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鉄パイプが落下 男性作業員を直撃、死亡(広島県広島市)

      2015/11/04

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街中で行われるビルや建物の工事現場では、すぐ側を歩行者が歩いているということも少なくありません。
階上にクレーンを使って荷物を持ち上げたり、下ろしたりと、歩行者の頭の上では、実は色々なものが行き交っているのです。

荷物を宙に上げ下げするときに、注意しなければならないことは、落下させてしまうことです。
小石程度の大きさのものでも、頭上に降ってきて当たると、かなりの痛みになります。それが拳程度の大きさの物になると、死ぬこともあります。

上から落ちてくるものは、かなり危険なのです。

広島市で、クレーンで吊り上げていた鉄パイプが落下し、作業者が下敷きになるという事故がありました。
今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討してみます。

index_arrow事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

鉄パイプが落下 男性作業員を直撃、死亡 (平成27年10月26日)

26日午前、広島市の工事現場で鉄パイプが落下し、作業中の50代の男性を直撃、男性は死亡した。

事故があったのは、広島市中区宝町の解体工事現場。警察と消防などによると、26日午前10時すぎ、8階建てのビルの屋上からクレーンを使って鉄パイプを下ろしていた際、何らかの原因で4階辺りから鉄パイプが落下し、トラックの荷台にいた50代の男性作業員を直撃した。

男性は意識不明の状態で、広島市内の病院に運ばれたが、死亡した。また、40代の男性作業員も軽傷を負っているという。警察と消防で詳しい事故の原因を調べている。

日テレNEWS24 (記事リンク切れ)

この事故の型は「飛来・落下」で、起因物は「クレーン」です。

事故現場は、広島市内の、8階建の建物を解体する工事現場で起こりました。

クレーンで鉄パイプを吊り、地上まで下ろそうとしていた時、荷崩れてしまいました。トラックの荷台に下ろそうとしていたので、鉄パイプはトラックに落下しました。落下地点には、荷受をしようとしていた作業者がいて、下敷きになってしまったのでした。

下敷きになった作業者は亡くなってしまい、別の作業者も怪我をしました。

工事関係者によると、落下原因はわからないものの、現場ではビル風が常に吹いている状況ではあったようです。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow事故原因の推測

直接的な原因は、鉄パイプが落下したことです。 この鉄パイプは、おそらく足場か手すりの材料でしょうか。階上で不要になったものを片付ける作業中に事故が起こりました。

鉄パイプは何本かまとめて玉掛けされていました。
この玉掛けが入念に行われていたかが、今後の調査で明らかになるでしょう。

鉄パイプのような細長いものの玉掛けは、バランスが大事です。 重心が偏っていると、ズリ落ちてしまいます。

この現場では、ビル風が強く吹いていたそうです。
風によって荷物が振られ、バランスを崩してしまった可能性もあるのかもしれません。

荷物は落ちないように玉掛けするのが原則です。しかし絶対落ちない保証はありません。
もし落下地点に人がいると、下敷きになってしまいます。 今回の事故は、トラックの荷台に積み込み作業中に、荷物が落ちたものです。おそらくクレーンはトラックの上まで旋回し、その位置でワイヤーロープを伸ばし、荷物を吊り下げた可能性も否定できません。

荷物の落下地点は立ち入り禁止です。クレーンで荷受けするにしても、荷物の真下にいたら危険なのです。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

鉄パイプの玉掛けで重心がとれていなかったこと。
吊り荷が風で煽られ、バランスを崩したこと。
作業者が吊り荷の落下地点にいたこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow対策の検討

鉄パイプのような細長いものの玉掛けは、本格的に吊り上げる前に、根切りで確認します。根切りは数センチだけ荷物を吊って、バランスを確認することです。最初にバランスを確保することが、その後の吊り作業の安全を左右しますから、根切りは大事です。

鉄パイプも1本ごとではなく、何本かまとめて吊っていたでしょうから、バラけないようにしっかりと縛ってやる必要があります。決して滑り落ちたりしないようにします。

風があまりに強い時にはクレーン作業は中止しなければなりません。しかしビル風程度ならば、中止とはまではいかないでしょう。とはいうものの風に煽られると危険です。
鉄パイプが振られて、バランスを崩してしまう可能性もあります。荷物がバラけないように縛るとともに、吊具のナイロンスリングやワイヤーも滑らないようにしてやりましょう。荷物と吊具の間に、ツルツルしない布をはさみ、摩擦を高めてやるのもよいかもしれません。

クレーン作業を行うときは、合図者が周囲の状況を確認して、合図を出します。これはクレーン操作の合図だけでなく、落下地点に人が入り込まないように見張る役目もあるのです。

作業者自信も落下地点に人が入らないようにしましょう。トラックに積み込む場合でも、トラックの荷台の高さまでは、周囲に人がいない場所で下ろし、そこから旋回して、トラックに積み込む方が安全ですね。
この吊り荷がたどるルートも合図者が支持してやる必要があります。

対策をまとめてみます。

荷物が落下しないように有資格者が玉掛けを行う。根切りを行う。
合図者を配置し、合図させる。
荷物の落下地点は立入禁止とする。

街中でビルや建物の工事は、珍しくありません。
荷物を階上に上げたり、下げたりも日常的に行われます。
そのような工事の中で、上から何かが落ちてくるのは、非常に恐怖です。
玉掛けは、ほんの少しバランスを崩すだけでも、大事故になります。
よく見かける工事風景なだけでに、こういった事故は十分に注意したいものです。

index_arrow違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【クレーン則】

第71条
事業者は、移動式クレーンを用いて作業を行なうときは、一定の合図を定め、合図者を指名して、合図させなければならない。
第74条の2
事業者は、移動式クレーンの作業中に、特定の吊り方をしている荷の下に、労働者を立ち入らせてはならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。
クレーンの安全 その9。 作業時の注意

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