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フォークリフトと列車の衝突事故(新潟県弥彦村)

      2015/07/05

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フォークリフトは、非常に活躍の範囲は広いのですが、多くの場合は、一定の敷地内で動きます。 主に、工場や倉庫の中、屋外でも会社の敷地内ですね。

ほとんどのフォークリフトは敷地の外に出ることはないので、公道を走ることはできません。 ナンバープレートを持っていれば別でしょうが、少数でしょう。

少数とはいえ、倉庫や工場を飛び出して使用するケースもあります。

そういった使い方をすると、当然ですが倉庫内とは違った危険に接することになります。
例えば、公道を走る場合であれば、自動車や歩行者と衝突する危険がありますね。

想定外の危険が増えてしまうのです。

新潟県の弥彦村で、フォークリフトと列車が衝突する事故がありました。

列車と衝突!?と思いますよね。

事故現場は、間違いなく線路上でしょう。
倉庫の中に、列車が入ってくることはありませんからね。

フォークリフトが線路に入り、衝突した。 そのような事故でしょう。

今回はこの事故を事例とし、原因の推測と、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

列車と衝突、フォークリフト運転の男性死亡 JR弥彦線(平成27年6月14日)

14日午前10時10分ごろ、新潟県弥彦村矢作のJR弥彦線の踏切で、下り普通列車(2両)と、フォークリフトが衝突した。 フォークリフトを運転していた石材店役員が病院に搬送されたが約40分後に死亡が確認された。死因は脳挫傷。

県警西蒲署とJR東日本新潟支社によると、現場は同線矢作駅と吉田駅の間にある踏切で遮断機と警報機があり、線路は単線。 被災者は石材を運んでいた途中で、なんらかの理由で線路内に止まっていた可能性があるという。 列車の運転手は「気づいてブレーキをかけたが間に合わなかった」と話したという。 列車には運転手と乗客17人がいたが、けがはなかった。

同線は普通列車5本が運休するなどの影響が出た。

朝日新聞

この事故の型は「交通事故(道路以外その他)」で、起因物は「鉄道車両」です。

フォークリフトで、石材を運び、線路内に進入した所、列車に衝突したという事故です。
線路内で、何らかの理由でフォークリフトは止まったようです。
被災者は対処しようとしたのでしょうか、その場を離れることなく、列車に撥ねられてしまいました。

横断していたところには、遮断機も踏切もあったということです。
グーグルマップで付近を見たところ、川を挟んで民家の密集度には差がありますが、線路を横断する道路は、全て車が通るには十分な幅がありそうでした。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

なんといっても原因は、列車が来るのに線路内にとどまっていたことにあります。
遮断機が降り、踏切も鳴っていた状態だったのでしょう。

しかし緊急停止ボタンも押すことなく、事故に至りました。
本人も亡くなられましたが、事故対応による運休で、利用者にも多大な影響を与えました。

被災者は80歳の方だったので、緊急停止ボタン等が分からなかったのかもしれません。
またとどまっていたのも、何とかフォークリフトごと脱出を試みたのかもしれません。

そのような試みなどはあったのかもしれませんが、何ともなりませんでした。

線路内で止まったのは、どんな理由があったのでしょうか?
3つ考えられるのではないかと思います。

1つ目は、線路上で、フォークリフトが故障したこと。
ちょうど線路に入るタイミグで、故障というのは否定できませんが、可能性として低いでしょう。

2つ目は、タイヤが線路にはまってしまった、もしくは通路部分から落ちてしまったこと。
踏切のある場所は、道路とフラットになるように道が作られていますね。 でも踏切以外の場所は、枕木と砂利が敷かれた上に、レールが2本載っている状態です。

もしフォークリフトのタイヤが砂利の上に落ちてしまったらならば、タイヤ径の小さいフォークリフトでは、這い上がるのが困難だった可能性があります。 さらに、荷物を載せていると、困難さは増します。

3つ目は、積み荷が落ちたこと。
これが一番可能性が高いんじゃないかなと思います。 石材を積んでいたということなので、線路横断中の揺れで、石材が滑ってしまう可能性はあります。

石ですので、かなりの重量のはず。
1人では、またフォークの上に積むことのできず、また線路外に追いやることもできない。
八方ふさがり状態で、あれこれしていると事故になったのでは。

何が原因だったかは不明ですが、こういったことが考えられます。

さて、そもそもの話、フォークリフトで線路を越えることに問題はなかったのでしょうか?

