今日も無事にただいま

「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

交通整理中の62歳男性死亡、ひき逃げ(宮崎県・日向市)

      2016/04/02

5960629412_80c1543b9f

道路舗装の工事など、建設業では路上で作業する機会が、他の業種によりも多いかもしれません。

道路上で作業する時、最も注意しなければならないことは何かというと、分かりますよね。

交通事故です。

作業しているすぐ側を、結構なスピードで車が行き交うのですから、結構怖いです。
運転している立場では、30キロ、40キロとゆっくり走っているようでも、工事している人にとっては、ほんの数十センチ側の話なので、結構怖かったりします。

道路上での作業は、警察に道路使用許可をとらなければなりません。
許可の条件には、交通誘導員(ガードマン)の配置が必要です。

車を運転していて、道路工事をしている時、交通誘導員が立っているのを見かけますよね。 片側1車線の道路で、片側通行規制を行なう時、どうしても車を交互に流さなければなりません。
これを車を運転している人任せにすると、事故になるのは言うまでもないでしょう。

道路作業中、交通事故防止のために交通誘導員が担う役割は、とても大きいです。
結構なスピードを出して行き交う車に正面から向かい合い、ストップさせ、誘導します。

車を運転してる立場としては、急いでるのに通行を妨げられるので、腹が立つこともあります。 多くの人は、イラッと来ることはあっても、それに従うでしょう。

でも、時々従わない人もいます。

とんでもなく危険です。 なぜなら反対側から車が来ていることもあるから。
急いでるのかもしれませんが、それはみんな同じ。 こんな自己中なのは、免許停止すればいいのと思います。

また、居眠りなどで交通規制に気がつかない車もあります。
停止せず、突っ込んでくる事故も、過去に例があります。

交通誘導員も作業者も命に関わってしまいます。

このように考えると、交通誘導員は、危険箇所の最前線に立つ仕事といえます。

さて、宮崎県の日向市で、交通整理中に、誘導員がひき逃げにあったという事故がありました。

今回はこの事例について、原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

交通整理中の62歳男性死亡、ひき逃げか 宮崎・日向の県道(平成27年6月2日)

2日午前8時15分ごろ、宮崎県日向市財光寺の県道で、交通整理中の土木作業員が軽トラックにひかれ、病院搬送後に死亡が確認された。

軽トラックはそのまま逃走し、県警日向署はひき逃げ事件として捜査している。

日向署によると、現場は片側1車線の直線で、被害者は近くの建設現場に重機を移動させるため、交通整理をしていた。 軽トラックの後続の車を運転していた男性が目撃し、110番した。

産経新聞

この事故の型は「交通事故」で、起因物は「自動車」です。

この事故の後追い記事です。 ひき逃げした人は逮捕されたようです。 逮捕されたのは、82歳の男性でした。

交通整理の警備員をひき逃げ、82歳の男を逮捕(平成27年6月6日)

2日午前8時15分ごろ、宮崎県日向市内の県県道で、交通整理を行っていた62歳の男性警備員に対し、停止指示を無視した軽トラックが衝突する事故が起きた。男性は死亡。クルマは逃走したが、警察は後に82歳の男をひき逃げ容疑で逮捕している。

宮崎県警・日向署によると、現場は日向市財光寺付近で片側1車線の直線区間。事故当時は路上駐車していたトラックから重機を降ろし、近くの工事現場へ移動させる作業が行われており、62歳の男性警備員は交通整理を実施していたところ、軽トラックが停止指示を無視して進行。そのまま路上に立っていた男性をはねた。

男性は近くの病院へ収容されたが、全身強打が原因で死亡。クルマは現場から逃走したため、警察はひき逃げ事件として捜査を開始したが、周辺捜索していた署員が前部に衝突痕のあるクルマを発見。運転していた同市内に在住する82歳の男に職務質問したところ、事故への関与を認めたことから、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失致死)と道路交通法違反(ひき逃げ)容疑で逮捕している。

