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ショベルカーで吊っていた鉄板が落下し、下敷きになる事故(埼玉県草加市)

      2016/01/22

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建設業では、ショベルカーを使用することが非常に多いですが、用途は掘削だけにとどまりません。

割とよくある使い方が、クレーンのように吊り荷作業を行なうというものです。
しかし、この使い方は、用途外の使い方なので、原則としてはやってはいけないものなのです。

確かにショベルカーは、強大な力を持っています。
重量物であっても、持ち上げることができます。

それであっても、吊ることに特化したクレーンに能力は及びません。
吊ることはできても、限界があります。

本来は用途外の使用は、今や当たり前のように行われるため、建機メーカーも「移動式クレーン機能付ショベルカー」を作っています。

移動式クレーン能力が付いていてもショベルカーは、ショベルカーです。
作業時の危険性は、大きく減少しません。
そのため、ショベルカーによる吊り荷作業時の事故もよく起こってしまうのです。

今回は、ショベルカーでの通理に作業時に起きた事故を取り上げ、その原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

鉄板の下敷きに 頭強く打ち男性作業員が死亡(埼玉県草加市)
(平成27年7月25日)

25日午後0時40分ごろ、草加市の宅地造成地で、作業をしていた建設作業員が鉄板の下敷きになり、頭を強く打つなどして間もなく死亡した。

草加署によると、被災者のすぐ近くでは、別の男性作業員が、ショベルカーで敷いてあった鉄板(縦3メートル、横1・5メートル、重さ800キロ)をワイヤでつり上げ、トラックに積み込む作業をしていた。 3枚目の鉄板をトラックに積み込んだ際、鉄板が滑り落ち、しゃがんで作業中の被災者を直撃したらしい。

現場には2人のほか、7人が地ならしなど、それぞれの作業をしていたという。同署は業務上過失致死の疑いで、関係者から事情を聴いて調べている。

埼玉新聞

この事故の型は「飛来・落下」で、起因物は「ショベルカー」です。

ショベルカーで、800キロの鉄板を吊り上げ、トラックに載せようとしていたところ、掛けていたワイヤーが外れ、近くで作業していた作業者の上に落ちた事故です。

鉄板の下敷きになった作業者は、亡くなってしまいました。

このショベルカーで、鉄板を吊り上げる作業が、本来の使い方から外れた用途外の使用方法になります。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

工事現場では、敷き鉄板をよく使います。

よく見かけるのは、作業場の出入口に敷いているものではないでしょうか。
工事現場には、数多くのトラックやダンプが出入りします。 重量のある車両が繰り返し通ると、道路の舗装が割れることもあります。
この破損を防ぐために、鉄板で保護するのです。

出入口以外の作業でも、舗装を保護したり、地面がぬかるみ、緩く作業に支障がある時などに鉄板を使います。

この事故が起きた時も、工事現場で使用した鉄板を持ち出そうとしていたのではないでしょうか。

ショベルカーの用途外作業は、いかなる場合も禁止というわけではありません。
ただし原則として、クレーン車などが使える場合は、クレーン車を使います。

ショベルカーで吊り荷作業を行なうのは、次の時だけです。

1.地盤がゆるく弱いため、クレーン車を使うことができない。
2.作業場に、トラックやショベルカーなどが数多く行き交っているので、クレーン車を持ち込むと危険。

このような場合は、用途外の使い方ができます。
1、2の条件に当てはまらなくても、使われることが多いのが実情ですけどね。
事故現場となった造成地の地盤状態は不明ですが、もしかすると条件外で使われていたのかもしれません。

また使用条件をクリアし、吊り荷作業を行う場合も、準備が必要です。
準備には、作業手順を決める、作業範囲は立入禁止にする、合図者を決めるなどがあります。

クレーン車よりも、吊る能力が劣るのですから、落下するリスクも高いのです。
近くにいるのは非常に危険ですよね。

おそらく、土木クレーン車よりもショベルカーが身近にあり、使い慣れていたのでしょう。 吊り荷作業も、日常的に行われていたのかもしれません。

鉄板の玉掛けが十分でなく、外れてしまったこと。
用途外使用であること。
吊り荷付近で作業しているなどが、事故の直接的な原因になりそうです。

それでは、原因を推測してみます。

ショベルカーを用途外の使い方をしていたこと。
作業範囲を立入禁止にしていなかったこと。
玉掛けが不十分だったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

ショベルカーによる吊り荷作業は、用途外であるということは知っておく必要があります。
そして、やむを得ない場合を除き、クレーン車を使うようにしなければなりません。

会社にクレーン車やユニック車がないというところもあると思いますが、鉄板などの運搬には、せめてユニック車を使うようにしたいものです。

作業を行う場合は、事前に作業手順を定め、合図者を決めます。
そして、吊り荷作業の範囲は立入禁止とします。

さらに、吊り荷が外れないように、しっかり玉掛けをしなければなりません。
玉掛けには、玉掛けの資格が必要です。 ショベルカーで吊ることができる重量は、どんなに大きな車体でも最大1トンまでです。

そのため、少なくとも特別教育を受けた人が玉掛けを行わなければなりません。

資格は、玉掛け以外にも、移動式クレーン特別教育が必要になります。
もちろん、車両系建設機械運転者の資格も必要です。

用途外使用のためには、3つも資格が必要になるのです。

対策をまとめてみます。

クレーン車を優先的に使うこと。
用途外作業時は、作業範囲の立入禁止などの対策を行なう。
玉掛けやクレーン作業は、有資格者が作業を行う。

ショベルカーでの吊り荷作業は、作業場の条件に関わらず、非常によく行われています。

移動式クレーン付のショベルカーを使うことで、多少は安定性を増しますが、細心の注意を必要とする作業であることには違いありません。

普段当たり前のようにやっている作業であっても、実は危険というものがあります。
ショベルカーの吊り荷作業も、そういった作業といえそうです。

index_arrow 違反している法律

【安衛則】

第164条
車両系建設機械を、荷のつり上げ等の主たる用途以外の用途に使用してはならない。
ただし、やむを得ず使用する場合は、相応の措置をとること。

 

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

車両系建設機械の主たる用途以外の使用

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