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採石場で土砂崩れ、重機ごと生き埋めの作業員が死亡(栃木県足利市)

      2018/03/16

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先日の9月10日の豪雨は北関東、特に栃木県と茨城県に多大な被害を与えました。
鬼怒川の堤防は決壊し、常総市ではかなりの範囲まで水が押し寄せました。

この雨は勢いを衰えさせることなく北上し、翌11日には、宮城県などにも大雨をもたらしました。

ニュース映像を見ていて、目を疑うほどの水でした。

ここ数年、夏場になるとこのような豪雨被害が多いように思います。
昨年は、広島で大きな被害がありました。
また私の住んでいる地域でも、土砂崩れがありました。

大雨は怖い。本当に怖いです。

土砂崩れは、雨によって地盤がゆるくなることで、起こりやすくなります。 しかし原因は雨だけもありません。

建設業での掘削作業は、作業そのものが地盤をゆるめる原因になります。

豪雨被害より以前ですが、栃木県足利市で、土砂崩れによる事故がありました。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

採石場で土砂崩れ、重機ごと生き埋めの作業員が死亡(平成27年9月8日)

栃木県足利市の採石場で土砂が崩れ、重機で作業をしていた20歳の男性作業員が重機ごと生き埋めとなり、その後、死亡しました。

8日午後3時すぎ、足利市の鉱山で土砂崩れがあり、重機で作業をしていた男性作業員が重機ごと生き埋めになりました。

警察によりますと、生き埋めになったのはブラジル国籍の作業員で、およそ4時間後に救助されましたが、病院で死亡が確認されました。

被災者はほかの作業員と共に重機で採石のため掘削作業をしていたところ、突然、斜面が崩れ落ちたということです。当時、足利市では雨が降っていて、警察は事故が雨によるものかなどいきさつを調べています。

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この事故の型は「倒壊・崩壊」で、起因物は「地山」です。

この事故は、採石場で起こりました。
採石場とは、コンクリートの骨材や砂利の材料となる石を取る場所です。 山をガリガリと削られている場所のため、むき出しの山肌は崩れやすい状態です。

作業はショベルカーなどの重機で行います。 重機作業を行っていたときに、斜面が崩れてしまったのでした。

土砂が流れた先にいた被災者は埋もれてしまったのです。

4時間後に救出されましたが、残念ながら運転していた方は亡くなられたのでした。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow事故原因の推測

ショベルカーで地面を掘る、斜面を掘るという作業は、地盤の不安定にします。地面や山は、何百年何千も、土が隙間なくギュウギュウに押し固まっています。この状態は非常に安定してます。
土を掘り返すということは、この隙間ない状態を崩してしまうのですから、支える力は当然頼りなくなります。

土木作業であれば、掘った後目的の構造物を作ると埋め戻し、安定を取り戻そうとします。しかし採石場は基本的に、土石を取ることが目的です。後で埋め戻すことはありません。基本的には、掘ったら掘りっぱなしです。
土木作業でよくやる土止め支保工は行いません。斜面は崩れにくくするため、勾配を設けるのが普通です。

そのため、常に不安定な状態といえます。特に斜面は人が歩くだけでも、小石がパラパラと落ちるような状態です。この不安定さは、雨によって一層増すことになります。

事件当日は、雨が降っていました。雨は土に染み込み、き裂があれば、入り込み、侵食します。 雨が降った時に作業をしてはいけない、ということはありません。
しかし、土砂崩れが起きやすい条件になるので、点検等の措置が必要なのも確かです。

事前に斜面の点検は行われていたのかが、重要です。もしき裂やグラグラと落ちそうになっている石があったならば、付近で振動を起こすショベルカーが走ると、崩れてしまうおそれがあるのです。

点検を行っていても、土砂崩れはいつ起こるかわかりません。そのためより安全に作業を行うのであれば、土砂崩れの兆候をいち早く察知する検知器などを、斜面につけておくのがよいかもしれません。もしくは監視人を置くのがいいのですが、ここまで予算をつけるところは少ないでしょうね。

またこの事故の被災者は、ブラジル国籍の方のようです。海外の方の場合、安全教育が十分に行われていたのかということも調査の対象になるでしょう。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

斜面の点検を行っていなかったこと。
異常を感知する設備がなかったこと。
安全教育が十分でなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow対策の検討

採石場のように一定範囲の作業場で、危険箇所が多数ある場所では、落石のある場所、斜面など滑り落ちる危険のある場所というように、あらかじめ危険マップを作っておくのがよいでしょう。

大雨や地震の後は、斜面の点検を行わなければなりません。き裂や湧水、浮石などがあれば、見つけた時に取り除きます。崩れそうな場所があれば、作業の前に崩してしまうのも大事です。

採石場ですから、あちこちに崖のような場所もあるので、これら全てを管理することは難しいでしょう。少なくとも、作業を行っている場所については、日常点検は必要です。

危険マップを作り、各危険に対処できるのが理想です。しかし土砂崩れを検知するセンサーや監視人を置くということは困難です。人も予算にも余裕がないということもあるでしょう。
ただし人や予算に余裕はなくとも、掲示物を増やす、作業者の点検方法を検討するなど、知恵と工夫でできることもあります。まずは何ができるかを考えるのが大事ですね。

さらに安全教育は大事です。何が危険で、安全に作業を行うのはどうしたらいいのかを作業者に理解してもらうためには、定期的に繰り返し教育する必要があります。特に入ったばかりの新人、海外の作業者はこの教育が重要です。きちんとルールを守る体制も大切なことです。

対策をまとめてみます。

作業場の危険マップを作る。
雨や地震、作業前には土砂崩れが起こりそうな場所の点検を行う。
安全教育を繰り返し行う。

採石場は、上からの落石、足元の土砂崩れなど、危険が多い現場と言えます。
危険があるからこそ徹底的に安全対策をされていると思いますが、少し危険箇所に足を踏み出すだけで、事故になってしまいます。

日常的に行っていることは慣れが生じ、油断も生じますが、危険がなくなるわけではありません。

危険箇所の把握と管理、そして人への教育がこれらの危険への対処になるのではないでしょうか。

index_arrow違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【安衛則】

第534条
地山の崩壊又は土石の落下のおそれがある場合は、防止策をとらなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

掘削作業等での安全対策について

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