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ケーブル交換中に鉄塔から転落、作業員が死亡する事故 神戸・六甲山

      2016/02/22

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事故の中で、最も死亡者が多いものは、墜落・転落です。

高所から落ち、地面に激突する。
どんなに装備をしていても、この衝撃に人体は耐えられません。

墜落の衝撃は、高い場所であればあるほど、大きくなります。
しかしほんの1.5メートル程度の高さからの墜落・転落でも、頭を打てば、亡くなる可能性もあるのです。

墜落を撲滅すれば、労災事故の2割から3割は減らせるはず。
そう考え、厚生労働省や労働基準監督署などは、対策を打ち出しています。
これらは一定の効果を挙げ、徐々にですが、事故を減らしてきています。

しかし依然として、高い割合を占めているのです。

高いところからの落下事故として、先日、ロープウェーの鉄塔から墜落するという事故が起こってしまいました。

高さは20メートル。墜落した作業者は、残念ながら亡くなられてしまったそうです。

今回は、この事故を取り上げ、原因の推測と対策の検討を行いたいと思います。

鉄塔から転落、作業員死亡 神戸・六甲山、ケーブル交換中
(平成27年2月18日)

18日午前9時ごろ、神戸市北区の六甲山にある「六甲有馬ロープウェー」の鉄塔で、通信用ケーブルの交換作業をしていた60歳ぐらいの男性作業員が転落し、搬送先の病院で死亡が確認された。一緒に作業をしていた50歳ぐらいの男性は転落しなかったが、右手の指を切断する重傷を負った。

 有馬署によると、鉄塔の高さは約20メートル。現場には8人がおり、死傷した2人が鉄塔の上で作業をしていたという。

 同署が身元の確認を進めるとともに、原因を調べている。現場は六甲有馬ロープウェーの有馬温泉―六甲山頂間で、六甲山頂の北約1キロ。

47ニュース(共同通信)

この事故の型は「墜落・転落」で、起因物は「構造物(鉄塔)」です。

神戸の六甲山にはロープウェーが走っています。
神戸の市街地から山頂へ、そして市街地から山を挟んだ反対側にある有馬温泉までつながっています。

六甲山は神戸の直ぐ側にあるため、一年を通してハイキングをする人や、山頂付近にあるレジャー施設で楽しむ人など、多くの人が訪れます。

そんな場所で起こった事故です。

ロープウェーの鉄塔は、一定間隔ごとに建てられ、その間をワイヤーが張られています。

鉄塔は山裾から山頂までつなぐ道なので、ゴンドラを通すだけでなく、その他のケーブルを通すためにも利用されます。
今回工事を行っていたのは、通信ケーブルの交換作業でした。

鉄塔の上の作業のため、作業者は鉄塔に登ります。
山中のため、高所作業車を使ったり、足場を組み作業床を設けることは困難な状況でしょう。

平地での高所作業での対策は、困難な作業と言えます。

そして、忘れてはいけないのが、風の影響。

山中の高所なのですから、風が強く吹いています。

作業中は、この風に体をとられないようにすることが大切です。

細い鉄骨だけが足場の作業場で、唯一できることは、いかに鉄塔から落ちないようにするかという対策です。
そのために重要なものは、安全帯の着用です。

安全帯は、命綱です。高所作業では必需品と言えます。
今回墜落まで至ったのは、安全帯が使われていなかったかなどの詳細は不明ですが、少なくとも墜落時に機能しなかったものと推測されます。

もう1人の被災者は、墜落はしなかったものの、指を切断する事故に至りました。
何で切ったかなど、詳しくわからないので、不明ですが、落下時の衝撃で負傷されたのかもしれません。

今回の原因を推測してみます。

1.鉄塔の上から、墜落したこと。
2.安全帯が使われていなかったこと。
3.風にあおられた、または足元が濡れていて、滑りやすかったこと。
4.安全体制、安全教育が十分ではなかったこと。


事故は午前9時に起こったとのことなので、夜露が残り、鉄骨が濡れていたのかもしれません。
仮にそうだとしたら、とても足元は滑りやすい状態だったでしょう。

風が強く、滑りやすい足元、さらには高所という条件なのですから、十分注意が必要です。
安全帯が機能していないのであったなら、非常に対策としては不十分だったのではないでしょうか。

作業前に、作業時の指揮などの安全体制、高所作業での危険ポイントを周知する教育などもしっかり行われていたかなども、今後の調査対象になるでしょう。

対策を検討してみます。

1.安全帯を着用し、確実に固定する。
2.風に煽られないように体を鉄塔に固定する。
3.足元の濡れを拭く、滑りにくい靴を履く。
4.作業前には安全体制を整え、全員に安全教育を行う。


作業を行う前に、どのような危険があるのか、どのような対策で事故防止を行うのかを、全員が理解するのは非常に重要です。

ただ安全帯の必要性を説いても、実際に使われなければ全く意味がありません。
もし着けていないのを見たら、すぐに使用させなければなりません。


確かに安全帯などを着けていては、作業中に制限を受けます。
ヒモがじゃまになりますからね。
しかし、邪魔だからといって、なくしていいものではないのです。

繰り返し、繰り返し伝え、使わせる。
これで習慣化していくしか、術はありません。


今回の事故では、安全帯の使用が大きなポイントになると思われます。

もし使われていたにも関わらず、墜落したのであれば、切れてしまったということも考えらます。

安全帯には使用期限があります。
5年も10年も使えるものではありません。
使っているのに、機能しないのであれば、全く意味がありません。

定期的に交換しましょう。

高所作業時の、命綱です。
この費用は、命を守るものなのですから、ケチってはいけないものではないでしょうか。

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