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移動式クレーン付ショベルカーは移動式クレーン扱い。では、吊り荷走行はOK?

   

建設現場で使用されるショベルカーには、移動式クレーン付のものがあります。
いや、今や現場で見かけるショベルカーの大半が移動式クレーン付であるといっても、言い過ぎとは言えないでしょう。

本来、ショベルカーの機能は土を掘る機械です。
そのため、荷を吊るという機能は、「用途外」といえます。

この「用途外」の使い方によって事故が多発したため、規制されるようになりました。
それが安衛則第164条の「用途外の使用」というものです。

これはショベルカーで吊り荷作業を行う場合の規定です。
今まで、用途外の使用について記事を書いたことがあるのですが、これらについて少し整理したいと思います。

用途外の使用について
ショベルカーは、掘る機械?吊る機械?

これらの記事について私自身が理解が及んでいなかった点があったのですが、その点も修正したいと思います。
上記の記事でも、追記として、修正をしております。

さて、用途外の使用についての規定ですが、これは通常のショベルカーで吊り荷作業を行う場合に適用されます。

つまり移動式クレーン機能付ショベルカーは、法令上移動式クレーンとして扱われます。
これは、平成12年の「クレーン機能を備えた車両系建設機械の取扱について」という労働省(現・厚生労働省)の事務連絡で確認されています。

以前の記事で、私はここを誤解しており、移動式クレーン機能付きでも「用途外」に含んでいましたが、改めます。

ただ、移動式クレーンとして扱われますので、移動式クレーンの資格や作業方法などが必要になるので、その点は誤解なきよう。

移動式クレーンとして扱われいるからこそ、2.9トン吊りのショベルカーもあるということですね。
今までは、用途外の使用では最大吊り荷荷重は1トンまでとする規定との矛盾を感じていたのですが、解消しました。

この点は解消しました。
しかしショベルカーという機械特性だからこその疑問点があります。

それが、吊り荷走行はOKなのか、どうなのかということです。

index_arrow 吊り荷走行の是非

吊り荷走行とは、クレーンとして荷物を吊った状態のまま、移動することです。

ラフタークレーンやユニック車などの移動式クレーンでは、禁止です。やってはいけません。
足回りがタイヤの移動式クレーンでは、そもそもアウトリガーが張り出されているので、移動することは不可能です。

問題は、足回りがクローラー(キャタピラ)のタイプのものです。
特に、移動式クレーン機能付ショベルカーです。

ショベルカーで物を吊ったまま移動している光景は、よく見かけます。
果たしてOKなのか。

結論からいうと、吊り荷走行は原則禁止です。
これは、通達(基発第218号第2-4-(3)-ヘ(昭和50年4月1日 ))で禁じられています。

しかし、グレーにぼやけているところもあるというのが実情です。

例えば、日本クレーン協会では、こんな見解をしています。

移動式クレーンを使用してのつり荷走行は原則として禁止されていますが、やむを得ず行う場合は、次の点に留意すること。

・ 荷を地面に近づけ振れを小さくする
・ 軟弱凹凸路面は避け、敷鉄板等を用いて養生し良好な路面とする
・ できるだけ低速で走行する
・ 荷の重量を,できるだけ小さくする
・ 電線の下を通過するときは、十分な間隔を取り誘導者の指示に従う

作業上、やむを得ない場合は、十分に注意しながらであれば、可能であるといえます。

さらに、メーカーに尋ねるとこんな答えがありました。

通達にある通り原則禁止。
どうしても行う場合は、吊り上げる高さは地面すれすれ(30センチ未満)で、低速に移動する。
移動中に荷物が振れないようにする。

吊り荷走行は、水平で強固な地盤でも1.3倍の荷重がかかります。
(参照:「ドラグ・ショベルの吊り荷走行時における不安定用意の実験的検討」)

メーカーのカタログにも、吊り荷走行時の荷重についての欄があります。
これは実際には吊り荷走行といった使われ方がされていることを、十分認識しているともいえます。

ちなみに、クレーン則第55条の3項では、定格荷重1.25倍の荷重を吊って走行する検査するとあります。
1.3倍の荷重がかかることを考えると、定格荷重の荷物を吊っての移動は荷重オーバーとなりそうですね。

吊り荷走行は原則禁止です。
移動式クレーン機能付きショベルカーでも変わりません。

ただし、グレーの部分があるというのが実情といえます。
とはいうものの、鉄板やU字溝を吊って移動はよく見かけるのですが。

作業上やむを得ないとしても、安全な作業のためには、少なくとも次の点はクリアしましょう。

・安定した地盤の上で行う。凸凹したり、緩い地盤では、荷が大きく触れてしまいます。
・荷を高く吊上げない。
・超低速で移動。
・定格荷重の吊り荷走行は行わない。
・誘導員の指示に従う。

繰り返しますが、吊り荷走行は原則禁止です。
禁止になっているのは、不安定な作業のため、事故が起こりやすいからです。
このことは念頭に置いておきたいですね。

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