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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

元方事業者の責務

      2015/06/12

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仕事は、誰かが注文(発注)して、誰かが請け負うことで成り立ちます。
これは、個人間でも、会社間でも同じです。

ネット通販などをイメージすると、分かりやすいかもしれません。
ネットでほしい商品があると、そのお店に発注します。発注を請け負ったお店は、商品を注文者に発送し、お金を受け取るわけです。
お店であれば、仕入れたい商品を卸業者やメーカーに発注すると、請け負った卸業者メーカーが代金を受け取り、品物を納めるわけです。

全ての商売は、発注と請負の関係にあります。

さて、こと安全の分野であれば、仕事を発注する人のことを発注者といい、仕事を最初に請け負った人を元方事業者といいいます。
最初に請け負ったというのは、元方事業者が、別の会社に発注したりすることがあるからです。こうやって、発注者と請負者はつながることがあるのです。

元方事業者というものは、請け負った仕事の総元締めです。
そのため、仕事全体について責任を負わなければいけません。
安全衛生に関していうと、仕事に携わる全ての労働者の安全衛生に責任があるのです。

この責任については、業種や規模に関わりなく、全ての元方事業者が負います。

しかし、仕事は仕事でも、危険を伴うものもあれば、それほどではないものもありますね。

危険を伴う仕事の代表格は、建設業でしょう。
ビルや道路、ダムや河川などで工事を行うのですが、高所で作業する、大きな機械を使うなど、危険がいっぱいです。
工事現場の仕事と、事務職を比べてみると、どちらのほうが事故にあう確立が高いかは分かりますよね。

今回は、危険が想定される作業現場で、自社の労働者、関係請負人の労働者の安全のために行う措置についてまとめたいと思います。

さて、元方事業者講ずべき措置については、安衛法第29条第29条の2で規定されています。

【安衛法】

(元方事業者の講ずべき措置等)
第29条
元方事業者は、関係請負人及び関係請負人の労働者が、
当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に
違反しないよう必要な指導を行なわなければならない。

2  元方事業者は、関係請負人又は関係請負人の労働者が、
  当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に
  違反していると認めるときは、是正のため必要な指示を
  行なわなければならない。

3  前項の指示を受けた関係請負人又はその労働者は、
  当該指示に従わなければならない。
(元方事業者の講ずべき措置等)
第29条-2
建設業に属する事業の元方事業者は、土砂等が崩壊する
おそれのある場所、機械等が転倒するおそれのある場所
その他の厚生労働省令で定める場所において関係請負人の
労働者が当該事業の仕事の作業を行うときは、
当該関係請負人が講ずべき当該場所に係る危険を
防止するための措置が適正に講ぜられるように、
技術上の指導その他の必要な措置を講じなければならない。


第29条では、元方事業者や関係請負人の労働者が法律違反しないように指導する、また違法な指示をしてはいけないとあります。また仮に関係請負人が違法なことをやっていたら、やめさせなければいけません。
これは当たり前ですよね。

例えば、運送業で時々摘発されるケースとして、どう考えても150kmくらいで走り続けないと、配送が間に合わないといった指示をしてはいけないということです。

時々工事の閉切(工期)に間に合わないからといって、無理なスケジュールで仕事をさせてしまい、事故が起こるということがあります。
事故事例で、建設現場を囲うパネルが倒壊した事故を紹介しましたが、証言によると、工期が迫っていたので、元方事業者または上位の関係請負人が、パネルを支えていた杭を、倒壊する予防措置なく、全部抜くように指示したとのことです。これは違反になります。

第29条の2は、建設業の元方事業者は、危険な場所では、関係請負人に技術的指導など適正な対策を取りなさいということです。
ここでは、土砂崩壊のおそれのある場所、機械が転倒する場所などが例にあげられ、その他は「厚生労働省令」で定める場所とありますね。

建設業で、特定の場所で作業する場合には、適切な対処です。
特定の場所というものは、安衛則に規定されています。

【安衛則】

第4編 特別規制
第1章 特定元方事業者等に関する特別規制
(法第29条の2 の厚生労働省令で定める場所)
第634条の2
法第29条の2の厚生労働省令で定める場所は、
次のとおりとする。

