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移動式クレーンの使用検査

      2015/05/30

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移動式クレーンを国内で製造するにあたっては、個々の機械について製造検査を受けなければなりません。

しかし移動式クレーンは国内メーカーが国内の工場だけで作られているわけではありません。
当然のことながら、海外メーカーでも作っています。

では、海外で製造された移動式クレーンを輸入した場合は、どうなるのでしょうか?
検査なし。ということは、もちろんありません。
製造検査に代わる検査を受けなければなりません。

今回は、輸入した機械などに行う検査、使用検査についてまとめたいと思います。

海外で製造された移動式クレーンだからといって、性能や安全機能が基準以下でも良いことはありません。
なぜなら、そのような性能は使用者の命にかかわることだからです。

そのため、使用検査でも製造検査でクリアするのと同程度の性能基準は求められるのです。
検査でもしっかりチェックが入ります。

使用検査については、クレーン則第57条、第58条に規定されています。

【クレーン則】

(使用検査)
第57条
次の者は、法第38条第1項 の規定により、当該移動式クレーンについて、
都道府県労働局長の検査を受けなければならない。

  1)移動式クレーンを輸入した者

  2)製造検査又はこの項若しくは次項の検査
  (以下この節において「使用検査」という。)を受けた後
  設置しないで2年以上(設置しない期間の保管状況が良好であると
  都道府県労働局長が認めた移動式クレーンについては3年以上)
  経過した移動式クレーンを設置しようとする者

  3)使用を廃止した移動式クレーンを再び設置し、
   又は使用しようとする者

2 外国において移動式クレーンを製造した者は、法第38条第2項
  の規定により、当該移動式クレーンについて都道府県労働局長の
  検査を受けることができる。当該検査が行われた場合においては、
  当該移動式クレーンを輸入した者については、前項の規定は、
  適用しない。

3 第55条第2項から第4項までの規定は、使用検査について準用する。

4 使用検査を受けようとする者は、移動式クレーン使用検査申請書
 (様式第19号)に移動式クレーン明細書、移動式クレーンの組立図
  及び第55条第5項の強度計算書を添えて、都道府県労働局長に
  提出しなければならない。

5 移動式クレーンを輸入し、又は外国において製造した者が
  使用検査を受けようとするときは、前項の申請書に当該申請に
  係る移動式クレーンの構造が法第37条第2項 の厚生労働大臣の
  定める基準(移動式クレーンの構造に係る部分に限る。)に
  適合していることを厚生労働大臣が指定する者
  (外国に住所を有するものに限る。)が明らかにする書面を
  添付することができる。

6 都道府県労働局長は、使用検査に合格した移動式クレーンに
  様式第17号による刻印を押し、かつ、その移動式クレーン明細書に
  様式第20号による使用検査済の印を押して第4項の規定により
  申請書を提出した者に交付するものとする。
(使用検査を受ける場合の措置)
第58条
第56条の規定は、使用検査を受ける場合について準用する。
この場合において、同条第2項中「所轄都道府県労働局長」とあるのは、
「都道府県労働局長」と読み替えるものとする。


使用検査等は、基本的に都道府県労働局長または特定の検査機関が行います。
しかし法改正により、今後は外国に立地する検査機関も、使用検査実施機関として登録できるようになります。
これはTPPなどで、貿易の障壁を撤廃する動きに合わせた措置だと言えます。
現在、日本国内で達成すべき基準と同等なのかは、交渉次第でしょうが、もしかすると基準が緩くなる可能性もあります。

