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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

そもそもの話として、リスクアセスメントの目的と手順をまとめる。

      2015/09/23

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リスクアセスメントと、名前は聞くけど、何をするものなんだろう。
そんなことを思ったことはないでしょうか?

この10年で、リスクアセスメントというものが取り沙汰されてきました。安全衛生管理に携わっている方であれば、名前くらいは聞いたことがある、大体のやり方は知っているという方も多いのではないでしょうか。実際に導入されている事業所も、年々増えてきています。

では、自分のところでも導入しようとしても、どうしたらいいのか分からないという人も少なくないのではと思います。
私自身がそうですし。もちろん講習に出たり、本を読んだり知識はあります。実践となると、まだ乏しいのが実情なのですけども。

このブログでも、何度かリスクアセスメントにちなんだ記事をアップしてきました。
ただし、講習でこんなこと気づいたとか、注意する点とかをピックアップしていて、目的や手順といった、根本的なことを薄っすらしか書いていなかったように思います。

目的や手順は、根本的な話になるので、これを欠いたまま話を進めてもなと、今さらながら気づいた訳です。

というわけで、今回は目的と手順についてまとめてみます。

index_arrowリスクアセスメントの目的は

リスクアセスメントが導入された背景には、死傷者数の下げ止まりがありました。

リスク・アセスメントを、一緒に学び使って行きませんか?

昭和47年に安衛法が成立し、安全は法律で規定され、事業者の義務になりました。 これにより、今まで年間5000人以上の死亡者があったのが、徐々に減少してきました。
しかし平成に入ってから、2000人の壁を切ることができない状態が10年続いたのです。

当時の大臣が、「目標は労災での死亡者を2000人を切ること」と発言したところ、非難轟々だったそうです。 「1人も死亡者を出さないことが目的ではないのか」というのです。
もちろん、この意見はわかります。理想は1人の死亡者を出したくない。
誰が1999人までなら死亡してもいいなんて思うでしょうか!

ただ現実的に、毎年2000人以上の方が亡くなっているのは事実です。これを急に0にすることなんてできません。制度、設備、教育、意識などのあらゆる面を改善し、徐々に効果を出していくしかないのです。

安衛法と関連則は、頻繁に改正され、条文を増やしていきます。改正の度に、規制内容は厳しくなっていきました。一定の効果は見られるものの、期待したほどではありません。法律を厳しくするだけでは、打つ手が見えませんでした。

なぜ法律を厳しくしても劇的に効果があげられないのか。
それは、法律では全ての事故を網羅することができないからです。

例を挙げると、大阪の印刷会社でおこった胆管がんの例があります。

禁止されていないからといって・・・な事故。大阪の印刷会社で胆管がん発症

ここで使用されていた薬品は、法律では規制されていませんでした。しかし実際は人体に有害で、病気を引き起こす原因になっていたのです。法律だけではカバーできないのです。

事故は法律を守るだけでは、防げません。 この事実が下げ止まりの一因だったと言えるでしょう。

全ての事故原因を、法律でカバーしていくのは、時間がかかります。いや、不可能と言っていいでしょう。

業種ごと、事業所ごとに危険や有害なポイントは異なります。 全て一元的に管理できません。

法律で規制しきれていないグレー部分を網羅した安全対策必要です。

そういった閉塞感の中で、導入を検討されたのが、リスクアセスメントです。リスクアセスメントはEUで取り入れられ、労災事故を減らす効果をあげていました。

これを日本でも取り入れようとするのです。

リスクアセスメントとは、事業者の自主的な安全活動です。 その範囲は、法律外にも及びます。

とは言うものの、リスクアセスメントはこれ単独で行っては意味がありません。
OSHMS(労働安全衛生マネジメントシステム)の一部でしかありません。

OSHMSとは、品質と同様に、安全活動をPDCAサイクルを回すための活動です。
リスクアセスメントは、このサイクルのP、つまりプラン段階で行うものです。

安全目標、計画を作成するのに先んじて、問題点はどこにあるかを発見するのが、リスクアセスメントなのです。

今までの法律は、起きた事故に対して、再発防止を目的としてました。
一方で、リスクアセスメントは、事故が起こる前に、事業所の危険を発見し、対策を検討するものです。

「事故が起こる前に」というのがポイントです。
事故は、再発防止から、未然防止に。

リスクアセスメントは、法律でカバーされない事故原因を発見し、対応します。
しかもそれは、事業所ごとにカスタマイズされた安全プランになるので、より有効な手段がとれるというものです。

