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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

メンタルヘルス管理者講習を受けてきました

      2015/05/30

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先日、職場でのメンタルヘルス管理についての講習会があり、色々とお話を聞いてきました。
今回はその内容を簡単にまとめてみたいと思います。

実は、私は以前に営業研修の会社に勤めていたのですが、今思うとなかなかハードで、最終的には体を壊してしまい、辞めてしまいました。
当時はブラック企業なんて言葉はなかった時代で、がんばることが美徳であり、成功への道だと信じていたのですが、どうも体と心がついてこなくなってしまいました。

今回、メンタルヘルスの講習を聞きながら、当時のことを少しだけ思い出したりしました。

とりえあず、それは置いといて、最初は社会的な流れから。

安衛法などは、毎年のように改正があるのですが、今年(平成26年)も、安衛法の改正案が出され、可決されました。
今回改正された内容の中には、労働者のメンタルヘルスに関するものも含まれています。

どのような内容かというと、
「50人以上の労働者がいる事業所では、医師等によるストレスチェックが義務づけられる」
というものです。

事業所で健康診断を行っているところは多いと思います。
来年以降は、体だけでなく精神の健康状態も検診を受けることになるというわけです。

50人以上の事業所というと、衛生管理者と産業医を選任する事業所ですね。
そのため、ストレスチェックも衛生管理者や産業医が中心となって、チェックを行っていくことに成ります。

厚生労働省のホームページに詳細が掲載されています。

厚生労働大臣こころの耳

この「こころ耳」には、メンタルヘルスについての情報もあれこれ掲載されていますので、ご参考になればと思います。

詳細につきましては、改正法の施行時に、もっと勉強できていればまとめたいなーと思います。



さて、今回は講習会で聞いた内容をまとめていきます。
職場のメンタルヘルス管理には、大きく4種類があります。
今回聞いた話は、主にラインケア、つまり管理監督者によるケアでした。
そのためお話の中心は、ラインケアが中心となります。

まずは、昨年度の統計情報です。
平成25年度は労働基準監督署等に、精神障害労災認定の請求を行った件数は、1,409件あったようです。
そして昨年度に認定されたのが1,193件。この認定は前年度からの繰越もあるため、必ずしも25年度に訴えられた件数ではありません。
25年度として436件認定になりました。
また自殺者は177件の請求があり、認定が63件となりました。

数字で見ると、ものすごく多いです。
精神障害の請求件数は、毎年急増しているようです。

仕事上でストレスを感じている人は多いと思います。
(出典を質んえんしてしまったのですが)ある統計によると60%もの人が、職場でのストレスを抱えているとのことです。

何にストレスを感じているか。
それは、人間関係、仕事の質、仕事の量などの順に並び、30代から40代の人の割合が多いようです。

精神障害での請求にあたって、最も多い理由は「上司とのトラブル」だそうです。
請求は多いものの、認定理由としては「仕事の量、内容の変化」が最も多く、次いで「いじめ・いやがらせ」になります。「上司とのトラブル」は請求数に対して、認定数は少なくなっているようです。

ブラック企業という言葉が一般的になってきましたが、家に帰れない、休日出勤当たり前など、労働基準法?何それ?という会社も、少なからずあるようです。
労働基準監督署でも、客観的な事実に基づき認定を行うため、長時間労働などは比較的認定しやすいのだと思います。
一方で、人間関係については、客観的な証拠を集めにくいといったことが、請求と認定の理由順位が違う原因ではないかと思います。

昔であれば、「我慢しろ」ということがまかりとって来たことも多いでしょう。
もしかしたら、昔はみんなヤワじゃなかった、今の若いものは根性が足りないという声もあるかもしれません。

しかし昔も、精神に負担がかかり病んで退職した人はたくさんいるはずです。
時代も年代も関係ありません。
「今の若いものは云々」という言葉は、古代エジプトの落書きされるくらい古くからあります。
今になって社会的な注目度が上がっただけでしかありません。
昔からあります。昔は注目されていなかっただけです。

よくある事件が注目されると、連日のように同じような事件がニュースが取り上げられるようになりますね。
それと同じようなものです。

昔から同じようにメンタルヘルスの問題はあります。
なかなか認められず苦しみ、それでも社会に訴えた多くの方の努力の末、最近になって脚光を浴びるようになっただけです。

