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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

注文者が講ずべき措置1

      2015/05/30

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仕事には、注文と請負という関係があります。
これは個人または会社から注文を受けて、製品やサービス、労働を提供するというものです。

仕事において、自社だけで全てができるというケースは少ないです。
製品を作るためには、部品を他社に注文して、購入しますし、特注品であれば、特別に製作してもらうこともあります。
また、アウトソーシングや派遣なども注文と請負の関係ですよね。

仕事の注文者、特に自分の事業場で働いてくれている労働者は、他社の社員だから何も関与しないということになるでしょうか?

責任範囲の区分は当然ありますが、自社の事業場の範囲で作業しているのであれば、少なくとも安全衛生に関しては、責任はあるのはわかりますよね。

仮に事業場で事故が起こってしまった場合、うちの会社じゃないから関係ないなんて通じません。

そうですね、例えるならば、家族でキャンプに行くことになったとします。
そこに子どもの友だちも参加することになりました。
河原でBBQなどしていたところ、子どもたちは川に入って遊んでいました。

この場合、自分の子どもかどうかは関係なく、全員が危険がないように見ますよね。
自分たちの子どもじゃないから、他所の子は関係ない・・・なんて、なりませんよね。
キャンプに連れてきて、預かっている子どもたちなのですから、全員の安全には注意しますよね。

仕事の場であっても、この考え方は基本です。
事業者は、自社の作業場で作業しているならば、危険を予防する措置が必要になります。

今回出てくるものは、他の事業者などに仕事を注文している場合の、安全衛生に関する措置についてです。

今回出てくる用語は「注文者」です。
注文者と似ているものとして、「発注者」があります。
まずは、この発注者との違いを明確にしたいと思います。

発注者とは、他から注文を受けずに、仕事を発注する人のことです。公共工事であれば、国や都道府県、市町村などの自治体になりますし、ビル等であれば、そのビルを建てようとしている企業などになります。

発注者は、注文を出します。
この注文を最初に請けるのが、元方事業者になります。

元方事業者は、自分で仕事を行うのと同時に、一部を別の事業者に注文します。これを下請けなどといい、請け負った会社を下請け会社、協力会社などと言います。
安衛法では、関係請負人という言われます。この場合は元方事業者が注文者になるわけです。

つまり、注文者は「他から請け負った仕事の一部を行い、一部を他の事業者に注文する人」というわけです。もっと端的にいうと、「発注者以外で、他社に注文を出す人」のことです。

事業者等図
注文者については、安衛法第31条に規定されています。

【安衛法】

(注文者の講ずべき措置)
第31条
特定事業の仕事を自ら行う注文者は、建設物、設備又は原材料
(以下「建設物等」という。)を、当該仕事を行う場所において
その請負人(当該仕事が数次の請負契約によって行われるときは、
当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である
請負人を含む。第31条の4において同じ。)の労働者に
使用させるときは、当該建設物等について、当該労働者の
労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

2 前項の規定は、当該事業の仕事が数次の請負契約によって
  行なわれることにより同一の建設物等について同項の措置を
  講ずべき注文者が2以上あることとなるときは、
  後次の請負契約の当事者である注文者については、適用しない。


特定事業なので、建設業と造船業ですね。ほとんど建設業ですけども。

注文者は、必ずしも元方事業者であるとは限りません。下請け会社(協力会社・関係請負人)が、また別の会社に下請けに出すこともよくあります。
これを重層下請け構造といいますが、建設業では、ほとんどこのような仕事形態です。
つまり、注文者には、元方事業者、関係請負人という立場は関係ないのです。

ただし、別の事業者に注文したからといって、何もかも義務が定められているわけではありません。

注文者としての措置義務があるのは、次の条件を満たした時です。

注文者が、関係請負人に仕事を注文し、建設物、設備、機械等の施設を提供する場合、労働災害を防止するための措置を講じなければなりません。

元方事業者が関係請負人に仕事を注文すると同時に、施設等を提供した場合、注文者として措置を講じます。
関係請負人が他の関係請負人に仕事を注文すると同時に、施設等を提供した場合、注文を出した関係請負人が措置を講じなければなりません。

