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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

化学物質施設の修理等の注文者が講ずる措置

      2015/05/30

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注文者が、関係請負人に下請け作業を注文し、注文者が提供する施設等を使用する場合には、従事する労働者が事故や健康被害にあわないように措置を執らなくてはいけませんでした。

注文者が施設を提供し、措置を執らなければならないものとして、型枠や足場、圧気工法などを紹介しました。
これらの多くは建設業で行われるものでした。しかし危険がある施設は、建設業だけではありませんよね。

すでに紹介した注文者が講ずるべき措置のうちに、局所排気ファンや全体換気設備など、有機溶剤や粉じん作業を行う際の設備がありました。
これら化学物質は、建設業の現場で使用するというより、工場で使用することが多いです。

化学物質を取り扱う工場では、日常の仕事を慎重に行わなければならないのはもちろんですが、設備自体も不備があると困りますよね。

例えば化学物質を保管する容器が破損して、漏れだしたら問題ですよね。

設備は、常にメンテナンスされ、整備されていなければなりません。また使い方が変わるようならば、必要に応じたても加えなければなりませんよね。

家でも、バリアフリーにするとか、水回りをよくするとか、リフォームしたりします。
化学工場では、それよりも深刻ではありまうすが、手を加える必要があるのです。

今回は、化学物質を取り扱うための設備に関して、別の会社に注文を出す場合は、労災防止のための措置を執らなくていけません。

別の条文にあげなくてはいけるほど、特別な注意が必要とされているんですね。
どうやら背景には、危険物があるのを知らせずに、施設整備の仕事を発注し、事故になったということがあるようです。

化学物質施設の注文者については、安衛法第31条の2で規定されています。

【安衛法】

第31条の2
化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物を製造し、
又は取り扱う設備で政令で定めるものの改造その他の
厚生労働省令で定める作業に係る仕事の注文者は、
当該物について、当該仕事に係る請負人の労働者の
労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。


化学設備の改造などの別の会社に注文する場合は、労災防止のための措置を講じなくてはなりません。


よくよく考えればこれは当たり前のことだと分かりますよね。
危険な物質が充満しているにも関わらず、それを知らずに作業に従事したら、中毒やひどい場合は死亡してしまうこともあります。

今は福島第一原発事故の除染作業がありますが、仮に放射線があるということを知らせずに、仕事をさせたらどういうことになるでしょう?
後々になってとんでもない健康被害が出てくるでしょうし、注文した会社の責任は免れませんね。

アスベストの問題なんて、危険を知らせず(正確には当時はみんな知らなかったのですが)、特別な対策もとらせず、作業させた結果、労働者が何年も経ってから悪性中皮腫等の病気を患ってしまいました。
会社自身も、裁判により莫大な倍賞を支払うことになっているのです。

化学物質の取扱は、取り扱いを間違えると甚大な被害が出てしまいます。

どのような施設で、措置が必要になるのかは、安衛令第9条の3に規定されています。

【安衛令】

(法第31条の2の政令で定める設備)
第9条の3
法第31条の2の政令で定める設備は、次のとおりとする。
  1)化学設備(別表第1に掲げる危険物
   (火薬類取締法第2条第1項に規定する火薬類を除く。)を
   製造し、若しくは取り扱い、又はシクロヘキサノール、
   クレオソート油、アニリンその他の引火点が65度以上の
   物を引火点以上の温度で製造し、若しくは取り扱う設備で、
   移動式以外のものをいい、アセチレン溶接装置、
   ガス集合溶接装置及び乾燥設備を除く。第15条第1項第5号に
   おいて同じ。)及びその附属設備
 
  2)特定化学設備(別表第3第2号に掲げる第2類物質のうち
    厚生労働省令で定めるもの又は同表第3号に掲げる第3類物質を
    製造し、又は取り扱う設備で、移動式以外のものをいう。
    第15条第1項第10号において同じ。)及びその附属設備


