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北海道きのこのホクト工場で火災。4名死亡

      2016/05/05

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どんな建物でも、設備でも、長年使っていると老朽化してきます。
老朽化すると、あちこち壊れたり、不具合がでたりしてくるものです。

建物であれば、汚れてきますし、ヒビが入る所もでてきます。
機械であれば故障します。
水やガスなどを通す配管も腐食したりもします。

どうしても老朽化し、劣化するものは、こまめに手を入れてやり、必要に応じて修理してやることが必要になります。

メンテナンスや修理を自社で行うこともあるでしょうが、専門的な対処になると、外部業者に依頼することも多いはず。

しかし、勝手知ったる業者ならともかく、外部から修理に訪れる業者なのですから、現場での注意点などまで、把握しているかというと、難しいのではないでしょうか。

現場の特性をよく理解しなまま仕事をすると、時として事故につながることがあります。

外部の業者としては、いつもやっている通りの作業でいいと思って現場に来てみたところ、実は現場の養生や準備が必要だった、ということは少なからずあるのではないでしょうか。

作業の着手までに、打合せや下見などは、段取りよく仕事を行うためだけでなく、事故の防止のためにも必要なのです。

北海道苫小牧市にあるホクトの工場で、火災事故が起こりました。

この火災は、設備の修理中に起こった事故です。

外部業者による作業中の事故ですが、どのような打合せが行われ、作業が行われていたのか、今後の捜査で明らかになるでしょう。

この事故の原因を推測し、対策を検討してみます。

バーナーの炎が壁に引火か 北海道・苫小牧市のキノコ工場火災
(平成27年4月27日)

北海道苫小牧市のキノコ生産・販売大手「ホクト」(本社・長野市)の工場で男性4人が死亡した火災は、4人が天井部の配管をガスバーナーで切断していたところ、バーナーの炎がウレタン製の壁に引火して燃え広がった疑いがあることが27日、北海道警への取材で分かった。

26日午前11時半ごろ発生した火災は15時間半余りたった27日午前3時5分ごろ鎮火。道警と消防が工場を実況見分し、作業手順や出火原因を調べた。

 道警は1階の焼け跡で見つかった4人が、工事をしていて連絡が取れなくなっている、札幌市東区の冷蔵・冷凍設備工事会社の40~60代の社員らとみて、身元の確認を進めるとともに、司法解剖して死因も特定する方針。

産經新聞

この事故の後追い記事で、死因や身元についての記事があったので、掲載します。
なお、被害者の身元についての箇所については、中略として除いております。

4人はシアン中毒死 北海道・苫小牧工場火災 身元が判明(平成27年5月1日)

苫小牧市のキノコ生産販売大手ホクト(長野市)のきのこセンター第1工場で4月26日に発生した火災で、苫小牧署は30日、死亡した男性4人の身元を、同工場の配管工事を請け負っていた札幌市東区の冷蔵設備会社の社員らと確認した。死因はいずれも、有毒ガスを吸い込んだことによるシアン中毒だった。

(中略)

同署などによると、4人は、作業を行っていた同工場1階冷却室の断熱材として使われていた発泡ウレタンが燃えたことにより発生した、有毒性のシアン化ガスを吸い込み、死亡したとみられる。

北海道新聞

この事故の型は「火災」で、起因物は「可燃性のガス」です。
もしくは被災者の死因にとなったものとして考えると、事故の型は「有害物との接触」で、起因物は「有害物等」です。


後追い記事によると、直接的な死因はシアン化ガスです。
しかし、ガスが発生した原因は、ガスバーナーの火が、ウレタンに燃え移ったからです。

この事故は、工場の天井付近にある配管をガスバーナーで切断する時に起こった事故です。
この配管は廃止になった、もしくはやり替えるために撤去していたものと思われます。