注文者(法第31条1項)
では、複数の注文者が、それぞれ施設を提供した場合はどうなるでしょうか?
それが2項に規定されていることです。

複数の注文者が、それぞれ施設を提供した場合は、最も先次の注文者が、労働災害防止の措置を講じなければなりません。
後次の注文者には義務がありません。

注文者(法第31条2項)
少し複雑なのですけども、施設等を提供する注文者は、しっかり安全衛生対策をとりなさいということです。

具体的な、措置内容については、安衛則にあります。
しかし、これは後回しにして、先に安衛法第31条の4を見てみたいと思います。

(違法な指示の禁止) 第31条の4
注文者は、その請負人に対し、当該仕事に関し、その指示に
従って当該請負人の労働者を労働させたならば、この法律
又はこれに基づく命令の規定に違反することとなる
指示をしてはならない。


注文者は、違法になるような指示をしてはいけないということです。
これは言うまでもありませんね。

足場を設けずに、高いところで仕事しろと命令するのはダメです。
明らかに重量オーバーなものを、クレーンで吊らせてはだめです。
スピード超過で走り続けないと、間に合わないトラックの運行を指示してはだめなのです。

注文者は、法の遵守は当然の責務としてあります。



さて、注文者が講ずべき措置について、順に見ていきます。

1. くい打機及びくい抜機について

くい打機やくい抜機、ボーリングを使用するのは、建設業のうち、建物などの基礎を作ったり、井戸を掘ったりするなどの工事です。
地中深くまで、穴を掘り、くいを打ち込み基礎にしたり、掘った穴の中にコンクリートや薬剤を送り込み、地盤を固めたりします。
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地盤がゆるいと、少しの地震で壊れたりします。
また建物の重さで、地盤沈下したりします。
揺れへの対抗力をつけ、建物の沈下を防ぐために、基礎工を行います。
一概に言えませんが、大体建物の高さ分くらいは、地下を掘り、基礎柱を設置しているとイメージしてもらえると、すごさがイメージできるかもしれません。
建物工事の半分以上は基礎と言われるくらい、基礎工は重要なのです。

くい打機やくい抜機、ボーリングはそんな基礎工で使用するのです。

【安衛則】

(くい打機及びくい抜機についての措置)
第644条
法第31条第1項の注文者(以下「注文者」という。)は、
同項の場合において、請負人(同項の請負人をいう。
以下この章において同じ。)の労働者にくい打機又は
くい抜機を使用させるときは、当該くい打機又は
くい抜機については、第2編第2章第2節(第172条、
第174条から第176条まで、第178条から第181条まで
及び第183条に限る。)に規定するくい打機又はくい抜機の
基準に適合するものとしなければならない。


安衛則第172条、第174条~第176条、第178条~第181条、第183条の個別の条文については、いずれまとめます。今回は要点だけとします。

くい打機、くい抜機を提供する注文者は、次の措置をとらなければなりません。

1.本体は付属品が必要な強度を持ち、腐食や損傷などの異常がないこと。(第172条)
2.ワイヤーロープは適切な物を使用すること。(第174条)
 素線が10%以上切断しているもの、断面の直径が7%を超えて減少しているもの、
 キンクや形くずれしているものは使用不可。
3.巻上げ用ワイヤロープは安全係数は6以上のものを使用すること。(第175条)
4.巻上げ用ワイヤロープは確実に、適切な位置に取り付けること。(第176条)
5.ボーリングマシンに使用するウインチにはブレーキ設備を取り付けること。(第178条)
6.ボーリングマシンのウインチはは、浮き上がり、ずれ、振れ等が起らないように据え付けること。(第179条)
7.みぞ車の位置は適切な位置に据え付けること。(第180条)
8.みぞ車等の取付けは確実に行うこと。(第181条)
9.蒸気又は圧縮空気を動力源とするくい打機又はくい抜機を使用する場合は、ホースが外れ、破損しないように、しっかりと取り付けること。(第183条)