化学物質なかでも危険物質や可燃性のある物質を取り扱う施設が該当します。

具体的な化学物質は、別表第1別表第3第2号と3号に含まれるものが対象になるわけですが、一応以下別表を載せてみます。

別表1
危険物(第1条、第6条、第9条の3関係)
1  爆発性の物
1) ニトログリコール、ニトログリセリン、ニトロセルローズ
   その他の爆発性の硝酸エステル類
2)トリニトロベンゼン、トリニトロトルエン、ピクリン酸
   その他の爆発性のニトロ化合物
3)過酢酸、メチルエチルケトン過酸化物、
   過酸化ベンゾイルその他の有機過酸化物
4)アジ化ナトリウムその他の金属のアジ化物

2 発火性の物
1)金属「リチウム」
2)金属「カリウム」
3)金属「ナトリウム」
4)黄りん
5)硫化りん
6)赤りん
7)セルロイド類
8)炭化カルシウム(別名カーバイド)
9)りん化石灰
10)マグネシウム粉
11)アルミニウム粉
12)マグネシウム粉及びアルミニウム粉以外の金属粉
13)亜二チオン酸ナトリウム(別名ハイドロサルフアイト)

3 酸化性の物
1)塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、
   塩素酸アンモニウムその他の塩素酸塩類
2)過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、
   過塩素酸アンモニウムその他の過塩素酸塩類
3)過酸化カリウム、過酸化ナトリウム、
   過酸化バリウムその他の無機過酸化物
4)硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、
   硝酸アンモニウムその他の硝酸塩類
5)亜塩素酸ナトリウムその他の亜塩素酸塩類
6)次亜塩素酸カルシウムその他の次亜塩素酸塩類

4 引火性の物
1)エチルエーテル、ガソリン、アセトアルデヒド、酸化プロピレン、
   二硫化炭素その他の引火点が 零下30度未満の物
2)ノルマルヘキサン、エチレンオキシド、アセトン、ベンゼン、
   メチルエチルケトンその他の引火点が 零下30度以上0度未満の物
3)メタノール、エタノール、キシレン、酢酸ノルマル-ペンチル
  (別名酢酸ノルマル-アミル)その他の引火点が0度以上30度未満の物
4)燈油、軽油、テレビン油、イソペンチルアルコール
   (別名イソアミルアルコール)、酢酸その他の引火点が
   30度以上65度未満の物

5 可燃性のガス(水素、アセチレン、エチレン、メタン、エタン、
  プロパン、ブタンその他の温度15度、1気圧において
  気体である可燃性の物をいう。)

 

別表3
特定化学物質(第6条、第9条の3、第17条、第21条、第22条関係)

1 第一類物質

1)ジクロルベンジジン及びその塩
2)アルフア-ナフチルアミン及びその塩
3)塩素化ビフエニル(別名PCB)
4)オルト-トリジン及びその塩
5)ジアニシジン及びその塩
6)ベリリウム及びその化合物
7)ベンゾトリクロリド
8)1から6までに掲げる物をその重量の1パーセントを超えて含有し、
   又は7に掲げる物をその重量の0.5パーセントを超えて含有する
   製剤その他の物(合金にあっては、ベリリウムをその重量の
   3パーセントを超えて含有するものに限る。)

2 第二類物質
1)アクリルアミド
2)アクリロニトリル
3)アルキル水銀化合物(アルキル基がメチル基又は
   エチル基である物に限る。)
4)エチレンイミン
5)エチレンオキシド
6)塩化ビニル
7)塩素
8)オーラミン
9)オルト-フタロジニトリル
10)カドミウム及びその化合物
11)クロム酸及びその塩
12)クロロメチルメチルエーテル
13)五酸化バナジウム
14)コールタール
15)酸化プロピレン
16)シアン化カリウム
17)シアン化水素
18)シアン化ナトリウム
19)三・三′-ジクロロ‐四・四′-ジアミノジフエニルメタン
19の2) 一・一-ジメチルヒドラジン
20)臭化メチル
21)重クロム酸及びその塩
22)水銀及びその無機化合物(硫化水銀を除く。)
23)トリレンジイソシアネート
 23の2) ニツケル化合物(24に掲げる物を除き、粉状の物に限る。)
24)ニツケルカルボニル
25)ニトログリコール
26)パラ-ジメチルアミノアゾベンゼン
27)パラ-ニトロクロルベンゼン
 27の2)砒(ひ)素及びその化合物
   (アルシン及び砒(ひ)化ガリウムを除く。)
28) 弗化水素
29)ベータ-プロピオラクトン
30)ベンゼン
31)ペンタクロルフエノール(別名PCP)及び
   そのナトリウム塩
 31の2)ホルムアルデヒド
32)マゼンタ
33)マンガン及びその化合物(塩基性酸化マンガンを除く。)
34)沃化メチル
35)硫化水素
36)硫酸ジメチル
37)1から36までに揚げる物を含有する製剤その他の物で、
   厚生労働省令で定めるもの

