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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

リスクアセスメントの対策は、本質的対策をまず考える

      2016/09/18

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今年は化学物質の取り扱いにあたって、リスクアセスメントが義務化になりました。

他の業種や作業については、リスクアセスメントは努力義務ではありますが、10年で知名度は上がってきたものと思われます。
私は建設業の工事現場に安全パトロールに行くことが多いのですが、リスクアセスメントを実施されている事業者さんが多いです。

どのようにリスクアセスメントを取り入れているかというと、主には作業手順書、作業計画、そしてリスクアセスメントKYという形で取り入れられています。これらの内、最も目にするのは、リスクアセスメントKYの形式です。

KYは毎日の作業開始前に、行うものです。
対象となる物は、その日の作業です。

リスクアセスメントなので、危険源に対しては、リスクの見積もりがされています。

が、しかし、
実際のところは、リスクアセスメントの用を呈しているKYというのが実際のところです。
根のところは、昔ながらのKYと大差なさそうです。

内容を見てみると、こんなのが多く見られます。

どんな危険があるか 「足を滑らせて、転倒する。」
その対策は     「足元を注意する」

見覚えがあるのではないでしょうか?
おそらく日本全国で、こんな(RA)KYが日々書かれているのではないかと思います。

「足元を注意するって?」と元請け業者さんに尋ねてみると、大概苦い顔をされます。
そして「もっと具体的に書けと指導しているのですが」との返答。
元請け業者さんと、実際にKYを行う業者さんには、意識の溝があるようです。

そのため、「リスクアセスメントとKYについて。混ぜるな、面倒くさい。」という記事を書いたこともありますが、やる立場としては、これが本音かなと思います。
安全パトロールを行っている立場としては、そうも言ってられないんですけども。

ここで、少しリスクアセスメントの本来の役割を思い出してみます。

そもそもリスクアセスメントはKYと、行うタイミングも役割が違います。

ちょっとまとめます。

項目 KY リスク・アセスメント
誰がやるのか 作業者 事業者
いつやるのか 作業前 建物や設備を新設・変更・解体、作業方法や材料を変更時等
どこでやるのか 作業場 事業場全体
どんな対策をするのか 作業管理、保護具 設計変更、機械材料の変更、作業方法の変更等
コスト かからない かかる

リスクアセスメントは、事業計画のスタート段階、新しい機械の導入、作業方法や材料の変更といった大きな節目のタイミングで行うことに適しています。
そして、リスクアセスメントでは、結構思い切った内容まで踏み込んで、安全対策をとることができます。

つまり、会社全体の抜本的な対策まで検討するのがリスクアセスメントの役割といえます。

「THEファシリテーター」という本を読みましたが、あれは経営方針での抜本的な改革を取り扱っていました。結果的に変革の波は、会社全体に及びます。この本の内容が安全衛生をテーマにしたものが、リスクアセスメント(の理想の形)というものなのです。

抜本的なことにまで及ぶため、危険軽減対策も費用がかかるもの、時間がかかるものもあります。
逆に言うと、そういった内容まで踏み込む機会が、リスクアセスメントなのだといえます。

リスクアセスメントで検討する、危険の軽減対策は次の順番で検討していきます。

1.本質的対策(作業方法や材料を変更する。危険な作業自体をなくす)
2.工学的対策(安全性の高い機械に取替える。安全装置を備える。機械や設備から危険をなくす)
3.管理的対策(教育、掲示、現場での指示など。)
4.保護具の着用<
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1と2は、すぐに対応するのは難しいです。費用も時間もかかります。
そのため中長期の計画として盛り込んでいきます。

ただし、差し迫った危険がある場合は、悠長なことを言ってられませんけどね。

では、リスクアセスメントKYで1や2はできるでしょうか?
無理ですよね。

せいぜい3か4です。厳密にいうと、3や4は100%実施が担保されていないため、対策後の評価では軽減率0になります。
100%実施が担保されていないということを具体的に説明すると、仮に「足場では安全帯を使用する」という対策を立てても、全員が確実に実行する保障はありませんよね。つまり、低減について確実性がないからです。

とはいうものの、リスクアセスメントKYでは、これで危険度3が1にまで、低減されたと評価されるわけです。
それでもいいと思いますが、リスクアセスメントになっているかというと??ともなるわけです。

しかし、意味がないとか愚痴ったりはしません。
今後、リスクアセスメントの考え方ややり方が、1人1人の作業者まで浸透することにより、意味合いが変わってくる可能性があります。とはいうものの、それは数年単位の時間がかかるはずですが、それでよいと思うのですが。

とりあえず、今すぐに出来ることを提示しないと、私はただの愚痴人間になります。
そこで、安全パトロールで指導していることを、最後にまとめたいと思います。

まず「確認する」とか「注意する」などでは、危険対策としては意味がありません。
とりあえずシートに書いた程度のもので、実行されません。

大切なことは、有効な対策を実行するかどうかです。
そこで具体的な行動として、やったかやっていないかを判断できるような内容にしてくださいとお話しています。

例えば「確認する」を「指差し呼称する」とすると、具体的行動になります。
具体的行動は、実行したかどうか、客観的に判断することができます。

実行の効果について評価するには、客観的に判断するものが必要です。
作業前のリスクアセスメントKYなどでできるものは、具体的な行動への落とし込みです。
こういったものを積み重ねて、以後の対策に反映することができ、さらにはその将来の改善になります。

「確認する」という曖昧なものを、具体的行動に落とし込む。
これも、一朝一夕にはできないです。数年かかるでしょう。

リスクアセスメントが全ての作業者まで浸透していくのは、その先でしょうね。
そうなると、建設業のリスクアセスメントがより実行的なものになるのではないでしょうか。

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