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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

移動式クレーンに関わる規定 管理編

      2015/05/30

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移動式クレーンの事故事例をいくつか紹介してきました。
多くの場所で使われている機械ですが、同時に事故が起こる頻度も高くなる機械でもあるといえます。

そのため法律でも仕様や使い方を規定しているわけですが、今回は移動式クレーンに関係する条文を見ていこうと思います。

移動式クレーンには、様々な種類があります。
トラックのような荷台がついた、積載型トラッククレーン(通称、ユニック車)。
タイヤで公道を走るホイールクレーン、キャタピラ(クローラ)で荒れ地を走るクローラークレーンなど。
詳しい分類については、紹介しているサイトがありますので、そちらに譲りますが、用途により色々な物があるのです。

そんな移動式クレーンは、特定機械と分類され、特に管理されている機械であります。
特定機械とは、安衛法第37条で規定されており、「特に危険な作業を必要とする機械等」です。

特定機械は、安衛法別表1に規定されているのですが、次の通りです。

1)ボイラー
2)第一種圧力容器
3)クレーン(吊り荷重3t以上。スタッカー式においては1トン以上。)
4)移動式クレーン(吊り荷重3t以上。)
5)デリック(吊り荷重2トン以上)
6)エレベーター(積載荷重1トン以上)
7)建設用リフト(積載荷重0.25t以上。ガイドレール18m以上)
8)ゴンドラ


特定機械には、様々な制限がかかってきます。
まず製造時には届出が必要となりますし、製造時にも検査を受けます。
もし輸入機械であった場合も検査が必要になりますし、設置の際にも検査があります。
その他、改造にも検査が必要になるとともに、定期的に性能検査も受けなければなりません。

全ての機械が同じ検査を行うわけではありませんが、厳重に管理されているのは間違いありません。

移動式クレーンは、国内での製造にあたって、製造検査を受けなければなりません。 もし海外からの輸入品を使う場合等であれば、使用検査というものを受けなければなりません。

使用開始後も、主要部の改造時には変更検査を受けなければなりません。
使用を休止していて、再度使用する場合には、使用再開検査というものを受けます。
また定期的に性能検査を受けなければなりません。

詳細については、改めたいと思いますが、とにかく色んな検査を受けて、維持管理していかなければならないのです。

様々な検査の内、使用者にとって、最も関係があるのは、性能検査です。
これは車でいうところの車検のようなものです。
車検では、車の整備会社に委託するように、性能検査も委託する事が多いのではないでしょうか。

なぜこんなにまで厳重に検査されるのか。
それは、ちょっとした故障や整備不良により、大事故が引き起こされてしまうからに他ありません。


実際に巻過防止装置の故障で、死亡事故になった事例もご紹介しました。
このような例が、残念ながら少なくないのです。

なお、これらの検査を要するのは、吊上げ荷重が3t以上の移動式クレーンです。
0.5t以上、3t未満のものは、検査は必要ありませんが、必要な安全装置等具備しなければなりませんし、定期的な自主検査義務はあります。
0.5t未満のものは、これらの適用は除外されているので、区分に注意が必要ですね。

安衛則等でも、機械の仕様について規定されています。
しかし多くは、「クレーン等安全規則」に準用する等とあります。
「クレーン等安全規則」略して「クレーン則」は、クレーンや移動式クレーン、デリック、エレベーター等の機械についてまとめた専門規則集といえます。

今回は、この「クレーン則」の中から、移動式クレーンの管理についての条文をまとめます。
どちらかというと、事業者(会社)として、やらなくてはならない事が中心です。

【クレーン則】

(検査証の有効期間)
第60条
移動式クレーン検査証の有効期間は、2年とする。
ただし、製造検査又は使用検査の結果により当該期間を
2年未満とすることができる。

2 前項の規定にかかわらず、製造検査又は使用検査を受けた後
  設置されていない移動式クレーンであって、その間の保管状況が
  良好であると都道府県労働局長が認めたものについては、
  当該移動式クレーンの検査証の有効期間を製造検査又は
  使用検査の日から起算して3年を超えず、かつ、当該移動式クレーンを
  設置した日から起算して2年を超えない範囲内で延長することができる。
第2節 使用及び就業

