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伐採した木の下敷きに 茂原、作業の男性死亡(千葉県茂原市)

      2015/12/10

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三浦しおんさんの「神去なあなあ日常」という本があります。
これは、高校を卒業した若者が、林業の世界に放り込まれ、慣れない仕事、自然を相手にすること、人間関係、恋心などを経て、成長していく姿を描いていくものです。かなり面白い作品です。「WOODJOB」という映画にもなっていますね。

この著作の中でも、時として危険と隣り合わせになることが描かれていますが、実際の林業の作業も危険を伴います。

まず作業場所は常に斜面です。そして、チェーンソーなどを扱い、木が倒れる。
危険となる要素が非常に多いのです。

中でも注意しなければならないのが、切った木の下敷きになることです。
木の切り方で、倒れる方向はコントロールできますし、避難するのですが、何かの条件で自分のところに倒れてくることもあります。

木はかなりの重量です。下敷きになると、体は耐えられません。

千葉県茂原氏では、切った木の下敷きになるという事故がありました。
今回はこの事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

伐採した木の下敷きに 茂原、作業の男性死亡 (平成27年11月7日)

6日午前11時40分ごろ、茂原市下太田の山林で、伐採作業中だった作業者が伐採したスギの下敷きになった。若狭さんは頭を強く打ち、搬送先の病院で死亡が確認された。茂原署は事故原因を調べている。

同署によると、被災者はヘルメットを着用し、1人でチェーンソーを使って作業していた。スギは全長約30メートル、直径約34センチで、被災者は根元から約20メートルのところで下敷きになっていた。約50メートル先で別のスギを伐採していた作業員男性が被災者を発見した。

現場は県有地で、工業団地の建設予定地。

千葉日報

この事故の型は「はさまれ・巻き込まれ」で、起因物は「倒木」です。

この事故は、山林を切り開き、工業団地にする作業に起こりました。
管理されている山林の多くには、スギやヒノキが植樹されています。土地を均し、建物を作るためには、まず木を切る必要があります。

被災者が1人で、チェンソーで木を切っていた時、木の倒れる向きが悪かったのでしょうか、被災者に向かって倒れてきました。
根本から20メートルの場所で下敷きなっていたということですので、避難しようとしたと思われます。 残念ながら、避難かなわなかったのでした。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow事故原因の推測

直接的な事故の原因は、木が倒れる方向がよくなかったことです。

木を切るときは、まず倒す方向に受け口を作ります。その後受け口の反対側から、水平に切っていきます。

この作業時も、同様の手順で作業していたものと思われます。

何かの原因で、受け口側に立っていたのか、受け口は正しく作っていたが、周りの木に接触し、倒れる方向が変わったのか、原因の詳細はわかりません。
その原因がはっきりしませんが、事前に危険要素を排除できていなかったのだと思われます。

また木が正しい方向に倒れなかった場合の、退避場所、退避する方向を定めていなかったのが、トラブル時に逃げきれなかった原因かもしれません。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

木の倒れる方向に立っていたこと。
周りの危険除去がされていなかったこと。
退避場所、方向を検討していなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow対策の検討

木を伐木する場所は、山の中なので、足元が安定していません。
また木の生え方、条件も1本ごと異なるので、個々の木について、方針を決めていく必要があります。
とはいうものの、大きく悪条件ということは少ないので、大体においては深く検討しなくてすみます。
しかし、事前に木を倒す方向を決めたり、倒すにあたって障害物があるかどうかの確認、また作業する位置、退避する方向などは決めておく必要がありそうです。

1本ごとにそんなの決めてられないと思うかもしれませんが、事が起こった時にはパニックになります。 パニックになると、どうしたらいいかを考えることができません。
パニックになっても、素早く行動できるようにするためには、あらかじめ何をするかを明確にしておくことです。

この現場の状況がわからないのですが、退避する方向が違っていたら、下敷きにならなかったかもしれません。

長い時間の考えるのではなく、「逃げるならこっちの方向だな」という程度でも指針があれば、とっさの行動に移せます。

木を1本切る度になので、面倒かもしれませんが、命を守るためには重要なことといえます。

対策をまとめてみます。

作業前に、作業方針を決める。
周囲の危険要素を取り除く。
退避場所、方向を決めておく。

林業も建設業と同じくらい、危険が身近な仕事です。
自然相手の仕事になるので、コントロールしきれないところもあります。

コントロールしきれないとしても、最大限安全を確保するのが、林業作業の重要なことといえます。

「神去なあなあ日常」を読むと、たくましく仕事をしている姿が描かれていますが、木とともに危険とも戦っているようです。
とはいえ、この作品はとても面白いので、おすすめします。

index_arrow違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【安衛則】

第477条
立木を伐倒しようとする時、退避や危険除去などを行わなければならない。
第479条
立木を伐倒しようとする時、合図を定めなければならない。
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