聴取に対して男は「人をはねたことは間違いない」などと供述しているようだ。警察では逃走した動機を追及するとともに、事故発生の経緯を詳しく調べている。

Response15

片側1車線の県道で重機を降ろす作業をするために、交通整理をしていたときに事故は起こりました。

おそらく片側交互通行規制だったと思われます。

片交規制の場合、一方の車を停止させ、その間にもう一方から来た車を通行させます。 これを交互に繰り返します。 一度に両方から車が通行すると、1車線しかないのですから、衝突しますね。

誘導員の方が停車の指示を出していたところ、1台の軽トラックが指示を無視して突っ込んできました。 そして、誘導員の男性をはね、そのまま逃走したという事故です。

軽トラに乗っていたのは、82歳の男性。 数日後、逮捕されました。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

何と言っても、事故の原因は、指示無視による突入でしょう。
これは年齢なども差し引いても、モラルの問題と言えます。

82歳という高齢を考慮するならば、指示が分からなかったのではという推測も成り立つかもしれません。
しかし、交通規制の現場に立ち会ったのが、今回初めてで分からなかったということは、ないでしょう。 また人をはねた後、逃走したのですから、判断力がなかったとも言いがたいです。

パニックになった、怖くなったから逃走したというのは、あるでしょうけど。

車を運転する人のモラルに頼らざる得ない状況というのは、交通誘導員にとって気が気ではありません。

では、規制する側に問題はなかったかという点も検討してみます。

まず、誘導員の立ち位置は適切だったか?
もしかすると、車を止めようとして前に飛び出したのかもしれませんが、通行する車道上に陣取っていたならば、危険だったかもしれません。

今回のケースではありませんが、時々誘導員が通行する車道ギリギリの場所に立っていることもあります。
ほんの車との距離が、10センチ程度しかないような場合もあるので、そんな所に立たないでほしい。

次に、停止を明確に伝えていたかです。

基本的に、停止を促す場合のサインは、赤色灯を水平にします。
赤色灯を胸の前で水平に持ち、頭を下げられるというのも見たことはないでしょうか?

通行させる時は、赤色灯や手を左右に振ります。 文字通り、誘導するわけですね。

こういうのはローカルルールではなく、全国的に同じなのではないでしょうか。

意図的に無視しない限り、これらのサインで、止まらなければいけないなとか、進んでいいんだなと理解できるはず。

ただ、高齢者には、それらのサインが分かりづらいのかもしれません。

しっかりと見て、理解してもらうための設備や対策が必要になるのではとも思われます。

それでは、原因を推測してみます。

交通規制時、停止を無視して車が突っ込んできたこと。
誘導員が車に接触する位置に立っていたこと。
指示が明確に伝わっていなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

交通規制を行う場合には、誘導員の配置だけでなく、看板や案内、バリケードなどの保安用品を十分に配置しなければなりません。
このような対策により、行き交う車の安全と、作業者の身を守ります。

しかし、これだけ規制しているのを見ても、高齢者は分からないかも知れません。
(正直、そこまでわからないんだったら、車に乗らないでくれと思うのですが)

今後は、超高齢化社会に突入します。
信号や合図の見落としや誤解も増えてくる可能性があります。

もっと明確に、誰もが少しの誤解のないように、分からせるという方法も検討する必要があります。

もしかしたら赤色灯を水平にするのが停止と分かりづらいかもしれません。
それが大きく、はっきりとした文字で、「止まってください」と表示するのも1つの手段かもしれません。
夜間に電光掲示板などで案内があるでしょうが、昼間でも遠くからでも見える方法も検討の余地有りです。

