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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

特定元方事業の職務の内、元方事業者に準用されるもの

      2015/05/30

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特に危険な仕事を請け負った元方事業者のことを、「特定元方事業者」といい、事業所とは別に、作業場での安全体制や、措置を講じなければなりませんでした。

「特定」というだけあって、その職務は特別ではあります。
ところが、「特定元方事業者」の職務なのに、やっぱり一般の「元方事業者」も講じなければならないと、指定されているものもあります。

うーん、それであれば、最初から元方事業者の職務としなければいいのにとも思うのですが、後から追加したから、周りくどい感じになったようです。

法律文書の中には、「準用する」という用語が出てきます。
これは、「ある法令を、本来適用されることを予定している場合以外にも、多少法令を読みかえた上で、あてはめる」ということです。
簡単に言うと、「本当は違うけど、似てる所もあるし、ちょっとアレンジを加えて、使う」という感じでしょうか。

同じ内容の法律をつらつらと書くよりも、すでにある条文を流用してしまうほうが、手っ取り早い場合に使われたりするわけですね。

特定元方事業者の職務として定めたものの、よくよく考えたら、特定元方事業者だけに限る話じゃないよな。これって一般の元方事業者でもやらなくちゃだめでしょう・・・
といったことが、後で気づいて付け足したものという感じだと思います。


このように特定元方事業者の職務も、元方事業者の職務として準用されているものが、いくつかあるわけです。

今回は、元方事業者だけど、特定元方事業者と同じ措置を講じなければならない、というものをまとめたいと思います。

そのような準用される職務は、安衛法第30条の2に規定されています。

【安衛法】

第30条の2
製造業その他政令で定める業種に属する事業(特定事業を除く。)の
元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が
同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を
防止するため、作業間の連絡及び調整を行うことに関する措置
その他必要な措置を講じなければならない。

2 前条第2項の規定は、前項に規定する事業の仕事の
  発注者について準用する。この場合において、
  同条第2項中「特定元方事業者」とあるのは「元方事業者」と、
 「特定事業の仕事を2以上」とあるのは「仕事を2以上」と、
 「前項」とあるのは「次条第1項」と、「特定事業の仕事の全部」と
 あるのは「仕事の全部」と読み替えるものとする。

3 前項において準用する前条第2項の規定による指名が
  されないときは、同項の指名は、労働基準監督署長がする。

4 第2項において準用する前条第2項又は前項の規定による指名が
  されたときは、当該指名された事業者は、当該場所において
  当該仕事の作業に従事するすべての労働者に関し、
  第1項に規定する措置を講じなければならない。
  この場合においては、当該指名された事業者及び
  当該指名された事業者以外の事業者については、同項の規定は、
  適用しない。


製造業その他の政令で定める業種とありますが、「その他政令で定める業種に属する事業」というものが規定されていないので、製造業をメインターゲットとし、必要があれば、今後追加するものだと思います。
これは、元方安全衛生管理者の適用が、現状建設業のみというのと同じですね。

内容としては、第30条で規定された特定元方事業者の職務の内、1項2号の「作業間の連絡及び調整」を元方事業者(製造業)もしなくてはいけませんという内容です。

また1つの事業場に、同様に複数の元方事業者がいる場合は、どちらか1つを措置を講ずる元方事業者として指名しなければならない。指名がなければ労働基準監督署が指名するということです。

これは特定元方事業者を元方事業者に読み替えるとすると書かれていますね。
この「読み替える」というのが、準用の際のアレンジになるわけです。

この準用については、1つ注意点があります。
それは、準用を規定すると書いた条文だけを読んでも、さっぱり意味がわからないことが多いことです。
他の条文ありきの話なので、照らしあわせて読まないと分かりません。
そして、読んでいる内に、混乱してくること必至です。
こういうところが、法律文の取っ付きにくさなのかもしれませんが、これがしっかり整理できる頭が欲しいものです。

