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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

移動式クレーン「感電」の事故事例

      2015/05/30

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移動式クレーンについて使用時の注意事項などをまとめてきたのですが、注意事項がたくさん必要とするほど事故のが多いのだと分かります。

事故の種類としては、重いものを持ち上げようとして、車体が転倒する。
吊上げ作業中に荷物が落下する。
これらの事故については、事故事例として紹介したのですが、これらの事故はあくまで一例です。

事故のパターンは転倒や落下だけではありません。その他にも数限りなくあります。
その1つが感電事故です。

先日、車で走っていると、道路脇でショベルカーを使った工事をしているのを見ました。
その道路は山の裾野に沿っており、山の斜面に落石防止柵を設置しているようでした。
道路の路肩部には電柱が建っており、電線が張られています。
ショベルカーは電線の下をかい潜りながらの作業をしていました。

こういった作業では、ショベルカーのアームを振り上げた時に、電線に接触し、感電するリスクがあります。
実際、ショベルカーで電線に接触して、感電事故というのも少なくないようです。

ちなみに、私が見た現場では、電線には絶縁用防具が取り付けられており、きちんと感電防止策がとられていましたよ。
事前に電力会社と協議し、着けてもらったものだと思います。

安衛則では、架空電線などの接触による感電事故防止のために、必要な措置をとることを規定しています。

【安衛則】

(工作物の建設等の作業を行なう場合の感電の防止)
第349条
事業者は、架空電線又は電気機械器具の充電電路に近接する場所で、
工作物の建設、解体、点検、修理、塗装等の作業若しくは
これらに附帯する作業又はくい打機、くい抜機、
移動式クレーン等を使用する作業を行なう場合において、
当該作業に従事する労働者が作業中又は通行の際に、
当該充電電路に身体等が接触し、又は接近することにより
感電の危険が生ずるおそれのあるときは、次の各号の
いずれかに該当する措置を講じなければならない。

  1)当該充電電路を移設すること。

  2)感電の危険を防止するための囲いを設けること。

  3)当該充電電路に絶縁用防護具を装着すること。

  4)前3号に該当する措置を講ずることが著しく困難なときは、
   監視人を置き、作業を監視させること。


私が見た現場では、この3号を実施していたわけですね。

移動式クレーンも、ショベルカーなどと同様にアームを上に高く持ち上げる作業を行います。
荷物を吊り上げるのですから、この作業は必ず行うわけです。

その場合、つきまとうリスクは、架空電線に接触しての感電事故です。
この事故もよくあります。

今回は、移動式クレーンの感電事故の事例を見て行きたいと思います。

参考にしたのは、厚生労働省の労働事故事例です。
労働事故事例

車両積載形トラッククレーンを用いて鉄道用枕木の積み込み作業中、クレーンのジブが鉄道架線に触れ、感電

この災害は、鉄道の枕木交換作業に使用する枕木の運搬作業中に発生した感電災害です。

災害当日は、駅構内の枕木交換作業が予定されていた。

交換作業に使用する枕木は別の駅構内に保管されていたので、車両積載形トラッククレーンで積込みを行いました。

枕木の積み込み作業の分担として、1人はクレーンの操作を行い、1人は荷台上で受け取り作業を行ました。この作業時には作業監視員は配置はされていませんでした。

積込み作業を行っている最中に、車両積載形トラッククレーンのジブが作業場所の上に張られていた架線(22kV)に接触し、感電し、操作をしていた労働者が死亡、もう1人は休業災害を負った。

発注者から、作業を担当の下請けに枕木の保管場所についての指示はありましたが、架線についての言及はありませんでした。
また置き場所の上に張られている架線への給電停止や、絶縁用防護具の装着等の措置を講じていませんでした。


この事故の型は「感電」で、起因物は「電線」です。

クレーンのジブつまりアームの部分が、架空電線に接触したことにより、2人が感電してしまいました。
22KVとなると特別高圧なので、一瞬でとてつもない電流が体を通過したものだと思われます。

