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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

整備中のダンプ荷台に挟まれ死亡(北海道清水町)

   

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実のところ、車や機械の整備の時は、怪我の原因がたくさんあるのですが、ご存知でしょうか?

切り傷の原因として、角や出っ張りなどがあります。 私も経験がありますが、軍手を着けずにあれこれ触っていたところ、気が付くと手の甲がざっくり切れて血が流れていたということもあります。

しかし、これはまだ軽い方です。

より注意しなければならないのが、駆動部やその他動く箇所に、体の一部が挟まれてしまうことです。

時として数百キロから数トンの力が加わるのですから、はさまれた部分はひとたまりもありません。 ただ押し潰される、切断されるのに、身を任せるしかありません。

労働新聞社の安全スタッフNO.2235(平成27年6月1日号)では、平成26年度の事故発生状況についてまとめています。 この中で、製造業の死傷事故は全体の17.0%であり、内約3割が「はさまれ・巻き込まれ」事故であるとのことです。 そして、事故には点検整備時に、電源を切り忘れており、作業中に機械が動き出し、巻きこまれたというケースも少なからず見受けられるとのことです。

修理や整備は、日常的に繰り返されるルーチン作業とは違います。
故障した時など、臨時で差し込まれる非定常作業です。

慣れてない、早く日常業務に戻りたいがために焦ってしまうなどが、背景にあるのかもしれませんが、修理や点検の時に起こる事故も無視できないことになっています。

今回は、北海道で発生した、ダンプ荷台の整備時に起こった事故について、原因の推測と対策を検討してみます。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

整備中のダンプ荷台に挟まれ死亡(平成27年5月24日)

24日午前11時40分ごろ、北海道清水町の自動車整備工場で、自動車整備士が整備していたダンプカーの車体と荷台の間に頭を挟まれ、脳挫傷で死亡した。

新得署によると、被災者は1人で作業をしていた。署は荷台を上下させる油圧ホースを交換中、荷台が下りて挟まれたとみて事故原因を調べている。

朝日新聞

この事故の型は「はさまれ・巻き込まれ」で、起因物は「トラック荷台」です。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

ダンプカーとは、運転席と荷台がセットになった、いわゆるトラックです。 特に、ダンプカーという場合は、荷台の前方が上がり、荷台を傾斜させることができます。 荷台を傾斜させることにより積み荷、多くの場合は土砂などになりますが、これを一気に荷降ろしできるのです。 荷台を傾斜させ、荷降ろしすることを、俗に「ダンプ(投げ下ろす)する」と言います。 というわけで、ダンプできるトラックのことを、ダンプカーと呼びます。

事故は、自動車整備工場で、被災者が1人でダンプ装置の整備作業を行っていた時、荷台が下りてきて、車体と荷台の間に、はさまれてしまい、死亡したという事故です。

ダンプカーですので、少なくとも2トン以上が積載されるものであったと思われます。 当然、荷台そのものの重さも軽くありません。

荷台の下に入り込んで、上げ下げ装置の肝になる油圧ホース交換時でした。 この時、圧が開放されたために、荷台は下がってきたのではと推測されます。

問題は、この時荷台の落下が防いでいなかったこと、そして、1人で作業したということです。 被災した作業者の経験の程はわかりませんが、年齢はまだ25歳と若いようです。 1人前だったのかもしれませんが、それでも不測の事態を考えると、人の配置が不足していたのではと考えられます。

それでは、原因を推測してみます。

油圧ホース交換時に、圧力が抜けてしまったこと。
荷台が下りてきた時に、支えストップさせる備えがなかったこと。
作業を1人で行っていたこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

修理作業時は、全て予想通りに作業が進まないこともあります。
そのため、不足時の事態が起こったとしても、大事故にならないような対策が重要と言えます。

まず、不意に荷台が下りてきたとしても、それを支えられるような対策をしておくことです。 安全ブロックなどというものです。 要するにつっかえ棒をセットしておき、油圧が抜けても、落ちてこないようにします。

そして、作業している時に油圧が抜けるという作業方法も見なおす必要がありそうです。 単純に作業者がミスをしただけかもしれませんが、危険な場所でのミスですから、手順を改める必要があるでしょう。

不測の事態があった時、1人では対処できないこともあります。 助けになる人が近くにいると、より安心です。

またトラックやダンプなどは貨物自動車となり、これらは荷役運搬機械に分類されます。 荷役運搬機械の修理を行うときなどには、指揮者を定めるということが法律では定められています。 指揮者の役割には、作業の直接指揮もありますが、つっかえ棒などの安全ブロックの使用状況を確かめる必要があります。 今回のケースでは、指揮者はいなかったようなので、この点の対策が不足していたといえます。

対策をまとめてみます。

油圧ホース交換作業の手順を見直す。
安全ブロックなどで、荷台降下対策を行う。
作業指揮者が直接指揮する。

作業手順の見直しとしては、荷台が降りてこないような安全対策、確認の手順を含めることができるのではないでしょうか。

その手順には、安全ブロックの使用が含まれます。

また作業指揮者ですが、現実的な話として、何台も同時に整備や修理をしているのに、それぞれ指揮者を立てるなどできません。 どんな会社でも、そんなに人手に余裕が有るわけではないでしょう。

法的に必要だから選任しろでは、解決にならないでしょう。 しかし少なくとも、整備工場全体を見渡せている人がいて、要所要所、特に安全対策については確認できる人は必要かもしれません。 多くの場合社長や工場長などがこの責務を負うことになるのではと思います。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
要約をまとめてみます。

【安衛則】

第151条の9
車両系荷役運搬機械等のフォークなどに載せている、荷の下に労働者を立ち入らせてはならない。 修理などで、立ち入る場合は、安全ブロックなどを使用する。
第151条の15
車両系荷役運搬機械等の修理等の作業を行う場合は、指揮する者を定め、指揮をさせなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

安全に荷役運搬機械を使用するための措置

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