特定機械を輸入して使用しやすくなるでしょうが、性能や安全性は注意する必要はあります。

さて使用検査について、話を戻します。

移動式クレーンの全てが、使用検査を受けなければならないというと、そうではありません。
製造検査を受けた物は、受ける必要がありません。

つまり、移動式クレーンは製造検査もしくは使用検査を受けないと、使えないということです。

使用検査を受ける条件は、次のとおりです。

1.海外から輸入した場合
2.製造検査を受けてから、2年以上使用していない場合(保管状態によっては3年以上)
3.廃止した移動式クレーンを使用する場合


検査内容については、製造検査と同様のことが行われます。

輸入した物以外では、製造検査を受けてから使われずにおかれたものも受けます。
また、使用を廃止して、検査証を返上したを再度使う場合にも、使用検査です。

検査証を返上せずに、一定期間使用を休止して後に、再度使用する場合は、使用再開検査を受けます。

この2つは混同しそうですが、検査証が手元に有る無しによって、受ける検査が異なるわけです。

使用検査を受けて、合格すると、製造検査合格時と同様に検査証をもらいます。

検査証については、第59条に規定されています。

(移動式クレーン検査証)
第59条
所轄都道府県労働局長又は都道府県労働局長は、
それぞれ製造検査又は使用検査に合格した移動式クレーンについて、
それぞれ第55条第5項又は第57条第4項の規定により申請書を
提出した者に対し、移動式クレーン検査証(様式第21号)を
交付するものとする。

2 移動式クレーンを設置している者は、移動式クレーン検査証を
  滅失し又は損傷したときは、移動式クレーン検査証再交付申請書
  (様式第8号)に次の書面を添えて、所轄労働基準監督署長を
  経由し移動式クレーン検査証の交付を受けた都道府県労働局長に
  提出し、再交付を受けなければならない。

  1)移動式クレーン検査証を滅失したときは、その旨を
   明らかにする書面

  2)移動式クレーン検査証を損傷したときは、
   当該移動式クレーン検査証

3 移動式クレーンを設置している者に異動があったときは、
  移動式クレーンを設置している者は、当該異動後10日以内に、
  移動式クレーン検査証書替申請書(様式第8号)に
  移動式クレーン検査証を添えて、所轄労働基準監督署長を
  経由し移動式クレーン検査証の交付を受けた都道府県労働局長に
  提出し、書替えを受けなければならない。
(検査証の有効期間)
第60条
移動式クレーン検査証の有効期間は、2年とする。
ただし、製造検査又は使用検査の結果により当該期間を
2年未満とすることができる。

2 前項の規定にかかわらず、製造検査又は使用検査を
  受けた後設置されていない移動式クレーンであって、
  その間の保管状況が良好であると都道府県労働局長が
  認めたものについては、当該移動式クレーンの検査証の
  有効期間を製造検査又は使用検査の日から起算して
  3年を超えず、かつ、当該移動式クレーンを設置した日から
  起算して2年を超えない範囲内で延長することができる。
(設置報告書)
第61条
移動式クレーンを設置しようとする事業者は、あらかじめ、
移動式クレーン設置報告書(様式第9号)に移動式クレーン明細書
(製造検査済又は使用検査済の印を押したもの)及び
移動式クレーン検査証を添えて、所轄労働基準監督署長に
提出しなければならない。ただし、認定を受けた
事業者については、この限りでない。


製造検査または使用検査に合格した移動式クレーンに対して、都道府県労働局長が検査証を発行します。

検査証を受けて初めて、その移動式クレーンは使用することができるようになります。
いわば機械自体に発行される免許証のようなものです。
自動車の免許を亡くすと車に乗れませんよね。
同様に、検査証を亡くすと機械が使えなくなるのです。

しかしもし亡くしたり、破ったりした場合は、どうしたらよいのでしょうか。
その場合は、亡くしてから10日以内に再発行の申請を行う必要があります。

申請は、最終的には発行元の都道府県労働局長に行うのですが、直接提出ではありません。
所轄労働基準監督署長経由で、都道府県労働局長に申請を行います。

そのため直接、申請書を提出するのは、所轄労働基準監督署になるのです。

さて、検査証には有効期間が設定されています。
当然ですが、有効期間を過ぎると、使用は禁止となります。
その有効期間は2年です。ただし保管状態などにより3年以内、または設置してから2年以内範囲での延長する場合もあります。
とはいえ、原則2年です。

では、有効期間の更新はどうしたらよいのでしょうか?
それは、使用者が性能検査を受けることで、期間を更新することができます。
性能検査は使用者が行います。
製造者ではないので注意しましょう。
メーカーに言うのではなく、使用者自ら申請しなければならないということです。
実際は、修理業者等に委託することになると思います。