直接的な事故原因は、頭上に架空電線が通っているのも関わらず、何も対策せずに、作業を行ったことと言えるでしょう。
作業に当たる前に、どうしようかなど話をしたのかもしれませんが、そのまま作業を行ったようです。
慎重にやって、接触しなければ大丈夫という判断があったのでしょうか。

この事故に限らず、感電事故には特徴があるように思います。
それは、短時間で済む作業、臨時の作業で、事故になっているということです。

これはどういうことでしょうか?

冒頭の工事の例のように、長期に渡り感電リスクがあり得る現場やでは、しっかり対策は行っています。
おそらく作業計画としても、絶縁用防具を装着するなども盛り込んでいるはずです。
また大々的なメンテナンス等、あらかじめ停電を計画している場合なども、電気が切られているので、作業中の感電リスクは低くなります。

事故が起こりやすいのは、臨時の仕事の時。

事例のように、枕木を積み込むという作業は、一時的なものです。
しかもメインは枕木の設置なので、荷物の積込みは付属作業であるともいえます。

そのような一時的で、メインではない仕事の時、わざわざ駅を停電にしてもらう、電力会社に依頼して絶縁用防具を装着するなどの措置をとるでしょうか。

なるべくなら、そのような手間を取りたくないというのも人情だと思います。

感電事故は、このような「わざわざ手間をとりたくない」状況で起こりやすいようです。
臨時の仕事だからといって、電圧が低くなることはありません。
いかなる状況であろうとも、電気はそこにあるのです。

仮に絶縁用防具等の装着が行わない場合、安衛則では、監視人をつけることになっています。
この監視人に、22KVであれば、アームと電線が2.0m以内に近接しないように、監視させなければなりません。
事例では、作業は2人で行い、監視人は配置されていませんでした。

さて、これらを踏まえて、事故原因をまとめたいと思います。

1.架空電線があるにも関わらず、停電や絶縁用防具の装着などを措置を行わなかった。
2.作業を2人だけで行った。
3.元方事業者が電線があることを伝えていなかった。


この事故では、元方事業者が、作業を行った業者に、枕木を保管している場所の上空に架空電線があることを伝えていなかったようです。
そのため、当日現場に行って初めて、電線があることに気づき、対策がとれなかったとも考えられます。

臨時で、期限が迫っている時には、どうしても作業が優先になるので、安全対策が疎かになります。
しかし、この感電事故のように、ちょっとした油断が、大事故になるのですから、安全対策だけは手を抜かないで欲しいです。

これらの原因をふまえての、対策は次のように考えれます。

1.架空電線に近接する作業では、停電、電線に絶縁用防具の装着などの措置をとること。
2.措置がとれない場合は、作業監視人を配置すること。
3.元方事業者は、事前に作業場所に電線があることを伝え、必要な措置をとること。




もう1つ、移動式クレーンでの感電事故事例を見てみたいと思います。

移動式クレーンのブームの先端が高圧電線に接近し感電

この災害は、車両積載形トラッククレーンの荷台に荷を積み込もうとしていたところ、クレーンのブームの先端が架空送電線に接近、アームに放電し、トラックレーンを操作していた作業者が感電死した事故です。

この工事では、鉄骨造の工場および倉庫を増築するためにコンクリート基礎工事を行うもので、被災者が所属する業者は、基礎コンクリート打設のための型わく組立作業を担当していました。

作業を行う空き地には送電線の鉄塔と変電所が建てられており、鉄塔から変電所には計6本の架空送電線(特別高圧33KV)が引き込まれていました。

被災者と同僚1名は、鋼製単管の束を積載型クレーンの荷台に積み込むため、同僚は玉掛けを行い、被災者はトラックの運転室と荷台の間に設けられている操作レバーによりクレーンを運転していました。