  1 )土砂等が崩壊するおそれのある場所
  (関係請負人の労働者に危険が及ぶおそれのある
   場所に限る。)

  1の2)土石流が発生するおそれのある場所
  (河川内にある場所であって、関係請負人の
   労働者に危険が及ぶおそれのある場所に限る。)

  2)機械等が転倒するおそれのある場所
  (関係請負人の労働者が用いる車両系建設機械の
   うち令別表第7第3号に掲げるもの又は
   移動式クレーンが転倒するおそれのある場所に限る。)

  3 )架空電線の充電電路に近接する場所であって、
   当該充電電路に労働者の身体等が接触し、
   又は接近することにより感電の危険が生ずる
   おそれのあるもの(関係請負人の労働者により
   工作物の建設、解体、点検、修理、塗装等の作業
   若しくはこれらに附帯する作業又はくい打機、
   くい抜機、移動式クレーン等を使用する作業が
   行われる場所に限る。)

  4 )埋設物等又はれんが壁、コンクリートブロック塀、
   擁壁等の建設物が損壊する等のおそれのある場所
  (関係請負人の労働者により当該埋設物等又は建設物に
   近接する場所において明かり掘削の作業が行われる
   場所に限る。)


全部で5つの場所があげられていますので、整理してみます。

1)土砂等が崩壊するおそれのある場所
2)土石流が発生するおそれのある場所
3)車両系建設機械、移動式クレーンが転倒するおそれのある場所
4)充電電路に接近し、感電のおそれのある場所
5)埋設物、擁壁、レンガ壁等が崩壊するおそれのある場所


どれも、労働者にとっては危険がある場所だと想像できますね。
元方事業者は、関係請負人が、これらの場所で作業を行う場合には、技術的指導や安全設備を設けるなど、関係請負人と協力して危険防止対策を行わなければならないのです。

当然ですが、元方事業者だけが策を施しても、十分ではありません。
協力会社も積極的に協力することによって、事故が防げるのです。


学校などで例えると、文化祭などの行う場合、クラス担任だけが張り切っても何もできませんよね?
生徒全員が一丸となって実行することによって、いい催しや作品ができるみたいな感じです。
安全な現場も、全員が一丸となって作るものなのです。

それでは、5つの場所での具体的な防止策が、安衛則にまとめられているので、個々に見ていきます。



1)土砂等が崩壊するおそれのある場所での予防策

(地山の崩壊等による危険の防止)
第361条
事業者は、明り掘削の作業を行なう場合において、
地山の崩壊又は土石の落下により労働者に危険を
及ぼすおそれのあるときは、あらかじめ、
土止め支保工を設け、防護網を張り、労働者の立入りを
禁止する等当該危険を防止するための措置を
講じなければならない。
第2節 飛来崩壊災害による危険の防止

(地山の崩壊等による危険の防止)
第534条
事業者は、地山の崩壊又は土石の落下により労働者に
危険を及ぼすおそれのあるときは、当該危険を防止するため、 次の措置を講じなければならない。
  1)地山を安全なこう配とし、落下のおそれのある
   土石を取り除き、又は擁壁、土止め支保工等を
   設けること。

  2)地山の崩壊又は土石の落下の原因となる雨水
、    地下水等を排除すること。


土砂等の崩壊する場所として、2つの場所を想定しています。

1.地山を掘削している場所
2.土石等が落下する場所


地山の掘削とは、人力やショベルカーで地面を掘ることです。
オープンな場所で、地面を掘るので、一般にこのような掘削を「明かり掘り」といいます。
(頭の上は空なので、明るいからでしょうか。そういう意味だと私は理解しているのですけども。)

穴を深く掘り、その掘った穴の中で水道管やガス管などを設置したりします。
労働者は穴に入って作業するわけです。
作業している場所の両サイドは、土壁。崩れ落ちたら生き埋めになってしまいますね。

もう1箇所は、土石等が落下する場所です。
明かり掘りを行っていても、大きな石混じりの地面を掘り、その穴の中で作業したりします。
また切り立った山の斜面の近くであれば、斜面から岩が落ちてきたりする可能性もあります。
拳ほどの大きさの岩が頭にぶつかれば・・・ただではすみませんね。

