平成27年7月からの足場の規制強化!変わるポイントはこの4つだ。
2015/06/23
足場、作業床というものは、高所作業では欠かせません。
街を歩いていても、ビルの外壁にピッタリとくっ付くように、足場が組まれているのを見かけるのではないでしょうか。
建物を作るに限りませんが、建設業の工事では足場は切っても切り離せません。
同時に、足場作業で、常につきまとう危険は、墜落・転落です。
高いところから落ちて、大怪我になったり、死亡したりする事故のことです。
墜落・転落事故は、労働死亡事故で、最も多い事故です。
平成25年度は、建設業全体で墜落・転落事故は、約6000件発生しています。
死亡者は、160人にもなります。 これは、建設業全体の死亡者の内約40%を占め、全産業においても約16%を占めています。
墜落・転落事故による死亡事故は、最も解決すべき課題と言えます。
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法改正の背景はなに?どう変わるの? |
墜落・転落による事故を、手を変え品を変え、防止してきました。
そのかいあって、事故は減り、死亡者も激減しています。
しかし、今なお建設業だけでも、毎年160人が死亡しているという事実。
これはただの人数ではなく、1人1人が名前を持ち、顔を持ち、家族を持ち、そして私たちと同じような日常を送っていたのです。
これが背景です。 とは言うものの、墜落事故の全てが、足場に関係するものではありません。
足場に関係する事故は、墜落・転落事故から、約16%(死亡者は約20%)を占めます。
足場以外の開口部などからの墜落・転落事故も多いのです。
しかし足場に関する死亡者も、平成25年度で31人もの人がいます。
決して少ないとは言えませんね。
事故が起こると、警察や労働基準監督署が調査します。
すると、事故には一定のパターンがあることがわかったのでした。
どんなパターンか?
それは、法律で定められている、墜落防止対策がとられていなかったということです。
例えば、手すりがない、床が固定されていない、材料がやたらと貧弱だ、安全帯を使用していないなどです。
平成23年に大々的に足場の規則が変わったのですが、実施されていないというのが実状のようです。
どうして、やらないのか?
どうやら作業をする人の意識が低いんじゃないの、という推測が立てられました。
さらに、監督責任も不十分なんじゃないのというのも原因にありそうでした。
また割合としては少ないものの、きちんと法に則った設備を備えているのに、事故になったというのもあります。
足場の構造に不十分なことがあるのではと考えられたのでした。
法改正の背景としては、
1.作業者の安全意識が低い
2.監督責任が果たされていない
3.足場の構造に、まだ欠点がある
というのがあるようです。
これを踏まえ、平成27年7月より、足場に関する法改正が施工されます。
足場からの墜落防止対策を強化します
このページ下部にある、別添3がよくまとまっている思います。
さて、今回の改正ポイントは、大きく4つです。
1.足場作業者も特別教育を受ける。
2.足場の構造を、ちょっと変更する。
3.足場の組立・解体作業時はもっと安全な方法で行なう。
4.注文者の監督責任を強化する。
それぞれのポイントをまとめていきましょう。
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改正ポイント1 足場作業者も特別教育を受ける。 |
それぞれのポイントをまとめていきましょう。
今まで足場に関する資格は、足場等組立解体作業主任者というものがありました。
これは5メートル以上の足場組立解体時に選任する作業主任者のための資格です。
実際に作業を行う人は、資格等は必要ありませんでした。
それが、法改正により、足場の組立・解体の作業を行う人も特別教育を修了しなければならないことになりました。
つまり、足場に関わる人は全員、特別教育を受けなければならなくなったのです。
これは足場屋、トビの会社にとっては、かなり痛いのではないでしょうか。 全社員が特別教育を受けなければならないわけですから。
多少の経過猶予があるのですが、数年以内に義務化されます。
この狙いは、足場作業を行う人が、適当な組立をしないよう安全意識を高めることです。
ただ実のところ、足場屋さんなどが組む足場のほうが、圧倒的にしっかりしていて、安全です。
危ないのは、そういう専門業者に依頼せず、自社で組み立てたりするところでしょう。
安全意識を高めるのであれば、専門外の作業者にこそ必要でしょう。
ところが、徹底されるかは事業者の意識任せになります。
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改正ポイント2 足場の構造を、ちょっと変更する。 |
構造の変更点その1 作業床
作業床について、ちょっと変更があります。
今までの作業床の規定は、幅が40センチ以上、床材と床材の間は3センチ以下とするでした。
今後は、これを活かしたまま、床材と支柱部分との隙間も制限しようというようになります。
支柱の部分を建地といいますが、床材の端と建地の隙間は、12センチ未満としなければなりません。
こんな感じです。↓
床の端から、墜落するという事故があったから、対応になったんですね。
構造の変更点その2 墜落防止装置の取り外しについて
次に、手すり等の墜落防止についての規定が強化されます。
今までは、手すりなどはどうしても付けられない場合は、安全帯を着用する設備を設けるなどすれば、設けなくても構いませんでした。
また同じように条件を満たした場合で、作業の性質上必要な場合は、手すりを取り外すことができました。
しかし、今後は条件がかなり厳しくなります。
まず、手すりが取り外されている場所へは、関係者以外を立入禁止としなければなりません。 また作業の必要があって手すりを外した場合は、作業完了後直ちに復旧しなければなりません。