個々の詳細については、別の機会で説明したいと思いますので、このような措置が必要と思ってもらえればと思います。
全てくい打機やくい抜機に不備がないようにチェックして、使用させなければならないということがわかりますよね。
大きな機械なのですから、少し取付が甘かったりなどの不備があると、転倒や倒壊するなど、大きな事故になり、関係労働者に危険を及ぼします。

大きな機械なので、自社で所有している会社は多くありません。
基礎専門の建設業者であれば、所有しているでしょうが、高いし維持費もかかるので、借りたほうが安かったりします。
機械を所有しているが、作業は別の関係請負人に注文するという現場もあります。
そのような場合は、くい打機等の機械を提供した注文者は、危険がないように点検して、使わせなければならないのです。



2.軌道装置について

軌道装置とは、電車のレールのことです。
トロッコ車というのは見たことがあるでしょうか?
トンネルなどでは、入り口から現場まで数百メートルから1km近くの距離になったりすることがあります。
車で出入りもできないし、資材を運ぶのに人力では難しい。また現場まで毎度歩くのも大変だ。
そういう場合などでは、土や機材、労働者を運ぶためにレールを敷き、トロッコ車はミニ電車を走らせることがあります。
注文者が、軌道設備を設けて、関係請負人に使用させる場合には、措置が必要になります。

(軌道装置についての措置)
第645条
注文者は、法第31条第1項の場合において、
請負人の労働者に軌道装置を使用させるときは、
当該軌道装置については、第2編第2章第3節
(第196条から第204条まで、第207条から第209条まで、
第212条、第213条及び第215条から第217条までに限る。)
に規定する軌道装置の基準に適合するもの
としなければならない。


こちらも第196条~第204条、第207条~第209条、第212条、第213条~第217条で規定されていますが、別の機会に詳細をまとめたいと思いますので、今回は要点だけまとめます。

1.車体の重量に合わせた、軌条(レール)を敷くこと。(第196条)
2.軌条(レール)の継ぎ目は、しっかり固定すること。(第197条)
3.軌条(レール)は、まくら木、コンクリート道床等に堅固に敷設すること。(第198条)
4.軌条(レール)の下に敷く、まくら木は適切に置くこと(第199条)
5.軌条(レール)を敷く道床は、突き固めるなどして、しっかり安定させること(第200条)
6.軌道のカーブ部は、適切にすること。(第201条)
7.軌道のこう配については、1000分の50以下とすること。(第202条)
8.軌道の分岐点と終点は、適切な装置を設けること。(第203条)
9.動力車の逸走防止装置を設けること。(第204条)
10.軌道の状況に応じて、信号を設けること。(第207条)
11.動力車にはブレーキを備えること。(第208条)
12.動力車には、汽笛、照明などの設備を備えること。(第209条)
13.車輪は適切な物を使用すること。(第212条)
14.車両を連結するときは、確実な連結装置を設けること。(第213条)
15.斜道で、人を乗せた車両を場合は、適切な設備を設けること。(第214条)
16.巻上装置には、ブレーキを備えること。(第215条)
17.巻上げ用ワイヤロープは安全係数は6以上のものを使用すること。(第216条)
18.ワイヤーロープは適切な物を使用すること。(第217条)
 素線が10%以上切断しているもの、断面の直径が7%を超えて減少しているもの、
 キンクや形くずれしているものは使用不可。


軌道設備全体について、危険がなく安全に使用するようにすること義務付けられています。

大体は意味がわかるかと思いますが、1つ逸走というのが分かりにくいかもしれません。
逸走とは、走って逃げることなのですが、安全関係では、主にコースを外れてしまうことを意味します。
軌道であれば、脱線を意味しますので、逸走防止とは、脱線防止と同じと言えます。

逸走は、他の機械でも出てきますが、風に押されて脱線してしまう、あらぬ方向に行ってしまうなどの意味で使います。



3.型枠支保工について

型枠支保工とは、コンクリート構造物を作るときに、構造物の型を木のパネルなどで組み立てておき、その中にコンクリートを流し込むための設備です。

そうですね、自宅でゼリーなどを作る場合、溶かしたゼラチンをハートとか星とかの型に流し込み、冷蔵庫などで冷やしますよね?

