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新幹線橋脚工事で足場崩れ8人が重軽傷 (大阪市淀川区)

      2015/12/30

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足場は高所で作業するための仮設設備です。
仮設というのは、必要なときに一時的に設置して、必要なくなれば取り除くものです。
 
多くの場合は、地面から上に上に建てていくものです。しかしこの方法は、場所によっては使えません。
どういう場所では使えないかというと、川や海の上にかけられた橋の補修などです。
 
橋は地上から数十メートルと高く、常に水が流れ土台がしっかりしていません。ましてや海の上の橋では、地面がありません。
そういう場合は、地面から足場を建てるより、橋を土台にして、作業床を鎖などで吊るしてしまった方が効率がいいです。
 
このように上から吊るす足場は、吊り足場と呼ばれます。
 
吊り足場は、地面がないところでは有用ですが、鎖で支えるので、通常の足場とは、また違った注意が必要になります。
 
大阪の新幹線橋脚工事で、吊り足場を使って、作業している時に、崩れ落ちる事故がありました。
 
今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。
 

index_arrow事故の概要

  事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

新幹線橋脚工事で足場崩れ8人が重軽傷 大阪 (平成27年12月4日)

4日午前3時半ごろ、大阪市淀川区加島の神崎川河川敷の工事現場で、「足場が崩れ、けがをしている」と作業員から119番があった。大阪府警淀川署によると、20~40代の男性作業員8人が負傷して病院に搬送されたが、30代男性が頭の骨を折って重傷という。同署が詳しい事故原因を調べている。
 
同署や市消防局によると、事故が起きたのは、山陽新幹線の橋脚塗装工事の現場。橋からチェーンでパネル状の足場(縦3・8メートル、幅7・2メートル)をつるし、その上で作業員9人が工事の準備をしていたところ、チェーンの一部が突然切れて足場が傾き、約7メートル下の河川敷に転落した。
 
当時、足場の上には作業員のほか、資材なども載っていたという。同署はチェーンが足場の重みを支えきれず、切れた可能性もあるとみて調べている。

この事故の型は「崩壊・倒壊」で、起因物は「仮設物(足場)」です。

  新幹線が通る橋脚の塗装工事で事故は起こりました。
橋の下は川なので、足場は橋脚から鎖を垂らして、作業床を支える吊り足場を使用していました。
 
この吊り足場は、かなり大きなもので、縦が3.8メートル、幅が7.2メートルにもなります。橋の下を横断する程の大きさだったようです。事故当時、足場には9人の作業者と材料が乗っていました。
 
これらの人や材料を乗せた足場の鎖が切れてしまい、7メートル下の河川敷まで落下したのでした。 8人が負傷し、内1人は重症になったようです。
 
それでは、原因を推測していきます。

index_arrow事故原因の推測

  記事でも、警察の見解として足場を支える鎖が重量に耐えられなかったのではと述べられています。
 
吊り足場は、構造上上部から鎖を垂らし、作業床を支えます。
あらゆる重量は鎖にかかります。もちろん1本や2本ではありません。支える重量を考えて、鎖の太さや本数、配置は決められます。
 
大人の男性が9人乗っていてたのですから、1人が大体60キロとして、540キロくらいでしょうか。これに材料が加わって、だいたい600キロくらいの荷重がかかっていたと推測されます。
 
吊り足場には、最大積載荷重が掲示されていることが通常です。鎖がきれたということは、最大積載荷重以上の重量がかかっていたことでしょう。この吊り足場では、最大積載荷重には多少の余裕があるとしても、400キロくらいだったのではないでしょうか。
 
最大積載荷重が掲示されていても、実際に作業する人たちは自分たちの体重かける人数で、どれくらいの荷重なのかを計算することはないでしょう。
そのコントロールをするのは、工事管理者です。
 
もう1つ今回の事故とは直接関係ないかもしれませんが、鎖などが切れる要因としては、鎖が変形したり腐食したりしていることがあります。これらを放置しておくと、最大荷重以下でも重量に耐えられないこともあるので、注意が必要になります。
 
それでは、原因を推測をまとめてみます。

吊り足場の最大積載荷重以上の重量がかかっていたこと。
人数制限をしていなかったこと。
鎖の点検をしてなかったこと。

  それでは、対策を検討します。

index_arrow対策の検討

  吊り足場に限りませんが、足場作業は仮設設備ですので、コンクリート製の床などに比べ強度は格段に低いです。もちろん人が2、3人乗っても平気なだけの強度はあります。1スパンでは、だいたい200〜400キロくらいではないでしょうか。
 
鎖が切れてしまうということは、9人乗ることは想定していなかったのでしょう。
足場を組むのは足場屋などになります。今回事故にあった業者とは別だと思われます。足場を組んだ時に、最大積載荷重を掲示していたでしょうが、作業者がそれを気にしなければ、意味がありません。
 
仕事を急いでいたのか不明ですが、一気に人を投入しても、このような現場では功を奏さないこともあるのです。
 
当の作業を行う塗装業者は、なるべく人を増やして作業を進めたいと考えます。しかし安全を考え、足場の人数制限などを行うのは、工事管理者の責任です。一定人数ごとに、交代で作業させるなどの対策を検討しておく必要はあったと思われます。
 
また、作業前には吊り足場の点検を行います。直接事故と関係ないかもしれませんが、事故防止のためには重要な事です。
 
対策をまとめてみます。

足場には最大積載荷重まで、乗せない。
足場に乗る人数を数え、制限する。
作業前には、設備の点検を行う。

  最大積載荷重の表現も、「◯◯キロまで」ではなく、男性大人(60キロ)が何人以下という表現であれば、わかりやすいですよね。
そう考えると、警告の掲示のあり方も、見直すことも事故防止になるのではないでしょうか。

index_arrow違反している法律

  この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
 
【安衛則】

第562条 
足場の構造及び材料に応じて、作業床の最大積載荷重を定め、これをこえて積載してはならない。

  これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。  

通路と足場 その5。 足場の材料

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