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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

自動車のセーフティアシストは、安全管理にどんな影響を与えるか?

      2016/06/08

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リスク・アセスメントで洗い出された危険に対しては、どのように対処していくのか。

リスクというのは、「危害を受ける可能性」と「被害の大きさ」の組み合わせです。 可能性を減らし、被害を小さくするために行なうものが、リスク低減に向けた対処です。

対処するのには、順番があります。

1.本質的対策

2.工学的対策

3.管理的対策

4.保護具等の着用

この順番で、対策を検討していきます。

個々の対策について、簡単に説明してみます。

本質的対策 仕事の内容そのものを見直す。
中には作業を廃止したり、全く別の方法にしてしまうことも含みます。 材料もより危険度の少ないものに変更も本質的対策です。

工学的対策 今使っている機械より、より安全性能が高い機械を導入するなどです。
機械の配置を変えたり、防護柵を作ったりすることも工学的対策です。

この辺りまで、ハード的な対策と言えます。
当然、かなりの費用や時間がかかってしまいますが、大幅にリスクを軽減が期待できます。 リスク・アセスメントは事業者、つまり経営者が主体的に行なうものですので、結構思い切ったこともできるのです。

次からソフト的な対策です。

管理的対策 マニュアルや作業手順書の整備や、「危険!注意!」などの掲示を行ったりするものです。

保護具などの着用 ヘルメットをかぶったり、手袋をつけたりなど、多少なりとも被害を軽減するものです。

これらソフト的な対策は、どうしても効果は劣ります。

これらの対策について、1つ例を挙げてみます。
足場を使った高所作業というものを想定してみましょう。

高さ10メートルの場所で、足場を組み作業するとします。 この作業は「高さ」という危険源があります。

この危険源を踏まえ、リスクを軽減するにはどうしたらよいでしょうか。

本質的対策を行なうということは、高所作業自体をなくしてしまうことです。
工学的対策ならば、手すりをつける、安全ネットをつけるといったものです。
管理的対策は、作業手順を定め、作業者に教育する。そして「転落注意」と掲示を張り、監視人をつけるといったものです。
保護具などは、ヘルメットをかぶる、安全帯を着用するというものです。

高所作業をなくしてしまうのは、高所作業車を使うといったものが考えられますが、墜落リスクは残りますね。
代替案があればよいのですが、難しそうです。

手すりをつけるいった工学的対策なら、できそうですよね。 しかし、設備を揃える必要があるので、それなりに費用もかかります。

管理的対策は、低コストでできますし、すぐにできます。
ただし、墜落リスクはなくなっていないことに注目です。 人の注意力に頼ったものであることも忘れてはいけません。

保護具の着用は、個人個人の問題ですが、管理者が注意して徹底させることができます。
しかし管理的対策と同様、墜落リスクは減っていません。 足を滑らせても、安全帯で一時的に墜落を免れるかもしれませんが、根本的な解決ではないのは分かりますね。
こんな言い方は語弊がありますが、痛みを和らげる程度の気休めにならないこともあります。

必ず、本質的対策や工学的対策を行えというわけではありません。 予算や時間、作業特性など考え、最適化していきます。 それに、すぐに完璧にする必要もありません。

とりあえず、保護具だけしかできないなら、まずそれだけでも行い、リスクを少しでも下げるのも重要です。
後々、予算が組めたら、より大掛かりな対策を行なうこともできるのですから。

ただ、可能であれば、工学的対策などを行なうと、リスクが下がるということも覚えておく必要はあります。

index_arrow 自動運転について、どう考えているか

自動車について、ここ数年、自動運転というのが現実味を帯びてきました。

2013年には、Googleが公道で自動運転のテストを始めました。 日産は2017年から20年かけて、自動運転実現に向けて動いていくそうです。

自動運転は、交通安全という観点からはどのようなメリットがあるのでしょうか?

自動車の運転においてつきまとうリスクは、交通事故です。 交通事故は、対人、対物、車同士の衝突、追突など、道路でありとあらゆる状況で起こります。

事故の時、最も多い原因は、「安全運転義務違反」だそうで、約70%を占めています。 次いで、信号無視や右折違反などが続きます。

「安全運転義務違反」とは、漫然運転や脇見運転、安全速度、安全不確認などを含みます。
こんなのは運転してたら、一度や二度やってしまいますよね。 たまたま事故が起こらなかっただけです。

何かしらの違反があって事故になっているのですから、人間が運転することが、事故原因なのではと思われます。

事故防止の対策としては、どんなのがあるでしょう?