この星形などの型が型枠で、ゼリーがコンクリートです。

コンクリートはドロドロの状態でもかなりの重いです。当然、型にかかる内圧は、とんでもない重量になっています。
型枠はただ木を置いているだけだと、重さに耐え切れず壊れてしまいます。
そのため、型をしっかり支えて形を保つ必要があるのです。これが型枠支保工といいます。

(型枠支保工についての措置)
第646条
注文者は、法第31条第1項の場合において、
請負人の労働者に型枠支保工を使用させるときは、
当該型枠支保工については、法第42条 の規定に
基づき厚生労働大臣が定める規格及び第2編第3章
(第237条から第239条まで、第242条及び第243条に
限る。)に規定する型枠支保工の基準に適合するもの
としなければならない。


型枠支保工についても、別の機会で詳細にまとめたいと思いますので、各条文の要点のみまとめます。

第237条~第239条、第242条、第243条で規定されていますね。

1.型枠支保工の、材料には損傷や腐食があるものをしようしていけない。(第237条)
2.型枠支保工の、主要な鋼材は、JIS規格に則った物を使用すること。(第238条)
3.型枠支保工の、堅固な構造にすること。(第239条)
4.型枠支保工の設置にあたっては、適切に行うこと。(第242条)
5.段状の型枠支保工は、適切に行うこと。(第243条)


型枠支保工は、作業主任者を必要とする作業ですので、その点も忘れてはいけませんね。



4.アセチレン溶接装置について

アセチレンは可燃性のガスです。
溶接作業では、非常に高温が必要になるので、アセチレンを使います。
しかし、非常に着火しやすく、ちょっとした油断で火事になるので、慎重な取り扱いが必要になります。

アセチレンガス溶接には、免許を持った作業主任者が指揮しなければならないのですから、どれほど慎重にしなくてはいけないかは想像できるのではないでしょうか。

(アセチレン溶接装置についての措置)
第647条
注文者は、法第31条第1項の場合において、 請負人の労働者にアセチレン溶接装置を使用させるときは、
当該アセチレン溶接装置について、次の措置を
講じなければならない。

  1)第302条第2項及び第3項並びに第303条に
   規定する発生器室の基準に適合する発生器室内に
   設けること。

  2)ゲージ圧力7キロパスカル以上のアセチレンを
   発生し、又は使用するアセチレン溶接装置にあっては、
   第305条第1項に規定する基準に適合するものとすること。

  3)前号のアセチレン溶接装置以外のアセチレン溶接装置の
   清浄器、導管等でアセチレンが接触するおそれの
   ある部分には、銅を使用しないこと。

  4)発生器及び安全器は、法第42条の規定に基づき
   厚生労働大臣が定める規格に適合するものとすること。

  5)安全器の設置については、第306条に規定する
   基準に適合するものとすること。


他の条文を参照にしているものもありますが、詳細は別の機会とし、要点をまとめます。

1.アセチレンの発生器は、火気のない適切な場所に設置すること。
2.ゲージ圧力で7Kpa以上のアセチレンを発生させる場合は、適切な基準に適合させること。
3.アセチレン溶接装置以外で、アセチレンが接触する場所は、銅を使用しないこと。
4.アセチレン発生器、安全器は適切な規格に適合させること。
5.安全器の設置は、適切な基準に適合させること。


