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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

現場の安全管理体制2 「店社安全衛生管理者」

      2015/05/30

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今回は、特定元方事業者の安全管理体制について、統括安全衛生責任者や元方安全管理者よりも、やや規模の小さいの場合についてです。

今回は「店社安全衛生管理者」という用語が出てきます。

詳細については、徐々に説明していきますが、簡単にいうと、統括安全衛生責任者等を選任する作業よりも、労働者の従事人数が少ない現場で、安全管理を行う人のことです。


特に危険が伴う仕事を請け負う事業者は、特定元方事業者といいます。

家庭に置き換えると、家を買う等の大きな買い物をするときには、慎重に慎重を重ねて、購入に至るというように、安全に対して十分な慎重さが必要になるという感じです。

特定元方事業者は、そんな危険が伴う作業が伴います。
そのため、特定元方事業者は統括安全衛生責任者と元方安全管理者を選任して、作業現場の安全と衛生管理にあたらせる必要があります。

この統括安全衛生責任者と元方安全管理者の選任は、どの作業でもというわけではありません。
仕事の内容と労働者の数による制限があります。

表にすると、こんな感じです。

1 ずい道等の建設工事 常時30人
2 特定の場所での橋梁の建設の仕事
3 圧気工法による作業を行う仕事
4 その他の工事 常時50人

この表の「ずい道工事」などは、「特定工事」と言います。
に危険な作業とめた工事」のことです。
(この「特定作業」の略は、適当ですので、あしからず)

では、これよりも人数が少ない場合には危険がないのでしょうか?
例えば、25人で行う高圧力下での工事では、労働者への体の負担は軽減されたりするのでしょうか?

もちろん、そんなことはありません。
人数に関係なく、危険はあります。

確かに多くの人がいると、その分事故が起こる可能性が高くなります。
全労働者の母数が増えるわけですから、確立は高くなるわけですね。

人数がたとえ2、3人であったとしても、事故は起こります。

先ほど家を買う例えを出したので、似たような例をあげてみると、こんな感じでしょうか。
パソコンを買う時も、カタログを見たり、値段や性能を比較したりと、あれこれ考えますよね。
家の購入とは比較にならないかもしれませんが、慎重に検討します。
買って後悔なんてしたくないし。

分かるような、分からないようなたとえかもしれませんが、人数に関わりなく、危険は変わらず、十分に安全対策しなくてはいけないわけです。

しかし、人数が少ないと、現場の作業長が全員のことに注意が払うことができます。
全員で10人くらいで作業をしているならば、誰かが危ないことをしてる時には注意できますし、体調が悪そうならば、すぐに対応できますね。

言うなれば、パソコンであれば、自分の小遣いの範囲で収まるという感じでしょうか。

つまり、少人数であれば特定作業であっても、作業長が全体把握できるので、別途安全管理者が必要ではないということです。

逆に、30人、50人という大所帯になると、作業長だけでは目が届かないので、別途専門スタッフが必要になるというわけです。

では、少人数と大所帯の間の人数の場合はどうでしょう。

ちょうど、作業長も全体把握が困難になってくる、しかしながら統括安全衛生責任者、元方安全管理者を選任すると、コストや様々な面で過剰に思う。
そんなどっちつかずの範囲があります。

また、買い物で喩えるならば、車を買うという感じでしょうか。
家ほど高くなく、パソコンのように小遣いで買えるものではない。

当然、こんな時、家庭であれば相談して、どんな車にするのか、お金はどうするのかなど相談しますね。つまり1人の決裁ではないわけです。

周りくどくなりましたが、特定作業においても、この中間部をカバーする体制があります。
統括安全衛生責任者や元方安全管理者とは別に、安全衛生の管理者を選任し、労働者の安全衛生管理を行わせます。
この人のことを「店社安全衛生管理者」というのです。

店社といっても、スーパーなどの小売店などでは、必要ありません。
必要になるのは、建設業の現場のみです。
統括安全衛生責任者のように、造船業でも不要です。

事業者は、特定作業で、一定の人数以上の労働者常時働いている現場では、店社安全衛生管理者を選任して、安全衛生管理を行わせなければなりません。
労働者は、この店社安全衛生管理者の指導に従わなければなりません。