さて、閑話休題。

ここでは、作業間の連絡や調整について、規定されていましたが、安衛則にも規定されています。またその他の講ずべき措置もありますので、見て行きたいと思います。

【安衛則】

(作業間の連絡及び調整)
第643条の2
 第636条の規定は、法第30条の2第1項の元方事業者
(次条から第643条の6までにおいて「元方事業者」という。)
について準用する。この場合において、
第636条中「第30条第1項第2号」とあるのは、
「第30条の2第1項」と読み替えるものとする。
(クレーン等の運転についての合図の統一)
第643条の3
第639条第1項の規定は、元方事業者について準用する。

2  第639条第2項の規定は、元方事業者及び関係請負人に
ついて準用する。
(事故現場の標識の統一等)
第643条の4
元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の
作業が同一の場所において行われる場合において、
当該場所に次の各号に掲げる事故現場等があるときは、
当該事故現場等を表示する標識を統一的に定め、
これを関係請負人に周知させなければならない。

  1)有機則第27条第2項本文の規定により労働者を
    立ち入らせてはならない事故現場

  2)電離則第3条第1項の区域、電離則第15条第1項
   の室、電離則第18条第1項本文の規定により労働者を
   立ち入らせてはならない場所又は電離則第42条第1項
   の区域

  3)酸欠則第9条第1項の酸素欠乏危険場所又は
   酸欠則第14条第1項の規定により労働者を
   退避させなければならない場所

2  元方事業者及び関係請負人は、当該場所において
  自ら行う作業に係る前項各号に掲げる事故現場等を、
  同項の規定により統一的に定められた標識と
  同一のものによって明示しなければならない。

3  元方事業者及び関係請負人は、その労働者のうち
  必要がある者以外の者を第1項各号に掲げる事故現場等に
  立ち入らせてはならない。
(有機溶剤等の容器の集積箇所の統一)
第643条の5
第641条第1項の規定は、元方事業者について準用する。

2  第641条第2項の規定は、元方事業者及び
  関係請負人について準用する。
(警報の統一等)
第643条の6
元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の
作業が同一の場所において行われるときには、
次の場合に行う警報を統一的に定め、これを関係請負人に
周知させなければならない。

  1)当該場所にあるエックス線装置に電力が
   供給されている場合

  2)当該場所にある電離則第2条第2項に規定する
   放射性物質を装備している機器により照射が
   行われている場合
  3)当該場所において火災が発生した場合

2  元方事業者及び関係請負人は、当該場所において、
  エックス線装置に電力を供給する場合又は前項第2号の
  機器により照射を行う場合は、同項の規定により
  統一的に定められた警報を行わなければならない。
  当該場所において、火災が発生したこと又は火災が
  発生するおそれのあることを知ったときも、同様とする。

3  元方事業者及び関係請負人は、第1項第3号に掲げる
  場合において、前項の規定により警報が行われたときは、
  危険がある区域にいるその労働者のうち必要が
  ある者以外の者を退避させなければならない。
(法第30条の2第1項の元方事業者の指名)
第643条の7
第643条の規定は、法第30条の2第2項において準用する
法第30条第2項の規定による指名について準用する。
この場合において、第643条第1項第1号中
「第30条第2項の場所」とあるのは
「第30条の2第2項において準用する法第30条第2項の場所」と、
「特定事業(法第15条第1項の特定事業をいう。)の仕事」
とあるのは「法第30条の2第1項に規定する事業の仕事」と、
「建築工事における躯体工事等当該仕事」とあるのは
「当該仕事」と、同条第2項中「特定元方事業者」とあるのは
「元方事業者」と読み替えるものとする。


元方事業者が講じなければならない措置として、準用されるものは、次のとおりです。

1.作業間の連絡及び調整
2.クレーン作業の合図の統一
3.事故現場等の標識の統一
4.有機溶剤等の保管場所の統一
5.警報の統一


個別の内容について詳細は、特定元方事業者の職務の中で書いているため、ここでは触れないでおきます。

全項目を見て気づくのは、これらも製造業を想定しているということです。
製造業は工場などで物を作る仕事ですが、昨今では自社社員だけでなく、分業化も進み、一部を関係請負人(下請け)に注文し、工場内で作業しているというケースもあるようです。