適切な基準等は、別の機会の説明に回します。

さて、3で銅を使用してはいけないとありますが、アセチレンは銅や銀に反応します。
そのため、保管する容器も銅の割合が70%を超えて物を使用できません。

ちょっと使い方を誤れば、火災になりかねないので、注文者はしっかりと管理して、使用させなければなりません。



5.交流アーク溶接機について

これも溶接機です。交流アークとあるので、電気を使用します。
電気ですから、使用を誤れば、火傷だけでなく、感電する危険性があるわけです。

交流アーク溶接は、作業するために特別教育が必要なので、使用者が教育を修了しているのかも確認しないといけませんね。

(交流アーク溶接機についての措置)
第648条
注文者は、法第31条第1項の場合において、請負人の
労働者に交流アーク溶接機(自動溶接機を除く。)を
使用させるときは、当該交流アーク溶接機に、
法第42条 の規定に基づき厚生労働大臣が定める規格に
適合する交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を
備えなければならない。ただし、次の場所以外の場所に
おいて使用させるときは、この限りでない。

  1)船舶の2重底又はピークタンクの内部その他
   導電体に囲まれた著しく狭あいな場所

  2)墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある
   高さが2メートル以上の場所で、鉄骨等導電性の
   高い接地物に労働者が接触するおそれのあるところ


特定の場所で、自動溶接を除いて、交流アーク溶接機を使用する場合には、自動電撃防止装置を使用しなくてはいけません。
自動電撃防止装置とは、二次側つまり出力側で渦電流になった場合、自動的に出力をオフにする装置のことです。誤って溶接する場所以外に、電極が触れてしまい、感電するのを防ぐために使用します。

さて、特に自動電撃防止装置を使わなければならない場所として2箇所指定されていますね。

1.周りを伝導体に囲まれた、著しく狭い場所。
2.2m以上で、墜落の危険がある場所。


1.の伝導体というのは、簡単いうと金属です。金属は電気をよく通しますよね。例として船舶の2重底などがありますが、周りの金属に体が触れてしまうほど狭い場所のことです。こんな場所で、壁などを溶接していたら、電極が壁に触れた時、壁を通して感電してしまうかもしれませんね。

2.は高いところです。高いところで感電したら、気を失ったり麻痺したりして墜落してしまいます。

以上のような感電の危険性が高い場所や、感電した場合の被害が大きくなる場所では、自動電撃防止装置を備えて、仕事をさせなければならないのです。



6.電動機械器具について

電動機械器具というと、とても範囲が広いのですが、簡単にまとめると電気を使用する道具です。
これはかなりたくさんあります。たとえば、ハンドドリルやボルト・ナットを締めるインパクトレンチ、電動ノコギリなんてのもありますし、釘を打つのも電動です。

そういった様々な電動の道具のことです。
これらの道具も電気を使用しているので、感電してしまうかもしれません。
そのような防止対策を注文者は備えなければならないのです。

(電動機械器具についての措置)
第649条
注文者は、法第31条第1項の場合において、請負人の
労働者に電動機を有する機械又は器具(以下この条に
おいて「電動機械器具」という。)で、対地電圧が
150ボルトをこえる移動式若しくは可搬式のもの
又は水等導電性の高い液体によって湿潤している場所
その他鉄板上、鉄骨上、定盤上等導電性の高い場所において
使用する移動式若しくは可搬式のものを使用させるときは、
当該電動機械器具が接続される電路に、当該電路の定格に
適合し、感度が良好であり、かつ、確実に作動する
感電防止用漏電しや断装置を接続しなければならない。

2 前項の注文者は、同項に規定する措置を講ずることが
  困難なときは、電動機械器具の金属性外わく、電動機の
  金属製外被等の金属部分を、第333条第2項各号に
  定めるところにより接地できるものとしなければならない。


水や金属は、電導性が高いですよね。
そのようなものに囲まれた環境で、電動道具を使用すると、感電する可能性があります。
そのため、注文者は、感電事故を防ぐために、感電防止用の漏電遮断機を設けなければなりません。