配管は、直線と曲がり、または分岐で構成されます。
これに内容物の流れを堰き止めたり、流量を調整したりする弁(バルブ)などが加わります。

配管は数メートルの直管と曲管などを接続するのですが、接続の仕方には、フランジをボルト・ナットで締め付けて接続するものと、溶接で接続するものがあります。

フランジ接続は、パーツごとに分かれているので、取り替える時に該当箇所だけ外せばよいというメリットがあります。ただフランジ間のパッキンが劣化すると、漏れが起こりやすいというデメリットもあります。

溶接接続は、つなぎ目なしになるので、漏れは起こりにくいのですが、修理するときには、焼き切らなければならないので、手間がかかります。

どちらもメリットとデメリットがあり、内部に何を流すかによって配管の接続は決められます。

おそらくですが、今回の配管工事は、焼き切っているので、溶接接続されている箇所だったのではないでしょうか。

配管を高温のガスバーナーで焼き切るのは、通常の手順ですが、場所によってはやり方を検討する必要があります。

今回火災が起こった場所は、天井付近です。
北海道という冬の寒さが厳しい場所にある、きのこの製造工場ですの天井や壁には保温用にウレタンがつけられています。

このウレタンは断熱材であって、不燃材ではありません。
寒さ暑さは遮断してくれますが、火気には弱いのです。

すぐ近くまで高温の火が来たため、引火してし、燃え広がってしまったようです。

またウレタンは、燃える時に、化学反応を起こし、シアン化ガスを発生させます。
現在では、シアン化ガス発生には規制があり、ガス発生を抑制する製品もありますが、規制前の製品であれば、ガスは発生してしまいます。

シアンは猛毒です。
ほんの少量で、死に至ります。

4人の作業員は、ウレタンに引火し、ガスが発生してから、逃げる間もなく、意識を失い、そのまま亡くなってしまったのではないでしょうか。

燃えやすい素材の近くで、十分に養生を行わず、火気を使用したことが、事故の原因だと言えるのではないでしょうか。

事故の原因を推測します。

1.可燃物の付近で、ガスバーナーを使用したこと。
2.可燃物に引火しないように、養生を行っていなかったこと。
3.作業場周辺の状況について、確認をしていなかったこと。


火気作業を行うときの、準備と養生がされていなかったことが、火災の原因といえるでしょう。

養生が十分でなかったのは、ある程度の離隔があるから燃えないだろうと思ったのか、事前に現場を確認しておらず、把握していなかったのか。

いずれにせよ、無防備なまま作業を進めたことが事故になってしまいました。

消火器なども準備していたかも不明ですが、ガスが発生した時点で、意識を失ってしまったと思われるので、延焼を防ぐこともできなかったでしょう。

溶接作業など慣れていても、ほんの少しの油断が大きな事故になってしまうのです。

対策を検討します。

1.火気を使用する場合は、周囲に引火しないような養生を行う。
2.作業前には、作業場を確認し、必要な準備を行う。
3.発注者は、業者に作業場の説明を行い、お互いに作業方法を把握しておく。


事前の準備の中には、発注者と請負業者の打合せも大事です。

発注者、この場合は工場になりますが、作業場の確認、特性、注意しなければならないことなどを説明します。

作業を行う請負業者は、作業方法を検討し、発注者に了解を得ます。

この打ち合わせ時に、火気使用時の養生方法などの確認を行います。

請負業者は、あらかじめ決めた方法で作業を進めなければなりません。
養生方法は決まっていたのに、省いたなどは、起こさないようにしましょう。

シアン化ガスが発生したことも考えると、防毒マスクを準備があれば、理想です。
しかし、どんな有毒ガスが発生するかということが、よくわかっていないと意味がありません。
ウレタンが燃えると、シアンが発生するなど、なかなか知っておけというのは無理があります。

それよりは、引火しないように養生することが、現実的ではないでしょうか。

火気の使用は、火災の危険が隣り合わせです。

日常的に溶接やバーナーの使用をしていると、危険意識は薄れるかもしれませんが、しかし今回4人の方が亡くなってしまったように、危険性は常にあるということを覚えておく必要がありそうですね。

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