被災者がジブを上昇させ、旋回させたところ、先端が架空送電線に接近しました。
その瞬間、放電を受け、トラッククレーンの車体を流れた電流により感電し、死亡しました。

架空送電線には、感電防止のための絶縁用防護具は装着されておらず、監視人もおかれていませんでした。


この事故の型は「感電」で、起因物は「電線」です。

この事故も、架空電線の近くでクレーン作業を行っている時に、感電したものです。
材料の積込みですので、メインの仕事ではなかったようです。
また、資材置き場も一時的なものですので、常に架空電線の近くで、クレーン作業をしているわけでもなかったように思います。

電線等の近くでは、直接触れていなくても、放電により電気が流れる危険があります。
これは高圧や特別高圧など高い電圧が流れているところほど、遠くまで放電してきます。
そのため、通達や電力会社では、電圧ごとに必要な離隔をとるようにとしています。

この事例の場合であれば、33KVなので、少なくとも2.2m~4.0mの離隔はとらなければなりませんでした。
事故は必要な離隔距離より近くなった場合に、起こってしまったようです。

また先の事例と同様に、囲いや絶縁用防具の装着がない他、監視人の配置もされていませんでした。

さて、事故原因をまとめたいと思います。

1.架空電線があるにも関わらず、停電や絶縁用防具の装着などを措置を行わなかった。
2.監視人を配置していなかった。
3.資材の置く場所が電線の近くだった。


臨時の作業の時には、手間をかけたくないので、そのまま特に対策ととらなかった結果、事故になるという傾向があると書きましたが。
この事例も同様だったのではと思います。

それと、感電事故についてはもう1点傾向があるのではと思います。

それは、電気の事故の恐ろしさに無知であること。

感電したら危険ということは、知らない人のほうが少ないでしょう。
電気は雷や放電している様子は見ることはできますが、電線に流れている姿が見ることはできません。
目に見えているのは、ただの黒いケーブルです。

大きな機械、例えばパワーショベルなどであれば、そのバケット部は人間がすっぽり入るくらいの大きさです。このバケットにぶつかったら、どうなるか。危険だと想像ができます。
工場にあるプレス機に、手が挟まれるとどうなるか。これもリアルに危険だと想像ができます。

電線に触れたらどうなるかは、実感として理解し難いのではと思います。
電気の衝撃として、感じることはできるのは、せいぜい静電気くらいです。
大電流の衝撃は、リアルに想像しづらいのではないでしょうか。

電線に電気が流れている。当たり前なのですが、分かりやすく電気が流れているというのは目では見れません。
かといって、感じた時には終わりというより、感じる暇のないでしょう。

この電気に対する想像のしづらさも、油断を生み出す要素なのではと思います。

これらの原因をふまえての、対策は次のように考えれます。

1.架空電線に近接する作業では、停電、電線に絶縁用防具の装着などの措置をとること。
2.措置がとれない場合は、作業監視人を配置すること。
3.資材置場を検討し、電線に接近せずともよい場所にすること。


電線には常に電気が流れています。
それは、接近すると常に感電のリスクがあるということです。

繰り返しになりますが、臨時の作業だから、ちょっとだけ電気もお休みなんてことは、絶対ありません。

架空電線に接触又は接近による事故は、準備さえすれば、確実に防ぐことができます。
そのためには、事前に電線の位置と作業位置を把握し、電力会社と相談することが大切です。

臨時の作業であっても、事前に相談し、日程を調整すれば、電力会社は停電や絶縁用防具の取付はやってくれます。
そうすることで、少なくとも感電事故は防げるのですから、必ず相談しましょう。

感電は油断からきます。
これはクレーン等が電線に接触する事故に限りません。
計装盤での感電事故でも同様です。

移動式クレーンは、常に状況が変わる現場仕事がほとんどでしょうから、必要な安全対策は、しっかり検討し、準備するのが大切ですね。

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