漏電遮断機とは、簡単にいうとブレーカーのことです。
家庭でも電力の消費量が多くなると、ブレーカーが切れますよね。
同じように、危険を察知して電力を遮断する装置を設けるのです。

何らかの理由で、漏電遮断機を設けることが難しい場合は、電動道具の金属部を接地しなければいけません。接地とは地中に電気を逃がすこと、別名アースともいいます。
電気が体に流れる前に、地中に流すルートを設けてやり、感電を防ぐのです。

注文者は、電気の使用について、しっかりとした措置をとらなければならないのです。



7.潜函等について

潜函とは、水中にコンクリートの箱を入れ、中を圧縮空気で満たすことで、高い圧力の部屋を作り、室内への水の侵入を防ぎんがら、作業する方法です。
建設業で、河川や海の中で橋脚の基礎を作る場合などに行います。
別名として、ケーソン工ともいいます。

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圧縮空気、つまり高圧室での作業になるため、体への負担が大きいだけでなく、少し設備に不備があれば、水が侵入する危険な作業なのです。

圧気工法なので、作業にあたっては特別教育が必要ですし、空気を送る作業にも特別教育が必要になります。
また免許を所有した作業主任者が指揮をしなければいけません。

こういった体制が必要になることからも、とても危険がある作業だとわかりますね。

(潜函等についての措置)
第650条
注文者は、法第31条第1項の場合において、請負人の
労働者に潜函等を使用させる場合で、当該労働者が
当該潜函等の内部で明り掘削の作業を行なうときは、
当該潜函等について、次の措置を講じなければならない。

  1)掘下げの深さが20メートルをこえるときは、
   送気のための設備を設けること。

  2 )前号に定めるもののほか、第2編第6章第1節第3款
   (第376条第2号並びに第377条第1項第2号及び
    第3号に限る。)に規定する潜函等の基準に適合する
    ものとすること。


設備として、次のことを講じなければならないとしています。

1.掘り下げ深さが20mをこえるときは、送気設備を設けること。
2.急激な沈下を防ぐために、刃口(底)から天井又ははりまでの高さは、1.8m以上以上とする。(第376条第2号)
3.深さが20mをこえたら、連絡設備を設けること。(第377条1項2号)


閉鎖された空間での作業のため、作業環境を整備すること、連絡体制を整えることなど、十分な設備と体制が必要になります。
水中に囲まれた環境ですので、労働者のストレスも尋常なものではないと思われます。
一歩間違えれば、大事故になりかねない設備のため、潜函の注文者は、十分な安全対策が必要になりますね。



8.ずい道等について

ずい道等は、トンネルのことです。つまりずい道工事とはトンネルを掘る工事です。

トンネルは山腹を水平に掘っていきます。
土の中を突き進んでいくのですから、いつ落盤事故が起こるか、出水があるかなど、危険と隣合わせです。

(ずい道等についての措置)
第651条
注文者は、法第31条第1項の場合において、請負人の
労働者にずい道等を使用させる場合で、当該労働者が
ずい道等の建設の作業を行なうとき(落盤又は肌落ち
により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときに限る。)は、
当該ずい道等についてずい道支保工を設け、ロックボルトを
施す等落盤又は肌落ちを防止するための措置を
講じなければならない。

2  注文者は、前項のずい道支保工については、
  第2編第6章第2節第2款(第390条、第391条及び
  第394条に限る。)に規定するずい道支保工の基準に
  適合するものとしなければならない。


ずい道工事を行う場合は、ずい道支保工を設け、ロックボルトを施すなどして、落盤や土砂崩れなどが起こらないような措置が必要になります。
材料も、柔らかいものでなく、しっかり堅固なものにしなくてはいけません。