我慢し続けた結果、病んでしまっては元も子もありません。
本人の資質に押し付けるのではなく、会社として心身の健康を守ることが、今後求められることのなのです。

今までは、会社が当事者に「何とかしろ」と言っていました。
今後は、社会が会社に「何とかしろ」と言うようになるのです。



職場でのメンタルヘルスのケアには大きく4つの種類があります。

1.セフルケア
 労働者が自分自身で行うことのできるケア。

2.ラインケア
 管理監督者が行うケア。日頃の職場環境の把握と改善、部下の相談対応を行うことなど。

3.事業場内産業保健スタッフ等によるケア
 企業の産業医、保健師や人事労務管理スタッフが行うケア。

4.事業場外資源によるケア
 会社以外の専門的な機関や専門家を活用し、その支援を受けること。


会社のメンタルヘルス管理は、この4つのケアを活用していきます。
3と4については、衛生管理者や人事や総務等が部署が中心になると思いますので、割愛します。

まずは、セフルケアを軽くまとめます。

セルフケアとは、一人ひとりの労働者が「自分の健康は自分で守る」ためにできること、です。

仕事では、毎日忙しくストレスいっぱいかもしれませんが、そんな自分の精神状態をチェックし、ストレスを解消することです。

客観的に心の状態をチェックするために、先に紹介した「こころの耳」に、こんなサービスがあります。

「5分でできる職場のストレスチェック」

時間があれば、ぜひ一度やってみてはいかがでしょうか?

セルフケアについては、軽くまとめるだけにしますので、簡単に。

ストレス反応は、心身の行動に出てきます。
具体的には、次のとおりです。
・心理面 無気力、イライラ、抑うつ
・肉体面 疲れやすい、あまり眠れない、食欲低下、頭痛
・生活面 タバコが増える、食事量が大幅に変わる、ミスが増える、遅刻欠勤が増える


こんな症状に覚えがあるなら、要チェック!

対処としては、何より休養、特に睡眠をしっかりとること。
スポーツや趣味など何かストレス解消の方法があれば、とてもいいですね。
私も走ったり、自転車に乗ったりするのですが、結構ストレス解消になります。

よく怒りを爆発させながら、自転車を走らせたりしました。
そんな状態だと、ストレスを発散しているのか、溜めているのか、何だかわからない状態でしたけど、人には言えませんからね。
 
もし辛い時であれば、相談できるのが一番なのですが、友人や家族に言いづらいということもありますよね。
その場合は、いっそ全く面識もなく、利害関係も一切ない電話相談も一つの手段です。
相手はあなたのことを知りません。あなたの相談内容が広がることもありません。
相談相手が気に食わなければ、すぐに話すのをやめても構いません。
気軽にとは言えないでしょう。

しかし、ほんのちょっとでも、気持ちが楽になるかもしれないなら、試してみるのもありかなと思います。

相談窓口は、各自治体に設けられているので、ここでは紹介しきれませんが、話しやすそうなところを調べて頂ければと思います。


さて、ラインケアです。ここまで長くなりましたが、これがメインで聞いてきた内容です。

ラインケアとは、ラインつまり部署内で、管理職になる上司によるケアのことです。

ラインケアは主に次の内容が含まれます。

1.職場環境等の問題点の把握と改善を行う。
2.いつもと様子が違う部下に気づく。
3.メンタル不調の部下の復帰を支援する。


1と2は今までもやっていたかもしれませんが、今後は3もよく対策を検討しなければいけません。

それでは、個別に見ていきます。

1.職場環境等の問題点の把握と改善を行う。

仕事でストレスを感じている人は60%の割合になるそうです。
ストレスの原因は、職場の人間関係、職場の環境、作業方法、労働時間などが挙げられます。

問題点の把握のためには、何がストレスになっているかを把握することが重要です。
そのために、職場内を観察し、必要に応じてヒアリング等聞き取りを行うことが有用だそうです。

その結果として、自分のできる範囲で改善していきます。
そして自分の権限では無理なものは、上長に提言するようにします。

1点とても重要な事があります。
ヒアリングを行ったら、必ず結果をフィードバックすることです。

意見を聞いた上で、実施したこと、今回は見送ったこと、上長に提言したことなどを伝えましょう。
言ったけど無意味だったという気持ちは、管理者への不信感を募らせてしまい、次何かしようとしても協力を得られませんので、注意です。

2.いつもと違う部下に気づく
 
部下の様子に異変を感じた時の対応です。

異変に出やすいのは、こんなところだそうです。
・服装の乱れ
・髪型やひげの処理
・遅刻、欠勤、早退が増える。
・ミスが増える。
・イライラしている。
・タバコの本数が増える。
・食欲が増大、減退している、など。


ポイントは、急に「いつもと違う」ようになってきたことと、一時的ではなく「継続している」かどうかです。
このような異変は、本人よりも上司や周囲の者が気づくことが多いのです。

もし、異変が2週間や1月など続いているようなら、聞き取りをしてみましょう。

しかし無理に聞き出そうとしてはいけません。
また会議室を取り、2人で話せるようにするなど、本人が話しやすい状況を作りましょう。
  
「最近、元気が無いようだけど、何かあった?もしよかったら話してくれない?」

このように聞いてみるのが、よいと思いますが、本人が話したがらなかったら、それ以上は聞かず、一旦は引きましょう。
話せる、話せないのはタイミングがあります。

また2週間程度あけて、改善していないようなら、再度聞いてみるのがよいようです。

どのような聞き方をするかなどは、講習等もあるので、受講するのもいいですね。

相談の時にやってはいけないことがあるので、それだけ書いてみます。

・なぜ信用して話してくれない、などと強要する。
・とにかく君の考えは間違っていると否定すること。
・気にしなくていい、要は気の持ちよう、他の人はこうしているなど。
・話の途中で、結論付ける。「要はこういうことだよね?」と勝手にまとめる。
・がんばれと励ます。
・気分転換に飲みに行こうと無理に誘う。