土砂等の崩壊する場所というのは、こんな場所のことです。
土木工事では、掘削作業はほとんどの現場で行います。全てこんな危険と隣合わせなんですね。

しかし、安全対策を行うことで、危険をかなり解消できます。

どんな対策かというと、次の方法です。

(第361条での規定)
1.土止め支保工を設け、防護網を張る。
2.労働者の立入を禁止とする。



(第534条での規定)
3.掘削面を安全な勾配とする。
4.擁壁、土止め支保工を設ける。
5.落下のおそれのある土や石をあらかじめ取り除く。
6.雨水、地下水を排除する。


どれも、特別なことではありませんが、大切なことです。
今回は特に2つの条文をあげましたが、共通している部分もありますね。

まず第361条ですが、土止め支保工と防護網です。

土止め支保工については、土止め支保工作業主任者について説明した際に触れたので、簡単に説明します。
作業主任者の業務1 9号第9号 地山の掘削作業、第10号 土止め支保工

土壁に接するように壁を作り、穴の中からぐいっと押して、崩れてこないようにするものです。
壁は断面が押さえつけられているので、それ以上落ちてこない、仮にパラパラと崩れても壁で作業場所には入ってこないようにします。
土止め支保工とは、労働者が穴の中で、土砂崩れに合わないような設備のことなのです。
当然ですが、土止め支保工を設置すると、定期的に状態を確認して、常に丈夫な支えであることはチェックする必要はあります。

防護網は、土壁に網を張り、石が落ちてくるのを防ぐためのものです。
こちらの方がイメージつきやすいのではないでしょうか。

さてもう1つの対策は、立入禁止です。
危険な場所には、立ち入らせない。これは一番大切ですね。
立ち入るを解禁する前には、土止め支保工など、十分な安全対策が必要になります。

まず第534条での対策をまとめます。
4の土止め支保工は重複しますので、割愛します。

掘削の斜面は、基本的に地表付近は広く、穴の底が一番狭くなるように勾配を付け逆台形の形で掘ります。垂直の土壁より角度の浅い斜面の方が、土や石が落ちにくいのは分かりますよね?
土質により掘削深さが2m以上で5m未満ならば、穴の斜面の角度は75°以下にするなど、別の条文では規定されていたりするので、その基準に従うことということです。

崩壊予防をすると同時に、これは危ないなという土の塊や岩があれば、作業前に落としてしまうと安心ですから、先にやっておきます。

水を含むと土は粘土のようになって重量をまして、断面から落ちやすくなります。
また地面や土壁の亀裂面に水入ると、亀裂面が広がり、崩れる原因になります。
だから雨水が入らないように対処することが大切です。
地下水が上昇して、土壁を緩くすることもあります。こういう場合は、近くに簡易な井戸を掘って、ポンプで吸い上げて、地下水を低下させたりすることもあります。

その他にも細かな規定はあるのですが、元方事業者は土砂等の崩壊防止対策として、以上のようなことを行わければなりません。



2)土石流が発生するおそれのある場所

土石流の対策については、災害時の対策ということで、まとめましたので、そちらを参照にして下さい。
豪雨災害時の安全管理は? 安衛法第20条~27条



3)車両系建設機械、移動式クレーンが転倒するおそれのある場所

建設関係工事は、大きな機械、つまり重機を使用する仕事です。
重機には、土を掘るショベルカー、土などを運ぶダンプカー、土を均すブルドーザー、重いものを吊るクレーン車など、様々な用途で、様々な重機があります。
工事現場の近くを通りかかると、このような重機を目にすることもあるのではないでしょうか。

ちなみに、車両系建設機械とは、ショベルカーやブルドーザーなどの重機について、法律上の総称のことです。

こういった機械が崖や斜面近くを走っている時に、バランスを崩して、倒れてしまうと、どうでしょうか?
中に乗っている人も危ないですし、倒れた先で作業している人も下敷きになるかもしれませんよね。

また、ボーリング機械という建物の基礎を固めるために、地中深くまで杭を打ったりする機械があります。

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(参考:杭打ち機イメージ)

