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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

10段ピラミッドは安全確保の上に行われているのか

      2015/10/18

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私が中学生や高校生の時は、組体操はやっていないかった記憶があります。
その代わりに、日体大卒の体育教師の主導で、エッサッサをやっていたような。組体操を行ったのは、小学校の時くらいです。体の大きかった私は当然のように、土台役をやってました。ピラミッドも最下層の土台をやっていましたが、小学校ということもあり、高さは3段でした。

先日、大阪市の教育委員会が市内の中学校、高校の運動会で行われる組体操のピラミッドとタワーについて、段数に上限をつけることを決定しました。

運動会の競技に口出しするのは、珍しいことでしょう。この指導の背景には、高層化するピラミッドによる事故が絶えないことがあるようです。

組み体操「ピラミッド」など、3年間で8人骨折 大阪・八尾市立中

組体操のピラミッドは、運動会の華になります。それが10段ともなると、豪快で見事なものになります。一方では、この華々しさの裏で、骨折するなどの事故も少なくないのも事実です。

骨折ともなると数か月は不便な生活になります。場合によっては、後遺症が残ることもあります。怪我も時間が経つと思い出になるかもしれませんが、そんなことで美化するのはいかがなものでしょう。

この八尾市の中学校の事故を受け、大阪府の松井知事もピラミッドの制限することを指導しました。

これにより、全国的に組体操に10段ピラミッドは必要かという議論が活発化しました。

労災事故とは異なりますが、共通するところもあると思うので、考えてみます。

index_arrowなぜ高さを求めるのか

なぜ10段のピラミッドを行うのかは、様々な経緯があるでしょう。1つは生徒たちが困難な課題を達成するチャレンジにすること、または1つには伝統になっているということもあるかもしれません。

間違いなく本番の運動会で、達成したときには感動があるでしょう。なかなかうまく行かなかった練習を思い出し、達成感とともに涙もする人もいるでしょう。先輩の姿を見て、後輩たちが自分たちもやりたいと奮起することもあるでしょう。

忘れてはいけないのは、実行するのは子どもです。安全を確保することは、教師や大人の責任です。
彼らがコントロールしてあげる必要があります。
残念ながら、一部では十分にコントロールできず、怪我をさせてしまうケースもあります。

中には、10段ピラミッドの指導に長年携わり、きちんと安全確保しながら教えているという教師もいると思います。そのようなベテランの方からは、「10段ピラミッドを禁止するのは反対だ」という意見もあるようです。
残念ながら、全ての学校にそのようなベテランがいるとは限りません。むしろ未経験の人のほうが多いはず。

実行する生徒は初心者ばかり、教える側も心もとないでは、事故だって起こります。 学校生活と労働で共通することは、管理者は安全に十分注意を払わなければならないことです。

この組体操のピラミッドの話は、学校だけでなく、労働現場で起こっていることの縮図かもしれません。

index_arrow危険作業を行うときには

. 仕事の現場には、危険がいっぱいあります。ささいなミスが、命を失わせることも少なくありません。 昔は、危険を顧みず、無茶な仕事の仕方もあったようですが、安衛法などの規制が強化され、危険な作業方法自体が規制されています。

今は機械や作業方法もずいぶん改善され、安全に配慮されるようになっています。機械も安全性能が高まり、作業者が巻き込まれたりすることがないようになってきています。作業者に危険なことをさせない、うっかりミスでも事故にならないようにしているのです。
つまり人に頼らず、機械側で事故を防ぐようにしているのです。

労働安全でより効果があるのは、人に頼るより、危険そのものを排除することです。 人に頼った安全対策は、個人差があったりします。保護具の着用も、全員が着用するとは限らないのです。 機械側に安全を確保させる方が、確実度が高いといえます。

リスクアセスメントで、対策方法として検討するのは、まず作業方法や材料など危険を排除し、次に機械などでの対策です。
管理的対策や保護具の着用は、100%実行が担保される場合を除き、低減効果は低いとされます。

人に頼る安全は、100%ではない。
これは結構重要なことではないでしょうか。

さて、10段ピラミッドでは、指導方法、生徒たちの意識以上に安全を担保するものはあるのでしょうか。 上段の人には墜落リスクがあります。土台になる下段の人には、押しつぶされるリスクがあります。 これらのリスク対応ができているのかを考える必要があります。

指導する教師は、具体的で実現可能で、効果の高い、生徒の意識に頼らない安全対策を行うことが求められるのではないでしょうか。
墜落のリスク対策のために、介助者以外にマットは必要ではないでしょうか。

事前にピラミッドの作り方だけでなく、安全についても十分に教育する必要もあります。

このことは、なにも運動会だけではありません。
仕事でも同じです。

中小企業では、OJTで仕事の仕方を教えるのがほとんどです。教えるといっても、実際にはいきなり実践というのが多いでしょう。安全のことについては、補足的に教えている状況です。
安全をしっかり教育するというのは、雇入れ時教育で義務づけられいますが、あまりやられていないのが実情ではないでしょうか。

仕事も大事ですが、それと同じくらい安全を確保することも大事です。


組体操の練習も、どのようにして安全を確保していくのかをしっかり教え込むことも大切です。 作業者の安全確保と安全教育は、事業者つまり会社の責任です。
生徒への安全確保と安全教育は、学校と教師の責任です。

10段ピラミッドの安全性についての議論は、作業者の安全を守るためにはどうすべきかという問題にもつながるのではないでしょうか。

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