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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

建設業の事故に見える2つの世代傾向

      2015/09/20

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長年の不況により、建設業者や建設作業者の数は減ってきていました。平成25年の時点で、建設業の許可を持った業者は約48万社となり、これはピーク時の平成11年の約60.1万社に比べ、約22%の少なくなっています。

建設業就業者数も、平成9年の約685万人のピークに比べ、平成25年では約499万人になり、就業者数が大幅に減少していることが分かります。

建設投資、許可業者数及び就業者数の推移PDFファイル( 全国建設業協会)

この背景には、ITなど仕事の選択肢が広がったことなどが考えられますが、一番の原因は建設業界を取り巻く環境の変化にありそうです。 構造改革による自由競争化、原材料の高騰、そして建設にあたる投資の縮小などが、この20年に起こりました。

公共と民間を合わせた建設投資額のピークは、バブルの頃になりますが平成2年の約84兆円の時に比べ、約半分の48兆円になっています。これでも巨大な市場であることには違いありませんが、規模が大幅に縮小したことに違いありません。

建設業も会社ですから、売上が下がると、緊縮します。
設備投資を控えたり、人員を削減します。そうして、身を縮めた結果、建設業従事者も減り、他業種に流れたのです。

就業者や建設投資額が最も低くなったのは、平成22年。
円高や株安真っ只中の時です。当時の民主党政権も打開策なかったように記憶しています。

その翌年、平成23年3月11日に東日本大震災が起こりました。
東北地方はこの地震により広範囲に被害を受けました。

受けた被害から復興する。
復興事業が始まり、建設ラッシュが起こりました。
建設業者や人、資材、機械が大量に東北地方に流れ込みました。

一気に需要が高まったものの、規模を縮小しきっていた建設業界には、手に余るほどの仕事量になったのです。
人手が足りません。何より現場を仕切れるベテラン技術者不足なりました。

さらに、平成25年に民主党政権から自民公明政権に政権交代します。
アベノミクスの余波は、建設業界にも及びました。 東北以外の場所にも、建設投資が増え、物件数が増えます。

これにより東北で起こっていたことが、全国で起こりました。
人手不足、技術者不足です。

その対応のため、人手を確保しなければなりません。
しかし大きな問題があります。今までのリストラや雇用を控えたことが響いてきたのです。

新たな人を雇っても、現場を仕切る技術者はすぐには育ちません。10年以上経験を積ませてようやく安心して任せられるくらいです。 また建設業はどうしても3Kのイメージがあり、多彩な職業を選べる状況では、敬遠されがちです。

良い人材の確保が難しくなってきているのです。

私の会社でも、長い間新規採用は行っていません。 その結果どうなったか。。。平均年齢が30代後半という高齢化しています。 主力が40代、50代です。上は60代もいます。(工場整備には80歳の方がいたりします) 仕事をとりたくても、技術者不足でとれないこともしばしばです。

人手不足のため、建設業では何が起こっているのか。
少し前の記事ですが、こんな記事がありました。

index_arrow新聞記事の引用

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

兵庫県内の建設現場で労災急増 作業員の経験不足と高齢化が背景に(平成26年4月16日)

兵庫県内の建設現場で労災死亡事故が今年に入り7件(3月末現在)にのぼることが兵庫労働局の調べで分かった。昨年1年間で労災死亡事故は9件で、今年は約3倍のペース。現場で経験が浅い作業員が増えていることが背景にあるという。

(中略)

背景として、景気の好転で工事の需要がふくらんで人手不足が発生し、採用を急いだため安全面の知識や経験が不足した若年層の作業員が増加する一方、長い不況期に採用を絞り作業員の高齢化が進んだことがある。「年齢層の二極化が進み、(世代間で技術を伝える)中堅の作業員が少ない」のが現状だ。

また、中小業者が請け負うことの多い改修や解体の現場では「コスト削減のため安全管理が行き届かないケースが目立つ」という。

産経新聞

兵庫県内についての内容ですが、この傾向は全国的に同様であると思われます。

記事は、労災事故が微増していること、その背景には採用した人の経験不足がありそうだといことです。 人手不足解消のためには、人材を確保しなければなりません。

雇い入れるのは、経験のない若い人と、昔経験のある高齢者が多いようです。 現場を仕切れるベテランや、技術者を雇うことは、困難です。

しかも建設業の仕事ボリュームは、技術者の数に依るので、人が増えても、仕事が増えないなんてこともあります。

若年層と高齢者の事故が多いのですが、これらの事故には傾向があります。

若年層は、「はさまれ・巻き込まれ」、「有害物との接触」のような、経験不足によって引き起こされる事故傾向にあります。

高齢者は、「墜落・転落」、「転倒」という、注意力不足や身体の衰えによる事故傾向にあります。


事故に遭う可能性が高いのですがら、しっかり安全設備を備えたり、教育を行うなどが必要ですが、現実的にはそれらに充てる予算も時間もありません。

作業方法だけを教育し、現場に投入し、経験を積ませる方式をとっている会社が多いです。

無知と過信は事故を呼び込みます。

技術者を増やしていくしても、人を育てることが大事なのはいうまでもありません。 人を育てるには、事故なく仕事を続けさせるしかありません。
経験を積むのは大事ですが、事故の経験は不要です。事故の経験で、体を損なうことなどいらないのです。

作業者の安全確保は、事業者の責務です。
設備と安全教育が必要です。


経験の浅い作業者向けや、高齢者向けの教育が必要です。

事故の傾向は、何を重視して教育すればよいかを示してくれます。 その傾向を踏まえて、OJTでも安全教育も重視してくといいですね。

このブログでも、若手向け、高齢者向けの安全教育についても考えていきます。

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