励ましたりする気持ちもあるのかもしれませんが、これらは逆効果だそうです。
「あー、この人は分かってくれないんだ」という気持ちにしてしまうしていまうことが多いようです。

もし相談してくれた場合ですが、相談内容により、職場でできることは対応するようにし、自分だけでは対応できない場合は、本人の同意を得て、上司や産業医、専門機関と相談していきます。

メンタルの不調があるようならば、本人に専門医の受診をすすめるのも大切です。

このラインケアで、非常に大切なことがあります。

それは、信頼関係を構築すること。
そのためには普段からの関係が大切なのは言うまでもありません。
そして、相談に乗る際の対応でも、一歩間違えれば、信頼を崩し、より相手を追い込むこともあります。

特に、相談内容を外に漏らさない。

これは絶対です。

相談された側が良かれと思っても、結果悪い方になることは、よくあることです。

第三者に話しをする必要がある場合は、必ず本人の同意を得ましょう。
また話す必要がある場合も、必ず誰に、なぜ伝えないといけないのかという理由、伝える内容について同意を得ましょう。

そして、できることは対応し、必ずフィードバックしましょう。
時間がかかることも、ちゃんとフィードバックしてあげるのが大切です。

3.メンタル不調の部下の復帰を支援する。

うつ病などの症状のため、一時的に休職した場合のケアです。

休職し、職場に復帰した場合ですが、講習で話を聞いた所によると、その場合の体制などが整っているところは少ないそうです。

特に復帰後、すぐに前の仕事を行わせるのは、かなりの負担になります。
夏休みやGWなどの後、仕事となると体がだるかったりしますよね。
長期の休職明けは、その何倍もすごい状態です。
休暇明けだと1日から数日で、通常通りになりますが、久々の職場だと、もっと時間がかかります。

それに残業や出張なども、復帰直後は堪えるようです。
かといって、特別扱いし過ぎると、本人よりも周囲の社員から不満が出てきたりします。

復帰に向けての体制づくりは、事前に整えておかなければなりません。

一つのガイドラインになりますが、このような方法が紹介されていました。

・主治医と家族との連絡体制をしっかり作る。
・産業医やメンタルヘルス担当者と連携を取る。
・部署全員に、復帰に向けたプロセスを説明する。
・少しずつリズムを作れるように、仕事の内容や量を考慮する。
・3ヶ月から半年の間は、残業や出張はさせない。
・心理的な波があることは理解しておく。
・薬の服用に否定的にならない。
・長期的な通院に理解を示す。
・半年程度は、再発する可能性があることを念頭に置く。
・1人で抱え込まず、相談できる環境を作る。


個人や一部署ではなく、全社的な対応になると思いますので、会社として今後体制づくりが求められてくるかと思います。

また、失業手当が切れるから、復調していないけれども、職場復帰するケースも多々あります。
その場合も、本人の様子を見つつ、ケアを行う必要がありますね。

復帰に向けた体制づくりでも、大切なことはプライバシーの保護と信頼関係を築くことです。
相談を受ける場合は、当然個室で行い、相談内容も本人の同意なしに漏らしてはいけません。

以上が、今回受けた受講内容です。

当然のことながら、一朝一夕にできることではありません。
またメンタルヘルスの管理などは、やったことがない人がほとんどだと思います。
そういった本も多数ありますし、情報源はたくさんあるとはいえ、普段の仕事に加えて、行うのは困難だと思います。

メンタルヘルスケアは、個人や一部署の問題ではなく、全社的なものです。
衛生管理者や産業医、外部の専門機関や、自治体などと連携する必要しなければならないものです。

ストレスチェックが義務づけられるのですから、それを機にメンタルヘルスに対する対応が求められていきます。

仕事をしていて身体と同様に、精神も病んではいけません。

以前の私などより、はるかに過酷な状況にあった人はたくさんいらっしゃるかと思います。
それでも当時はきつかったです。
一時期には、うまく話せなくなり、吃音症になり、最終的に胃潰瘍になりました。
それでも休めませんでしたけどね。
その会社では、私以外のあらゆる社員も1年も持たず辞めていくのですから、やはりキツイ職場だったのかもしれないなと、今更ながら思ってしまいますね。

当時のことは、やめた後も敗北感や無気力などしばらく引きずってしまったので、負荷の高すぎる職場は後遺症も深くなるもんです。

メンタルヘルスに注目されて出し、法改正なども進んでいくのですから、心も体も安全で健康的な職場づくりが、今後の会社の当たり前になっていけばいいなと思います。

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