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さび止め塗装作業中、3人倒れ1人死亡(愛知県西尾市)

   

塗装作業では、有機溶剤などを使用します。
屋外で使用するのであれば、風で拡散されるので、体内の吸引量は少なくなります。

しかし屋内、特に通気の悪い場所では、問題があります。
揮発した有機溶剤は、室内に停滞し、それを吸い込んでしまいます。

十分に対策がないと、中毒といった事態になります。

愛知県西尾市の用水管内部での塗装作業で、中毒事故が発生しました。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

さび止め塗装作業中、3人倒れ1人死亡 (平成29年2月25日)

25日午後5時5分ごろ、愛知県西尾市小島町の安藤川右岸にある農業用水用の管の内部で、男性作業員3人が倒れているのを現場監督の男性が見つけ、3人は病院に搬送された。西尾署によると、塗装業の死亡が確認された。50歳くらいの男性が意識不明の重体、男性会社員は意識がもうろうとしているが軽傷という。

署によると、3人は地下約3メートル、直径約1メートルの管の内部でさび止め塗装の作業をしていたという。現場監督を含めた4人は朝から現場近くで作業を開始。夕方になっても3人が戻らないため現場監督が管の中をのぞくと、3人が倒れていたという。

消防によると、救急隊員が現場に駆けつけた時、管の入り口付近ではシンナーのような臭いがしたという。

朝日新聞デジタル

この事故の型は「有害物との接触」で、起因物は「塗料」です。

農業用用水管の内部で、3人の作業者がサビ止め塗装をしていたところ、1人が死亡、1人が意識不明、もう1人も意識が朦朧となり、病院に搬送されました。

管の直径は1メートルとのことなので、かなりの大きさです。
塗装が必要ということなので、コンクリートや塩ビではなく、鋼管だったと思われます。
地下3メートルの位置に据えられているものだったので、通気性が悪かったと思われます。

通気の悪い、閉鎖された場所での塗装ですので、シンナー等の有機溶剤による中毒のリスクが高い作業だったといえます。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

屋内で塗装など、有機溶剤を使用する場合は、危険が伴います。
今回の事故現場は、直径1メートル程度の狭い鋼管の中です。
通気が悪いので、何の準備もなく作業をすると、中毒になってしまいます。

中毒になる原因は大きく2つ考えられそうです。

1つは、有機溶剤によるものです。
シンナー臭がしていたとあるのですが、どのような塗料を使ったいたのかは記事からは伺えません。
(私の会社では、鋼管の塗装でエポキシ系塗料を使うことが多いので、その類いかも。)

塗料は薬品臭がします。長時間吸っていると頭がぼんやりするようなものです。

これが排気されておらず、吸収したことです。

もう1つは、酸欠です。

通気性の悪い場所は、空気の入れ替わりが少ないです。そのため酸素を消費しても、新たに供給されません。
また、鋼管にサビが浮いていたならば、酸化により酸素濃度も低かった可能性があります。

排風機、送風機などがあったのかもしれませんが、3人が作業するには不十分だったと考えられます。

また、酸欠の濃度などの計測も行なわれていなかったのではないでしょうか。

現場監督は、近くにはいたようですが、管内部での作業状況を確認できていませんでした。
今回のような場所では、酸欠と有機溶剤の作業主任者が現場管理と指揮を執る必要がありますが、十分な管理ができていなかったようです。
現場監督が、作業主任者を兼ねる必要はないのですが、十分な指揮管理体制がなかったのかもしれません。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

作業主任者の指揮管理が行なわれていなかったこと。
換気が不十分だったこと。
保護具等が使用されていなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

閉塞した場所、屋内で塗装作業する場合には、作業主任者を選任し、指揮を執らせなければなりません。
今回の場所では、酸欠の作業主任者と有機溶剤の作業主任者です。また(エチルベンゼンを含む)シンナーを使用するならば、特化物の作業主任者も必要です。ただし特化物の作業主任者は有機溶剤作業主任者の技能講習を修了した人から選任です。

また、作業前には酸素濃度の測定をします。18%未満なら、換気しなければなりません。
酸素濃度が十分でも、作業中は換気を続けなければなりません。

作業範囲が広範囲になるならば、全ての範囲をカバーすることが必要です。

換気が十分にとれないならば、呼吸用保護具を使用します。ただし、ろ過式の防毒マスクは避けたほうがよさそうです。なぜならば、酸欠の恐れがあるからです。外部の空気を口元まで送る、送気マスクなどを使用するのがよさそうです。

事故を防ぐためには、作業前の準備と作業中の管理を徹底することが求められるのです。

対策をまとめてみます。

作業主任者を選任し、指揮を執らせる。
作業前の酸素濃度測定を行う。
換気し、保護具も用意する。

通気性の悪い場所では、酸欠と有機溶剤などの中毒に気をつけなければなりません。
今回の事故のような場合、気分が悪くなったら、逃げることもできない可能性があります。

そのため、準備と作業中の管理が大事なのです。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【酸素欠乏症等防止規則】

第3条

酸欠等の危険がある場所での作業では、作業前に測定を行わなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

酸欠作業。 異常環境下で行う仕事での注意。

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