(検査証の備付け)
第63条
事業者は、移動式クレーンを用いて作業を行なうときは、
当該移動式クレーンに、その移動式クレーン検査証を
備え付けておかなければならない。


色々受けなくてはならない検査についてです。
第60条の検査証とは、メーカーが製造した際の製造検査か、輸入機械等について行う使用検査で合格した場合に付けるものです。
この検査証がないものは、販売も、譲渡も、使用もできませんので、注意が必要です。

検査証の有効期間は、例外はありますが、2年です。
そのため検査証発行後、2年以内に性能検査を受けて、更新していく必要があります。

先に書きましたが、車検と同じですね。

さて、各検査では、細かく仕様を満たしているか、基準を満たしているかをチェックします。
そのうち、特に重要な点について、規定されています。

(使用の制限)
第64条
事業者は、移動式クレーンについては、厚生労働大臣の定める基準
(移動式クレーンの構造に係る部分に限る。)に適合するものでなければ
使用してはならない。
(設計の基準とされた負荷条件)
第64条の2
事業者は、移動式クレーンを使用するときは、当該移動式クレーンの
構造部分を構成する鋼材等の変形、折損等を防止するため、
当該移動式クレーンの設計の基準とされた負荷条件に留意するものとする。
(巻過防止装置の調整)
第65条
事業者は、移動式クレーンの巻過防止装置については、フック、
グラブバケット等のつり具の上面又は当該つり具の巻上げ用シーブの
上面とジブの先端のシーブその他当該上面が接触するおそれのある物
(傾斜したジブを除く。)の下面との間隔が0.25メートル以上
(直働式の巻過防止装置にあっては、0.05メートル以上)となるように
調整しておかなければならない。
(安全弁の調整)
第66条
事業者は、水圧又は油圧を動力として用いる移動式クレーンの
当該水圧又は油圧の過度の昇圧を防止するための安全弁については、
最大の定格荷重に相当する荷重をかけたときの水圧又は油圧に
相当する圧力以下で作用するように調整しておかなければならない。
ただし、第62条の規定により荷重試験又は安定度試験を行なう
場合において、これらの場合における水圧又は油圧に相当する圧力で
作用するように調整するときは、この限りでない。
(作業の方法等の決定等)
第66条の2
事業者は、移動式クレーンを用いて作業を行うときは、
移動式クレーンの転倒等による労働者の危険を防止するため、
あらかじめ、当該作業に係る場所の広さ、地形及び地質の状態、
運搬しようとする荷の重量、使用する移動式クレーンの種類及び
能力等を考慮して、次の事項を定めなければならない。

  1)移動式クレーンによる作業の方法

  2)移動式クレーンの転倒を防止するための方法

  3)移動式クレーンによる作業に係る労働者の配置及び指揮の系統

2 事業者は、前項各号の事項を定めたときは、当該事項について、
  作業の開始前に、関係労働者に周知させなければならない。
(外れ止め装置の使用)
第66条の3
事業者は、移動式クレーンを用いて荷をつり上げるときは、
外れ止め装置を使用しなければならない。


第64条では、移動式クレーンについて「厚生労働大臣の定める基準に適合したもの」でなければ、使用してはならないとありますね。
これは、どのことを言っているのでしょう?