3 第三類物質
1)アンモニア
2)一酸化炭素
3)塩化水素
4)硝酸
5)二酸化硫黄
6)フエノール
7)ホスゲン
8)硫酸
9)1から8までに揚げる物を含有する製剤その他の物で、
  厚生労働省令で定めるもの


個々の物質については、述べませんが、別表第1については、次のとおりです。
1.爆発性のもの
2.発火性のもの
3.酸化性のもの
4.引火性のもの
5.可燃性ガス


別表第3の2号と3号については、発がん性があったり、中毒を引き起こしたりと人体に有害なものです。

これらの物質は、工場で製品の製造過程では、取り扱う必要があります。
有害であるため、取扱には慎重を要します。
そしてこれらを保管したり、取り扱ったりする施設は常に正常でなければ危険なのです。

では、これらの施設でどのような作業をする場合に、どのような措置が必要になるでしょうか。
これについては、安衛則に規定されています。


【安衛則】

(法第31条の2 の厚生労働省令で定める作業)
第662条の3
法第31条の2 の厚生労働省令で定める作業は、
同条 に規定する設備の改造、修理、清掃等で、
当該設備を分解する作業又は当該設備の内部に
立ち入る作業とする。
(文書の交付等)
第662条の4
法第31条の2 の注文者(その仕事を他の者から
請け負わないで注文している者に限る。)は、
次の事項を記載した文書(その作成に代えて
電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の
知覚によっては認識することができない方式で
作られる記録であって、電子計算機による情報処理の
用に供されるものをいう。以下同じ。)の作成が
されている場合における当該電磁的記録を含む。
次項において同じ。)を作成し、これをその請負人に
交付しなければならない。

  1)法第31条の2に規定する物の危険性及び有害性

  2)当該仕事の作業において注意すべき安全又は
   衛生に関する事項

  3)当該仕事の作業について講じた安全又は
   衛生を確保するための措置

  4)当該物の流出その他の事故が発生した場合に
   おいて講ずべき応急の措置

2  前項の注文者(その仕事を他の者から請け負わないで
  注文している者を除く。)は、同項又はこの項の
  規定により交付を受けた文書の写しをその請負人に
  交付しなければならない。

3  前2項の規定による交付は、請負人が前条の作業を
  開始する時までに行わなければならない。


第662条の3では、化学設備の施設での作業としては、改造、修理、清掃等で設備を分解する作業、または内部に立ち入る作業の場合に措置が必要になると規定しています。

そして講ずべき措置については、第662条の4で、規定されています。
簡単にまとめると、作業を請け負った者に、施設や化学物質についての文書を交付して、注意を促さなければならないのです。

1.取り扱う化学物質について
2.作業上の安全や衛生に関する事項
3.作業時の安全や衛生対策に関する事項
4.事故発生時の対応方法


これらをまとめた文書は、注文者が請負者に、作業開始までに、渡さなければなりません。
事前に危険性を知らせ、十分に対応する作業計画を策定させなければなりません。

備えなければ、危険だらけ。

一歩間違えれば、人体に深刻な被害をもたらすものなのですから、作業計画や対策、防護服などの十分な対応をとらせなけければなりません。
ただ事故を起こしちゃいました、では済まないのです。
注文者は、仕事を注文した以上、相当の責任があると自覚しなければなりません。

その上で、しっかりとしたメンテを行ってもらい、普段の作業も安全に行える。
注文者の役割が特に重要になりますね。

まとめ。
【安衛法】

第31条の2
化学物質、化学物質を含有する製剤等に関わる作業の注文者は、
労働災害を防止するための措置をとらなければならない。


【安衛令】

第9条の3
法第31条の2の政令で定める設備についてまとめています。


【安衛則】

第662条の3
注文者は、法第31条の2の作業について必要な措置をとらなければならない。
第662条の4
注文者は、必要に応じて請負人に文書を交付しなければならない。

 

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