いつ事故が起こるかわからない場所での作業なのですから、注文者はしっかりとした対策を取らなければならないわけです。



9.ずい道型枠支保工についての措置

8.と合わせての措置になりますが、こちらは型枠支保工なので、掘削した面をコンクリートで固める時の措置になります。

トンネルはただ掘っただけでは、周りは土でしかないので、いつ崩れるかわかりません。
土のままのトンネルというのは、見たことがありませんよね?(昔の手掘りのトンネルならあるかもしれませんが)
トンネルの内部はコンクリートで固められているはずです。
周りをぐるっとコンクリートで覆うわけですから、コンクリートを打った時に天井から落ちないで、固まるまでとどめておかなければなりません。
そのためには、しっかり型枠を支えなければなりませんね。

(ずい道型枠支保工についての措置)
第652条
注文者は、法第31条第1項の場合において、請負人の
労働者にずい道型枠支保工を使用させるときは、
当該ずい道型枠支保工を、第2編第6章第2節第3款に
規定するずい道型枠支保工の基準に適合するものと
しなければならない。


詳細については、改めますが、型枠支保工の材料がしっかりした堅固なものを使わなければならないとしています。
確かにヤワなものを使って、崩れてしまうと労働者を危険に晒すわけですから、入念にチェックしなければいけませんね。

ずい道も潜函も、事故があった場合、労働者の逃げ場所がないので、設備の不備は命取りになります。



10.物品揚卸口等についての措置

建設業に限らず、倉庫などで、2階などの上階に荷物を揚げたり、降ろしたりする場合の措置です。
高い場所や開口部がある場所なので、労働者にとっては墜落する危険があるのは、想像できますよね。
ちょっと荷物にぶつかったり、荷物を誘導していて開口部に足を踏み外したりなど、とても危険です。
そういった場所では、墜落防止の措置が必要になります。

(物品揚卸口等についての措置)
第653条
注文者は、法第31条第1項の場合において、請負人の
労働者に、作業床、物品揚卸口、ピット、坑又は船舶の
ハッチを使用させるときは、これらの建設物等の高さが
2メートル以上の箇所で墜落により労働者に危険を
及ぼすおそれのあるところに囲い、手すり、覆い等を
設けなければならない。ただし、囲い、手すり、覆い等を
設けることが作業の性質上困難なときは、この限りでない。

2  注文者は、前項の場合において、作業床で高さ又は
  深さが1.5メートルをこえる箇所にあるものについては、
  労働者が安全に昇降するための設備等を設けなければならない。


1.高さが2m以上の場所では、手すりや囲いなどの墜落防止設備を設けること。
2.作業床などの高さが1.5mをこえる場合は、昇降設備を設けること。


事故の中で、墜落は非常に多くなっています。
その対策設備については、事細かに決められています。
それでも、墜落事故は発生してしまうのです。

作業中、どうしても労働者は荷物に集中はあるでしょうが、それでも墜落しないための対策が、注文者には求められるわけです。

さて、今回は注文者が講じなければならない措置の半分程度をまとめました。
残りは、改めてまとめたいと思います。

まとめ。

【安衛法】

第31条
特定事業の仕事を自ら行う注文者は、建設物、機械などの施設提供をした場合、
労働災害を防止するための措置をとらなければならない。

施設提供者が複次に渡る場合、最も先次の注文者が措置をとること。
第31条の4
注文者は、違法な指示をしてはいけない。


【安衛則】

第644条
注文者は、くい打機及びくい抜機について必要な措置をとらなければならない。
第645条
注文者は、軌道装置についてについて必要な措置をとらなければならない。
第646条
注文者は、型枠支保工について必要な措置をとらなければならない。
第647条
注文者は、アセチレン溶接装置について必要な措置をとらなければならない。
第648条
注文者は、交流アーク溶接機について必要な措置をとらなければならない。
第649条
注文者は、電動機械器具について必要な措置をとらなければならない。
第650条
注文者は、潜函等について必要な措置をとらなければならない。
第651条
注文者は、ずい道等について必要な措置をとらなければならない。
第652条
注文者は、ずい道型枠支保工について必要な措置をとらなければならない。
第653条
注文者は、物品揚卸口等について必要な措置をとらなければならない。

 

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