これは長い杭を地面に打ち込むので、杭を支えるために高さが何十メートルもの高さになったりします。
もしこのようなボーリング機が倒れたら。。。
市街地であれば、近くの建物や道路まで被害が及びます。

水平で地盤が安定している場所であれば、倒れる可能性は低くなりますが、地盤が緩い、斜面の近くなど、不安定な場所であれば、十分な対策をしなくてはならないのです。

(転落等の防止等)
第157条
事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行うときは、
車両系建設機械の転倒又は転落による労働者の危険を
防止するため、当該車両系建設機械の運行経路について
路肩の崩壊を防止すること、地盤の不同沈下を
防止すること、必要な幅員を保持すること等必要な
措置を講じなければならない。

2  事業者は、路肩、傾斜地等で車両系建設機械を
  用いて作業を行う場合において、当該車両系建設機械の
  転倒又は転落により労働者に危険が生ずるおそれの
  あるときは、誘導者を配置し、その者に
  当該車両系建設機械を誘導させなければならない。

3  前項の車両系建設機械の運転者は、同項の誘導者が
  行う誘導に従わなければならない。
(倒壊防止)
第173条
事業者は、動力を用いるくい打機(以下「くい打機」
という。)、動力を用いるくい抜機(以下「くい抜機」
という。)又はボーリングマシンについては、倒壊を
防止するため、次の措置を講じなければならない。

  1)軟弱な地盤に据え付けるときは、脚部又は架台の
   沈下を防止するため、敷板、敷角等を使用すること。

  2)施設、仮設物等に据え付けるときは、その耐力を
   確認し、耐力が不足しているときは、これを
   補強すること。

  3)脚部又は架台が滑動するおそれのあるときは、
   くい、くさび等を用いてこれを固定させること。

  4)軌道又はころで移動するくい打機、くい抜機又は
   ボーリングマシンにあっては、不意に移動することを
   防止するため、レールクランプ、歯止め等でこれを
   固定させること。

  5)控え(控線を含む。以下この節において同じ。)のみで
   頂部を安定させるときは、控えは、3以上とし、
   その末端は、堅固な控えぐい、鉄骨等に固定させ

  6)控線のみで頂部を安定させるときは、控線を等間隔に
   配置し、控線の数を増す等の方法により、いずれの
   方向に対しても安定させること。

  7)バランスウエイトを用いて安定させるときは、
   バランスウエイトの移動を防止するため、これを
   架台に確実に取り付けること。


まずは、第157条では重機の転落防止対策について規定しています。

1)運行経路の路肩の崩壊を防止する。
2)地盤の不同沈下を防止する。
3)必要な幅員を保持する。
4)誘導員を配置する。


路肩の崩壊というのは、斜面近くを走っている際、重機の重みなどで斜面が崩れることです。
崩れた場所から滑り落ちてしまう可能性がありますよね。
これの一番の対策は、路肩近くを走行させないというのが一番です。
しかしどうしても必要な場合もあります。その場合は、鉄板などを敷いて補強することもあります。

地盤の不同沈下というのは、地盤が重機のワダチなどで不揃いに沈下すること、つまりガタガタになるということです。車でオフロードを走っているような状態になります。落差が大きなワダチにハマってしまうと、転んでしまうかもしれませんね。
幅員というのは、道幅のことです。無理して狭いところを走らないということです。車幅より狭いところなど走ると、壁にぶつかったり、足元に障害物があれば、乗り上げてしまいます。

狭く、斜面沿いなどを走らせる場合は、誘導員を配置して、誘導させるのがよい対策になりそうです。
重機の運転者は、きちんと誘導に従わなければ、いけませんね。

さて、ボーリング機などの基礎杭打ち機の転倒防止策は、第173条にまとめられています。

1.軟弱な地盤では、敷角、敷板を使用する。
2.機械を設置する地盤を確認し、弱い場合は、補強する。
3.滑動のおそれがある場合は、くいやくさびで固定する。
4.軌道やコロ上機械が不意に移動しないように、レールクランプ、歯止めなどで固定する。
5.控えのみで頂部を安定させるために、末端を固定する。
6.控線で、頂部を安定させる場合は、いずれの方向に対しても安定させる。
7.バランスウェイトを用いる場合は、移動しないようバランスウェイトを架台に確実に固定する。


