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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

マグナカルタがEUでのリスクアセスメント発展の原点、かもという仮説

      2015/09/06

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日本では安衛法が成立してから、事故や死亡者を減らすのに効果がありました。
しかし死亡者が平成に入り、年間2000人を割らず、行き詰まりを感じていました。

さらに事故や死亡者を減らすためにどうしたらいいのかを検討した結果、ヨーロッパで効果をあげているリスクアセスメントというものを導入することになったのです。
そのリスクアセスメントが日本に導入されてから、約10年が経ちました。

ヨーロッパで効果を上げているリスクアセスメントですが、いつから導入されたのでしょうか?

EUでリスクアセスメントを導入するようにという、理事会指令が成立したのが1989年です。
この指令を受け、各国でリスクアセスメント導入に関する国内法が成立したのが1992年です。
そして、1996年より実施されるようになりました。

アメリカも、EUの流れを受け1998年にリスクアセスメントを導入しました。

日本で、リスクアセスメントを努力義務とした安衛法改正があったのは、平成18年(2008)年です。

EUでは日本で導入される20年以上前に、アメリカでは15年前に、リスクアセスメントを導入し、実施してきたのです。

リスクアセスメントでどれほどの効果があったのかは、別の記事にまとめています。
特にイギリスの労災事故の少なさが群を抜いている印象です。

イギリスがすごい!先進国の労災防止で、発展途上国に伝えられること

リスクアセスメントによる、事故防止は効果があるのだなと思われます。

なぜ、ヨーロッパでリスクアセスメントが発展したのか?
日本で発展しなかったのか?

今回は、そんななぜを考えてみます。
とはいえ、しっかりとした根拠はありません。
しっかりとした考察は、専門家にお任せします。
それが前提と言い訳ということで、話を進めます。

index_arrowヨーロッパは市民が強い文化

イギリスで、安全衛生に関する法律が成立したのは、1974年です。日本の安衛法が成立した2年後です。 この法律を成立させるにあたって、ローベンスさんが中心となった、調査がありました。

そのローベンス報告では、こんなことを書いています。

1. 法律や監督による安全衛生向上への疑問。法律がたくさんあり過ぎ、本来の目的達成にとって逆効果とさえ言える。また世の中の進歩につれて次々に新しい法律をつくり、時代遅れとなった法律を改訂しなければならない。

2. 労働安全衛生行政が細分化(当時の英国では関係5省庁、7監督機関)され過ぎていることの問題。

3. これらの問題意識から、法律・監督中心から自主対応への移行及び行政機関の統一の提言


国民安全センターイギリス1974年労働安全衛生法より引用。

この中で、すでに法律でカバーし続けることの限界を指摘し、自主対応型への移行を低減しています。

恐るべき先見力といえます。
この自主対応型の安全対策が、リスクアセスメントです。

イギリスで、リスクアセスメントをはじめとした安全対策が効果を上げ、年間の労災による死亡者数は約150人まで抑えられています。
人口や労働者数が違うので、単純に比較することはできませんが、日本の約10分の1の死亡者数なので、驚異的な成果といえるのではないでしょうか。

自発的に事故の可能性を発見し、法律に寄らず、現実的で合理的な安全対策をする文化が効果を上げたと言えます。

では、なぜこのような発想になっていったのでしょうか。
その原点は、イギリスで1215年に制定されたマグナカルタにあるのではないでしょうかというのが、今回の仮説です。

マグナカルタは、当時のイングランド王国のジョン王の時代に、成立しました。
中世では王は絶対権力でしたが、その力を制限するという、当時としては画期的なものでした。

背景には、ジョン王に対する貴族や国民の不満がありました。
国民が国を変えたのです。
そして、国民の政治的権限が強くなったともいえます。

国民が自分たちの権利を守るために行動する歴史が、自分たちの身の安全は自分たちで守るという安全文化の発展になっていたのではないでしょうか。

index_arrow事故防止は自主的な対応へ

リスクアセスメントの効果だけとは言えませんが、年間死亡者数は徐々に減少し、現在は1000人弱です。 1000人を切ることができず、足踏みしています。

まだリスクアセスメントの導入は一部にとどまります。

この10年で、製造業を中心に導入している会社も増え、リスクアセスメントとは何かということも、ある程度認知を得てきました。

少し誇張した表現になりますが、以前の安全対策は、法律を守ることが第一でした。
安衛法は、基本的に過去に実際に起こった事故をもとに、作られたものです。
まだ起こっていないパターンの事故や有害物質への対策までは、含んでいません。

つまり安衛法は、事故や病気の再発防止対策といえます。

しかし事故は、安衛法に規定されていない範囲でも起こります。
例えば、昨年(平成26年)に安衛法の改正が成立しました。この中で足場の規制が強化されました。
今回の改正ポイントでは、組立解体作業時の作業床を20センチから40センチに広げるといったものがあります。
なぜ作業床の幅が広がったかというと、組立解体時の事故が絶えないからです。
改正前は、事故はあったけれども、対策としてはグレーだったのです。

事故のパターンは、多種多様です。
法改正で追いかけていますが、全ての事故パターンを法律でカバーすることは不可能です。
それに、もしありとあらゆる事故防止が法律で規定されたら、息苦しくて仕方ありませんね。
ちょっとした作業がすぐ法律違反だとされたら、事業者も作業者もやってられません。

法規制を最低限にしておくほうが、仕事はやりやすいです。
しかし、事故を防ぐ必要もあります。

法律で規定されないグレーの事故要因を見つけ、自主的に安全対策を行うのがリスクアセスメントです。

リスクアセスメント導入により、安全管理の考え方が、法律順守による事故防止対策から、自主的な事故の未然防止対策にシフトしました。
安衛法が成立したのが昭和47年、今から43年前です。

40年以上経過して、言うなれば安全管理2.0にバージョンアップしたといえますね。

どうやったらいいんだろうと、考えてもわからないこともたくさんあります。
答えはありません。

毎年1000人の死亡者数を、もっと減らすためにはどうしたらいいか。
未知の領域への挑戦の1つが、私たち自身で創造する安全管理になっていくのではないでしょうか。

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