フォークリフトに石材を乗せて、線路を横断するのは、今回が初めてではなかったでしょう。 もしかすると日常的なことだったのかもしれません。

おそらくですが、倉庫と資材置き場が離れており、そこを行き来していたのでは推測されます。 踏切や遮断機を備えていたのですから、私道ではなく、公道を走っていたのではないでしょうか。

他に手段はなかったのか?そうせざるを得ない理由があったのか?

今まで事故なく、運んでいたことでしょうが、安全な作業だったわけではありません。 ただ、事故が起こらなかっただけです。
そして、今回事故が起こってしまったということです。

フォークリフトなどの荷役運搬機械の使用にあたっては、作業計画や指揮者が必要です。 公道に出て、線路を横断するという作業計画が、順当だったのか、今後調査されるでしょう。

それでは、原因を推測してみます。

線路内で停車し、避難しなかったこと。
フォークリフトが敷地外を運転していたこと。
作業計画が適切でなく、危険意識が低かったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

何よりもフォークリフトで、線路を超えて石材を運ぶという作業方法が適切だったのかを検討する必要があります。

どれほどの距離を運んでいたのかは不明ですが、1キロ以上は離れていないでしょう。
そんな長距離は、フォークリフトで走ることは困難です。

せいぜい数百メートル以内だったと思われます。
他の輸送手段、例えばトラックなどで運ぶことはできたのではないでしょうか。

フォークリフトは、2本の爪にパレットなどを敷き、その上に荷物を載せます。
考えようによっては落下対策がなく、不安定な状態で運んでいるといえますね。

倉庫内のように、床に凹凸がなく、低スピードであれば、滑り落ちることはないでしょうが、道路の上は凸凹があります。 その凹凸にタイヤをとられ、荷物も跳ね、横滑りする可能性は高いのです。 そのため、フォークリフトでの運搬には、不利と言えます。

公道、路上での運搬には、貨物自動車が使われます。 いわゆるトラックやダンプです。 これは荷台にアオリと呼ばれる囲いもありますので、横滑り防止になります。 路上運搬には、こちらを使うのが、はるかに安全です。

普段はトラックなどを使っていたのかもしれません。 今回たまたまフォークリフトを使い、たまたま事故にあった可能性もあります。

その場合であっても、この作業方法は危険かどうか考えなかったのか!と思ってしまいます。 こんなことを言ったた所で、後からなら何とでも言えることです。
そもそも、作業者はこの作業が危険かどうかなど考えずに、出来る方法で作業することが多いのが実状でしょうし。

これは作業計画にないから、やっちゃだめなんて発想すらないのが、本当のところではないでしょうか。

しかし、事故はこうやって起こってしまうのが現実です。
危険を危険と認識する、危険意識を育てるというのは、非常に難しいことです。

仮にフォークリフトはナンバープレートが付いていて、路上運搬する計画だった場合はどうしたらいいでしょうか。 まず荷物が振動で落下しないように固定する必要があります。

そして今回のように線路内でストップした場合には、緊急停止ボタンを押すなどの教育訓練は必要です。 パニックの時にできることは、経験のあることだけです。

あと、安衛則上では、作業指揮者を選任するとあります。
でもこれは、多くの場合やってないんじゃないかなと思います。

対策をまとめてみます。

路上運搬にはトラックを使う。
作業計画を作成し、守る。
路上運搬では荷物を固定し、緊急時の対策をする。

日常的に繰り返されている作業には、危険があるとは考えられていません。

危険があったのだと気づくのは、いつも事故の後です。

普段の仕事を見直すことは、かなり難しいことなのです。

今回であれば、トラックを使えばよかったんじゃないかと、事故が起こってから気づきます。

事故は、起こってからでは遅いのです。
同時に、仕事のやり方を客観的に眺めることも難しいのです。

見直すチャンスは、どこか同じような仕事で事故があった時です。
事故で亡くなった方がいるのに、チャンスというのはおかしいかもしれませんが、不幸な出来事を他山の石とすること、自分たちはどうかと見直すきっかけにすることはできます。

フォークリフトで、敷地外に出て仕事をされている方がいるならば、その仕事のやり方に危険はないのか、考えてはいかがでしょうか。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

第151条の3
車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、あらかじめ作業場所を調査し、作業計画を作成し、作業すること。
第151条の4
車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、作業の指揮者を定めて、指揮させなければならない。
第151条の5
車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、適正な制限速度を定めなければならない。
第151条の6
車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、転倒や転落を防止する措置をとら泣けばならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

安全に荷役運搬機械を使用するための措置

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