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58歳林業の男性、40メートル滑落し死亡(奈良県野迫川村)

      2016/11/09

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林野庁によると、林業の就業人数は、平成27年で約4.8万人になるそうです。

林野庁 林業労働力の動向

ピークのときに比べるまでもなく、これは非常に少ないといえます。

さらに高齢化が進み、65歳以上の労働者が占める割合は約20%です。これは全産業平均では10%というものに比べ、割合が高いといえます。

林業に関わる労働者は年々減少しています。
しかしその割には、事故が多いのも特徴です。

労働者1000人当たりの事故率(年千人率)で比較すると、平成27年では全産業で2.2ですが、林業は27.0という数値になっています。次いで大きい値が、製造業の木材加工で11.2、陸上貨物運送業の8.2などと続きますので、とんでもなく数値が高いといえます。

産業別死傷年千人率(休業4日以上)

林業でも機械化は進んでいますが、まだまだ事故が大きいというのが実情と言えます。

奈良県野迫川村で、林業作業中に事故がありました。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

58歳林業の男性、40メートル滑落し死亡 奈良・野迫川村 (平成28年10月20日)

18日午後0時15分ごろ、奈良県野迫川村の山林で、近くに住む林業が斜面を約40メートル滑落、胸を強く打つなどして死亡した。

五條署によると、同日朝から従業員4人と伐採された枝などを集める作業をしていた。現場は「ホテルのせ川」から南西約3キロの山林で、斜面の傾斜は約45度。同署で原因を調べている。

この事故の型は「墜落・転落」で、起因物は「斜面」です。

林業の仕事場は主に山中になります。
そのため作業場は、山の斜面などが多く、常に足元に注意を払う必要があります。

また斜面だけでなく、枝を払うため木に登ることも多いため、建設業よりも墜落や転落の危険と隣合わせといえます。

この事故では、40メートルもの斜面を転落してしまいました。
斜面の角度は45°なので、かなり急だったといえます。
山の斜面には石や倒木、もちろん立木などの障害物が多数あります。このような障害物に体を強くぶつけるとこは、高所から墜落するのと同じ衝撃が体にかかるといっても過言ではありません。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

事故当時、何の作業をしていたかなどの詳細は不明ですが、おそらく伐木や倒木の枝払いなどを行っていたのではないでしょうか。

いずれの作業も山道や林道から外れ、斜面に立っての作業になります。

しかしただ足を滑らせただけでは、40メートルも滑落するとは考えにくいです。
記事からは伺えませんが、何かしらの力が加わり、弾き飛ばされた可能性がありそうです。

考えられるものとして、退避していた方向に木が倒れ、避けようとして転倒したことです。

その他の原因としては、斜面で枝払いしていたところ、木が滑り落ち、それに巻き込まれしまったことです。

木に押しやられると、人間の体は簡単に飛ばされてしまいます。
このような原因であるならば、作業方法や手順が適正だったかの問題がありそうです。

一般的に、安全帯を使用するのは崖周辺などの限られた状況だけです。
そのためわざわざライフラインを取付けて、安全帯ということはなかったのではないたと思われます。

伐木、倒木時の避難など斜面で待機する時間が多かったと思います。単に足元注意だけを行うのでは、対策としては十分ではありません。
十分な安全教育やKYなども行なわれていなかった可能性もありそうです。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

木に弾き飛ばされたこと。
作業方法や手順が定められていなかったこと。
必要に応じ、安全帯などの保護具を使用していなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

まず作業の大半は斜面で行うことになるとはいえ、足元の確保は重要です。
しかし、足元を注意するようにと通達するだけでは、十分ではありません。

伐倒時の退避場所、枝払いなど、やり慣れている作業でも所変われば、注意する箇所も変わります。
そのため毎回、作業場に合わせた作業計画、方法、手順を決めて、作業に取り掛かる必要があります。

作業時の安全確保については、作業前だけでなく、常日頃から安全教育等で確認することも大事です。

また、斜度が急な場合や滑りやすいなどの条件がある場合は、ライフラインを設置し、安全帯の使用も積極的に行いましょう。

対策をまとめてみます。

作業計画や手順は、毎日確認する。
日常的に作業者に安全教育を行う。
安全帯を使用する。

林業は、作業環境や内容から、事故が多くなってしまいます。
事故を防ぐためには、安全対策を徹底することが求められます。また事故が起こったとき、早急な救助体制も求められるでしょう。

それにしても、ウッジョブとかの映画を見ると、林業もいいなと思ってしまうんですけどね。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【安衛則】

第480条
造材の作業を行うときは、転落し、又は滑ることによる危険を及ぼすおそれのある伐倒木などはくい止め、歯止めなどの措置を行わなければなりません。
第481条
造林、伐木、造材などを行っている場所の下方で、木材が転落やことによる危険を生ずるおそれのあるところは、立入禁止にしなければなりません。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

林業作業の安全

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