといって、自発的に病院に行くともなりにくいと思います。病院に行ったら、すでに病気が進行していた、ということも珍しくありません。

健康被害の可能性がある業務に従事させているのは事業者なので、事業者が労働者の健康管理に責任があります。
一定以上の規模の事業場では、労働者の健康管理について、医師に協力、指導してもらうことが義務付けられています。これを「産業医」の選任といいます。

産業医については、安衛法第13条に規定されています。
【安衛法】

(産業医等)
第13条
事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で
定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、
その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項
(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。

2  産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に
関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者で
なければならない。

3  産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると
認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について
必要な勧告をすることができる。

4  事業者は、前項の勧告を受けたときは、これを尊重
しなければならない。
第13条の2
事業者は、前条第1項の事業場以外の事業場については、
労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を
有する医師その他厚生労働省令で定める者に労働者の
健康管理等の全部又は一部を行わせるように努めなければならない。



産業医は、労働者の健康管理を行います。
そして措置が必要な場合は、事業者に対しても指導を行います。
産業医の指導には、事業者は従わなければなりません。

産業医に健康管理を行わせるのは、全ての事業場ではありません。
衛生管理者等と同様に、労働者の人数規模によります。
人数については、安衛令第5条に規定されています。

【安衛令】

(産業医を選任すべき事業場)
第5条
法第13条第1項の政令で定める規模の事業場は、常時50人以上の
労働者を使用する事業場とする。

産業医は業種関係なく、労働者の人数が常時50人以上の事業所で選任しなくてはいけません。

さて、その他の要件や業務内容については、安衛則に規定されています。

【安衛則】

第4節 産業医等

(産業医の選任)
第13条
法第13条第1項 の規定による産業医の選任は、次に定めるところに
より行なわなければならない。

 1)産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任すること。

 2)常時1,000人以上の労働者を使用する事業場又は次に掲げる業務に
 常時500人以上の労働者を従事させる事業場にあっては、
 その事業場に専属の者を選任すること。

  イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく
    暑熱な場所における業務
 
  ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく
    寒冷な場所における業務

  ハ ラジウム放射線、エックス線その他の
    有害放射線にさらされる業務

  ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく
    飛散する場所における業務

  ホ 異常気圧下における業務

  ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に
    著しい振動を与える業務

  ト 重量物の取扱い等重激な業務

  チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所に
    おける業務

  リ 坑内における業務

  ヌ 深夜業を含む業務

  ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、
    硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸
    その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務

  ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、
    塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、
    二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン
    その他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は
    粉じんを発散する場所における業務

  ワ 病原体によって汚染のおそれが著しい業務

  カ その他厚生労働大臣が定める業務

 3)常時3,000人をこえる労働者を使用する事業場にあっては、
   2人以上の産業医を選任すること。

2  第2条第2項の規定は、産業医について準用する。
   ただし、学校保健安全法第23条の規定により任命し、
   又は委嘱された学校医で、当該学校において産業医の
   職務を行うこととされたものについては、この限りでない。

3  第8条の規定は、産業医について準用する。
   この場合において、同条中「前条第1項」とあるのは、
  「第13条第1項」と読み替えるものとする。
(産業医及び産業歯科医の職務等)
第14条
法第13条第1項の厚生労働省令で定める事項は、次の事項で
医学に関する専門的知識を必要とするものとする。

  1)健康診断及び面接指導等(法第66条の8第1項 に規定する
   面接指導(以下「面接指導」という。)及び
   法第66条の9に規定する必要な措置をいう。)の実施
   並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための
   措置に関すること。

  2)作業環境の維持管理に関すること。

  3)作業の管理に関すること。

  4)前3号に掲げるもののほか、労働者の健康管理に関すること。

  5)健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を
   図るための措置に関すること。

  6)衛生教育に関すること。

  7)労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための
   措置に関すること。

2  法第13条第2項の厚生労働省令で定める要件を備えた者は、次のとおりとする。

  1)法第13条第1項 に規定する労働者の健康管理等(以下「労働者の
   健康管理等」という。)を行うのに必要な医学に関する知識に
   ついての研修であって厚生労働大臣の指定する者(法人に限る。)が
   行うものを修了した者

  2)産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を
   設置している産業医科大学その他の大学であって厚生労働大臣が
   指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であって、
   その大学が行う実習を履修したもの

  3)労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の
   区分が保健衛生であるもの

  4)学校教育法 による大学において労働衛生に関する科目を
   担当する教授、准教授又は講師(常時勤務する者に限る。)の
   職にあり、又はあった者

  5)前各号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者

3  産業医は、第1項各号に掲げる事項について、
  総括安全衛生管理者に対して勧告し、又は衛生管理者に対して
  指導し、若しくは助言することができる。

4  事業者は、産業医が法第13条第3項の規定による勧告をしたこと
  又は前項の規定による勧告、指導若しくは助言をしたことを
  理由として、産業医に対し、解任その他不利益な取扱いを
  しないようにしなければならない。

5  事業者は、令第22条第3項 の業務に常時50人以上の労働者を
  従事させる事業場については、第1項各号に掲げる事項のうち
  当該労働者の歯又はその支持組織に関する事項について、
  適時、歯科医師の意見を聴くようにしなければならない。

6  前項の事業場の労働者に対して法第66条第3項の健康診断を
  行なった歯科医師は、当該事業場の事業者又は
  総括安全衛生管理者に対し、当該労働者の健康障害
 (歯又はその支持組織に関するものに限る。)を防止するため
  必要な事項を勧告することができる。
(産業医の定期巡視及び権限の付与)
第15条
産業医は、少なくとも毎月1回作業場等を巡視し、作業方法又は
衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の
健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