リスクアセスメントは、事業所ごとにカスタマイズされた、事故の未然防止対策。 自分たちの安全は、国に依存するのではなく、自分たちで守るというものといえるでしょう。

index_arrowリスクアセスメントの進め方は

リスクアセスメントは事業所の危険を発見し、どのように対処するかを決めます。
それは、法律のように一般化されたものではなく、自分の事業所だけにカスタマイズされた安全対策です。

リスクアセスメントは、事業者全体の話なので、時には建物の改造や設備の入替え、仕事の進め方を変えるなど、根本的な改変を行うこともあります。

実は、これがとても大きいのです。

KYなどは、作業前に危険箇所を見つけ、どのように対処するかを決めます。 しかし作業直前のことです。できることは限られます。せいぜい注意して作業しようとか、保護具を着けようといったレベルに過ぎません。
刃物がむき出しの電動ノコ盤に危険を感じても、刃物に触れないようにしようといった程度の対策です。危険要素はほぼ残ったままで、自分たちでどうにかしようとするしかできません。

これに対して、リスクアセスメントは事業所全体の話です。刃物がむき出しの電動ノコ盤が危険で、急ぎ対処する必要があると判断されたら、安全装置付きの機械に交換したり、保護カバーを付けるなど、大掛かりで予算をかける対策ができます。または電動ノコ盤を使用しない作業方法を取り入れる策も検討できます。

リスクアセスメントの特徴は、抜本的な解決が可能となるのです。

作業者個人や、作業長、ライン長ではどうしようもないこともできるのです。
それなりに多大な時間と予算をかけることもあるのでから、リスクアセスメントは経営の決裁者も巻き込んだ体制で行わなければならないのは言うまでもありません。

大幅な改善も期待できるリスクアセスメントは、どういった手順で行なうのか。

一般的に、次の手順です。

1.どんなリスクがあるのか?(リスクの特定)

2.そのリスクは、どれほどの頻度で起こり、事故になった時にはどれほどの重大な結果になるのか?(リスクの見積)

3.リスクの見積結果を踏まえて、どのリスクから手をつけるのか、どのような対応をするのか?(優先順位と対策の検討)

4.リスク対策を実際に行う。(対策の実施)


1~3までのプロセスは、実際の現場をよく知っている作業者やライン長、作業長が行います。

ここで重要なこととして、1人でやるのではなく、4~5人のチームで話し合います。チームが複数あるとなおいいでしょう。意見を出し合う、話し合うというのが、リスクアセスメントにおいては、大切なポイントなんですよ。

リスク・アセスメントはブレイン・ストーミングが大事

改めて自分たちの仕事場に潜む危険を洗い出すところから始めます。

危険を洗い出し終えたら、客観的に危険度(リスク)を見積ります。 リスクは、発生の頻度と重大性を軸に考えていきます。

見積もり終え、客観的な評価ができる状態になれば、何から対処していくのか優先順位をつけます。 優先順位は、リスクの大きいものから手を付けるのが原則です。

合わせて、リスクを小さくする対策として、何ができるかを検討します。

ここまでが、現場サイドで行なうことです。

この先、実際に対策を行なうのは、予算が必要になるので、管理者や経営者の役割です。 何から実行していくのか、いつまでに対策し終えるのかを検討し、実行に移します。

最後に、上記のプロセスには書いていませんが、リスク低減対策後のリスクはあるかを調べ、見積を行います。 場合によっては、対策したことで、別のリスクが生まれることもあるのです。

以上が、大雑把なリスクアセスメントの手順です。

リスクアセスメントは一度やればOKというものではありません。定期的、だいたい1年に1回程度行なうことが理想です。
それに1年で全ての危険を洗い出し、対策することは不可能でしょう。何年もかけて、安全な職場を作っていくのです。

難しそうに思えますが、職場が一体となって、自分たちの命を守る活動といえば、とても分かりやすいかもしれません。

最後に、リスクアセスメントの効果を実感するのは、どういった時だと思いますか?

この問の答えは、実は明快なんです。

それは、作業者が「怖い思いをしないでよくなった!」、「安全に作業できるようになった!」と実感することです。

いい商品を世に送り出すと、消費者から喜びの声が届き、これが励みになりますよね。
安全で安心な職場を作ると、作業者から喜びの声が上がるのです。

作業者が安心して働ける職場作っていき、その反応を見ることは、事業者や経営者にとっても、大きな励みになるんじゃないでしょうか。

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