調べてみたのですが、この条文についての詳細は、見つけられませんでした。
おそらくは、続きの条文で、強度や巻過防止装置などについて規定しているので、これらとも関連していると思います。

その他は何かあるかとあれこれ探してみると、次のものは該当すると思います。

安衛法第42条の2では、
第42条の機械等のうち、別表第4に掲げる機械等で政令で定めるものを製造し、又は輸入した者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の登録を受けた者(以下「登録型式検定機関」という。)が行う当該機械等の型式についての検定を受けなければならない。
とあります。

第42条の機械とは、一定の規格を満たさないと譲渡等してはならない機械等のことです。この機械等で別表第4にあるものは、型式検定をうけなければなりません。

クレーンや移動式クレーンに関係するもので、型式検定が必要になるものは「過負荷防止装置」です。

過負荷防止装置とは、吊り荷重が能力の限界に近づいてくると警報を出すなどを行う安全装置のことです。
この過負荷防止装置は、厚生労働大臣の登録型式検定機関に審査されるので、厚生労働大臣の基準を満たすものでなければなりませんよね。

さて、第64条の2は設計負荷について留意しなくてはならないということです。
負荷について何も考えていないと、アームやジブが折れてしまうから、キモになる部分です。

第65条、第66条、第66条の3は、過負荷防止装置と同様に、移動式クレーンの安全装置についての規定です。
巻過防止装置とは、ワイヤーが過剰に巻上げられて、クレーンの腕の先端に引っかかり、ワイヤーが切れたり、吊り荷がぶつかり落下しないようにするための装置です。


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クレーンクラブさんより、引用。)

巻過防止装置について、ちょっと別の例で説明していみます。
服を購入すると、大体タグが糸やナイロン糸で付けられていますよね。
大体はハサミで糸を切ると思いますが、糸の部分をギューッと引っ張ると糸がちぎれて取りますね。
この場合、タグを引っ張らず、タグの反対側の糸を引っ張ると、タグが服に引っかかり、糸が切れますね。イメージできるでしょうか?

クレーンのワイヤーの先には、物を吊るためのフックがあります。フックとは釣り針の大きいものだと思って下さい。
服がクレーンの腕、フックがタグ、ワイヤーが糸だと思っていただけば、フックがクレーンの腕に引っかかっている状態で、ワイヤーを引っ張ると、ワイヤーが切れるのは分かりますよね。

巻過防止装置は、フックが引っかかる前に、ワイヤーの巻上げを停止させる安全装置なのです。

フックの話が出たので、先に第66条の3について説明します。
フックは釣り針の大きいものです。荷物を吊り上げている最中に荷物が取れないように、開口部にはカバーを付け、外れないようにすると規定されています。


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さて第66条の安全弁ですが、クレーンの腕部、つまりジブやアーム、ブームと呼ばれる部分は、伸び縮みします。
ちょうど折りたたみ傘の柄のような構造になっているのです。

さらに上下左右と自由に動きます。

これらは中に油などの液体を満たし、これに圧力をかけて制御しています。
これを油圧(水圧)制御といいます。

この油圧が過剰にかかってしまうと、故障の原因になります。そのため規定以上の圧力がかかった場合は、油を逃してやるなどの調整が必要になります。この調整を行うのが安全弁といいます。

弁(バルブ)とは、何かというと簡単に説明するのは難しいのですが、要は水などの流体の流れを制御するものです。詳細は、ウィキなどに譲ります。
この安全弁の調整をきちんと管理することが求められているわけですね。

さて第66条の2は、前後の条文とは少々違い、機械そのものではありません。
作業時の規定です。

移動式クレーンを使用する場合は、次のことを決めておかなければなりません。

1)移動式クレーンによる作業の方法

2)移動式クレーンの転倒を防止するための方法

3)移動式クレーンによる作業に係る労働者の配置及び指揮の系統

これらのことは、作業前に全労働者に周知しなければなりません。


転倒防止のためのには、事前に移動式クレーン配置場所の地盤について調査します。
もし歩いたら、ズブズブと沈むような場所であれば、クレーンの配置は不可能です。
他の場所を探すか、地盤を強固にするための措置が必要になります。

同様に現場の状況を見て、安全に作業ができる方法や人員配置を検討しておくのです。
作業する当日に初めて現場を見る、などはもっての外と言っていいでしょう。
クレーンを操作するのが下請け業者であり、事前調査はできないのであれば、元方事業者などが事前に調査し、計画を作成しなければなりません。