墜落防止設備が外される状態を最小限にすること、そもそも人を近づけないことなどが義務化されます。
ちなみに、これは足場だけでなく、作業構台や仮設通路など、手すりを必要とする場所では同じく必要です。
構造の変更点その3 鋼管足場の構造について
これは強化というより、緩和です。
今までは、地上から31メートルを越える単管足場は、鋼管を2本組の支柱で支えなければなりませんでした。
法改正により、設計荷重が最大使用荷重を超えないときは、2本組でなくともよいとなりました。
作業手間は多少減るかもしれませんが、設計荷重の計算など、事前の準備が重要になります。
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改正ポイント3 足場の組立・解体作業時はもっと安全な方法で行なう。 |
実は、足場の事故で多いのは、組み上がった後の作業中ではなく、組立や解体の時です。
何もないところに足場を組むわけです。 足場の足場はありません。とても不安定な場所での作業が余儀なくされるのです。
当然、安全対策はとられています。 不安定な足元を解消すべく、簡易の作業床を設けたり、安全帯を使用します。
安全帯も、足場が組み上がっていれば、手すりが使えますが、手すりのない状態では親綱などを張って、対応します。
足場組立解体時の事故を減らすために、作業時の設備をより安全に仕向けていくよう、法改正されます。
今まであれば、高さが5メートル以上の足場を組み立てたり、解体したりする時に墜落防止措置が義務付けられていました。
法改正では、高さが2メートル以上までに引き下げられます。
2メートルといえば、成人男性のちょっと上くらいです。
今までは2層目以上の場合だったのが、今後は1層目でも作業床を置く場合は、墜落防止措置をとることになります。
また足場材を組んで、緊結する作業の時の設備が、強化されます。
今までは、作業床材として20センチ以上の板を敷いて作業すればよかったのですが、今後は40センチ以上の幅の板を敷かなければなりません。1枚板である必要はなく、20センチの板を2枚並べたりしても、大丈夫です。今までよりも足元の不安定さが解消されますね。
また、yはり安全帯は着けなければなりません。
安全帯を取り付ける手すりや親綱などが、義務化されるようになります。
足場組立作業で、手すり先行工法というものがありますが、安全帯着用設備ということで、暗に推奨しているようです。
手すり先行工法の解説はこちら。
足場組み立て時にもご注意を。手すり先行工法。
今までよりも、組立解体作業時の安全対策を強化しています。
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改正ポイント4 注文者の監督責任を強化する。 |
注文者とは、仕事を下請け業者に注文する事業者のことです。
ただ仕事を注文した、後はお任せというわけにはいきません。
注文者には注文した人の責任があります。
その1つが、足場が安全かどうかをチェックを行なうことです。
今までであれば、点検する時期は、決まっていました。
大雨などの悪天候の後、もしくは震度4以上の地震の後です。 足場の構造を揺るがす出来事があった場合、作業前に点検しなければなりませんでした。
今後は、点検時期が増えます。 悪天候、地震の後に加え、足場などを一部解体、または変更の後にも点検しなければなりません。
構造を変えた時も点検しなければならなくなりました。
もし、異常があった場合は、作業させず、直ちに補修することとも義務に含まれます。
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法改正で、どうなるか |
法律が改正されると、大体においてやることが増えます。
足場屋さんが所有する材料は、規格をクリアしているものも多く、改めて買い直すことは少ないでしょう。
大変なのは、特別教育ではないでしょうか。
新たに出来たカリキュラムなので、作業者全員が、教育を受けなけばなりません。 時間とコストが馬鹿になりません。
ある程度は、猶予期間があり、補助金等もあるでしょうが、それでも大変なことには変わりません。
足場の事故の原因の多くは、そもそも手すりなどの墜落防止対策をしてない所で起こっています。
構造を強化した所で、元から設備を作る気がない人たちには、関係がありません。
いかに、墜落防止対策を備えさせるか。
一番重要なことは、そういった点でしょう。
解決策は、トップダウンで徹底させること。
自発性などを待っていては、何時まで経っても変わりません。
まずはやらせること。
労働基準監督署、元請業者、注文者、事業者、作業監督などの役割が重要です。
ただし、何故やらなければならないのか、理由も伝えましょう。
法改正したからでは、やる気など起きようはずがありません。
落ちたら死ぬということを、口を酸っぱくして伝えるのも大切です。
この記事の冒頭で書いたものの、去年墜落で死んだのは160人だぞと言っても伝わらないので注意です。 そのような数字は他人事の世界です。 リアリティがありません。
作業者自身が死ぬかもしれないこと、大怪我になるかもしれないこと。 この点を重視し、伝えるのも、安全教育として重要な事ですね。
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今回は、法改正部分だけを書きましたが、条文の修正については、それぞれ解説した記事で補足してきます。
すぐじゃないですけど、そのうちやります。
↑ 各条文修正しました。
安全衛生教育と有資格作業について1 「特別教育」
改正対象は、第36条、第39条です。
改正対象は、第552条です。
改正対象は、第575条の6です。
改正対象は、第655条、第655条の2です。
なお、「中さん」→「中桟」といった修正もあるのですが、これはしれっと直していますので、改正対象には含めておりません。