さて、検査証を無事受け、実際に使用する、その前にもう1つやることがあります。
それは、移動式クレーンの設置報告書を所轄労働基準監督署長に提出することです。

この手続きをもって、ようやく移動式クレーンは使用することができるのです。

最後に、特定機械としての移動式クレーンは、吊り荷重が3トン以上の能力を持っているものに限ります。
吊り荷重が3トン未満のものであれば、設置報告書は必要になりますが、製造検査等は必要ありません。

しかし何もかも不要というわけではないのです。
3トン未満とはいえ、物を吊り上げる機械なのですから、その性能は確かめなくてはなりません。

特定機械以外の移動式クレーンの試験は、第62条に規定されています。

(荷重試験等)
第62条
事業者は、令第13条第3項第15号の移動式クレーンを
設置したときは、当該移動式クレーンについて、
第55条第3項の荷重試験及び同条第4項の安定度試験を
行なわなければならない。


令第13条第3項第15号の移動式クレーンとは、「つり上げ荷重が0.5トン以上3トン未満の移動式クレーン」を指します。

この移動式クレーンも、製造検査で行っているのと同様に、荷重試験と安定度試験を受けなければならないと規定されています。
同じ吊る機械なのですから、おろそかにできない部分ですから、当然といえば当然ですね。

ちなみに0.5トン未満の移動式クレーンについては、何の規制も設けられていません。
規制外というものになります。

移動式クレーンは、とても便利であり、工事となれば必需品と言っても過言ではありません。
しかし便利だけではなく、いったん事故になると、大きな被害を生み出してしまいます。

工事現場でのクレーン事故は、ニュースなど見たことがあると思います。
決して少なくなく、事故の被害も小さくないのです。

移動式クレーンは、様々な検査を経て、使用されています。
これらの全ての検査の目的は、安全に使用できる、事故を起こさない、死傷者を出さないためのものです。

全ての製造メーカーにとって、自分たちが作った機械は、仕事や人の役に立つものであって欲しいと思っているはず。
時にはリコールなどもありますが、決して人を傷つけるものであって欲しいなどとは思っていないはずです。

しっかり仕事して来いと送り出した自分たちの機械が事故を起こしている。
そんなニュースを見ると、製造に携わった人たちは歯噛みしているのではないでしょうか。
まるで、結婚した娘がぞんざいに扱われているような、そんな気持ちに似ているのかもしれません。

製造検査や使用検査を経たものは、製造メーカーと検査機関が、大丈夫と自信を持って送り出してくれたものです。

これをどう扱うかは、使用者の責任になります。

資格を持った者が、安定した場所を確保し、安全に使用する。

製造者と使用者が万全を期すことによって、その日その日の仕事を、誰一人怪我なく終えられるのです。

どちらかの責任ではなく、両者の責任です。

使用者としては、メーカーがきちんと送り出してくれた移動式クレーンなのですから、その思いに応え、機械がその役目を終えるまで、本来の目的を果たし続けられるよう使いたいものですね。

まとめ。

【クレーン則】

第57条
移動式クレーンを輸入した者や製造検査後一定期間使用しなかった者、また廃止した移動式クレーンを再度使用する者は、当該移動式クレーンについて、都道府県労働局長の検査を受けなければならない。
第58条
使用検査を受ける場合は、製造検査の規定を準用する。
第59条
所轄都道府県労働局長又は都道府県労働局長は製造検査又は使用検査に合格した移動式クレーンについて、移動式クレーン検査証交付するものとする。

使用者が検査証を滅失した場合は、10日以内に再交付の手続きをすること。
第60条 移動式クレーン検査証の有効期間は、2年とする。
ただし、製造検査又は使用検査の結果により当該期間を
2年未満とすることができる。
第61条
移動式クレーンを設置しようとする事業者は、あらかじめ、移動式クレーン設置報告書所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
第62条
事業者は、0.5トン以上3トン未満の移動式クレーンを設置したときは、当該移動式クレーンについて、荷重試験及び安定度試験を行なわなければならない。

 

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