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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

鼠川、根がらみに足を絡め取らる

   

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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第109話「鼠川、根がらみに足を絡め取らる」
基礎のコンクリート打設は問題なく終わりました。
表面の均しも、夕方までかかったものの、無事終わり、養生期間になりました。

猫井川たちが草刈りから始めた作業ですが、基礎のコンクリートで一端終わります。
今後は、建築工事の範囲になります。
建築工事では、鉄筋コンクリートで壁や天井を作っていきます。
これは別の業者が中心になって行っています。

そのため猫井川たちが作業現場から離れるのでした。
次に猫井川たちが現場に入るのは、建物ができた後、周囲に排水路を設置したり、舗装するので、随分先の話になります。

ひとまず最後の仕事は、基礎コンクリートの型枠を外すことになるのでした。

「ここまで順調に終わったね。」

打ち終わったばかりで、つやつやと濡れたコンクリート基礎を前にして、野虎が言いました。

「はい。養生が終わったら、型枠をばらして、一端撤収します。」

「今度来るのに、しばらく間が開くね。」

「そうですね。次は建物完成後ですから、ここの様子もガラッと変わってそうですね。」

「うん、かなり違うと思うよ。また、そのとき頼むよ。」

「分かりました。」

「ところで、足場屋の予定の関係で、足場を早めに組んでいきたいんだよ。
 それで脱型する日から組みたいんだけど、構わない?」

「はあ、脱型した後なら構わないですけど。」

「うん、終わってからにするよ。
 でも型枠を外すだけなら、そんなに時間がかからないよね。」

「そうですね、1、2時間もあれば外せると思います。
 その後、細かいものを片付けたりしますけど。」

「片付けなら、注意しながらやってもらってもいいかな?」

「わかりました。脱型もなるべく早く終わらせますけど、同じ場所で作業するので、足場屋さんにも注意させてくださいね。」

「もちろん。新規のときにしっかり話すよ。」

野虎が去った後、少し思案顔をしていると、鼠川が話しかけてきました。

「どうした?」

「いや、今野虎さんが来てたんですけど、足場屋の都合で、脱型する日に足場を組むみたいですよ。」

「それだと、わしらが仕事できないじゃないか。」

「一応、脱型が終わってから、作業にかかるみたいなんですけど。
 細かい片付けをするときは、かぶりますね。」

「そうか、あんまり嬉しくない状態だな。
 足場を組んでるところを歩き回りたくないぞ。」

「そうなんですよね。」

「まあ、そう決まってしまったならば、うまくやるしかないか。」

2人は少し不安を抱えたものの、その日は引き上げていったのでした。

数日後、養生期間が終わり、基礎コンクリートの型枠を外す日が来ました。

猫井川たちが現場に到着すると、すでに足場業者が現場に入ってきていました。

朝礼では、野虎が脱型作業と足場の組立てが同じ場所で行なわれるので、十分注意するようにとの通達もあったものの、作業が開始されると足場の材料はどんどんと荷降ろしされていくのでした。

荷降ろしの作業を横目に、猫井川たちは基礎コンクリートの型枠をばらしていきます。
そしてばらしたコンパネはすぐさま、運び出していったのでした。

周りでは多くの人が足場材料を降ろし、組み立てる準備を進めていっています。
猫井川、鼠川、保楠田は、そんな様子に焦りながらも、せっせとばらしと運び出しを進めていったのでした。

ようやく全ての型枠の取り外しが終わりました。
猫井川が、その旨を伝えると、早速足場の組立てが開始されたのでした。

一息つきながら、その様子を見つめる3人。
その額には、焦りからか玉の汗が滲んでいたのでした。

足場見る見る間に組まれていきます。
敷板が敷かれ、その上に脚部の金具が並べられたかと思うと、すぐさま支柱が建てられ、根がらみが取付けられていきます。

額の汗が引いた頃、3人は片付けを再開しました。
大きな材料は、すでに運び出していますが、細かな桟木の破片などはまだ残っています。
これらを片付けるためには、足場作業中の間を抜けていく必要があります。

大きなコンパネをダンプへの積込は、保楠田に任せ、猫井川と鼠川は先程まで型枠をばらしていた場所に突入していったのでした。

細かな材料などを拾い集めては、足場の外に運び出していきます。
この作業を何度か繰り返した時でした。

鼠川が足場の間をすり抜けようとしたとき、根がらみに足を引っ掛けてしまったのでした。
そしてよろめいてしまい、尻もちを付いてしまったのです。

近くにいた足場の作業者が、すぐに近づき手を貸してくれたので、鼠川はよろよろと立ち上がることが出来ました。
そのまま足場の外にでると、どっかりと座り込んでしまいました。

そんな様子を見た、保楠田が近づき声をかけました。

「転んだみたいですけど、大丈夫ですか?」

「あ、ああ、少し足を打ってしまった。」

「じゃあ、もう休んでて下さい。見た感じ片付けも大体終わったみたいですから、あとは猫ちゃんだけで出来ると思います。」

「そうだな、それじゃしばらく休憩させてもらうよ。」

「そうしておいて下さい。」

どっかりと腰を下ろしている鼠川の側を猫井川が、いそいそと片付けをしていきます。
そしてしばらくすると、片付けも一段落したのでした。

「鼠川さん、大丈夫ですか?」

作業を終えた、猫井川が話しかけてきました。

「ああ、すまんな。」

「いえ、もう終わりかけだったんで、問題ないです。
 でも、同じ場所で別の作業をしていると、危ないですね。

 じゃあ、今日はこれで引き上げましょう。野虎さんに挨拶して来ますんで、車に乗ってて下さい。」

そう言うと猫井川は、現場事務所に向かったのでした。

その背中を見つめながら、鼠川は「よっこいしょ」の掛け声とともに、腰を上げ、車に向かうのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回は、鼠川の転倒でした。
実際に転んでしまったので、ヒヤリハットでは収まっていないといえば、いないのですが。

足場の組立てはあっという間に行なわれます。
何にもの職人が一斉に取り掛かり、それなりの高さでも、あれよあれよという間に組み上がってしまいます。
見ていて気持ちがいいのですが、今回のように同じ場所で別の作業をするとなると、かなり気を使ってしまいます。

原則としては、同じ場所で別々の作業をするのは避けるほうがいいのですが、もしどうしても行う場合は、業者間の連絡をしっかり取り、お互いに注意事項を決めることが重要です。

安全通路を確保するのも大事ですね。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 足場を組立てている場所を通行しようとしたら、根がらみに足を引っ掛けた。
対策 1.同じ場所での作業は行なわない。日や時間を分ける。
2.安全通路を確保する。

今回で、猫井川の担当工事は一端終了です。再開は建物完成後になります。
次回からは、また別の現場になっていきます。

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