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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

整理整頓が安全にとって重要な訳

      2015/12/02

entry-489昨日、今月の安全大会として、整理する前にちょっと様子見という内容の記事を書きました。

整理整頓をはじめとした、4S、5Sは品質管理だけでなく、安全管理にも重要だというのは、耳にしたことがあるのではないでしょうか。
しかし、どうして整理整頓などが、安全に役立つ、事故防止に一役買うのか、はっきり分かるでしょうか?

事業場で、「整理整頓が大事だ!」と言われても、よほど徹底的にやり続けないと、身につかないものです。
そもそもなぜ整理整頓が大事なのかを理解していないと、ただのスローガンで終わることもしばしばです。

なぜ、4Sや5Sが大事なのか。
作業者や従業員にその意味をしっかり教えることが、大事なのではないでしょうか。

index_arrow4S・5Sが安全に効く

事故は、「不安全な状態」と「不安全な行動」が重なることで、発生します。
「不安全な行動」とは、道路上に寝そべる、プラットフォームから線路に降りるといったものです。いわゆる危ない行動なのですが、本人が危ないと思っていない場合も少なくありません。

一方、「不安全な状態」とは、機械の安全装置が壊れている、タイヤが磨り減って溝がないというものです。設備や環境にある危険要因です。

単純に考えると、物が多ければ多いほど、危険の芽、つまり事故や怪我になる要因が多くなるのではないでしょうか。
家具も何もない部屋と、家具一式が揃い、洋服などもたくさん置かれた部屋では、どちらの方が、つまづいたり、物に当たったり、上から物が落ちてくる可能性が高いでしょうか?

物が増えれば増えるほど、大なり小なり事故や怪我になる要素が増えるのです。

人が生きていったり、仕事をする上で、何一つ持たないことは不可能です。
衣食住に関わるものは必要ですし、仕事ごとに必要な材料や道具、機械などがあります。

必要な物は必要です。しかし、長い間仕事を続けていたり、生活したりすると、いらないものも出てきます。
不要になったものをずっと残しておくと、場所をとります。そして収納する場所には限りが有ります。あまりに物が増えすぎると、収納に入りきらない物が、溢れだします。
何か一つ溢れ出たことを皮切りに、物は溢れ乱雑になります。その抵抗がなくなるのです。

以前、テレビ番組で汚部屋の作られ方を紹介しているのを見たことがあります。
部屋を片付けてしばらくはきれいな状態が保たれています。しかし、動線に服を脱ぎ捨てた瞬間から、部屋がモノで溢れかえるそうです。動線が埋まることで、部屋を汚すことに抵抗がなくなるようでした。

仕事場でも、誰かのズサンな行動をきっかけに、整理整頓が崩れていくのではないでしょうか。

整理整頓がされていない職場で働くのは、とても大げさに言うと、汚部屋で生活するのと同じです。

そんな部屋に人を招くことができるでしょうか?
もてなすことができるでしょうか?
食事を振る舞えるでしょうか?
「あら、素敵なお部屋ですね」と言えるでしょうか?
「一晩泊めてくれ」と言えるでしょうか?

職場を部屋だとすると、中で生活するのは従業員や作業者です。
服やゴミが散乱し、服の下に何が隠れているか分からないような場所で生活するのは、かなりきついですよね。

それに、汚部屋で作った手料理を持ってこられても、箸をつけるのは抵抗がありますよね。
箸をつけるのは、あなたの製品を買うお客さんです。
食べてもらうのに、ちょっと不安を感じませんか?

もちろん、職場がそこまでひどい状態ではないでしょうが、非常に極端な話をすると、整理整頓されていない職場は、汚部屋で料理を作るに近いのではないでしょうか。

人に食べさせるのはもちろん、自分自身、そんな料理は食べたくないんじゃないですか?
それにキッチン周りにも物があふれていたら、ガスコンロに火をつけた時、何かに燃え移って火事になる可能性もあります。

そこまで、みんなに身近に整理整頓されていない状態をイメージさせると、よし片付けようという気になるんじゃないでしょうか。

index_arrow組織は感情的で動く

人は、理屈を並べて話しても聞ません。指示したところで、徹底されません。せいぜい上司が見ている前で振る舞う程度です。

私がとても影響を受けた人が仰っていたことに、「組織は感情的なもの」ということがあります。
組織は人の集まりです。多くの職場では、決まりや規則というものがあります。これを守ることが重要と教えられます。でも、なぜその規則が大事なのかが理解されないと、ただの形式だった行動にしかなりません。

新入社員に「4Sが大事だぞ」と教えたところで、なぜ大事かを伝えていないと、何を整理して、整頓するのかあやふやで、やったりやらなかたりします。これは、きちんと意義や意味付を伝えられていないからです。

もし4Sの意味として、例えばこんな話をするのもいいかもしれません。

「人の家に行って、足の踏み場もないほどゴミがあふれていたとしたら、入りたいか?
昨日、ハンバーグ作ったから、食べていってよと、薄汚れた皿に載せて、出されたとしたら、食べられるか?
どんなに家主が、汚くないよと言っても、信じられるか?

もし中に入ったら、ゴミの下に刃物が埋もれれて、足に刺さるかもと考えないか?
そのハンバーグを食べて、お腹こわさないかと考えないか?

多分、遠慮して、二度とその家には行かなくなるんじゃないか?

仕事に置き換えたら、汚部屋は汚い職場で、ハンバーグはそんな職場で作られた製品だ。
もし客の立場として、そんな場所で作られたものを使いたいと思うか?
そこで働いている人が、安全で健康的な環境にいると思うか?
自分がその職場で働いていたならば、毎日通いたいと思うか?

逆にどんな仕事場だったら、安全安心を感じられるか。
通いたいと思う職場か。

それはゴミがなく、すっきりして、きれいに掃除されている職場じゃないだろうか。
4Sはそのためのものなんだ。整理、整頓、清潔、清掃。
自分たちもお客さんにも気持ちのいい環境を作ることに、意味があると思わないかい?」


これだけ言われたら、心からなるほどと思うんじゃないでしょうか。
ほんの少し伝え方を変えるだけで、話し相手の感情が動きます。

行動の動機は、感情が鍵です。
頭でわかっているだけでは、動きません。
逆に頭で分かっていても、感情が動けば、理不尽なこともやってしまいます。
もし頭でわかっていることで、行動がコントロールできるならば、ダイエットに失敗する人なんていません。

もし整理が苦手な人がいるならば、こんなふうに考えてはいかがでしょう。
整理は、必要なものと不要なものを分けて、不要なものとサヨナラすることです。
これは単に捨てることではありません。

感謝を込めて、送り出してやるとも言えます。

私は、近藤麻理恵さんの著作を読んで、いいなと思ったことがあります。
それは全ての物を一度手に取り、ときめくかときめかないかで区分する。ときめかないものを処分するというものです。

とても情緒的な表現ですよね。
でも、その判定の仕方は、行動に移しやすいのではないかと思います。

仕事上の道具などは、ときめきだけで判断できないかもしれません。捨てることに抵抗があるならば、一度それを手に取り、判断しませんか。そしてもう不要だなと思ったら、感謝して、お別れしましょう。

一度手に取ることで、感謝するプロセスが生まれるのです。
同じ整理でも、心理的な負担は変わるはず。

整理整頓は、自分とお客さんの安全安心を生み出します。
実行するには、ちゃんとその意味を話し、理解することが、事業者の責任なのです。

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