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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

猫井川、漂う粉にゴフンする

      2015/05/30

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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

本日の猫井川は、何やら重そうな道具を持って現場来ました。

機械の先端は尖った金属の杭になっており、持ち手が本体のおしりの部分と、横に伸びています。

これはコンクリートブレーカーと呼ばれる電動工具です。

固いコンクリートを、先端の杭を振動させることによって、壊していくものです。

猫井川の本日の仕事は、コンクリートの取り壊し、いわゆるハツリという作業です。

掘削工事の時に、地中から昔あった何かの基礎の一部が取り残されたのでしょうか、コンクリートの構造物が出てきました。
ショベルカーで取り除くにしては、大きすぎるため、少し壊してから取り除くことになったのでした。

猫井川は、これから地中で、取り壊し作業にあたるのでした。

「おーい、猫井川、細かく取り壊さくてもいいからな。
 ある程度の塊だったら、ショベルカーのバケットに入るから。」

犬尾沢は、ブレーカーを抱えて、地中に降りてゆく猫井川に声をかけました。

「分かりました。大体の大きさになるようにしていきます。」

ハツリ作業にあたって猫井川の準備は万全です。
マスクもしましたし、ゴーグルも着けています。更には犬尾沢に借りた防振手袋も着けています。

「重装備だと、ちょっと暑い。
 マスクの締め付けているところが痒いな。
 ちょっと紐をゆるめておくか。」

作業の前に、少し汗ばみを感じながら、ブレーカーの先端をコンクリートに当て、スイッチをオンしました。

ガガガガガガガ

大きな音が鳴り響き、杭がコンクリートの表面を削ります。
激しい振動が猫井川の体を包みます。

しばらく杭を押し当て続けると、コンクリートの表面にき裂が走り、先端が突き刺さっていきました。
ある程度、杭が押し込まれると、振動を止め、杭を引抜き、新たな場所に杭を突き立てるのでした。

コンクリートの上に一列に並ぶように穴を開けていくと、それが大きな割れ目となり、コンクリートの端がゴロンと落ちました。

1つ目の固まりが落ちると、今度は新たな割れ目作りに取り掛かりました。

屋外とはいえ、頭まですっぽり入るくらいの地中での作業でしたので、どうしても空気はこもりがちでした。

気が付くと猫井川の周りは、何やら真っ白に霞んでいたのでした。
この霞の正体は、コンクリートをはつった時に出た、細かい粒子で、いわゆる粉じんというものでした。

何の備えもなくこの環境にいたら、息苦しく、目にもよくありませんが、今日の猫井川は準備ができているので、大丈夫です。

気にせず、はつり作業を続けていたところ、少し違和感を感じまいた。

何だか息苦しいのです。

「おかしいな。マスクしてるのにな。」

確かに周りは相変わらず白く霞んでいますが、マスクは万全のはず。
なぜだか分かりません。

ゴホッゴホッと、いよいよ咳き込んでしまいました。

「どこかに穴でも空いてるのかな?」

ちょっと不安になった猫井川は、いったん穴の外から出ることにしました。

「どうしたんだ?」

穴から出てきた猫井川に、犬尾沢が尋ねました。

「いや、なんだか息苦しくて。
 マスクに穴でも空いてるのかなと思って、確かめようと。」

そう言いながら、するっとマスクを外しました。

「あれ、お前の口元真っ白だな。」

何かに気付いた犬尾沢が、聞きました。

「そうですか?」

そう言って、口元を拭うと、確かに白い粉が付いています。

「それに紐がずいぶん緩くないか?」

 あ、そういえば、マスクの締め付けで痒くなったから少し紐を緩めたんでした。」

そうです。地中に降りた時に、マスクと肌の接触面が痒くなったので、緩めたままにしていのでした。
どうやら、息苦しさの原因は、緩んだ隙間から入ってきた粉じんのようでした。

「そりゃ、隙間から粉じんが入ってくるな。
 よし、しっかり締めて行って来い!」

なんとも間の抜けた事をしてしまった猫井川は、顔を赤らめてしまいました。

今度はマスクをしっかり締め、赤い顔のまま、白い粉が漂う地中に降りていくのでした。

今回は粉じん作業でのヒヤリハットです。

粉じんとは、細かい粒子が飛び交う環境で仕事をしていると、呼吸とともに肺に送られ様々な障害になりかねないものです。

とても怖いものとしては、石綿(アスベスト)があります。
石綿は、眼に見えないほど小さな繊維状になって空中に舞い、吸い込まれてしまいます。
なぜ石綿が怖いかというと、将来的に肺がんなどを発症させてしまうからです。

石綿訴訟については、ニュースなどで目にすることもありますが、何十年経っても障害を残してしまう物質です。
今では製造も使用も禁止されていますが、昔使っていた建物などは、まだたくさん残されているので、取り除く時に吸い込まないようにと、厳重に管理されています。

石綿以外にも、コンクリートを取り壊すときには、削りカスのようなものが、辺りに漂ってしまいます。
細かくなってもコンクリートですから、吸い込むは遠慮したものです。

そのため、コンクリートの取り壊しの時には、防じんマスクというものを着けて、作業を行います。

防じんマスクは、風邪や花粉症のマスクよりも、がっしりとした強い造りになっています。
紐も耳にかけるのではなく、後頭部で結び、マスクと肌の密着度を高めます。

このマスク、どうしても着けると息苦しくなります。
それに肌に密着しますので、接触面が痒くなるのも避けられません。

しかし肌が痒いからといって、紐を緩めると、今回の猫井川のようになってしまいます。
つまり隙間から、粉じんが入り込んでしまって、マスクの効果が激減してしまいます。

ピッタリ隙間のない状態でこそ、効果を発揮します。

マスクと肌の間に、タオルやガーゼ、メリヤスなどの布を1枚はさみたいところですが、ほんのわずかな隙間すら、粉じんは入り込んでしまうので、避けなければなりません。

粉じん作業は、いかに粉じんを体内に入れないかが重要です。

そのため防具としては、ぴったりして不便があるのですが、粉じんを吸い込むことで起こる疾病を防ぐためですので、我慢も必要です。

それでは、ヒヤリハットをまとめます。

ヒヤリハット コンクリートのはつりで、マスクの隙間から粉じんが入り込み、咳き込んだ。
対策 1.粉じんマスクは、ピッタリと肌に密着させる。
2.マスクの紐を緩めない。


横着をして、粉じん対策としてマスクやゴーグルの着用しないという作業者もいます。

私の会社でも、ベテラン作業者が「昔は着けてなかった」などと言い、なかなか着けません。何度も指導しているのですが、しばらくは指摘されたら着けるという状態でした。

そんなにマスクの着用を嫌がっていたのが、普段から自発的に着けるということがあったのです。
しかも粉じん作業をやっていない時に。

なぜかと聞いてみたら、花粉症対策だそうで。

粉じんに対しては頑なだったのに、花粉症には白旗ですか。

とはいえ、粉じんマスクは、花粉症には意味が無いような気がするのですけども。

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