同じ作業場の中で仕事をするものの、所属会社が異なるため、労働者への指示が行き届かなかったりすることで、事故が起こってしまったこともあります。

例えばこんな事例があったようです。
「食料品製造業の作業場で、台車を押していた構内下請事業場の労働者Aが、親会社の労働者Bが運転するフォークリフトと正面から衝突し坑内下請事業場の労働者Aが死亡した。
 
災害発生箇所は、作業者が台車を押して部品等を運ぶ通路であるとともに、フォークリフトが走行する通路でもあった。」
(参照:労務安全情報センター 18年改正労働安全衛生法30条の2(解説)

業種、人数を区分するのは困難なので、特定作業とまではいかないが、元方事業者として措置が必要になるものもあるということで、この条文が追加されたのだと思われます。

製造業でも工場内で、クレーンを使用する状況は多いです。また有機溶剤を使用しますし、事故や有害物も使用します。 労働者が巻き込まれるかもしれない危険が多々あるのです。

そのための措置として、一部措置を行うように定めたのです。

さて、最後にもう1点元方事業者、特定元方事業者が講じなければならない措置についてまとめます。
これは、救護に関する内容ですが、対象は建設業ですね。
安衛法第30条の3に規定されています。

第30条の3
第25条の2第1項に規定する仕事が数次の請負契約によって
行われる場合(第4項の場合を除く。)においては、元方事業者は、
当該場所において当該仕事の作業に従事するすべての労働者に関し、
同条第1項各号の措置を講じなければならない。
この場合においては、当該元方事業者及び当該元方事業者以外の
事業者については、同項の規定は、適用しない。

2 第30条第2項の規定は、第25条の2第1項に規定する仕事の
  発注者について準用する。
  この場合において、第30条第2項中「特定元方事業者」と
  あるのは「元方事業者」と、「特定事業の仕事を2以上」と
  あるのは「仕事を2以上」と、「前項に規定する措置」と
  あるのは「第25条の2第1項各号の措置」と、
  「特定事業の仕事の全部」とあるのは「仕事の全部」と
  読み替えるものとする。

3 前項において準用する第30条第2項の規定による指名が
  されないときは、同項の指名は、労働基準監督署長がする。

4 第2項において準用する第30条第2項又は前項の規定による
  指名がされたときは、当該指名された事業者は、
  当該場所において当該仕事の作業に従事するすべての
  労働者に関し、第25条の2第1項各号の措置を講じなければならない。
  この場合においては、当該指名された事業者及び当該指名された
  事業者以外の事業者については、同項の規定は、適用しない。

5 第25条の2第2項の規定は、第1項に規定する元方事業者
  及び前項の指名された事業者について準用する。
  この場合においては、当該元方事業者及び当該指名された
  事業者並びに当該元方事業者及び当該指名された事業者以外の
  事業者については、同条第2項の規定は、適用しない。

 

(法第30条の3第1項の元方事業者の指名)
第643条の8
第643条の規定は、法第30条の3第2項において準用する
法第30条第2項の規定による指名について準用する。
この場合において、第643条第1項第1号中
「第30条第2項の場所」とあるのは
「第30条の3第2項において準用する法第30条第2項の場所」と、
「特定事業(法第15条第1項の特定事業をいう。)の仕事」
とあるのは「法第25条の2第1項に規定する仕事」と、
「建築工事における躯体工事等」とあるのは
「ずい道等の建設の仕事における掘削工事等」と、
同条第2項中「特定元方事業者」とあるのは
「元方事業者」と読み替えるものとする。
(救護に関する技術的事項を管理する者)
第643条の9
第24条の7及び第24条の9の規定は、法第30条の3第5項
において準用する法第25条の2第2項の救護に関する
技術的事項を管理する者について準用する。