3番目以降の対策は、杭打ち機等の専門的な対策ですので、今回は割愛します。
そのため1と2について、まとめます。

基礎は建物などが沈下や倒壊したりしないように、支えるためのものです。
埋立地などは、岩盤地盤がある場合に比較して、軟弱です。
しかし埋立地の主な用途は住宅や商用ビルを建てたりすることです。
このような場所であれば、基礎杭をより深くに打ち込んで支えなければなりません。
そして、杭を打つためには、杭打ち機が必要になります。
重量のある機械を、長期間配置するわけですから、重みで地盤沈下することもあります。
地盤沈下によって、機械の安定が崩れてしまうこともあります。

長くなってしまったのでうすが、これを防ぎましょうというのが1と2の対策です。

まず、機械を置く場所に、鉄板などを敷いて沈下を防ぐ方法があります。
機械をそのまま地面の上に置くと、機械の重さはキャタピラなどの足回りに集中するので、その部分が沈下しやすくなります。

鉄板を敷くことで、機械の重量は鉄板全体にかかり、地面にかかる荷重も鉄板の面積でかかります。そのため一点集中が避けられるわけです。

ベッドの上で、横になるとの立つのとでは、沈み込む深さが違いますよね。
同じ重さでも横になると体全体分で荷重を分散するので、足の裏だけで荷重をかけるよりも、沈み込む深さが浅くなります。

鉄板はこの役割をするのです。

鉄板を引くのではなく、地盤自体を安定させようとするのが、補強する方法です。
補強の方法として、土にセメントを混ぜたり、特殊な薬剤を使ったりして、地盤を固めてしまいます。
こうして沈み込みを防ぐんですね。

杭打ち機だけでなく、移動式クレーンも転倒することがあるので、この対策も重要です。

移動式クレーンというのは、タイヤやキャタピラ(キャタピラは商品名なので、法律ではクローラといいます)が付いていて、あちこちの現場で使います。
一般に、クレーンというと、工場などで固定していて、移動できないものを指すので、そうじゃないものを移動式クレーンといいます。

さて、移動式クレーンについては、クレーン則に規定されています。

【クレーン則】

(使用の禁止)
第70条の3
業者は、地盤が軟弱であること、埋設物その他地下に
存する工作物が損壊するおそれがあること等により
移動式クレーンが転倒するおそれのある場所においては、
移動式クレーンを用いて作業を行ってはならない。
ただし、当該場所において、移動式クレーンの転倒を
防止するため必要な広さ及び強度を有する鉄板等が
敷設され、その上に移動式クレーンを設置している
ときは、この限りでない。
(アウトリガーの位置)
第70条の4
事業者は、前条ただし書の場合において、アウトリガーを
使用する移動式クレーンを用いて作業を行うときは、
当該アウトリガーを当該鉄板等の上で
当該移動式クレーンが転倒するおそれのない位置に
設置しなければならない。


第70条の3は、軟弱な地盤の場合は、鉄板などを敷いて補強しなさいということなので、説明不要ですね。

第70条の4では、アウトリガーを使用する場合の注意があります。

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(参考:アウトリガー)

アウトリガーというものは、移動式クレーンの車体の両側に付いており、クレーンを使用する際に、横に張出し、車体を安定させるための、いわば第2の足です。

このアウトリガーの突っ張りで、物を吊った時に倒れないようにするのです。

当然、物を吊った時、アウトリガーには重い荷重がかかり、地面が軟弱だと沈んでしまいます。
地面が沈むと安定を失い、倒れてしまいます。

これを防止するために、鉄板などで地盤補強するか、地盤がしっかりしている場所にクレーン車を配置しなければならないということです。

大きな機械ですから、転落や転倒をすると、大事故になります。
元方事業者は、関係請負人が重機を使うときには、十分に注意を払うように指導しなくては行けないわけですね。



