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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

無資格で作業させる前に、助成金の活用も考えてみては。

      2015/12/18

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労災事故が起こると、事故を起こした本人に被害を受けますが、その影響は広範囲に及びます。
特に、その被災者が所属している事業者、つまり会社の経営者はその責任を厳しく追求されてしまいます。

安衛法の条文の多くは、「事業者は」という出だしで書かれています。
つまり、安衛法は、労働者や作業者が守らなければならない規則ではありますが、それ以上に事業者が実施するものなのです。

そのため、事業者が指導していても、それが労働者が実施していなければ、事業者は義務を果たしていないことになります。
「それは労働者が勝手にやったこと」というのは通用しないのです。

また、他の法律と同様、知らなかったというのも通用しません。中には、知っているけれども無視していたというのもあるでしょうが、知らず知らずに行っていたことも、違反していたことも少なくないのです。

とはいえ、仮に違反があったとしても、多くの場合は問題になりません。
自動車の運転でゴールド免許を持っていても、常に交通ルールを守っているかというと、そんなことはありませんよね。スピード違反することもあれば、携帯電話を使いながら運転することもあるでしょう。たまたま捕まらなかっただけということがほとんどです。

安衛法も、これと同様に、違反はあっても、発覚していないというのが多いです。
そして、そのほとんどの場合において、特に問題はおこりません。

しかし一度事故があった時、違反していた内容について厳しく追求を受けてしまいます。
追求されるのは、よほど労働者に否がない限り、事業者に対してです。

先日、このような新聞記事がありました。

労災死亡事故起こした社長2人を書類送検 千葉(産経新聞 平成27年12月2日)

労災事故を起こした会社の社長、安衛法的には事業者といいます、が書類送検されたというものです。

記事では、千葉県内で起こった2件の事故を紹介しています。

1つ目のケースは、チェーンソーを使って、木の伐採作業をさせていた時に、倒木の下敷きになって作業者が亡くなったというものです。
2つ目のケースは、農道の舗装で、ローラー車に乗っていた運転者が車から転落したのに、無人で走り続け、別の作業者をひいてしまったという事故です。

いずれの事故も、事故を起こした作業者に必要な特別教育を受けさせていませんでした。つまり無資格で作業させていました。
危険作業を十分に教育しないまま、作業させていたことが事故につながったというものなのです。

特別教育や技能講習を受けるには、数万という費用がかかります。
作業者が自発的に受講することもあるでしょうが、事業者が負担しているところもあると思います。

受講のさせ方、費用の負担方法などは、様々でしょう。
もし事業者が全額負担となると、かなりのコストになります。ましてや、正社員ではないパートの作業者のために、負担するというは難しいのではないでしょうか。

上記の記事で、事故を起こした作業者はいずれも70代です。おそらく正社員ではなく、パートで働いていたのではないでしょうか。
今後10年以上働くだろうと予想される若い作業者に対して、講習費用を負担するのは投資になりますが、高齢者のパートのための負担はしたくないのではないでしょうか。

今回の事故の背景には、人手不足と登用した作業者への受講費用の負担というのがありそうです。

もし人手に余裕があるならば、有資格者に作業させればよいのでしょうが、人手が不足していると、そうも言ってられません。 伐採作業中の事故は、そういった事情が見え隠れします。

しかしローラー車の事故は、他に人はいなかったのでしょうか。一緒に作業している人の中で、1人くらい特別教育を受けた人がいそうなものですが。おそらく運転したのは今回だけではなく、以前から行われていたのだと思われます。

建設業は資格ビジネスです。
国家資格だけでなく、何とか協会といったものも含めると、非常に多種多様の資格があります。建設業者とそれに従事する人たちは、資格という名の上納金に多大な支払いを行っています。

金ばっかりかかるというのが実感ではありますが、一方ではきちんと理由もあります。
少なくとも危険作業については、特別教育などは効率的に学習できますし、技術を身につけることが出来ます。これはこれで非常に効果的です。きちんと知識と実技を、危険作業にあてるのは、事業者としては安心できます。

多くの事業者が気になるのは、講習費用と時間です。中にはこれを出したくないところもあるのが実情です。
実地で教えながら、技術を身につけさせることは可能でしょう。しかし肝心な危険箇所と安全対策は不十分です。メインは、仕事の仕方になるからです。

実地で教えて、教育コストを抑えることはできるかもしれません。
しかし事故が起こった時、事業者が支払うコストは、講習の費用とは比べようがないものになります。場合によっては、会社をたたむことになります。

そう考えると無資格作業は、リスクが高いことともいえます。

全ての作業者に講習を受けさせろというのは難しいでしょう。しかし直接、危険作業に従事する人は資格者をあてなければなりません。色々と事情はあるでしょうが、義務ですし、事故の予防を考えると、必要なことです。

それでも、資格の費用は高いですよね。更新料がかかるものを含めると、かなりバカにならない負担なんですよね。

もし講習費用が悩みどころならば、助成金を使ってみてはいかがでしょうか?
雇用保険を支払っていることなどが条件になりますが、厚生労働省が中小企業を対象とした資格助成金を出しています。

建設労働者確保育成助成金 というページがあります。 こういうページで詳細に条件を確認するのもよいですが、てっとり早いのは、ハローワークで相談したり、近くの建設業協会などに聞いてみることではないでしょうか。

こういった制度を上手く活用して、安全に仕事ができるようにするのも、事業者が考えなければならないことですね。

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