2  法第30条の3第5項において準用する
法第25条の2第2項の厚生労働省令で定める資格を
有する者は、第24条の8に規定する者とする。


法第25条の2は、数次の下請け関係があるトンネル工事や採石工事で爆発、火災等が生じた場合の労働者の救護と予防措置に関する規定です。
この規定も、特定元方事業者のみならず、元方事業者も行うことになっています。
業種は建設業対象で、複層の関係請負人がある場合とあります。
とはいえ、人数に限らず、救護措置は必要ということですね。

具体的には、消火設備や避難設備、救急時の連絡体制や場合によっては医療設備などが必要になってくると思います。
備えあれば憂いなしですが、よくあるのが消火設備などの品質期限が切れているということがありうるので、作業開始前には品質期限のチェックは重要ですね。

その他、1人を指名するなどもありますが、これについては、他の項目と同様なので、これくらいにしておきます。

さて、特定元方事業者、元方事業者の講ずべき措置について、一覧にまとめてみます。

避難等の訓練の実施方法等を統一すること。×○

講ずべき処置 元方事業者
(製造業その他)
特定元方事業者
統括安全衛生責任者、元方安全体制やを選任する。 ×
協議組織の設置及び運営を行うこと。 ×
作業間の連絡及び調整を行うこと。
作業場所を巡視すること。 ×
関係請負人が行う労働者の安全又は 衛生のための教育に対する指導及び 援助を行うこと。 ×
工程、機械・設備の配置、工事用の 仮設設備の配置等について、計画を立てること。 ×
クレーンの合図を統一すること。
事故現場の標識を統一すること。
有機溶剤等の容器の集積箇所を統一すること。
警報を統一すること。
避難等の訓練の実施方法等を統一すること。 ×
周知のための資料を提供すること。 ×
救護に関する措置。
(建設業)

特定元方事業者、元方事業者に限らず、作業場では最大限の安全と衛生を確保しなければなりません。
作業の中にも一歩間違えれば、大事故になるものが、多々あるものです。
そのような作業に従事している人がいるからこそ、何気なく使っているトンネルを通ることができます。
またスマホなど便利な製品のパーツも、有害な溶剤を使って製造していることもあります。

多くの製品や建造物は何かしらの危険作業を経て、私たちが使うに至っているのですね。

避けて通れない危険作業ですが、危険を危険のままに放っておくわけにはいきません。

最大限、労働者の事故を予防しなければなりません。健康被害を予防しなければなりません。


安衛法、安衛則の他に、クレーン則や有機則などの専門則でも、細かく規定はありますが、まずは現場作業全体を管理する元方事業者として、やれることはやらなくては行けませんね。


まとめ。
【安衛法】

第30条の2
製造業その他の業種の元方事業者も作業間の連絡と調整などの措置を講ずること。
1つの作業場に複数の元方事業者がいる場合は、措置を講じる元方事業者を1人指名する。
指名がない場合は、労働基準監督署が指名する。
第30条の3
トンネルや採石工事で、複数の関係請負人がある事業所では、元方事業者は救護等に関する措置を講じなければならない。
1つの作業場に複数の元方事業者がいる場合は、措置を講じる元方事業者を1人指名する。
指名がない場合は、労働基準監督署が指名する。


【安衛則】

第643条の2
元方事業者または関係請負人相互の連絡及び調整を行わなければならない。
第643条の3
元方事業者は、クレーンの合図を統一しなければならない。
関係請負人は、決められた合図を使わなければならない。
第643条の4
特定元方事業者は、事故現場や立入禁止の標識を統一しなければならない。
第643条の5
特定元方事業者は、有機溶剤等の容器の集積箇所を統一しなければならない。
第643条の6
特定元方事業者は、警報を統一しなければならない。
第643条の7
複数の元方事業者がいる作業場では、同意を得て1人を代表に指名すること。
第643条の8
複数の元方事業者がいる作業場で、1人を代表を定められない場合は、労働基準監督署長が指名する。
第643条の9
元方事業者は救護について、技術的管理者を定めなければならない。

 

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