4)充電電路に接近し、感電のおそれのある場所

市街地であれば、極めてレアな場所を除いて電線があります。
また少し郊外に行くと、鉄塔が立ち、長いものであれば山と山の間に電線がつながっていたりします。
電気が通っている電線のことを、充電電路といいいます。
意味はなんとなく分かりますよね。

工事はこのような電線の近くで行うことが、多々あります。
電線に触れると、どうなるか分かりますよね?
はい、感電します。

電線に通っている電圧は、非常に高く、これだけの電圧に触れると一瞬で感電死します。
直接人体で触れても危険です。電気工事であれば、直接触れて感電する事故もあります。
建設業は、直接電線を触ったりシませんが、電線近くでクレーン車を使ったりすることはあります。

クレーンの先が、電線に触れたら・・・
クレーンを伝わって、操作している労働者が感電してしまいます。
実はこういう事故は少なくないんです。

こういった感電事故を防止することが、安衛則第349条で規定されています。

(工作物の建設等の作業を行なう場合の感電の防止)
第349条
事業者は、架空電線又は電気機械器具の充電電路に
近接する場所で、工作物の建設、解体、点検、修理、
塗装等の作業若しくはこれらに附帯する作業又はくい打機、
くい抜機、移動式クレーン等を使用する作業を行なう場合に
おいて、当該作業に従事する労働者が作業中又は通行の際に、
当該充電電路に身体等が接触し、又は接近することにより
感電の危険が生ずるおそれのあるときは、次の各号の
いずれかに該当する措置を講じなければならない。

  1)当該充電電路を移設すること。

  2)感電の危険を防止するための囲いを設けること。

  3)当該充電電路に絶縁用防護具を装着すること。

  4)前3号に該当する措置を講ずることが著しく
   困難なときは、監視人を置き、作業を監視させること。


電線の近くでクレーン作業などを行っていて、もしかすると接触するかもという危険がある場合、
また杭打ち機作業を行っていて、電線に触れてしまう危険がある場合、元方事業者は感電防止のための対策をとらなくてはなりません。

1.受電電路を移設する。
2.囲いを設ける。
3.絶縁用防護具を装着する。
4.以上の方法がとれない場合は、監視人を置く。


感電を防止するには、まず電線を動かしてしまえばいい。
そうすれば、触れる心配はなくなりますね。
当然ですが、移設するにあたっては、電力会社と調整し、送電を切ってからやりますよ。

しかし動かすことができない場合もあります。
その場合は、クレーンなどが触れないように囲いをする、もしくは防護具というガードを付けます。
囲いは、主に電線についている変圧器などを覆います。防護具は電線にかぶせたりしています。
どちらも直接触れないようにするためのもので、電気を通さない素材でできています。

これらの対策が取れない場合もあります。
その場合は、監視人を置いて、クレーンと電線が安全な距離を保てるように、誘導させます。

感電対策は、とにかく触れない、近づかせないが基本なので、元方事業者はこの対策をしっかり関係請負人にとらせなければなりません。



5)埋設物、擁壁、レンガ壁等が崩壊するおそれのある場所

(埋設物等による危険の防止)
第362条
事業者は、埋設物等又はれんが壁、コンクリートブロック塀、
擁壁等の建設物に近接する箇所で明り掘削の作業を行なう
場合において、これらの損壊等により労働者に危険を
及ぼすおそれのあるときは、これらを補強し、移設する等
当該危険を防止するための措置が講じられた後でなければ、
作業を行なってはならない。

2  明り掘削の作業により露出したガス導管の損壊により
  労働者に危険を及ぼすおそれのある場合の前項の措置は、
  つり防護、受け防護等による当該ガス導管についての
  防護を行ない、又は当該ガス導管を移設する等の措置で
  なければならない。

3  事業者は、前項のガス導管の防護の作業については、
  当該作業を指揮する者を指名して、その者の直接の指揮の
  もとに当該作業を行なわせなければならない。


地山の掘削で土や岩が崩れ落ちるのを防止しなければならないとありましたが、崩れ落ちるものは、他にもあります。
明かり掘りを行っていると、コンクリートの水路など色んなものが埋まっています。
土中であれば、土が支えとなるのですが、周りの土を取り除くと、横に倒れてしまう可能性があります。

