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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

書評「あしたを感じながら」

      2015/07/05

ashtatawokanjinagara

「あしたを感じながら―安全・安心とは何か?リスクアセスメントの入口」
濱田 勉 著  労働調査会 2013/1/10

-絶対はあり得ない。あるのは『危なさ加減』だけである-

すべてが危険だからこそ、危なさ加減を測り、層別し、必要ならリスク提言をし、それでも残るリスクを承知して挑んでいる状態こそが『安全の姿』なのです。安全・安心とは何か?リスクアセスメントの入口

リスクアセスメントという言葉が、ここ数年取り沙汰されてきましたね。
少しでも安全衛生に関わっているなら、耳にしたことはあるのでは?

この本は、簡単にまとめると、リスクアセスメントとは何だろうを、小説として説明しているものです。

index_arrow とりあえず、突っ込みどころ何点か

主人公は、普通の主婦です。 夫は仕事で安全衛生に関わっていますが、主人公は全く縁のないことです。

なぜ、普通の主婦が、安全について、そしてリスクアセスメントについて学んでいくのでしょうか?

読んだ結果から言うと、分かりません。

ちゃんと最初から最後まで読んだんですけども。
でも、何でだろう????

確かに、オープニングで何かやりたいという意気込みはありました。
でもスポーツするとか、カルチャースクールとかなら、分かるんですけど。
こんなのには手を出すんだろうか???

個人的に、いくつか頭をストップさせたことがあったので、まずそれを消化してみます。

まずは表紙と挿絵。

さて、表紙の絵は見られるでしょうか?

表紙の女性、Twitterでもつぶやいたのですが、画面で見ると萌え絵のように見えたものの、手にとってみると、そうでもないかな。 神戸新聞の「いまいち萌えない娘」を思い起こした絵でした。

この表紙の女性が主人公の主婦、垣田美里なのですが、年齢は45歳です。
大学生の子どもがいます。 絵からは年齢が想像つきませんね。どうみても20代です。

せめて、ほうれい線などがあればと思うのです。

次に、動機。

上にも書きましたが、第1章の冒頭で、いきなり安全サークルを立ち上げています。

序章にあったのは、ある日の夜、ベッドで期待してたら肩透かしを食らったというエピソードです。 確かに伏線はあるのですが、それが回収されるのは終盤です。

このエピソードが終わったら、いきなりサークル結成なので、どこか読み落としたのかと戻ってしまいました。

スタートで置いて行かれたような気がしました。

そして、なぜ不倫を醸し出す。

とりあえず、一線は越えてはいなさそうですし、ドロドロしてませんけど。

まあ、どんな感じかは、興味があれば、読んでもらえれば。

もしかして、夫婦間のリスクアセスメントについてか?

そんな疑問には見事スルーされ、物語は進んでいくのでした。

リスクアセスメント、安全と不倫の匂い。
興味がれば、ぜひ本文をお読みください。

ちなみにこの夫婦と子どもの挿絵がありますが、みんな同じくらいの年に見えます。
お父さんも若いなー

index_arrow 小難しいものを、噛み砕く

リスクアセスメントは、安衛法第28条の2を根拠として、取り組みを奨励、一部義務化しているものです。

厚生労働省が主導し、OHSMS(労働安全衛生マネジメントシステム)なども絡んできたりするので、どうしても小難しい話になりがちです。

法律やシステムが絡んでくると、そもそもの話、リスクアセスメントが何という言う前に、スタートからつまづいてしまいます。

この本は、安全衛生なんて関わったことがない主婦が、1つずつ理解するプロセスになっています。
全く知らない人が、抵抗なくわかっていく。 そういう意味で、リスクアセスメントの入口なのです。

そもそも危険って何だろう?
安全ってなんだろう?
リスクって何だろう?

よく使う言葉ですが、その定義については、曖昧だったりしませんか。

まずは、それらの言葉をきちんと定義してくれます。

一例をあげると、最初に「安全とは、事故が起こらない状態ではない。」と投げかけます。

「事故が起こってないから、安全なんだ」というのは間違いというのです。
どうしてでしょう?

少し理解しやすいように、車の運転で例えてみます。

あなたが、ゴールド免許を持っていたとします。
これは数年間無事故、無違反だったからですよね。

では、ずっと安全運転だったのでしょうか?

きっと違いますよね。
制限速度以上にスピードを出したり、信号を黄色で突っ込んだりしたでしょう。
もちろん、違反自体が少なかったと思います。
でもたまたま警察に捕まらなかっただけですよね。
逆に言うと、どんなに日頃から安全運転を心がけていても、たまたま違反した瞬間に捕まることもあります。

もっと踏み込むと、車の運転自体、常に危険と隣合わせですよね。
法定速度でも、いや時速20キロから30キロの低速であっても、人と接触すれば、場合によっては殺してしまいます。

安全と言い切れるでしょうか。
安全って運任せでしょうか?

