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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

重機の死角に死地がある

      2015/11/01

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工事現場では、ショベルカーやダンプなど大型の機械が所狭しと動きます。
その合間を縫って、その他の作業者が行き交います。

このような場所で、注意しなければならないことは、接触事故です。相手は図体の大きな機械です。接触した時の破壊力は低速であっても、相当なものです。
もし重機の運転者が、接触に気づかなかったら、下敷きになってしまいます。

実際に、ショベルカーにひかれるという事故も起こっています。

こういった事故はどうして起こってしまうのでしょうか。
その原因の1つは、図体の大きな重機には死角が多く、運転者が気づかないというのがありそうです。

今月の安全大会のテーマは、重機の死角を知り、事故を防ごうです。

index_arrow重機の死角は

死角というのは、目で見えない範囲のことです。

人間や肉食動物の目は顔の前方についています。そのため耳より後方の範囲を見ることはできません。つまり顔の後方は死角というわけです。
一方、草食動物は顔の両サイドに目がついているので、後頭部を除く範囲を見渡すことできます。いち早く、敵の接近に気づかなければ死活問題になるため、死角も狭いということです。

死角は単に目の位置だけでなく、環境によっても作られます。例えば建物が密集している場所では、影になる場所が多くなり、死角も多いといえます。

車の運転でも死角には注意が必要ですね。車の後部は、サイドミラーでもカバーできない部分もあるため、そこに原付や自転車が貼りこんでしまうと、見落としてしまうことがあります。もし車の死角に自転車がいるのに、気付かず左折したりすると、巻き込み事故になりますね。
車の死角については、教習所などでも習ったのではないでしょうか。

一般の乗用車でも死角になる場所があります。これよりも大きな車体になると、その死角範囲は増えてしまいます。
大型のショベルカーなどでは、後方を見ることはほぼ不可能といえるでしょう。
後方だけではありません。運転席の位置により、左右も見えにくく、注意が疎かになってしまいます。

多くの人がひしめき合っている作業現場で、大型の機械が、前後左右に移動し、上体をぐるぐると旋回させる。
冷静に考えると結構危険な作業環境です。

ショベルカーの死角について、きちんと把握して作業している人はどれほどいるでしょうか?
また、ショベルカー周辺で作業している人たちは、どこの位置に立っていると運転者から死角になるのかを知っているでしょうか?

実は運転者から、見えていない場所で作業しているということも少なくないのではないでしょうか。
ショベルカーが近づいてくれば音で分かると思うかもしれませんが、建設現場はいろいろな音にあふれ、ショベルカーの接近を聞き分けるのも簡単ではありません。そのため音に頼るのは、決して安全ではないのです。

運転者も作業者も、ショベルカーなどの重機の死角を知ることが、お互いにとって意味があります。
死角の範囲を理解しておくと、その場所に入り込む危険が減ります。こういった心がけだけでも、事故を減らす効果があるのです。

どうやって知るのか。 それは、実際に人を立たせて、確認するのが一番です。

やり方としては、1人が運転席に座ります。
そしてショベルカーを円の中心として、30度ずつ人を立たせて、見えるか見えないかを確認します。
見えない場所があれば、そこが死角です。
運転席は車体の左側についていることが多いので、左右で見える角度が違うことにも気づくはずです。右後方は全く持って見づらいですよね。

この死角の確認は、実際に運転する人だけでなく、全ての作業者が運転席に座り確認するといいでしょう。
運転者以外も、入っては行けない角度を把握するのが大事です。また作業者も別の現場では、ショベルカーに乗ることもあるでしょう。その時にも死角を知る経験は活きるはず。

この確認は、特別な道具は必要ありません。時間も10分かかりません。
朝礼や安全教育の時に試せるので、ぜひ行ってください。

index_arrow見える化で、事故を防ぐ

死角を把握したら、事故防止に役立てましょう。
死角を見える化です。

予算があるならば、バックビューモニターなどを搭載するのもいいですね。最新のショベルカーだと、そういった機能を備えたのもありますね。 また、人が接近し過ぎたら警告してくれるセンサーを付けるのもよいかもしれません。

このような設備を備えるのは、予算があるので、会社としての機械の買い替えを検討している時に、取り入れたいものです。

とはいえ、機械を買い換えはそう簡単にできません。そうなると、手軽な方法で死角を見える化します。

開口部へ機械が落下したり、機械との接触事故を防ぐために、安衛則では、合図者を配置するようにと定められています。
合図者は、周囲の安全を確認して、運転者に後進の合図を出し、誘導する役目を担います。とはいうものの、誰か1人を合図専門とし、他の作業はさせず、常に見張らせなければならないというのではありません。作業しつつ、見張り必要に応じて合図を出せばよいのです。
作業をしながら、全員の作業状況を注意しなければならないので、かなり気を遣う役割になります。

合図者の配置は、他人の目を使って死角をなくすという効果があります。しかし人に頼った死角の見える化です。合図者がぼんやりしていると、効果は十分ではありません。

合図者は人に頼った死角の見える化ですが、運転者と作業者も死角を意識させる見える化も必要です。
作業中でも、ここが死角になると分からせてやる必要があるのです。

運転者には、死角ポイントをイラストにして、運転席の見やすい場所に張り出しましょう。
この記事の一番下に画像を置いていますが、例えばこんなのです。

作業者には、ショベルカーに死角になる範囲に、色塗りをして分からせるのもよいでしょう。
色塗りされている範囲は、運転者から見えないのだから、入り込まない、接近し過ぎないようにさせるのです。

目で見て、分かりやすいようにしておけば、作業中もハッと気づきやすくなります。

死角ポイントのイラストや車体の色付は、予算がなくともできる安全工夫です。
死角の確認と合わせても、1日もかかりません。

ただでさえ作業中は周辺の注意がおろそかになりやすくなります。
死角に人がいるかなどは、すぐに頭から離れてしまうでしょう。しかし死角についての情報が頭にあると、ふとした拍子に思い出せます。事故防止は、危険があるかもしれないと思い、慎重になることからです。

これから年度末にかけて、建設業は繁忙期になります。人と機械がほどよい距離感を保つためには、ほんの少しの時間を使って、どこに危険があるのかを知ることも大事ですよね。

H2711月号

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