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雪印メグミルク工場から硝酸漏れ出す 北海道・別海町

      2015/05/30

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化学薬品を使用する工場では、その管理が何よりも重要です。

一般の生活の中では、決して見ることもないような物質でも、工場などで製造段階で使うことはよくあることです。

特に劇薬、劇物。

ミステリーなどでお馴染みの青酸カリ(シアン化カリ)等のシアン化化合物も、金属の原材料から金や銀を抽出するのに使われます。また金属の表面をコーティングするメッキにも使われます。

また実際の事件にも使われたことがある、ヒ素も半導体製造には欠かせません。

ほんの少量でも、体に入ると、死んでしまいます。

便利だけど、相当慎重に扱う必要があるのが、劇物です。

もし漏れ出そうものなら、とんでもない被害になってしまうのです。

北海道にある雪印の工場で、硝酸の流出事故が起こりました。

死者が怪我人は出なかったようですが、一時は周辺住民のが避難するほど大きな影響がありました。

今回は、この事故をとりあげ、原因の推測と、対策の検討を行います。

雪印メグミルク工場から硝酸漏れ出す 北海道・別海町
(平成27年3月27日)

27日午後3時50分ごろ、北海道別海(べつかい)町別海鶴舞町の雪印メグミルク別海工場敷地内にある倉庫から、機械の洗浄に使う硝酸が漏れ出しているのを従業員が見つけ、消防に通報した。

 北海道警中標津署によるとタンクに入った液体の硝酸の一部がこぼれて、ガスになって流出した。硝酸は別の容器に移し替え、けが人はいないという。工場には当時95人がおり、うち30人が機械の洗浄作業をしていた。

 別海消防署によると、付近の住民に健康被害が出る恐れがあるとして、警察と消防が、半径約500メートル圏内の約80世帯に、屋外へ出ないよう注意を呼びかけた。道警によると、工場近くを通る国道243号が一時、約2・5キロにわたって通行止めになった。別海町役場には避難所が設置され、工場付近の住民49人が一時的に避難した。

 同工場ではバターなどの乳製品を製造している。工場によると製品への影響はないという。硝酸は毒劇物法で「劇物」に指定されている。

朝日新聞

後追い記事も、あわせて紹介します。

タンク下部ボルトに緩み 硝酸流出の雪印メグミルク工場

海道別海(べつかい)町の雪印メグミルク別海工場敷地内にある倉庫から、機械洗浄用の硝酸が漏れた事故で、北海道警は28日、タンク下部のボルトの一部が緩んでいたと発表した。これが流出の原因とみられるという。

中標津署によると、ボルトはタンク(容量3トン)内の硝酸を排出するバルブを固定するためのもので、4本中、3本が緩んでいた。緩んだ時期や硝酸の流出量はわかっていないという。

朝日新聞

この事故の型は「有害物との接触」で、起因物は「有害物」です。

とはいえ、死者や怪我人が出たわけではないので、「有害物の接触」は適切ではないかもしれません。

硝酸は、強力な酸なので肌に触れると、大やけどを起こし、ただれさせます。

余談ですが調べてみると、昔蛮社の獄という事件で逮捕された高野長英は、獄舎が火事になった際に脱走しました。その後追ってから逃れるために、顔を硝酸で焼き、人相を変えたとか。

ほんの少量肌につくだけでも、強烈な傷みに襲われます。

また空気中に漏れだすと、塩素ガスを発生させ、呼吸を困難にします。

つまり劇薬なのです。

雪印のメグミルク工場で起こった事故ですが、当然のことながら、ミルクに硝酸を混ぜていたとかは、一切ありません。
硝酸は、機械の洗浄に使われていたのでした。

食品を扱う機械ですので、常に清潔さが求められます。
定期的に、汚れ1つも残さないほど、徹底的に洗うための薬品なのです。

事故の原因は、後追い記事によると、バルブを固定していたボルトが4本中3本も緩んでいたことです。
ボルトが緩み、管とバルブの間に隙間ができたのでしょう。ほんの少しが漏れだすと、後は次から次へと漏れだしたものだと思われます。

通常、ボルトをガチっと締め付けると、そう簡単には緩みません。

おそらく、当初バルブを設置した時から締め付けが甘かったのではないかと思われます。

配管の接続は、溶接とフランジ接続というものがあります。
フランジとは、管の両端の丸い羽根の部分です。この羽根にはボルト用の穴が開いています。
このフランジ同士をくっつけ、間にはパッキンをはさみ、ボルトを締め付けます。

ボルトの締め付けは、緩くても、締め付け過ぎてもいけません。適切な値があるのです。
この適切な値で、締め付けておくと、通常使っている間、自然に緩むことは、まずありません。

それらを考えると、締め付けが十分でなかったのが、原因ではと推測されます。

それでは、原因を推測します。

1.硝酸が通る配管とバルブの接続部が緩み、漏れだしたこと。
2.バルブをつなぐボルトが緩んでいたこと。
3.ボルトが適切な値で、締め付けられていなかったこと。
4.ボルト締め付けの点検を行っていなかったこと。


問題になるボルトの緩みが、当初からの場合、いつか起こり得る事故だったのかもしれません。

配管工事の際には、ボルトの締め付けについてチェックを行います。
その際、チェックしたボルトには、マジックでラインを書くというのが一般的です。

事故の調査では、締め付けが適切な値で行われていたかも調べるでしょう。

しっかり締められているボルトが緩むということは、そう多くはありせん。
しかし100%ないとも言えません。

そのため鉄道などの公共交通機関などでは、ボルトの緩みも定期点検でチェックしているようです。

チェックの方法は、ハンマーで叩く打音検査などが行われます。

それなりに締まっている状態のボルトは手で回してみただけでは、緩んでいるかは分かりません。
ところが、ハンマーで叩くと、音で緩んでいるかが分かるのです。

全てのボルトに対して行うので、とても手間ですが、数年に一度でもやっておくと、このような事故は防げそうです。

それでは、対策を検討します。

1.ボルトは適切な値で締め付ける。
2.打音検査などで、緩みを点検する。
3.漏れだした場合に備えて、検出装置、除去装置などを設置する。
4.避難通路、避難方法などを決め、訓練する。


再発防止のためには、ボルトの締め付けを適正に行うことです。
また、可能であれば、点検時に緩みも確認することです。

そして、もし漏えいする事故が合った場合に備えた体制も重要です。

漏れだした薬品の回収方法や設備を備えること、また避難すること。

これらの体制を整えておくことは重要です。

今回の事故では、いち早く発見できたのか、周辺住民の避難も含め、対応できていました。
そのため、怪我人を出さずに済みました。

事故を起こしたことはともかく、その後の対応としては適切だったと思います。

事故はいつ起こるか、どういったものが起こるのかは予測がつきません。
ありとあらゆる可能性を考え、対策しても、起こる時は、起こってしまいます。

一番大切なことは、事故を防止すること。
これに勝るものはありません。

次に大切なことは、事故が起こった時にどうするかです。
怪我人を出さない、適切に避難させることです。

そのためには、常日頃の準備が大切です。

警報設備を備える、避難経路を決める、避難訓練を行う。

これらのことは、普段気に留めていないものですが、いざという時大切です。

とはいえ、劇薬を取り扱うのは、危険が伴います。
管理体制には、厳密に行わなければならないことを、痛感させる事故ではないでしょうか。

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