何かしらの物を手に入れる時は、「代価」が支払います。
自動車を乗れば、交通事故に遭う、「可能性」を背負うことになります。

何かを行えば、事故など何か望まない状態、つまり「リスク」を負うことになります。

このリスクが許容可能か、不可能化の度合いで、安全か危険かの違いになります。

「危険」とは、行えば確実に人が死ぬ、大けがをするといった受け入れがたいリスクがあることと言えます。
自動車の運転で例えると、ブレーキが効かないなどは、受け入れられないリスクですよね。

一方「安全」とは、リスクがない状態ではありません。
ただそのリスクが受け入れ可能な状態ということです。
自動車の運転自体は、リスクがありますよね。安全運転、歩行者や他の車に注意を払うことで、受け入れ可能にすることができます。

このように、主婦でも、また一緒にサークルをやっている大学生でも理解が出来るように、定義していきます。

その上で、「リスク」に対して、どのように向かい合い、付き合っていくのかへと話が展開していきます。

中でも、危険を引き起こす原因(危険源・ハザード・hazard)についての説明は、秀逸だったと思いました。
ちなみに、作中では、ハザードや危険源と言われてもピンと来ないので、略して「源さん」と呼ばれています。

リスクアセスメントを行なうときに、何を差し置いても「源さん」を見つけ出すことが重要です。
どこに危険があるのだろう?と、まずテーブルに並べないと、危険度なども評価できません。

「源さん」見つけは、とっても大切です。

では「源さん」て、なあにという話になりますね。

工場などで、「源さん」を探すとなると、明らかに危険なところからピックアップします。 それこそ、安全カバーのない機械とか、通路を塞いでいる材料置き場とか、そういうのです。 それらを見つけるの大事です。命に関わりますからね。

一方で、見落とされる危険もあるんじゃないでしょうか。
それらは、大きな怪我につながらないかもしれませんが、危険を持っているのは変わりありません。

リスクアセスメントの第1段階、「危険源の特定」では、危険度合いの区別なく見つけ出し、テーブルに並べることが目的です。

つまり「源さん」に大きいも小さいもないということです。

じゃあ、見えない危険なんて、どうして見つけたらいいの?

それについて、この本で説明してくれています。

ここがポイント!

例えば、あなたが会議室にいるとします。 どんな「源さん」があるでしょうか?

一見すると、会議室に危険なんてなさそうですよね。

ところが、視点を「『はさむ』源さん」はどこかと見てみたらどうでしょう?

ドアがありますね。 ホワイトボードもありますね。 パソコンやプロジェクターがあるならば、テーブルとパソコンの間に指がはさまれたりしますね。

では、「『転ぶ』源さん」は何かありますか?
「『落ちる』源さん」は?
「『腰を痛める』源さん」は?

こんな風に、危険度関係なく、見て行けますね。
工場内であれば、危険源「源さん」探しをしてみると、見落としていたものも見えるのでは。

この段階は「危険源の発見」が目的なので、対策が必要かどうかは、判断しませんん。
それは次の段階です。 とりあえず、見つけ出すための手法です。

あら、内容をここまで言ってはいけなかったかしら?

まあ、この「源さん」探しは秀逸だなと思ったところですが、その他のリスクアセスメントの要素も噛み砕かれています。

index_arrow リスクアセスメントの入口

最後には、夫婦でリスクアセスメントについて整理をしてくれています。

不倫の予感なんて、何のそのです。

リスクアセスメントの安全衛生では、取り沙汰されてきてますし、やり方は学んだという方も多いのではないでしょうか。 OHSMSならば、必須でしょうし。

じゃあ、本当に自分たちの事業場に合わせては、どうしたらいいんだろうと考えてしまいますよね。

工場や倉庫など、限られた範囲の中ならともかく、建設業なんて同じ現場がないのだから、どうしたらいいんだろうと悩みます。

ベテランや専門家の経験則や危険に対する感性になるのでしょうか?
はっきり言って、それでは全く効果的ではありません。
1人の能力に頼ったものでは長続きしません。
安全は関わる人が全員で作るものでしょう。
1人の傑出した能力に頼ってはいけません。

事業者、管理者、安全スタッフだけでなく、ラインがリスクへの「気が付き力」を高め、反映することの方が、有効だと思います。

そのためには、「なぜやるのか」、「どうやるのか」の学習が必要です。

リスクアセスメントの入口という意味では、この本をさらに自社の教育に落とし込むのは、意味があるでしょう。

全く安全管理について知らない美里さんが学ぶプロセスをモデルにして、自社の社員に置き換えていくのが、いい使い方になりそうです。

index_arrow 付録

ちなみに、この本を読んで、こんなの作りました。 フォーマットとサンプルです。

源さんはどこだ フォーマットサンプル 源さんはどこだサンプル

あと、自社で使われる方がいらっしゃったらなので、PDFとエクセルファイルも置いてみます。

源さんはどこだ!?(PDF)

源さんはどこだ!?(excel)

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