ちょうど、車を買うのに、家族の意見を聞くのと同様であると言えなくもありません。

店社安全衛生管理者については、安衛法第15条の3に規定されています。

【安衛法】

(店社安全衛生管理者)
第15条の3
建設業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び
関係請負人の労働者が一の場所(これらの労働者の数が
厚生労働省令で定める数未満である場所及び第15条第1項
又は第3項の規定により統括安全衛生責任者を
選任しなければならない場所を除く。)において作業を行うときは、
当該場所において行われる仕事に係る請負契約を締結してい
る事業場ごとに、これらの労働者の作業が同一の場所で
行われることによって生ずる労働災害を防止するため、
厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、
厚生労働省令で定めるところにより、店社安全衛生管理者を選任し、
その者に、当該事業場で締結している当該請負契約に係る仕事を
行う場所における第30条第1項各号の事項を担当する者に対する
指導その他厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

2 第30条第4項の場合において、同項のすべての労働者の数が
  厚生労働省令で定める数以上であるとき(第15条第1項
  又は第3項の規定により統括安全衛生責任者を
  選任しなければならないときを除く。)は、
  当該指名された事業者で建設業に属する事業の仕事を
  行うものは、当該場所において行われる仕事に係る
  請負契約を締結している事業場ごとに、これらの労働者に関し、
  これらの労働者の作業が同一の場所で行われることによって
  生ずる労働災害を防止するため、厚生労働省令で定める資格を
  有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、
  店社安全衛生管理者を選任し、その者に、当該事業場で
  締結している当該請負契約に係る仕事を行う場所における
  第30条第1項各号の事項を担当する者に対する指導
  その他厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。
  この場合においては、当該指名された事業者及び
  当該指名された事業者以外の事業者については、
  前項の規定は適用しない。

事業者は、店社安全衛生管理者を選ばなければならないと、規定されていますね。

ただし、「労働者が一の場所(これらの労働者の数が厚生労働省令で定める数未満である場所及び第15条第1項又は第3項の規定により統括安全衛生責任者を選任しなければならない場所を除く。)」とあります。
要するに、労働者が一定数未満、もしくは統括安全衛生責任者を選ばなければならい場合を除くとありますので、中規模の現場で必要ということです。

第2項は、店社安全衛生管理者は資格があるものから選びなさいということです。

この条文だけでは、どの程度の人数で必要なのか?どんな資格が必要なのか?
といったことは、触れられていません。

詳細は、安衛則で規定されています。

【安衛則】

(店社安全衛生管理者の選任に係る労働者数等)
第18条の6
法第15条の3第1項及び第2項の厚生労働省令で定める
労働者の数は、次の各号の仕事の区分に応じ、
当該各号に定める数とする。

  1)令第7条第2項第1号の仕事及び主要構造部が
   鉄骨造又は鉄骨鉄筋コンクリート造である建築物の
   建設の仕事 常時20人

  2)前号の仕事以外の仕事 常時50人

2 建設業に属する事業の仕事を行う事業者であって、
  法第15条第2項に規定するところにより、当該仕事を
  行う場所において、統括安全衛生責任者の職務を行う者を
  選任し、並びにその者に同条第1項又は第3項及び
  同条第4項の指揮及び統括管理をさせ、並びに法第15条の2第1項
  の資格を有する者のうちから元方安全衛生管理者の職務を
  行う者を選任し、及びその者に同項の事項を管理させているもの
  (法第15条の3第1項又は第2項の規定により
  店社安全衛生管理者を選任しなければならない事業者に限る。)は、
  当該場所において同条第1項又は第2項の規定により
  店社安全衛生管理者を選任し、その者に同条第1項又は第2項の
  事項を行わせているものとする。
(店社安全衛生管理者の資格)
第18条の7
法第15条の3第1項及び第2項の厚生労働省令で定める資格を
有する者は、次のとおりとする。

  1)学校教育法 による大学又は高等専門学校を卒業した者
   (大学評価・学位授与機構により学士の学位を授与された者
   又はこれと同等以上の学力を有すると認められる者を含む。
   別表第5第1号の表及び別表第5第1号の2の表において同じ。)で、
   その後3年以上建設工事の施工における安全衛生の実務に
   従事した経験を有するもの

  2)学校教育法 による高等学校又は中等教育学校を卒業した者
   (学校教育法施行規則第150条に規定する者又は
   これと同等以上の学力を有すると認められる者を含む。
   別表第5第1号の表及び第1号の2の表に
   おいて同じ。)で、その後5年以上建設工事の施工における
   安全衛生の実務に従事した経験を有するもの