地中にないものであっても、掘削している側にれんが壁やコンクリート塀があれば、近くで重機の振動もあるので、穴の中に崩れ落ちてしまうおそれもあります。

そんな壁が倒れこんでくる場所で作業するのは、労働者にしてみると怖くて仕方がありません。

そのための対策が必要になります。

1.明かり掘りを行っている場所で、埋設物やコンクリート塀などが近接している場所では、
 これらの補強、移設するなどの倒壊防止措置をとる。
2.ガス管の損壊を防止するため、防護や移設などの措置をとる。
3.ガス管防護の作業を行う場合には、指揮者を指名する。


倒壊するものが近接する場合は、倒壊防止措置として、補強するか、壁などの移設するなどの対策をとります。
そもそも危険をなくしてしまうのが一番ですよね。

2項と3項は、地中のガス管についてです。
ガス管を破損させると、ガス漏れし、火災の危険性があります。
そのため掘削作業をしている時に、ガス管があれば注意が必要です。

一番は移設してしまうことですが、簡単にはいきません。
その場合は、機械が触れないように防護管をつけたりします。
この作業は一歩間違えたら、管を破損してしまうこともあり、慎重にやらなくてはならないので、指揮者を指名して、作業を行わなければならないと定められています。



元方事業者、作業場全体の安全に責任があります。
作業場には、自社の労働者とともに関係請負人の労働者もいます。

建設業では、元方事業者は全体の管理と一部の工事を行い、その他の工事を関係請負人に委託している現場がほとんどだと思います。

一歩間違えれば、大きな事故になる。
実際に今回紹介した事故のケースも頻発しています。

何度目かの繰り返しになりますが、事故は元方事業者だけで、防ぐものではありません。関係請負人や労働者個人の努力によって成り立つものです。

作業場に入場する労働者が、全員怪我なく退場することが絶対です。
1人とて欠けてはいけないのです。

そのための措置の基本なのですから、疎かにはできませんね。

さて、元方事業者の中には、特に危険を伴う特定作業を行う場合があります。
この元方事業者のことを、特定元方事業者といいます。

特定元方事業者と、しっかり区別されているわけですから、特別な職務もあります。
これについては、また別の機会にまとめたいと思います。

まとめ。

【安衛法】

第29条
元方事業者は、関係請負人に法律を違反するような指示をしてはいけない。
法律を違反しないように指導し、違反している場合には是正させること。
第29条-2
元方事業者は、関係請負人の労働者が土砂等の崩壊などの危険箇所で
作業する場合は、技術上の指導など、適切な措置をとらなければならない。


【安衛則】

第634条の2
元方事業者は、関係請負人の労働者が次の場所で、作業する場合は、
技術的指導など適切な措置をとらなければならない。

1)土砂等が崩壊するおそれのある場所
2)土石流が発生するおそれのある場所
3)車両系建設機械、移動式クレーンが転倒するおそれのある場所
4)充電電路に接近し、感電のおそれのある場所
5)埋設物、擁壁、レンガ壁等が崩壊するおそれのある場所
第361条
事業者は、地山の明かり掘りにおいて、土石等が崩落するおそれがある場所では、
必要な措置をとること。
第534条
事業者は、地山の掘削で、土石等が落下するおそれのある場所では、
必要な措置をとること。
第157条
事業者は、車両系建設機械やクレーン車が転倒する恐れのある場所では、
必要な措置を取ること
第173条
事業者は、杭打ち機などの基礎用機械が倒壊するおそれのある場所では、
必要な措置を取ること


【クレーン則】

第70条の3
事業者は、移動式クレーンが転倒するおそれのある場所では、
必要な措置を取ること
第70条の4
事業者は、移動式クレーンのアウトリガーの張出しを行う場所が、
軟弱な場合は、必要な措置を取ること
第349条
事業者は、感電のおそれのある場所では、必要な措置を取ること
第362条
事業者は、明かり掘りで埋設物、コンクリート塀などが倒壊するおそれのある場所では、 必要な措置を取ること
ガス管が埋設されている場所で作業する場合は、指揮者を指名し、必要な措置をとること。

 

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