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労基署解体現場で重機横転、作業員死亡 東京都墨田区

      2015/06/12



解体工事の時は、建てる時よりも危険がいっぱいの現場であると言えます。

コンクリート壁が崩れ落ち、内部の鉄筋がむき出しとなる、足元には瓦礫が積み重なる。
足場の悪さ、舞い上がる粉じん、狭い空間で人と機械が近くで作業をするなどの危険要素がたくさんあるのです。

解体現場には事故の種が、通常よりも多いといえるでしょう。

先日、東京墨田区の解体工事現場で、死亡事故が起こりました。

解体していたのが、労働基準監督署の庁舎であり、今は別の場所に移ったとはいえ、日頃から労働安全を監督する場所で事故が起こったのは、皮肉なことと言えます。

この事故は、解体工事現場での重機の取り扱いの難しさを示しています。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討してみます。

労基署解体現場で重機横転、作業員死亡 東京都墨田区
(平成27年5月13日)

東京・墨田区の労働基準監督署の庁舎の解体工事現場で重機が転落し、操縦していた作業員の男性が死亡しました。

13日午後、墨田区東向島の労働基準監督署の庁舎の解体工事現場で、鉄筋を運んでいた重機がバランスを崩して横転し、およそ1メートル下に落下しました。救急隊が駆けつけたところ、操縦していた58歳とみられる作業員の男性が操縦席に閉じこめられていて、病院に運ばれましたが、その後、死亡しました。

「ドスンという音だった。消防車とかが来て、見たら重機が前に倒れていた」(近所の人)

重機は、鉄筋を挟んだアームを振った際にバランスを崩し、横転したとみられています。警視庁は、業務上過失致死の疑いも視野に、工事の責任者などから事情を聴いて事故の原因を調べています。

TBSニュース (元記事が削除されてしまったようです。)

この事故の型は「転倒」で、起因物は「構造物」です。

ニュース映像を見ていみると、転倒したのはショベルカーのようです。

ジブの先端は、バケットではなく、鉄筋を切ったり掴んだりするアタッチメントが装着されているようです。
サイズは小型に分類されます。

事故現場は、2階以上の床は崩され、1階の床の上にこんもりとした小山ができているようでした。

ショベルカーは、この山から転げ落ちたのでした。

足元が悪い場所でも、キャタピラー(クローラー)だと、意に介せず動くことができます。
しかし足元が不安定なのは、変わりありません。

少しのバランスが、命取りになることもあるのです。

事故は鉄筋を持ち上げ、旋回している時に起こりました。

重いものを持ち上げると、どうしても重心は上に上がります。

人間で例えると、手に重い荷物を持ち、肘を伸ばしたまま、肩の位置まで持ち上げ、ぐるぐる回転する状態といえます。
この時、その場で回転できるでしょうか?
おそらく、足元はフラフラと前後してしまうのではないでしょうか。

重機は重く強い力を持っていますが、同じような状態になるのです。

斜面で、鉄筋の重さに引っ張り降ろされたならば、それを支える術はありません。
ただ重さに引きづられ、崩れ落ちるだけです。

このような解体現場で使用されるショベルカーは、がれきを防ぐために操作室もしくは屋根が設けられています。

落石の衝撃には耐えられます。
しかし機体そのもの重さには耐えることはできず、押しつぶされてしまうのです。

不安定な足元で、バランスを崩してしまう。
この事故は、解体現場ではいつ起こっても仕方ないような事故だったと言えます。

この事故の原因を推測します。

1.がれきが山積する不安定な場所で、重量物の旋回作業を行ったこと。
2.作業方法、手順が定められていなかったこと。
3.作業主任者が指揮をしていなかったこと。
4.KYなど安全教育が行われていなかったこと。


5メートル以上コンクリート構造物の解体作業では、作業主任者を選任しなくてはいけません。

作業主任者は、作業方法等を決定するとともに、安全に作業が進められるよう直接指揮しなけれればなりません。
今回の事故現場でも、作業主任者は選任されていたと思われますが、安全に作業を進めるよう指揮、監督が不十分でした。

作業の進め方として、バランスの悪い場所で、バランスを崩しやすい作業が進められていたのですから、これを改善する必要があった思われます。

とはいえ、多くの場合このような事故が起こりません。
少々足場が悪い場所であっても、大きな問題もなく、作業を終えることがほとんどでしょう。
だからこそ、危機感が欠けていくのですが。

今まで大丈夫であっても、今回も同様に事故がないということは、ありません。
残念ながら、同じような作業を行っていても、ほんの少し条件が変わるだけで、事故に至るのです。

作業の進め方は、現場監督、作業主任者、そして作業者に責任があります。

少しの不安が、大きな災害になります。
また建設解体現場の状況は、刻一刻と変わっていきます。
難しいですが、常に状況を見張る必要があるのです。

対策を検討します。

1.作業場の特性を考えた作業計画、手順を作る。
2.足元が悪い場所での作業方法を決めておく。
3.作業主任者が、作業方法を監視し、指導する。
4.安全教育やKYで、危険についてあらかじめ周知する。


事前にどんな危険があるかを検討した上で、作業計画を立て、全員がそのことを把握しておく必要があります。
また、作業主任者は作業場を監督し、不安全な作業が行われていたら、即時指導しなければなりません。

何かが起こってからでは、遅いのです。

解体現場で、生身の作業者が現場にいることは困難かもしれませんが、全体が見渡せる場所で、指示するといった工夫が必要になります。

さて、平成27年7月より、車両系建設機械の規制が変わります。

今まで、車両系建設機械の技能講習等を受講していれば、土工から解体用まで使うことができました。
しかし今後は、解体用建設機械は独立して扱われることになります。

技能講習などの資格もですが、機械としての構造や規格も変わります。

解体用の機械というものには、具体的に鉄骨切断機、コンクリート圧搾機、解体用つかみ機などが含まれます。

解体作業を行っておられる事業者は承知されているでしょうが、ご注意ください。

この法改正も、解体現場での事故の多さからくるものです。
思わぬ事故があふれている現場ですから、入念な計画と現場管理が必要なのです。

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