今日も無事にただいま

「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

工事現場で作業員が生き埋め、2人が死亡(山口県岩国市)

      2016/02/16

entry-439

土木工事では、土を扱います。特に地下深くを掘削する場合、その土をどのように扱うかが大事です。下手な扱い方を行うと、土砂崩れを引き起こしてしまいます。

土砂崩れに作業者が巻き込まれると、命に関わります。 土木作業は、土をいかにコントロールするかなのです。

土のコントロールを誤ってしまい、土砂崩れを引き起こす事故が、山口県岩国市で起こってしまいました。

今回はこの事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

工事現場で作業員が生き埋め、2人が死亡 (平成27年10月8日)

8日午前9時40分頃、山口県岩国市玖珂町(くがまち)のスーパー新築工事現場で、水道管を掘り出すため掘削していた溝が崩れ、男性作業員2人が生き埋めになった。

消防などが2人(1名は外国籍)を救助したが死亡が確認された。別の男性作業員も足に軽傷を負った。

山口県警岩国署の発表では、3人はいずれも水道工事会社の従業員で、朝から、数人で作業をしていた。溝は長さ約5メートル、幅約2・5メートル、深さ約3メートル。被災者が溝の中にいた際、側面の土砂が崩れ落ちた。外国籍の男性は助けようとして巻き込まれたという。

読売新聞(記事リンク切れ)

この事故の型は「崩壊・倒壊」で、起因物は「地山」です。

スーパーの建築工事現場で起こった事故です。
古い水道管を掘り出す工事だったのでしょうか、幅約2.5メートル、深さ3メートルもの深さまで掘削していました。

この溝の中に3名が作業していたところ、土砂崩れが起こり、巻き込まれてしまいました。

2名が亡くなり、1名が怪我を負ったのでした。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow事故原因の推測

水道管は、非常に深いところに埋まっていたようで、約3メートルもの深さまで掘削していました。人の背丈もすっぽり収まってしまいます。

このような作業では、必ず土止め支保工を行わなければなりません。どうやらこの作業では、土止め支保工が行われていなかったようです。

土止め支保工とは、土壁の前に壁を作り押さえつけることで、土砂崩れを防ぐものです。これを設置するのは非常に手間がかかります。材料も必要になります。

水道管の撤去作業は、1箇所につき、せいぜい数時間で終わります。その短時間の作業のために、わざわざ土止め支保工を行うのは手間のかかることだと思うかもしれません。

しかし、どんなに短時間であろうと、土砂崩れの危険はあるのです。

また、2メートルを超える深さを掘削する場合は、地山の掘削作業主任者の選任が必要です。掘削作業主任者は土止め支保工作業主任者も兼任となります。この現場では、作業主任者が選任されていなかったのかもしれません。

掘削作業は土木工事では一般的ですが、安全体制が十分でなかったことが原因のようです。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

土止め支保工が行われていなかったこと。
地山の掘削及び土止め支保工作業主任者が選任されていなかったこと。
安全教育やKYが行われていなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow対策の検討

深く掘削する場合は、原則として土止め支保工が必要です。明確に基準があるわけではありませんが、1.5メートル以上深く掘る場合は必要と考えたほうがよさそうです。

この1.5メートルという目安は、「建設工事公衆災害防止対策要綱[土木工事編]」にあります。

第 6 章 土留工

第41(土留工を必要とする堀削)
起業者又は施工者は、地盤を堀削する場合においては、堀策の深さ、堀削を行っている期間、
当該 工事区域の土質条件、地下水の状況、周辺地域の環境条件等を総合的に勘案して、
土留工の型式を決 定し、安全かつ確実に工事が施工できるようにしなければならない。

この場合、切取り面にその箇所の土質に見合った勾配を保って堀削できる場合を除き、
堀策の深さが 1.5メートルを越える場合には、原則として、土留工を施すものとする。
また、堀削の深さが4メー トルを超える場合、周辺地域への影響が大きいことが
予想される場合等重要な仮設工事においては、 親杭横矢板、鋼矢板等を用いた確実な土留工を
施さなければならない。

長さ5メートル、幅2.5メートルという細長い溝を掘る作業です。勾配をつけられるほどではありません。 この要綱に従うならば、土止め支保工は必要であるといえます。

また2メートル以上深く掘っているのですから、地山の掘削作業主任者を選任しておかなければなりません。
この作業主任者は、掘削作業の安全に責任があります。選任していなかったこと、また選任されていたけども、十分に指導していなかったことなどが、この事故を引き起こしたようです。

作業者も、危険について十分に理解しておく必要があります。深く掘った溝の中に入るのは、土砂崩れになるかもしれない。その危険を安全教育やKYで教えておく必要がありました。

対策をまとめてみます。

土止め支保工を行う。
地山の掘削作業及び土止め支保工の作業主任者を選任する。
掘削作業の安全教育やKYを行う。

掘削作業は、土砂崩れの危険がつきまといます。そのため土止め支保工を行うことは、重要なのです。 確かに土止め支保工は材料が必要ですし、作業に時間がかかります。
場合によっては、本作業より時間がかかることもあります。

しかしこれは、作業者の命を守るための設備です。
そう考えると、本節作業と同じくらい重要だとわかるのではないでしょうか。

index_arrow違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【安衛則】

第359条
2メートル以上の深さを掘削する場合は、地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習を修了した者のうちから、地山の掘削作業主任者を選任しなければならない。
>第360条
地山の掘削作業主任者は、必要な措置をとらなければならない。
第361条
明り掘削の作業を行なう場合において、地山の崩壊等の危険を及ぼすおそれのあるときは、
あらかじめ、土止め支保工などの措置をとらなければならない。


これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

iQiPlus

 - ○事故事例アーカイブ, 崩壊・倒壊 ,