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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

事故があったら報告する

      2015/11/24

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今回は、残念ながら事故が起こってしまった場合のことについです。

危険であったり、人体に有害な作業や機械の設置については、あらかじめ所轄労働基準監督署などに届出を行う必要があります。

どれも一歩間違えれば事故になる可能性があるのですから、届出を行うことで、緊張感を持って事にあたるとも言えます。

しかし、どんなに緊張感を持っていようが、事故が起こってしまうことはあります。
誰も事故を起こしたいなんて思っていないでしょうが、残念ながら起こる時は起こってしまうのです。

事故が起こった時、事業者がまず行わなければならないのは、被災者の救出です。
怪我をしているようならば、一刻も早く、救急車を呼び、病院に運びましょう。

その後、二次災害を防ぐための処置を取ります。
大きな事故であれば、警察などの捜査があり、現場の保存が必要になります。
そのため、被害が拡大しない措置を取りつつ、なるべく現場を保全していきます。

事故にあった人を救出する。
被害を拡大させない。

この2点は、最も大事です。

その後、事故が落ち着いたら、速やかに労働基準監督署に労災事故として、報告を行わなければなりません。
重大事故であれば、遅滞なく報告しなければなりません。


報告については、安衛法第100条に規定されています。

【安衛法】

(報告等)
第100条
厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、
この法律を施行するため必要があると認めるときは、
厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、
建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、
又は出頭を命ずることができる。

2 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、
  この法律を施行するため必要があると認めるときは、
  厚生労働省令で定めるところにより、登録製造時等検査機関等に対し、
  必要な事項を報告させることができる。

3 労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると
  認めるときは、事業者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、
  又は出頭を命ずることができる。


この条文では、「法律を施行するにあたって必要がある」時に、報告を行わせるということになっています。
当然この必要な事項には、事故についても含まれます。
その他は、建設業で100人以上の労働者がいるのに、総括安全衛生管理者を選任していないとか、特定機械なのに必要な検査を行っていないとか、改善が求められることになると思います。

報告を行わせる人も、事業者にかぎらず労働者や機械や建物の貸与者、労働安全コンサルタントや労働衛生コンサルタントなど、ありとあらゆる人が対象になってきますね。

労働基準監督署は臨時で事業所を巡回し、チェックを行うことがあります。
チェックの際に、法に抵触する箇所などがあれば改善の指導があるわけですけども、この改善結果も報告が求められます。
先延ばししていると、しっかり催促もあるので、無視もできません。
報告を求められた、必ず行いましょう。

とはいえ、こういった呼び出しがあると、ものすごくドキッとしますね。
なるべくなら、穏便に逃れたいというのも、正直な本音かと思います。

さて、労働基準監督署等としても、何もなしに、とりあえず報告書出せ、出頭しろというわけにもいきません。

そんなことをされたら、呼び出された側も、何がなにやらとドキドキしてしまいますね。

報告を求めるには、それ相応の理由が必要になります。

そのため、安衛則で、報告を求める際に必要な事項が規定されています。

【安衛則】

(報告)
第98条
厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、
法第100条第1項 の規定により、事業者、労働者、機械等貸与者又は
建築物貸与者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずるときは、
次の事項を通知するものとする。

  1)報告をさせ、又は出頭を命ずる理由

  2)出頭を命ずる場合には、聴取しようとする事項


これは、労働基準監督署等が行わなければならないことです。
なぜ報告を求めるのか。
何について報告するのかを明確にしなければなりません。

確かに、とりあえずおいでじゃ、事業者も困りますよね。
出頭して質問されても、心も資料も準備もできないわけですし。

とはいえ、これは逆に言うと、報告や出頭を求められた時には、労働基準監督署等はすでにしっかりとした情報を握っているとも言えます。
それは検査漏れなのかもしれませんし、あるいは労災隠しのことかもしれません。
また事業所巡回で、改善を指導したにもかからず、長期間無視していたことに、業を煮やしたからかもしれません。

いずれにせよ、褒められることはなさそうなので、呼び出された時は、相当の覚悟で臨まなければなりませんね。

さて、事故の報告についての詳細についても、安衛則にまとめらています。

(事故報告)
第96条
事業者は、次の場合は、遅滞なく、様式第22号による報告書を
所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

