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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

重さ150キロ超の鉄製の箱落下、下敷きの男性作業員死亡(大阪府茨木市)

   

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技術革新や機械の力は、人の力を拡張してきました。

昔であれば、大きな材料、例えば1トン以上もある石材などは、大人数で長時間かけて運んでいきました。
場所によっては、100メートル移動させるだけでも、1日掛かるということもあったでしょう。

しかしショベルカーやクレーンなどの機械は、この重量物を運搬する作業を容易にしました。
人の力の拡張を、重機が担っていると言っても過言ではありません。

重機だけではありません。近年は、建設や介護など肉体を酷使する分野においても、開発は進んでおり、重さ100キロの重量を持ち上げるパワードスーツなんてののも登場してきているようです。

パワードスーツの効用については、今後市場に投入されて、明らかになってくるでしょう。
一方で、以前からある重機は、今となっては、重機を使わずに作業することは考えられないでしょう。
しかし、良いことだけではありません。
重機による事故があるのも、また事実。

強い力で作業しますが、運転操作に力は不要です。
負荷はほとんどかかりません。

そのために、重機の手先に少々の違和感があったとて、気づくことができず、事故を振りまくこともあるのです。

大阪の茨木市で起こった事故は、まさに重機の力による事故とも言えます。

今回は、この事故の原因を推察し、対策を検討します。

重さ150キロ超の鉄製の箱落下、下敷きの男性作業員死亡 大阪・茨木の金属加工会社(平成27年4月26日)

26日午前8時25分ごろ、大阪府茨木市の金属加工会社の資材置き場で、金属の仕分け作業をしていた作業員が、上から落ちてきた鉄製の箱(縦約140センチ、横約70センチ、高さ約90センチ)の下敷きになった。病院に搬送されたが、胸や腰を強く打っており、まもなく死亡した。

茨木署によると、当時別の作業員が重機を使って鉄製の箱の中に入った金属片を押しつぶす作業をしていて、誤って箱を持ち上げたことに気づかないまま重機を移動させたところ、近くにいた作業員の上に箱が落下し、下敷きになったという。箱は150~200キロ程度あったとみられる。

同署は業務上過失致死の疑いもあるとみて調べている。

TBSニュース

この事故の型は「飛来・落下」で、起因物は「重機」です。

重機で、金属をペシャンコにつぶして、加工に回す工程途中で起こりました。

事故の時に使用していた重機は、おそらくショベルカーのようなもので、アーム先端のアタッチメントが金属を押しつぶすものになっていたと思われます。

人力では、どんなに頑張って叩いても、なかなか曲がらない、壊れない金属の塊でも、重機を使うと、レバーを操作すると簡単にぺしゃんこにしてくれます。

力を入れずに操作できる分、手の先に少々のものが引っかかっても、違和感はありません。
とはいえ、これが数トンものであると、さすがに持ち上げられないので、気づくでしょう。
しかし、簡単に持ち上がってしまう程度の負荷では、運転者に危機感を感じさせるには至りません。

手の先に金属片をくっつけたまま、移動し、それが近くの作業者の上で滑り落ちたのでした。
落下してきた金属片は、重さが150キロから200キロ。
重機にとっては気にならなくとも、人の上に落ちてくるには大事過ぎます。

命を奪うには十分な重さのものでした。

運転者は気づかなかったのか。

おそらく一連の流れ作業の中で起こったことなので、次の作業に目が移り、重機の手の先を確認していなかった。もしくは目には入っていたけど、気にならなかったということではないでしょうか。

しかし金属片を押しつぶす作業ですから、今回が初めて引っかかって持ち上げてしまったということではないでしょう。
事故には至らないが、いくども押しつぶした金属片を持ち上げるということはあったのではないでしょうか。

さらに作業配置も問題があったのではと思われます。
重機の作業半径内に、作業者入ると、それだけでリスクが増します。

金属片の落下に巻き込まれるだけでなく、重機に接触する危険もあったでしょう。

作業の配置や方法が、適切であったかが問われてくるでしょう。

それでは、原因を推測します。

1.重機が金属片を持ち上げたことに、運転者が気づかなかったこと。
2.重機の作業範囲で、別の作業者がいたこと。
3.作業者に危険意識がなかったこと。教育が十分でなかったこと。


1つ1つのプロセスをチャックしながら、作業を進めるのが理想です。
しかし、流れ作業であること、作業に慣れていると、毎度毎度のチェックは省かれるものです。
今まで大丈夫だったから、今回も、今後も大丈夫。
油断ですらない、当たり前の感覚になってしまうのです。

それは運転者だけでなく、周りの作業者にもあったのではないでしょうか。

懐いている猛獣に近づく感覚に似たものかもしれません。
しかし、いかに懐いていて、慣れていようが猛獣は猛獣であることを忘れてはいけません。

重機も慣れ親しんでいても、近づきすぎると、思わぬ反撃を受けることがあるのです。

対策を検討します。

1.重機の作業範囲に、作業者を立ち入らせない。
2.チェック項目を明確にし、作業手順に盛り込む。
3.安全教育やKYなどで、安全意識を高める。


重機に近づいて作業を行う必要がある場合は、作業範囲を明確に区分しなければなりません。
重機に接触するのはもちろんのこと、金属片などの落下や飛来にも注意しておく必要があります。

作業が慣れてくると、省略化されるプロセスも出てきます。
しかし確実にチェックしてポイントだけは、きっちりしなければなりません。

車で車道に出る前には、左右を確認することと同様に、確実にこのチェックだけは疎かにしないことを徹底させる必要があります。

長年続く流れ作業の中では、危機感も薄くなってしまいます。

運転免許講習のように、時々は気を引き締める安全教育も必要になるでしょう。

重機はとてつもない力を発揮してくれますが、扱っている物の重さなどを錯覚させてしまいます。
1トンもの重さであっても、軽々と持ち上がる姿を見ていると、その重さを忘れさせてしまいます。

しかしそれは錯覚に過ぎません。
じつはとんでもない危険もあわせ持っていることも頭においておく必要があります。

自分の力ではありません。
コントロールしきれるものでもありません。
大胆な重機の取り扱いは、繊細さをもって行う必要があるのです。

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