シートベルトを締める、チャイルドシートを着けるは、当たり前に行われていますね。
これは先程の対策で言うと、保護具の着用に当たります。 事故の衝撃を和らげることができますが、確実に事故を予防するものではありません。

運転の時には、「かもしれない運転」というものがありますよね。 危険予知というものなので、作業前に行なうKY活動と同じです。

また、会社で交通ルールの徹底を行なう、警察が取り締まっているから、飲酒運転をやってはいけない風潮があるからなどは、管理的対策といえます。

これらは、運転手の意識に頼ったものなので、個人差があります。

北海道の砂川市で、飲酒運転の上、100キロオーバーのスピードで走り、軽ワゴンに衝突したという事故がありましたが、これは運転手の意識として、安全運転が欠落しきったものと言えます。

車衝突、一家4人死亡 北海道・砂川の国道 後続車、長男引きずる?(北海道新聞 平成27年6月8日)

すこしタガが外れるだけで、このようなことがあるのですから、交通事故防止の取り組みは、人の意識に頼るだけでは、難しいと言えます。

一方で、自動車メーカーは車の安全性能を高めてきてますね。 セーフティアシストというものです。

エアバッグやABS、四方にセンサーをつけ、接近するものがあればアラームを出す、衝突する前にブレーキを自動で掛ける、白線から外れそうなら自動的にハンドルを補正するなどの機能を持った車が多く発売されています。

これらは車自体が安全性を高めようという取り組みです。 これらは工学的対策と言えます。

では、本質的対策とはなにか。 車を乗らないということ、道路に出ないということでしょう。 全ての移動は電車でという人は構わないですが、地方に行くとそうはいきません。 現実的な話として、困難ですよね。

メーカーとしても、車に乗らないとされてしまうと困るわけです。 そのため、工学的対策により力が入ります。

そこで、最近の工学的対策として、注目しているのは、自動運転です。

そのそも人が運転しない。 本質的対策にもなりそうな、発想の転換ですね。

自動運転は完全にコンピューターに運転を任せるのですが、世間的に受け入れられるでしょうか。

オークネット総合研究所が2014年に行ったアンケートでは、こんな結果です。

■自動運転車を『購入したい』『どちらかと言えば購入したい』が合わせて49.6%。 (『購入したくない』『どちらかと言えば購入したくない』13.9%)
■自動運転技術に最も期待するものは「安全性」(29.7%)であり、年代別に確認しても「安全性」への期待が一番高い。
■消費者の自動運転技術に対する支払可能金額は「0~10万」(43.3%)が最多となり、年収別に 確認すると「0~50万」に回答が集中した。
■自動運転車の利用目的は「レジャー」(40.4%)が最多となった。
■自動運転車を購入したくない理由は「安全面の不安」(44.5%)が最も多く、 続いて「自分で運転したいから」(34.2%)となった。

オークネット総合研究所消費者アンケート結果~自動運転技術への期待とニーズ~

ほぼ過半数ということで、比較的好意的であると言えます。 そして、何より期待しているのが「安全性」であるというのが分かります。 一方で、不安要素も「安全面での不安」というのが最多です。

これは安全性に期待しているけども、反面機械任せに不安があるということでしょう。

ところで、自動運転は安全に効果的なのでしょうか?

期待される使用先としては、長距離運転のトラック、タクシーなどが考えられます。

特に期待したいのが、高齢者の運転! 地方では、高齢者が運転していることも多く、事故も多いです。

とりあえず、周りの人も怖い。

じゃあ、運転しなければいいじゃないと思うのですが、バスや電車が不便で、デマンドタクシーなどのサービスも充分でないところでは、自分で運転なども多いのです。 それに、ちょっと田んぼや畑に行くのに、バスやタクシーなど使えません。

高齢者の交通事故を減らせるのではと思うのですが。

ただ、自動運転を備える場合、心配になるのが価格です。 上記のアンケートでも、「消費者の自動運転技術に対する支払可能金額は「0~10万」(43.3%)が最多となり、年収別に確認すると「0~50万」に回答が集中した。」とあるように、高過ぎると買えませんという感じです。

これは、現行車にも搭載されているセーフティアシストについても、同じですね。 技術の進歩により、良さそうな機能があっても、費用面で足踏みする。

よくありそうなことです。

index_arrow 安全管理に置き換えると?

車の自動運転では、費用面や安全面での不安はあるものの、全体的に購入に前向きで、安全性の向上に期待されているのが分かりました。

これを安全管理に置き換えると、どうなるでしょう。

事業者、経営者として会社全体の安全を考える場合には、リスク・アセスメントを行なうことが最近の風潮です。

リスク・アセスメントは、従業員の誰かにやらせるものではありません。

事業者、経営者が行なうものです。 つまり、生産活動や営業活動と同じ事業の一環です。

従業員や労働者ができることは、KYやヒヤリ・ハット、マニュアル作成などの管理的対策や保護具の着用が限界です。
一方、事業者・経営者が主体となることで、対策の幅も広がり、質も高くなります。

作業方法の見直しや、時には廃止、原材料の変更、機械設備の変更などは、従業員ではできませんよね。

上記で例で言うと、手持ちの車に安全性能を盛り込むことは、運転手にはできません。 安全性能の高い車を購入するかどうかは、家庭では決済者が握ります。

この決済者は、会社組織だと経営者になります。

作業のやり方を検討し直す、安全性の高い機械を購入するなどは、場合によってはかなりのリスクを低減します。
ただし、コストもかかります。
安全管理は、直接生産に関わるわけではないので、どうしても費用対効果が見えにいので、後回しになってしまいます。

これは自動運転に対する意識と同じように思います。

あったらないいなと思うけど・・・という感じで。
費用面でもそうですが、本当に効果があるのか確証がない。 自分で運転したい人にとっては、自動運転には反ぱつを感じるでしょう。

全てひっくるめてのリスク管理です。

事業者がリスク・アセスメントを行なうのは、こういうジレンマも考えることになるのです。

自動運転に対する意識は、このジレンマの表れじゃないかなと思うのでした。

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