  1)事業場又はその附属建設物内で、次の事故が発生したとき
   イ 火災又は爆発の事故(次号の事故を除く。)
   ロ 遠心機械、研削といしその他高速回転体の破裂の事故
   ハ 機械集材装置、巻上げ機又は索道の鎖又は索の切断の事故
   二 建設物、附属建設物又は機械集材装置、煙突、高架そう等の
     倒壊の事故

  2)令第1条第3号 のボイラー(小型ボイラーを除く。)の破裂、
   煙道ガスの爆発又はこれらに準ずる事故が発生したとき

  3)小型ボイラー、令第1条第5号の第一種圧力容器及び
   同条第7号の第二種圧力容器の破裂の事故が発生したとき

  4)クレーン(クレーン則第2条第1号に掲げるクレーンを
   除く。)の次の事故が発生したとき
   イ 逸走、倒壊、落下又はジブの折損
   ロ ワイヤロープ又はつりチェーンの切断

  5)移動式クレーン(クレーン則第2条第1号に掲げる
   移動式クレーンを除く。)の次の事故が発生したとき
   イ 転倒、倒壊又はジブの折損
   ロ ワイヤロープ又はつりチェーンの切断

  6)デリック(クレーン則第2条第1号に掲げるデリックを
    除く。)の次の事故が発生したとき
   イ 倒壊又はブームの折損
   ロ ワイヤロープの切断

  7)エレベーター(クレーン則第2条第2号及び第4号に
   掲げるエレベーターを除く。)の次の事故が発生したとき
   イ 昇降路等の倒壊又は搬器の墜落
   ロ ワイヤロープの切断

  8)建設用リフト(クレーン則第2条第2号及び第3号に掲げる
   建設用リフトを除く。)の次の事故が発生したとき
   イ 昇降路等の倒壊又は搬器の墜落
   ロ ワイヤロープの切断

  9)令第1条第9号の簡易リフト(クレーン則第2条第2号
   に掲げる簡易リフトを除く。)の次の事故が発生したとき
   イ 搬器の墜落
   ロ ワイヤロープ又はつりチェーンの切断

  10)ゴンドラの次の事故が発生したとき
   イ 逸走、転倒、落下又はアームの折損
   ロ ワイヤロープの切断

2 次条第1項の規定による報告書の提出と併せて前項の報告書の
  提出をしようとする場合にあっては、当該報告書の記載事項の
  うち次条第1項の報告書の記載事項と重複する部分の記入は
  要しないものとする。


事故が起これば、遅滞なく、労働基準監督署に報告しなければなりません。

事故の報告用紙は、様式第22とされていますね。
こちらの様式集の「事故報告」になります。

労働安全衛生規則関係様式

事故は、どんな事故でも報告しなければならないかというと、そうではありません。
第96条では、報告すべき事故の型を規定しています。

簡単にまとめると、次のとおりですね。

・火災や爆発事故
・高速回転の機械の破裂事故
・機械集材装置、巻上げ機又は索道の索や鎖の切断事故
・機械や建物の倒壊事故
・特定機械の事故


どれもかなり大きな事故であることがわかりますね。
時々、工場で爆発事故などがニュースになりますが、そのような場合は、報告を出さなければなりません。

特定機械とは、製造や設置などに労働基準監督署等の検査を受けなければならない機械のことです。

全部で8種類あります。
1)ボイラー
2)第一種圧力容器
3)クレーン(吊上げ荷重3t以上)
4)移動式クレーン(吊上げ荷重3t以上)
5)デリック(吊上げ荷重2トン以上)
6)エレベーター(積載荷重1トン以上)
7)建設用リフト(世紀最荷重0.25t以上、ガイドレール長18m以上)
8)ゴンドラ


これらに関する事故は、必ず報告しなければなりません。

では、これらの条件に当てはまらない事故の場合は、どうなるのでしょうか。
例えば、くい打ち機が倒れた場合は?
もしくは、0.2トンのエレベーターが事故を起こした場合は?