  3)8年以上建設工事の施工における安全衛生の実務に
   従事した経験を有する者

  4)前3号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者
(店社安全衛生管理者の職務)
第18条の8
法第15条の3第1項及び第2項の厚生労働省令で定める事項は、
次のとおりとする。

  1)少なくとも毎月1回法第15条の3第1項又は第2項の労働者が
  作業を行う場所を巡視すること。

  2)法第15条の3第1項又は第2項の労働者の作業の
   種類その他作業の実施の状況を把握すること。

  3)法第30条第1項第1号の協議組織の会議に随時参加すること。

  4)法第30条第1項第5号の計画に関し同号の措置が
   講ぜられていることについて確認すること。

第18条の6で、選任する場合の要件をまとめていますね。
ここで、統括安全衛生責任者や店社安全衛生管理者の選任要件を表にまとめます。

仕事種類 労働者数(常時)
20人未満 20人以上
30人未満
30人以上
50人未満
50人以上
ずい道工事 不要 店社安全衛生管理者 統括安全衛生責任者
特定の場所での橋梁の建設の仕事
圧気工法による作業を行う仕事
鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物工事 店社安全衛生管理者 統括安全衛生責任者
その他の工事 不要 統括安全衛生責任者

ほとんど、統括安全衛生責任者を選任する作業で、人数は20人以上、30人未満となっています。

新しく出てきている業種は、「鉄骨造又は鉄骨鉄筋コンクリート造である建築物の建設の仕事」です。
これは、高所での作業になるため、墜落事故が起こりやすいからが理由であると分かります。

この建築工事も他の工事と同様に50人以上の労働者を常時使用する場合は、統括安全衛生責任者を必要とします。

この表で分かると思いますが、店社安全衛生管理者を選任する作業は、20人から30人、もしくは50人未満の特定工事なのです。

ちなみに造船業は、「その他の工事」に含まれるため、店社安全衛生管理者を選任する必要は無いというわけです。

さて、他の条文を確認しましょう。

第18条の7は店社安全衛生管理者の資格要件ですが、統括安全衛生責任者や元方安全管理者と似通っていますが、 ちょっと違います。

大学、専門学校卒で、実務期間が3年以上
高卒で、実務期間が5年以上
実務経験8年以上


大学や高校は、理系でなくとも選任できます。現場の実務経験だけが、選任要件ということですね。

第18条の8は、店社安全衛生管理者の職務についてまとめています。

あちこち他の条文を引用しているので、この条文だけでは分かりづらいですが、まとめます。

1)少なくとも月1回は現場の巡視を行うこと。
2)労働者の作業の種類、その他の作業の実施状況を把握すること。
3)協議組織の会議に随時参加すること。
4)仕事の工程計画及び機械、設備等の配置計画が適正かを確認する。


統括安全衛生責任者の職務と似通っていますが、やや緩和されています。
統括安全衛生責任者、元方安全管理者は毎日巡回しなくてはいけませんが、店社安全衛生管理者は月1回の巡視が義務付けられているという感じですね。

その他の条文は、統括安全衛生責任者等と重複しているため、書きませんが、店社安全衛生管理者も選任したら所轄労働基準監督署長に報告し、病気や休暇などで不在になる場合は、代理人を選ばなければいけません。

店社安全衛生管理者は、統括安全衛生責任者と同様に現場での安全衛生管理の要となる人です。 この人が安全に目を見張らせているからこそ、安全に慎重な現場となり、衛生に気をかけているからこそ、健康に配慮できるのです。 このように見ていくと、人数規模等によりますが、体制づくりも考えられているのだなとわかりますね。

安全は自分を守るものですけども、目の届かない範囲は人の目が助けになります。
統括安全衛生責任者、元方安全管理者、店社安全衛生管理者は、危険な特定作業での、全ての労働者を見渡す目が大切なのですね。


まとめ。

【安衛法】

第15条の3
事業者は、労働者が一定数未満、もしくは統括安全衛生責任者を
選ばなければならい場合は、店社安全衛生管理者を選任しなければならない。

【安衛則】

第18条の6
店社安全衛生管理者を選任するのは、次の通り。
20人以上、30人未満のずい道工事、特定の場所の橋梁工事、圧気工法工事。
20人以上、50人未満の鉄骨、鉄骨鉄筋コンクリートの建築物の建設工事。
第18条の7
事業者は、店社安全衛生管理者を資格要件を満たしたものから選任すること。
第18条の8 店社安全衛生管理者は、職務を果たさなければならない。

 

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