現場作業での安全のために、事前調査と慎重な計画が必要になるのです。

さて、移動式クレーンの操作は、誰でもできるわけではありません。
車の運転には普通免許が必要なように、移動式クレーンの操作にも免許や資格が必要となります。

(特別の教育)
第67条
事業者は、つり上げ荷重が1トン未満の移動式クレーンの運転
(道路交通法第2条第1項第1号 の道路上を走行させる運転を除く。)の
業務に労働者を就かせるときは、当該労働者に対し、当該業務に
関する安全のための特別の教育を行わなければならない。

2 前項の特別の教育は、次の科目について行わなければならない。

  1)移動式クレーンに関する知識

  2)原動機及び電気に関する知識

  3)移動式クレーンの運転のために必要な力学に関する知識

  4)関係法令

  5)移動式クレーンの運転

  6)移動式クレーンの運転のための合図

3 安衛則第37条 及び第38条 並びに前2項に定めるもののほか、
  第1項の特別の教育に関し必要な事項は、厚生労働大臣が定める。
(就業制限)
第68条
事業者は、令第20条第7号 に掲げる業務については、
移動式クレーン運転士免許を受けた者でなければ、
当該業務に就かせてはならない。
ただし、つり上げ荷重が1トン以上5トン未満の移動式クレーン
(以下「小型移動式クレーン」という。)の運転の業務については、
小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者を当該業務に就かせることができる。


資格要件については、特別教育、就業制限のある業務ということで紹介したことがあるので、簡単にまとめたいと思います。

吊上げ荷重 資格
1t未満 移動式クレーン運転の特別教育
1トン以上、5t未満 小型移動式クレーン運転技能講習
5t以上 移動式クレーン士免許


吊上げ荷重により、必要とする資格が異なるのが分かります。
事故事例などを見ると、現場で使い方を教えただけで、無資格で操作させているケースも少なくありません。
おおよその使い方は、現場で教えてもらって分かるでしょうが、操作時に注意しなければならないことまでは教えてくれません。

移動式クレーンに関わらず有資格作業は、OJTではなく、必ず所定の機関で受講しましょう。
労働者に資格をとらせること。
これも安全管理に一環なのです。


ただ、まあ費用がかかるし、数日は受講で現場作業ができなくなるという事情も分からなくはないですが。それに投資した人が、すぐに辞めてしまうこともあり、がっかりすることもあります。
それでも、やはり操作する人は資格を持たせ、作業に当たらせるのは、事業者の責務ですし、事故を起こしてから後悔するのでは遅すぎるのです。
未資格者に操作させて、事故を起こし、後悔してしまう。
こういうケースは少なくないのも、また事実です。

今回は、事業者が管理しなければならない規定について、まとめてみました。
一歩間違えれば、大事故になるので、安全装置を始めとして、様々な制限がかかってしまいます。
それだけ厳重に管理されなければならない機械ということです。
身近である分、忘れがちになるのですが、使用には責任が伴うことを覚えておかないといけませんね。

移動式クレーンの規定は、もっとあります。
次回は、現場等で使用時の規定について、まとめてみたいと思います。

【クレーン則】

第60条
移動式クレーン検査証の有効期間は、2年とする。ただし製造検査等の結果により、例外もある。
第63条
移動式クレーンは検査証を備えなければ、使用してはならない。
第64条
移動式クレーンは厚生労働大臣の基準に適合しなければ、使用してはならない。
第64条の2
移動式クレーンは、アームの破断を防ぐため、設計の基準とされた負荷条件に留意する。
第65条
移動式クレーンの巻過防止装置の調整を行わなければならない。
第66条
移動式クレーンの安全弁の調整を行わなければならない。
第66条の2
移動式クレーンの使用にあたって、計画を作成しなければならない。
第66条の3
荷を吊り上げる時は、フックの外れ止を付けなければならない。
第67条
1t未満の移動式クレーンを操作するには、特別教育を受講しなければならない。
第68条
5t以上の移動式クレーンを操作するには、移動式クレーン運転士の免許が必要になる。
1トン以上5t未満の移動式クレーンを操作するには、技能講習を修了しなければならない。

 

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