死傷事故であれば話は別ですが、報告義務の規定はありません。

しかし、大きな事故であれば、警察とともに労働基準監督署も捜査に入るので、結果的に報告や出頭と同様のことを行う必要があるかもしれません。

さて、事故が起これば、多くの場合、死傷者がいます。
大きな事故であれば、誰も怪我なくというのは、稀だと思います。
また報告義務のない事故、例えば足場からの墜落のようなものでも、死傷事故は起こってしまいます。

その場合は、死傷事故の報告を行わなければなりません。

(労働者死傷病報告)
第97条
事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内
若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒に
より死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第23号に
よる報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

2 前項の場合において、休業の日数が4日に満たないときは、
  事業者は、同項の規定にかかわらず、1月から3月まで、
  4月から6月まで、7月から9月まで及び10月から12月までの
  期間における当該事実について、様式第24号による報告書を
  それぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、
  所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。


特定機械の事故であるか否かによらず、労働者が死亡または怪我を負ったら、そのことを所轄の労働基準監督署に報告しなければいけません。

怪我の度合いによって、報告するタイミングが異なります。
まず、労働者が死亡する、または怪我を負い、休業が4日以上に及ぶ場合は、遅滞なく報告を行わなければなりません。

しかし、休業が4日未満、つまり3日までの場合は、期間ごとにまとめて報告となります。

まとめる期間は決められています。

1月~3月分の事故 → 4月末までに報告
4月~6月分の事故 → 7月末までに報告
7月~9月分の事故 → 10月末までに報告
10月~12月分の事故 → 翌年1月末までに報告

大体4半期分をまとめて報告になります。


なぜ4日以上の休業で分けられているかというと、重症であるというのもありますが、休業4日目から休業補償給付の請求ができるのが理由にあります。

休業が4日以上になる場合は、労働基準監督署に休業補償給付などの労災保険給付の請求を行うことになります。
4日未満の場合は、事業者が適切に休業補償を行わなければならないことになっています。


労災の請求があり、速やかに手続きも必要となるので、死傷事故の報告は遅滞なく行わなければならないわけですね。

さて、怪我をしたけど、休業しなかった場合はどうなるのか?
怪我をした当日に病院で治療し、職場に戻り仕事に復帰するケースですね。

条文のままに解釈するならば、休業は0日ですので、報告は不要といえます。
しかし指先を切って絆創膏を貼ってOKというものもあれば、休む必要はないけど、数針縫いましたという怪我もあると思います。

もし気になるようならば、労働基準監督署に確認してみるのがよいかもしれませんね。
ちなみに報告が必要との回答があれば、4半期ごとにまとめての報告になります。

なお、報告用の様式は、それぞれ異なりますので、ご注意下さい。
どのように書くのかわからない場合は、社労士または労働安全コンサルタント等に頼むのも一つの手だと思います。

死亡または休業4日以上の死傷事故の場合は、様式第23です。
労働者死傷病報告(休業4日以上)

休業4日未満の事故の場合は、様式第24です。
こちらの様式集から「労働者死傷病報告(休業4日未満の場合)」
労働安全衛生規則関係様式

さて、事故報告や死傷報告について、必ずつきまとうのは、労災隠しです。
先に書いておきますが、労災隠しは、労働災害補償保険法により罰せられ、事業者は50万以下の罰金を払わなければなりません。

もしかしたら「労災隠しは、犯罪です」といったポスター等でも見かけたこともあるかもしれませんね。

労災申請をすると、事業者にも負担がかかるので、やってしまうところもあるのですが、やっちゃだめです。
労働者のためにならないのはもちろんのこと、発覚した場合の会社への損害は多大なものとなります。

労災隠しについては、脱線しすぎるので、また機を見て。

事故はまず起こさないことが重要です。
怪我なんか無いほうがいいです。

しかし一度事故が起こった場合には、義務として報告しましょう。
起こってしまったことを反省するのはもちろんですが、果たすべき義務を果たすことが大切です。

でも、やっぱり事故は起こさないようにして、この報告もしないに越したことはありませんね。

まとめ。

【安衛法】

第100条
厚生労働大臣または労働基準監督署長は、事業者や労働者などに対して、
必要事項の報告または出頭を命ずることができる。


【安衛則】

第96条
事業者は、事故が起こった場合は、遅滞なく、所轄労働基準監督署に報告しなければならない。
第97条
事業者は、死傷者がある場合は、所轄労働基準監督署に報告しなければならない。
第98条
厚生労働大臣または労働基準監督署長は、事業者等に報告又は出頭を求める場合、要件を明確にしなければならない。

 

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