こういった設備の改良は、すぐにはできないかもしれません。
すぐに対処できるものとしては、誘導員の配置場所などの作業計画の検討です。

暴走してきたことも考慮する、通行車道上には立たないなどの計画と徹底はできるのではないでしょうか。

対策をまとめてみます。

停止などの指示をはっきり、明確に伝える。
誘導員を安全な位置に配置するように作業計画を立てる。

一番は改善すべきことは、車を運転する人のモラルなんですよね。
こればっかりは事業者がどうこうできる問題ではないのでと思います。

事業者ができることは、誘導員の安全を確保するための対策をとることです。
作業計画や保安設備の配置で、なるべく事故に巻き込まれないようにする必要があります。

ところで、これから日本は超高齢化社会に突入します。

必然的に、70歳以上の方が運転することも多くなります。 警察では高齢者を対象に、免許の返納を促していますが、都会ならともかく、地方では難しいでしょう。

なぜなら、車がないと移動手段がないから。 バスや電車は、都会ほど網羅されていません。

一人暮らしや夫婦だけで生活している世帯では、ちょっと買い物に行くにしても、車が必要になります。

menkyo_hoyu年齢層別運転免許保有の比率

統計を見ると、平成25年で、免許保有は男性で50%近くに上ります。
全ての人が運転するわけではないでしょうが、運転は出来る人も多いということです。

自分で運転しなくても、社会福祉協議会等が提供する運転サービスもあるよと言う意見もあるでしょう。 病院などに行くのでしたら、有効です。 しかし、地方だと田んぼや畑作業に従事している人も少なくありません。 田んぼに行くのに、運転してもらってというのはなく、自分で軽トラに乗ってという人がほとんどです。

だいたい近所の運転でしょうが、近所で交通規制がないとも限りませんので、今回のような事故も起こり得ます。

高齢運転者が関与した交通事故発生状況(平成26年中)

aged_truffic_accident_data
(高齢運転者が関与した交通事故発生状況
(平成26年中)
aged_truffic_accident_data2
(違反別にみた交通事故発生状況

警視庁

高齢者が関わる事故ですが、平成26年度で、総事故に占める割合が約20%にもなります。 グラフの傾向を見ればわかると思いますが、上昇傾向です。 今後も増えることが見込まれます。

事故原因も、安全確認の欠如に関わるものが多いといえます。 これは、加齢のよるものなので、仕方がないとも言えます。

しかし、事故の原因になっているのですから、仕方ないで済ますわけにもいかない状況です。

警察や自治体では、先に上げた免許返納を呼び掛けたり、講習会を開いたりして、事故を減らすような取り組みをされています。

政府広報オンライン「高齢者の交通事故を防ぐ」

とはいうものの、そもそも講習会に参加してやろうという人は、事故を起こす可能性は低いのでは。 むしろ「そんなもの必要ない」と思っている人のほうが、危険運転をしているのではないでしょうか。

個人的に対策として、有効だと思うものがあります。

それは、最近開発が進んでいるようですが、自動運転システムを実用化することとではないでしょうか。

高齢者の運転が危ないのであれば、運転させなければいいのです。 しかし足がない。

自動運転で、行き先だけセットして、あとはお任せになると、ご認知、ご操作による事故は減るのではないでしょうか。

海外でもグーグルカーなど、公道を使ったテストをも行っているようです。

真偽の程は分かりませんが、辛坊治郎さんの著作によると、日本のメーカーはかなり段階まで開発が進んでるとか。

「ニュースで伝えられない この国の真実」辛坊治郎著 KADOKAWA/中経出版 

じゃあ、何でまだセーフティアシスト機能だけしか実装してないの?というと、辛坊さんの著作では、免許制度とか道路管理にからむ利権とか云々かんぬん。

それはさておき、昨日には、こんなニュースもありました。

自動運転実用化へ 国内メーカーが共同開発(NHKニュース 平成27年6月24日)

ぼやぼやしていると、あっという間にアメリカや韓国などが、自動運転カーを実用化し、遅きに失します。

今の流れから考えると、自動運転の実用化は不可避でしょう。 早いか遅いかの違い。

運転の怪しい人に運転させて危険ならば、いち早く運転させない施策が必要ではないでしょうか。

チンタラしていると、それだけ被害も続きます。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【安衛法】

第24条
事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

これについては、全ての事故に共通するのですけども、今回の事業者にも適用されるかもしれません。

もちろん、事故を起こし、逮捕された人は、道交法の自動車運転死傷行為処罰法違反と道路交通法違反になります。

iQiPlus

 - 交通事故, ○事故事例アーカイブ