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フォークリフトから「墜落・転落」する事故

      2015/07/02

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フォークリフトは、荷物を積み、高いところに持ち上げたりする機械です。

本来は載せるものは、荷物だけです。 そんなフォークリフトが引き起こす事故は、車体に接触する、積み荷が落下して下敷きになるなどが、思い浮かびますね。

しかし、フォークリフトが関わる事故の中には、「墜落する」という事故もあるのです。

フォークリフトから墜落というと、屋根の上からでしょうか? それが違います。

想像がつくと思いますが、上下するフォークの上に人が乗り、そこから落ちるというものです。

フォークの高さは、2メートルから3メートルになります。 それほど高くないように思いますが、落ちて大怪我するには十分な高さです。

今回は、厚生労働省労働事故事例を参考に、フォークリフトから人が墜落する事故をまとめます。

労働事故事例

index_arrow フォークリフトで持ち上げた作業台が転落し、乗っていた2名が被災し1名が死亡
この災害は、Z社の工場建屋の増設工事において、既設フロアと増設フロアを仕切るブルーシートを吊り下げるため、フォークリフトで持ち上げた作業台に乗って作業していた2名の作業者が、作業台とともに転落したものである。

この増設工事は、Z社(発注者)がY社(元請)に発注して工事が進められ、増設フロアの建設工事がほぼ終わった後、既設フロアから増設フロアに生産設備を移設する作業をY社から請け負ったX社が行っていた。

移設作業の初日、X社の職長Aと同僚の作業者B~Dの4人は、まず、既設フロアと増設フロアを仕切っていたブルーシートを取り外した。 その後、既設フロアで生産設備を解体し、これを増設フロアに移動する作業を行った。

1日の作業を終えて現場を去ろうとしたとき、Z社の担当者Eから「その日の作業を終えたらブルーシートを元通りにつり下げておくように」との指示があった。

そこで、A~Dは、現場付近にあった作業台(パレットの周囲を手すりで囲ったもの)をフォークリフトで持ち上げ、ブルーシートのつり下げ作業を行うことにした。BとCが作業台に搭乗し、Dはフォークリフトの運転を、Aは作業の指揮を行った。

ブルーシートのつり下げ作業を終えて、作業台を降下させたとき、作業台がブルーシートに引っかかったので、Dがフォークリフトを後退したところ、作業台が傾いて落下し、BとCは作業台とともに4mの高さから墜落した。

2人は直ちに病院に搬送されたが、Bは間もなく死亡した。

生産設備の移設作業期間中も作業時以外は既設フロアと増設フロアを仕切るブルーシートを吊り下げておくことは、Z社からY社に伝わっていなかった。 そのため、Y社がX社に示した計画書にはブルーシートのつり下げ作業は含まれておらず、高所作業用のローリングタワーや高所作業車を用意していなかった。

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この事故の型は「墜落・転落」で、起因物は「フォークリフト」です。

事故は作業完了後、カーテンのようになっているブルーシートを元通り、吊り下げようとした時に起こりました。

作業前、ブルーシートが吊るされているのは、天井ハリの近くでした。 人の背丈より遥か高く、背伸びしても届きません。

ブルーシートの吊り下げ作業は、いわば高所作業になります。 このような作業の場合、ローリングタワーなどの足場を必要とします。

しかし、当初この作業は予定されていなかったため、ローリングタワーなどは準備されていませんでした。 また作業完了後、片付け作業のために組み立てるというのは、やりたくないものです。

そのため、ちょうど昇降作業ができるフォークリフトを使おうとなったのです。

フォークリフトは、その名の通りフォーク、つまり2本の爪を前方に備え、このフォークを上下させます。 フォークの幅は、せいぜい20センチ足らず。 人が乗るには、心許ありません。

そのため、この現場ではフォークの上にパレットなどの板を敷き、簡易の作業台としたのでした。 一応、パレットには手すりを備え、墜落には気を使っています。

手すりを付けているとはいえ、所詮パレットをフォークで支えているだけに過ぎません。 何の固定もされていないのが実状です。

作業中に生じた傾きは、作業台ごと作業者を墜落させてしまったのでした。

index_arrow 事故原因の推測

フォークリフトのフォークに人を乗せて上下するという使い方は、本来禁止されています。

もし必要に際して人を乗せなければならなくても、十分な準備が必要です。

この事故では、突如指示された仕事ということもあり、準備のないまま行ったのでした。

作業方法自体が、不安全だったというのはありますが、背景には元請会社が、事前に作業内容を伝えきっていなかったこともありそうです。

急に仕事を振られても、準備はありません。 ましてや足場などは、言ってすぐできるものでもありません。 結果として、今ある手持ちのもので、やるしかないのです。

この事故では、たまたまフォークリフトを使うことになったのです。

それでは、原因を推測していきます。

フォークリフトに墜落対策などもないまま人を乗せ、上下させたこと。
高所作業にも関わらず、足場などの設備を使わなかったこと。
元請会社が事前に、作業内容を伝えていなかったこと。

直接的な原因は、高所作業をフォークリフトを使って行ったことです。

しかし、突然差し込まれた高所作業です。 準備など出来ようはずがありません。

作業にあたっては、事前に何を、どのように行なうのかという計画が必要です。

不十分な作業計画では、不十分な準備となり、不十分な作業となります。

事故は、この不十分さによって引き起こされるのです。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

フォークリフトは、本来パレット等に乗せた物を上下させるために使用します。 人が乗ることは想定していません。 十分な墜落防止措置をとった場合、例外的に行なうことができますが、原則としては人は乗ってはいけませんん。

また安易にフォークリフトに人を乗せればいいというのは、安全意識が低いからでしょう。 安全教育などで、作業者に危険作業についてしっかり教えておくのも大事です。

足場はなくとも、脚立を使うなどの選択肢を選ぶのも、安全教育によって意識付けできるからです。

そして、事故の背景となった作業計画については、元請け、下請けともに十分考えておく必要があります。 突然、仕事を依頼しても、準備できるものと出来ないものもあります。

依頼する側は簡単に出来るだろうと思って言うのでしょう。 しかしそれが思わぬ事故になることもあるのです。

対策をまとめてみます。

原則として、フォークリフトで高所作業は行わない。
事前に作業計画を作り、元請け下請けともに作業内容を十分に把握する。
安全教育やKYで、安全意識を高める。

事故は、発生に至るまでに様々な布石が打たれていることも少なくありません。

この事故は不幸にも、作業計画、安全意識などが事故を引き起こしてしまったといえるでしょう。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

151条の13
車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、乗車席以外に労働者を乗せてはならない。
第151条の14
車両系荷役運搬機械等を荷のつり上げ等の主たる用途以外の使い方をしてはならない。

これらの条文の解説は、こちら。
安全に荷役運搬機械を使用するための措置

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