2  事業者は、産業医に対し、前条第1項に規定する事項を
  なし得る権限を与えなければならない。
(産業医を選任すべき事業場以外の事業場の労働者の健康管理等)
第15条の2
法第13条の2の厚生労働省令で定める者は、労働者の健康管理等を
行うのに必要な知識を有する保健師とする。

2  事業者は、法第13条第1項 の事業場以外の事業場について、
  法第13条の2に規定する者に労働者の健康管理等の全部
  又は一部を行わせるに当たっては、労働者の健康管理等を
  行う同条 に規定する医師の選任、国が法第19条の3に規定する
  援助として行う労働者の健康管理等に係る業務についての相談
  その他の必要な援助の事業の利用等に努めるものとする。


第13条ですが、産業医も衛生管理者等と同様に、選任する事由が発生してから、つまり労働者数が50人以上になってから、14日以内に選任しなくてはいけません。また選任後は、遅滞なく、所轄労働基準監督署に報告しなくてはいけません
事業場の規模や一定の業種によっては、事業場専任の産業医を置かなけばなりません。

常時1,000人を超える労働者を使用する事業場 次に掲げる業務に常時500人以上の労働者を
従事させる事業場

  イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び
    著しく暑熱な場所における業務
 
  ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び
    著しく寒冷な場所における業務

  ハ ラジウム放射線、エックス線その他の
     有害放射線にさらされる業務

  ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を
    著しく飛散する場所における業務

  ホ 異常気圧下における業務

  ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によって、
    身体に著しい振動を与える業務

  ト 重量物の取扱い等重激な業務

  チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する
   場所における業務

  リ 坑内における業務

  ヌ 深夜業を含む業務

  ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、
    塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、
    石炭酸、その他これらに準ずる有害物を
    取り扱う業務

  ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、
    塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、
    二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン
    その他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は
    粉じんを発散する場所における業務

  ワ 病原体によって汚染のおそれが著しい業務

  カ その他厚生労働大臣が定める業務


衛生管理者の専任条件と似ていますが、1,000以上の労働者、または常時500人以上が有害な業務に就いている場合となります。

さて、産業医の人数ですが、3,000人を超えたら、2人以上の選任しなくてはいけません。この場合1人は専任なので、さらにもう1人置かなければならないということですね。

第14条は業務内容についてです。
健康診断等で労働者の診察、相談を受ける、病気の予防など、労働者の健康に関すること一切合切、また作業環境や作業方法など労働者の健康を害することがないように、環境改善や作業改善の指導や助言を行うなどです。
とにかく労働者の健康管理のためのありとあらゆることです。

産業医に就任する要件は、医師や歯科医でなくとも満たすことはありますが、やはり専門の医師等に管理してもらうのが、事業者にとっても、労働者にとってもメリットはあります。

事業者にとっては、医者と契約するわけですから、莫大なコストがかかる点がデメリットがあると思います。
しかし産業医を必要とする規模ならば、必要なコストであると割りきらないといけません。
選任しなかったら、罰則規定もあるので、注意が必要です。


第15条は、産業医の権限等ですね。産業医は少なくとも月1回事業場を見て回り、作業方法に問題ないかを医師の立場で確認します。問題がある場合は、直ちに処置するように指導します。事業者は、この指導には従わなければなりません。

さて産業医を必要とするのは、労働者数が常時50人以上の事業場です。
それよりも人数の少ない事業場では、医師の診断は不要でしょうか?
そんなことはありませんね。


第16条は、50人未満の事業場も医師による健康管理は必要だと言っています。ただし産業医を選任するのではなく、外部の団体を利用するなどできますということです。
人数は少なくとも有害な作業を行うことはあると思いますので、健康診断はもとより、定期的に病院で診察を受けさせるなどの対策が必要です。

産業医は、労働者の健康保持のスペシャリストです。
必要に応じて、医者に診断してもらえるだけでも、労働者にとっては安心なものだと思います。

健康は全ての資本になります。
健康は損なって初めてありがたみを感じますが、そうなった時には手遅れの場合もすくなくありません。

近年アスベストによる中皮腫で裁判がありますが、有害な作業には多大なリスクがあるのです。

労働で健康を損なうのは、事業者にとっても、本人とその家族にとっても望ましいことではないのですから、損なわないように十分な対策が必要ですね。

衛生管理者、産業医は、労働者の健康を守る要なのです。

さて、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医は多数の労働者が働く事業所で、必要とされています。ほとんどが大企業での話になると思います。

しかし、世の中には中小企業の方が多いのです。
こういった事業所では、安全衛生管理は不要でしょうか?

もちろん、そんなことはありません。
また別の体制が備えなければななりません。

小規模事業所の体制については、また別の機会でまとめます。


まとめ。
【安衛法】

第13条
事業者は、規模ごとに産業医を選任しなければいけません。


【安衛令】

第5条
産業医は50人以上の事業場で選任します。


【安衛則】

第13条
衛生管理者は、選任事由が発生してから、14日以内に選任すること。
1,000以上、または500人以上の事業場では、1人は専任する必要あり。
3,000以上の事業場では、2人選任すること。
第14条
産業医の業務内容について。
第15条
産業医に月1回作業場を巡回して、改善指導などを行う。
事業者は、衛生管理者に必要な権限を与えなければならない。
第15条の2
産業医を選任する規模に満たない事業場も、外部の団体等を利用し、
医師による健康診断等を行うこと。
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