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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

石材会社と社長を書類送検・天童 山形労基署、就業制限容疑(山鹿県天童市)

      2016/10/09

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仕事が立て込むと、普段現場作業をしている人だけでは、現場を回すことができなくなります。 忙しいのは会社としては、ありがたいのですが、手が足りなくなる状態です。

自社だけではどうしようもなければ、別の会社に仕事の一部を依頼することが多いでしょう。しかし別の会社も人手不足の場合もあります。そういった場合は、最後の手段、普段現場に出ない人を引っ張りだすこともあるかもしれません。

建設業の会社にいるからといって、現場作業に精通しているわけではありません。事務作業や営業の人が、いきなり現場に投入されても、大した戦力にはならないのが現実です。

戦力にならないところか、仕事に慣れていないため、事故の原因になったりすることおも考えられます。
現場作業に慣れていない人は、新入社員と同じです。十分に配慮することが大事なのです。

山形県天童市で、普段現場に出ていない人が事故に巻き込まれるという事故がありました。 この事故では、事業者が就業者が書類送検されてしまいました。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

石材会社と社長を書類送検・天童 山形労基署、就業制限容疑(平成27年9月17日)

天童市の金子石材でことし5月、作業中だった山形市の男性社員=当時(60)=が、クレーンから落下した機械に頭を打って死亡した労災事故で、山形労働基準監督署は16日、同社と同社の男性社長(72)を労働安全衛生法違反(就業制限)の疑いで書類送検した。

送検容疑は、同月26日、死亡した男性がクレーンで荷をつる作業を行う場合に必要な玉掛けの資格を持っていないのに、玉掛け作業をさせた疑い。

同労基署によると、つり上げ荷重が1トン以上のクレーン作業には玉掛け技能講習の修了が必要になる。死亡した男性は、クレーンを使って高圧洗浄機を片付ける際、移動中にベルトがほどけて洗浄機が落下し、頭にぶつかった。普段は営業を担当するなど現場作業には不慣れだったという。

山形新聞

この事故の型は「飛来・落下」で、起因物は「クレーン車」です。

普段は営業職の社員を、現場で作業させることはあるでしょう。 しかしよくよく理解しておくことは、その人は仕事に慣れていないということです。慣れていないだけでなく、作業に必要な知識や資格も持っていないこともあります。できることには限りがあります。

この事故では、資格を持っていない人に玉掛けをさせたことで起こりました。見よう見真似で、機械を玉掛けをしていたのでしょう。しかし、見よう見真似では、しっかり緊結されていなかったため、空中で機械が落下してしまいました。

落下した場所にいた被災者は、下敷きになり、亡くなられました。事業者は、資格を持たない人に玉掛けをさせたということで、書類送検されたのでした。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow事故原因の推測

書類送検で、違反となったのは、資格を必要とする作業にも関わらず、無資格者に作業をさせていたことです。この判断の結果、事故が起こってしまいました。

資格を有する作業というのは、この場合玉掛けです。 玉掛けとは、クレーン車で荷物を吊り上げるとき、ワイヤーやナイロンスリングなどで縛ることです。この縛り方はただ適当に行えばいいものではありせん。技能をようすることなのです。

素人が見よう見真似でやれば、荷物を持ち上げた時に、ワイヤーなどが外れたり、荷物が滑り落ちたりするのです。 時には、数百キロから数トンの物を持ち上げます。そういった重量の物が落ちてくると、どれほど危険かわかりますよね。

玉掛けは、1トン未満の物を吊り上げる場合は特別教育、1トン以上の物を吊り上げる場合は技能講習を受けなければなりません。どちらも1日程度の講習と数万円の費用で取得できます。玉掛けの資格は、業種問わず必要になるので、取得されている方も多いと思います。

玉掛け資格を持っている人は多いとはいえ、それが現場で作業する人の話。営業や事務職を専門としている人では、その数はぐっと少なくなるはずです。

現場で人手が足りなかったのか、理由はわかりませんが、この事故現場では資格を持っていない人に玉掛けをさせていました。重い高圧洗浄機の固定は甘かったのでした。

実は、無資格者に作業をさせているというのは、現場では多いのかもしれませんが、非常にリスクのあることだということは覚えておく必要があります。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

玉掛け資格を持っていない人に作業をさせていたこと。
危険作業などの教育やKYが行われいなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow対策の検討

何よりも重要な事は、就業制限のある作業は、有資格者に行わせなければなりません。玉掛け作業は、一見すると誰にでもできそうに見えるかもしれませんが、資格が必要です。
資格を持っているということは、必要な知識と技能を学んでいるということです。この違いは非常に大きいのです。

例え人手がなく、現場の経験がない人の応援を頼む場合でも、危険作業は有資格者が行いましょう。今回の事故現場では、玉掛けは有資格者が行う必要がありました。

普段作業に携わっている人ならば、別段危険と思わないことでも、現場経験のない人が行うと、勝手が違います。荷物を運ぶ作業一つにしても、怪我をすることもあります。現場監督や職長は、そのことをよくよく理解して置かなければなりません。
怪我や事故を防ぐためには、作業前に何が危険かということを伝え、経験の浅い人には危険でない作業をさせます。

また経験の浅い作業者も、危険な作業を行わないようにします。傍目から見ると、簡単そうに見えても、技能が必要なこともたくさんあります。

事業者は、事故が起こらないように注意しなければなりません。資格を必要とする危険作業については、適材適所が必要なのです。

対策をまとめてみます。

危険作業は有資格者が行う。
職長は、無資格者や経験の浅い作業者に危険作業をさせない。

実は、無資格で玉掛けやショベルカーの運転、クレーン車の操作などを行っていることは少なくないと思います。講習を受けさせたりなど資格をとらせるのは、費用がかかります。ましてや作業者全員にとらせるとなると、その費用は高額になるでしょう。

資格がなくとも、作業自体は教えられてできるかもしれません。しかし講習で学ぶのは、作業方法だけではないのです。安全に作業する方法も学ぶのです。
資格に対しては、様々な意見もあるでしょうが、安全な作業のためには、必要なのです。

index_arrow違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【安衛則】

第41条
就業制限のある業務を行うのに必要な資格をまとめています。一覧は別表3に。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

安全衛生教育と有資格作業2 「就業制限のある業務」

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