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河川工事準備でクレーンが横転(福島県相馬市)

      2017/05/26

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建設業で欠かすことができない機械は、何といってもショベルカーです。
これと同じくらい欠かせないのが、移動式クレーン、つまりクレーン車です。

重いものを移動させられなければ、仕事になりません。
もし人の力だけで、1トンのものを運ぶとなると、多くの人数と時間が必要です。
大阪城の石垣には巨大な石がありますが、これを運ぶのは大変だったことでしょう。
クレーン車は、この問題を解決してくれるのです。

しかし強大な力を持っている機械は、その分取り扱いも注意が必要です。
一度事故が起こると、被害が大きくなるのです。

重いものを持ち上げるのですから、何よりも足元を固めるのが大事です。
軟弱な地盤では、重さを支えきることができなくなります。

福島県の相馬市で、まさに軟弱な地盤で、クレーン車が支えきれなかったという事故が起こりました。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

相馬・宇多川でクレーンが横転 河川工事準備、けが人なし(平成27年7月21日)

県は21日、相馬市の宇多川で20日午後、県発注の河川工事の準備を進めていた25トンクレーンが横転する事故があったと発表した。運転手の男性や、周りにいた作業員にけがはないという。

県によると、20日午後1時10分ごろ、宇多川の堤防脇の管理用道路で、車体安定装置で4カ所を固定しながら、クレーンで作業をしていたところ、片側の2カ所がアスファルトを貫通して地面にめり込み、クレーンが横転した。大雨でアスファルト下の地面が緩くなっていたのが原因とみられる。24日に撤去するとしている。

福島民友新聞(リンク切れ)

この事故の型は「転倒」で、起因物は「移動式クレーン」です。

大雨の後の事故でした。 川沿いのアスファルト道にクレーン車を設置し、アウトリガーを伸ばし、作業していたところ、アウトリガーの足下が沈みました。
これによりバランスを崩したクレーン車は、吊り荷の重さに引っ張られ、転倒したのです。
幸い、周りの作業者はこの転倒に巻き込まれず、怪我人はいませんでした。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

クレーン車を使用するときには、必ずアウトリガーを張り出します。
アウトリガーとは、吊り荷作業時の足、支えになるものです。 車体よりも幅広な支えを行うことで、安定度を増すのです。

この事故でも、前後4本のアウトリガーが伸ばされ、車体の安定は確保されていました。

問題は、クレーン車を支えることになる地盤の方にありました。

前日までの大雨で、地盤は多量の水を含んでいたのです。

しかし、クレーン車を設置したのは、アスファルト舗装の上です。
通常、アスファルトは非常にしっかりしています。 周りで掘削作業を行っているならともかく、舗装している場所が沈むなんて、夢にも思わなかったことでしょう。

雨水はアスファルト舗装の下の路盤にも浸透していたのでした。

アウトリガーは4点で車体と吊り荷の荷重を支えます。
25トン吊りクレーンだったので、1箇所に数トンの荷重がかかっていたはずです。
緩んだ地盤ではこの荷重を支えられず沈み、アスファルトもそれに従って沈み割れたのでした。

クレーン車を設置するときには、地盤を確認しなければなりません。
もし地盤に十分な強度がなかったら、補強しなければなりません。

この確認と補強の不足が、この事故を招いたようです。

それでは、原因を推測してみます。

作業前に地盤の強度について検討していなかったこと。
鉄板などで地盤の補強をしていなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

作業や設備によっては大雨の後に点検が義務付けられているものがあります。 掘削している断面や足場などですね。

悪天候時にできること。

クレーン車設置の地盤の確認については、明記はありません。
舗装されていない土の上に設置となると、地盤の様子を確認したと思います。
アスファルトであれば、大丈夫と思ってしまうのも仕方ないのかもしれません。

しかし、河川工事のための準備作業中だったので、川沿いの道だったと思われます。
堤防はコンクリート御願されていなければ、土の面がむき出しです。
アスファルト舗装は完全な蓋になっておらず、両脇から浸水が起こるのです。

もし周囲の地面が大量に水を含んでいるようでしたら、補強が必要です。
補強は、鉄板などを敷きます。

大雨の後、大丈夫かなと思ったら、念のため鉄板を敷くというのがよさそうです。
とはいうものの、急に鉄板を準備するのは難しいですね。

対策をまとめてみます。

悪天候、地震のあとは地盤の含水について調査する。
敷き鉄板などで地盤を補強する。
地盤が安定するまで、作業を延期する。

アスファルト舗装の上は、強度があるので、補強しなければという発想になりにくいです。
一般道などではともかく、舗装のすぐ脇が土という場所では、雨水の浸透が起こりやすいので、注意が必要です。

幸い、運転者も含め、怪我人がいませんでした。 作業者が安全な位置に配置していたことは、何よりでした。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【クレーン則】

第70条の3
事業者は、地盤が軟弱などの場所では、移動式クレーンを 用いて作業を行ってはならない。
ただし、必要な広さと強度の鉄板を敷くなどの措置をとった場合は、この限りではない。
第70条の4
事業者は、アウトリガーを当該鉄板等の上で移動式クレーンが転倒するおそれのない位置に設置しなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

移動式クレーンに関わる規定 現場作業編1

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