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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

宮城・丸森町の採石場での落石事故

      2015/05/30

建設業の元方事業者の中でも、特に危険がある特定作業を行う場合は、特定元方事業者となります。
特定元方事業者は、安全衛生の責務も多くなり、労働者の安全に対して十分な対応をとらなけれがなりません。

が、面倒くさがり屋なのは解消できませんね。
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建設業は、危険と隣り合わせなのです。
これは特定作業に従事する場合以外にも同様です。

墜落、機械と激突する、岩や資材が落下してくる。
事故のパターンは枚挙に暇がありません。

最近(平成26年9月)でも、大きな事故がありましたので、事例を紹介したいと思います。

事故の経緯は次のとおりです。
宮城・丸森町の採石場、落石で1人下敷き 1名死亡
(平成26年9月4日)

平成26年9月4日7時半頃、宮城県丸森町にある採石場で、4人で作業が行っていました。
被災者が重機に乗って岩山に穴を開ける作業をしていたところ大量の岩石とともに、直径3mの岩が崩れ落ちてきて重機に直撃し、下敷きになってしまいました。
被災者以外の3名はすぐに逃げて無事でした。
消防や救急などにより救助され、病院に搬送されましたが、間もなく死亡が確認されました。


(参照:ヤフーニュース

事故の型は「倒壊」で、起因物は「地山、岩石」ですね。

事故までの作業状況などがわからないため、原因については不明ですが、いくつか考えられることもあるので、推測してみようと思います。

まず、2m以上の採石作業では、「採石のための掘削作業主任者」という作業主任者を選任する必要があります。
作業主任者は作業を直接指揮しなければいけません。(安衛則第403条)
被災者は作業責任者ということですので、この方が作業主任者だったかもしれません。
作業主任者であれば、本人が重機作業を行っていたので、作業場全体を見れていなかったかもしれません。
特に落石等の状況を見ながら、指揮を執っていたか?ということが考えられます。
作業主任者の職務として、退避の指示もありますが、被災者が作業主任者であれば、指示を出す間もなかったかもしれません。

次に、作業開始前に、周囲の点検を行ったかということがあります。
事業者は、悪天候や地震の後や作業の開始前に、点検者を指名して、周辺地山の亀裂、落石、湧水、浮石などの点検を行わせなければなりません。(安衛則第401条)
浮石というのは、崖で今にも落ちそうなグラグラした石のことです。
採石や掘削作業は、ショベルカーなどの重機を使うので、かなりの振動になります。グラついている石があれば、振動で落ちてきてしまい危険です。
そのため、浮石や亀裂など、落ちそうなところは、あらかじめ落としておくと危険が減りますね。

また採石にあたっての作業計画がしっかり検討され、作成されていたかというのもポイントです。(安衛則第400条)
公共事業などでは施工計画は必須です。しかし社内での作業については、省略されてしまうことが多いです。
どうしても施工計画などは、見せる相手がいて作成するものになりがちで、安全に作業するためでは省略されてしまうんですよね。

さて、以上のことを踏まえて、事故原因推察をまとめたいと思います。

1.作業前の点検で、浮石など落下の恐れのある岩を見逃していた。

2.作業主任者による直接指揮がとられていなかった。

3.落石があった場合の退避方法など作業計画が作成されていなかった。

4.事前にKYなど危険事項について作業者同士で確認していなかった。


現在、警察や労働基準監督署により調査が行われているかと思います。
ここであげた原因は、他の事例を参考に、往々にして見られるものなので、実際にどうだったかはわかりません。

これもおそらくの話になってしまうのですが、日常的に行っている作業は慣れていくので、特に危険を意識することはないでしょう。
ずっと作業をしてきて事故などなかったのですから、今日いきなり危険があるなんて、考えないものです。

長年、日常的に車を運転している人は、慣れているので、事故が起こることなんて頭にないでしょう。
ただただいつもと同じように事故なく、危険なこともなく運転をしていると思います。
しかし交通事故は起こってしまいます。
交通事故を起こした人は、ほぼ全員が事故を起こそうなんて思っていなかったと思います。
そして、車に乗り込むときに、今日事故が起こるなんて思っていなかったと思います。

労働災害も同じです。
誰も事故を起こしたいなんて思っていません。
事故に巻き込まれたいなんて思っていません。

ネイティブアメリカンの諺だったかと記憶しているのですが、
「今日は死ぬにはいい日だ」
という言葉があります。
とてもかっこいいフレーズで、ブルース・ウィリスが言うならば、しびれます。
ですが、どの現場で作業に従事している人にとって、「死ぬにいい日」なんてありません。
それに誰も、事故にあうなんて思いも寄っていないと思います。

この落石事故で被災した方も、ある程度のキャリアがあり、作業責任者となられていたと思います。
自身で重機を運転し、作業内容もしっかり把握されていたと思います。
しかしながら事故は起こってしまうのです。

点検で浮石をや、崩れやすい箇所があるのを見つけ、対処していれば事故は起こらなかったかもしれません。
事故が起こった後では、あの時こうしておけばよかったという思いがあります。
このケースでなくとも、ほんの些細な手間を惜しんでしまって、後悔することもあるかと思います。
きちんとやったら面倒なことも多々あるのも確かですが、命を失っては、後悔すらできなくなります。

危険に慣れない。
サーカスなどで、調教された猛獣でも、気分次第で時に調教師に襲いかかる危険性があります。
仕事の現場では、自然を相手にしたり、機械を相手にしたりと一様ではありません。

あの時、しっかりと点検しておけばよかった、というような後悔が減れば、きっと事故も減るんじゃないかなと、自分自身も気を引き締めなければと思うのです。

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